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【ショートショート】聞こえてくる声(ポートフォリオ掲載分から少し改変)

仕事終わりに、いつもの居酒屋へ向かう。 大きな仕事が片付いたので、今日はいつもよりも贅沢をしよう。 焼き鳥、出汁巻、角煮、おでん、刺身……好きなものを好きなだけ。 居酒屋のドアをガラリと開けると、店内はそこまで混んでいない。 ゆっくりできそうだ。 運がいい。 席に座ると大将が声をかけてくる。 「今日はどうします?」 「今日はね、ちょっと贅沢をしようと思って」 「そりゃ景気がいい」 いつもは同じページしかみたいメニューも、今日は隅々まで見ていく。 ああ、何を食べよう。 悩んでいると、声が聞こえてきた。 「……たい、痛い」 顔を上げて、周りを確認する。 「どうしました?」 「いや、今声が聞こえたような気がして……」 「まぁ、このあたりはうるさいですからねぇ」 それもそうかと、またメニューを見直す。 「痛い、痛い……」 「嫌い、嫌い……」 やはり声が聞こえてくる。 目だけを動かして周りを確認してみたが、聞こえているのはどうやら自分だけらしい。 仕事が忙しすぎて、幻聴でも聞こえるようになったのだろうか。 聞こえてくる声はどんどん大きく、クリアになっていく。 「痛い、痛い」 「人間嫌い、人間嫌い」 大将が水槽から魚を取り出したとき、「やめろ!やめろ!」という声が聞こえ、そこで気づいた。 これは食材たちの声だ。 幻聴どころの話ではない。 第六感的なものが目覚めたのか? どうしたものかとぼーっと大将のほうを見ていると、大将が大きな肉塊を出した。 その肉塊を捌き始めると「お父さん、やめて!」という声が聞こえた。 ああ、もう無理だと逃げるように居酒屋を後にした。
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【ショートショート】「最高の音楽体験を」

「最高の音楽体験を」そんな謳い文句の商品を買った。 値段は7000億ドルくらい。私がちょっとした石油王じゃなかったら買おうとも思わなかっただろう。 支払い後、その場で商品を渡された。ウォークマンの類いかと思ったが、見た目はただの携帯だった。しかも電話しかできないタイプ。 「オーディオ機器でもないのに、「最高の音楽体験」?」 私は訝しげに店長を見た。すると店長は余裕たっぷりに、 「皆さんそうおっしゃいます。とにかく電話帳をお開きください」 と言った。 その通りにすると、電話帳には有名なミュージシャンの名前がズラリと並んでいた。途端に鼓動が速まる。 「も、もしかして彼らと通話できるのか……?嘘だろ……?」 興奮しながら尋ねると、店長はゆっくりと首を振って、 「皆さんそうおっしゃいます。とにかく、お好きなミュージシャンに電話をかけてみてください」 と言った。私は訳も分からぬまま、「ポール・マッカートニー」と書かれた番号を押した。ビートルズの曲には、私がまだ駆け出しの石油王だった時代に、随分勇気づけられたものだ。 プルル、プルル、プルルルルル…… しばらく発信音が鳴った後、誰かが電話に出た。 「あ、は、初めまして!私昔からあなたのファンでして……」 私は緊張から矢継ぎ早に喋った。しかし、私の挨拶には返答がなかった。 その代わり、演奏が始まった。 曲は「Hey Jude」。歌っているのは、間違いなくポール・マッカートニーその人だ。 しかも「Jude」の部分を私の名前に変えてくれている。 私は涙を流しながら理解した。 この携帯は、直接ミュージシャンに電話をかけ、リアルタイムで演奏してもらう
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【ショートショート】「スターの誠実さ」

街の一角に黒山の人集りができている。中央には、マイクロビキニを着た若い美女がいる。乳首と股間には電飾がついており、その桃色の光が汗で滲んだ全身に広がっている。 若い美女は腰をくねらせながら、喘ぎ声を上げている。それは暴走族の鳴らすバイクのエンジン音のようにけたたましいが、人々の歓声に掻き消されている。電飾の桃色の光は、若い美女を撮影する無数のカメラの焚くフラッシュによって薄まっている。 カメラは、どれも各々の持ち主の顔面から生えている。なぜなら、それが人々の目だからだ。耳は蓄音機で、口は小さなクチバシになっている。 「こっち向いて!」 「ポーズお願いします!」 人々が、親に餌をねだる雛のように鳴く。そして若い美女の一挙手一投足を、屈折したレンズや色つきのレンズで捉える。もちろん、わずかに聞こえる若い美女の嬌声を、ホーンアームや針のねじ曲がった蓄音機の耳で記録することも忘れない。 フラッシュが焚かれる度に、カメラと皮膚の隙間から、次々と写真が出る。人々はそれを拾って、3通りの使い方をしている。 ある人は、表面を拭いてから、折れ曲がらないように注意しつつ、額縁やアルバムに入れる。 ある人は、写真を両手で持って、体の大きさになるまで引き伸ばし、体の前に貼って若い美女を真似る。 ある人は、同じように写真を引き延ばした後、若い美女の顔を切り抜いて自分の顔をはめる。 そしてまた、歓声と撮影と録音を続けるのだ。 そんな人々を、若い美女は恍惚として眺めながら、しかし時折見える服装に苛立ちを募らせている。 エプロン、スーツ、作業着、学生服……目が留まる度、個々の人生が想像されてしまう。 若い美女
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【ショートショート】「夢精と切れ痔(後編)」

「何これ?」 煌々とした白い照明の中で、自分の精液と血の付いたパンツを広げられ、比嘉冷射士は肌を粟立てた。そして反射的に奪い取ろうとしたが、相手は闘牛士のようにパンツをはためかせながら躱した。 「君、溜まってんの?」 ルームシェアしている同居人が、鼻で笑いながら比嘉冷射士のベッドに腰かける。 比嘉冷射士は必死に激情を抑えながら、同居人がいきなり開けて入って来たドアを閉じ、相手に関する情報を整理した。 ――こいつは先週の木曜日に入居している。名前は加藤だったか、川藤だったか……とにかく、シングルマザーであることは確実だ。挨拶に来た際にそう言っていたし、傍らには4、5歳の子供がいた。 「そんな怖い顔してないで、お喋りしようよ。」 同居人が口を尖らせながらベッドの脇を叩く。比嘉冷射士は誘いに乗らず、相手を観察する。 ――化粧っ気のない顔。剃ってある眉毛のせいで、人相が悪い。根元が黒くなっている茶髪のポニーテールに、上下灰色のスウェット。そのポケットからアイコスを取り出し、断りもせずに人の部屋で吸っている。そして立ち上がってこっちに……。 比嘉冷射士は思索を中断し、接近する相手に身構えながら後ずさりした。同居人は不敵な笑みを浮かべたまま、比嘉冷射士を壁際に追い込み、壁に手をつけて鼻息が当たる距離まで顔を近付けた。 唇の前に垂れている前髪が発声に合わせて揺れる。 「そうゆう風に構えて生きるのって、しんどくない?」 不意に本音を代弁された気がして、比嘉冷射士は息が止まりそうになった。そして相手の胸を押しながら、 「プライバシーの侵害ですよ。」 と言うと、同居人はアイコスの水蒸気を吐きながら
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【超ショートショート】「甘露(利権)」など

「甘露(利権)」 探検隊(マスコミ)は、 鬱蒼と茂る植物たち(芸能事務所や芸能人)を掻き分けて 森(芸能界)の最深部に足を踏み入れた。 途端に、暗幕の内側に入ったかのように辺りが闇に包まれた。 それまで障害物を掻き分けるために 休みなく動かしていた両手が、空を切る。 ヘルメットのライトを点けても、 広がりながら薄くなる円状の光の中には何も現れない。 唯一、頭上に向けた時だけ、 青々とした葉が密集しているのが映る。 少しして、探検隊(マスコミ)は 自分たちが巨大で厚い林冠の下にいることに気が付いた。 林冠が日光を遮り(市場の一部を独占し)、 他の植物たち(芸能事務所や芸能人)が育つのを妨げているのだ。 そして、探検隊(マスコミ)はある仮説を立てた。 ――ひょっとして、 「森の最深部をたった1本の木(ジャニー喜多川)が独占している」 のではないか? 探検隊(マスコミ)は真相を知るために足を速めた。 しばらくすると、ライトの光が壁のような幹を照らした。 手前に、いくつもの果物(ジャニーズアイドル)が垂れ下がっている。 それらは皺ができるほど縮んだり(性加害を受ける)、 皮が張り裂けそうなほど膨らんだり(富と名誉を受け取る)を繰り返している。 ――この木(ジャニー喜多川)は、 果物(ジャニーズアイドル)に栄養を与えるだけではないのか? この仮説は、先に立てたものと同様に正しかった。 しかし、探検隊(マスコミ)がそれ以上踏み込むことはなかった。 その後、探検隊(マスコミ)が持ち帰ったものは情報ではなく、 果物(ジャニーズアイドル)から溢れ出た甘露(利権)だった。 踵を返した探検隊(マスコ
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【ショートショート】「夢精と切れ痔(前編)」

蒸気で曇ったガラスの向こうに、人影が見えた。(せっかく貸し切り状態だったのに)スーパー銭湯のサウナ室に、比嘉冷射士の舌打ちが響く。案の定、ドアは開かれ、腰に橙色のタオルを巻いた男が入って来る。一瞬、表の冷気と音が入る。 比嘉冷射士は(勝負を持ちかけられたら面倒だ)と顔を伏せた。濡れて束になった前髪の先端から、股間にかけたタオルに汗が落ちる。次第に、特有のぼんやりとした気分が戻って来る。 不意に、視界の端に足が現れる。慌てて前を向くと、男が正面に立っている。こちらを見下ろしながら、無精髭の間から歯を覗かせている。 「何ですか?」 努めて冷静に尋ねる。すると男は何も答えず、自身の腰に巻かれたタオルに手をかけると、それをはためかせながら解いた。目の前で、血管の浮いた黒っぽい陰茎が揺れる。 比嘉冷射士があっけに取られていると、男は一層歯を剥き出しながら屈み、自身の陰茎を比嘉冷射士の脹ら脛につけ、そこから太股の内側までを陰茎でなぞった。 比嘉冷射士は反射的に身を捩って逃れようとしたが、腰が抜けたのか立てない。その内に男の陰茎がタオルの中に侵入し、比嘉冷射士の陰茎を押し上げながら、ゆっくりと勃起した。男の陰茎は反り上がり、比嘉冷射士の陰茎とタオルを弾いて、男の臍の辺りに当たった。 あろうことか、支えを失った後も比嘉冷射士の陰茎は垂れ下がらない。タオルが僅かに膨らんでいる。比嘉冷射士は目を背けているが、陰茎がある程度の角度と固さを保っていることは、否応なく実感している。そして意識する程、陰茎は張り詰めていく。 男が比嘉冷射士の手首を掴んで引っ張る。腰が浮き、立ち上がる。同時にタオルが解け、互
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【ショートショート】「社畜のいつもより遅い出勤」

改札を出て、数歩歩いたとこで足が止まる。動こうとしても全身が硬直している。 「何してんだよ。」 背中に衝撃を受ける。体がつんのめり、勝手に足が出て数歩歩く。右肩の後ろが痛い。前を向くと、スーツの上にロングコートを羽織った人がいる。こちらを睨んでいる。少ししてから視線を外し、右に折れて歩いて行く。 その道筋を辿るように、沢山の人が横を通っていく。時折背後からぶつかる。 「邪魔邪魔。」 「っどくせぇな。」 押されるまま、同じ要領で前に進む。やがて体に痛みを覚える頻度が減り、完全に足が止まる。 革靴の足音が聞こえる。気にすると、その数が急速に際限なく増えていく。振り返ると、通勤中の人々が目の前で曲がっている。そのカーブは少しずつ膨らみ、迫ってきている。喉の奥が詰まり、胸の辺りが冷える。瞼が震え、視界で光が瞬く。 顔が反対側を向き、車道の方に行こうとする。その動きに胴体と足が引っ張られる。 ガードレールに右手をつく。駅を見ないように俯きながら、ガードレールの礎石に座る。両手で顔を覆い、指の隙間から息を少しずつ吐く。耳の奥で心音がはっきりと鳴っている。 しばらくして両手を離す。汗で濡れている。右の掌にはガードレールの跡が残っている。視界で瞬いていた光が弱まっている。礎石とアスファルトの隙間に雑草が生えている。 尿意がして、直後に太股の裏に温かい感触が広がっていく。小便が脹ら脛を伝い、痒くなる。足元に水溜まりができて、数本の線に分かれながらガードレールの方に流れる。脹ら脛を搔く。 背後で車の行き交う音が聞こえる。左側からは、声が聞こえる。見ると、少し先の方で拡声器を持った若い男性が、駅に向
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【ショートショート】「ハズレの同居人」

ゲージのガラスを指で小突くと、 中にいるカメレオンが目を覚ました。 寝そべっていた枝から、 右前足と左後ろ足、 左前足と右前足を交互に離し、 伸びをしている。 その様子が可愛らしくて、 思わず笑ってしまう。 あまりにも可愛いものを見ると笑ってしまうことを、 私は2年前に「カメちゃん」を飼い始めてから知った。 すっかり起きたカメちゃんは、 左右の目を別々の方向に動かしながら、 口をパクパクとさせている。 私はその様子を眺めながら、 ゲージの置いてある机の引き出しを開け、 2枚の色のある下敷きを取り出す。 赤、青、それらを合わせた紫。 1色ずつカメちゃんの前に掲げる。 緑色の体表は、それぞれの色に従って変わる。 なんて健気なんだろう。 また可笑しさが込み上げてくる。 私はその遊びを繰り返しながら、 (カメちゃんが巨大になって、 会社をぶっ潰してくれればいいのに。) なんて妄想に耽っていると、 不意に背後のドアがノックされた。 コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン…… 無視しているのに、3回も4回も。 きっとあいつだろう。 面倒だが、付き合いというものがあるから仕方ない。 溜息を吐き、ドアを開ける。 すると案の定、 そこには「ハズレ」の方の同居人がいた。 「何?」尋ねると、 そいつはモジモジとし、 長い前髪の隙間からニキビだらけの肌を覗かせながら、 「今忙しい?」とこちらの機嫌を伺う。 「用事によるかな。」 私がそう言うと、 ただでさえイライラしているのに、 躊躇いがちに何かの紙を渡してくる。 受け取って見ると、 習い事でやっているとかいう、 アコースティックギター
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【超ショートショート】「影恐怖症」など

「影恐怖症」 影が怖くて、 怖くて怖くて、 それはもう怖くて堪らない女の子がいた。 女の子は、物心がつくのと同時に、 人の影に恐れを抱いた。 そして初めて、 あの黒くて怖いのが、 自分の足元から伸びているのに気付いた時には、 悲鳴を上げ、 小便を撒き散らしながら逃げ回った。 だけどいくら逃げても、 影を撒くことはできない。 だけど撒けないといっても、 怖いものは怖い。 おまけに医者にかかっても、 「分からない」の一点張り。 こうして女の子は、 四六時中走り回るようになった。 影がいなくなる夜を除いて、 飯を食うのも、 服を着替えるのも、 全部走りながら済ませた。 だけどある日、 余りにも怖かったんだろうね。 家から飛び出して、 背後に気を取られていたものだから、 トラックに跳ねられて死んじゃったよ。 葬式では、皆口々に、 「可哀想だけど、 これで楽になれるね。」 って言っていた。 だけど妙なことが起きた。 女の子を火葬して、 遺骨を箸で拾っている時、 両親が気付いたんだ。 女の子の影が、 女の子が生きていた時の形のまま、 そこに残っていることに。 そして両親は思ったんだと。 「遂に追いつかれちゃったんだ。」って。 「長い間違え」めんつゆかと思って、 麦茶を飲んでしまった。 ……意外と飲める! というより、めんつゆより飲みやすい! 今度からこっちにしよう。 麦茶って、 飲む分には丁度良い濃さだな。 麺類のつゆにしたときは物足りないけど。 「少年」「あの2人なんだろ?お前の両親。」 クラスメイトたちの言葉に、 少年は静かに俯く。 するとクラスメイトたちは、 教室の端に視線を向けなが
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【超ショートショート】「飲食風俗店」など

「飲食風俗店」 デリヘルを呼んだら、 くたびれた様子の黒服が先に来て、 「お通しです。」 とAVを置いていった。 (居酒屋かよ。) そう思いながらも、 女の子を待つ間、暇なので観賞。 すると思いがけず内容が良く、 それで済ませてしまった。 基本的に一回戦が限度の俺。 結局、女の子とは楽しめず……。 (何がお通しだ。 妙なシステムを導入しやがって。) 憂さを晴らそうと、 後日ソープランドへ。 するとパリッとした黒服が、 「前菜です。」 とまたAVを出した。 嫌な予感。 いつ女の子が来るのか尋ねると、 スープとして出されるエロ漫画の後の、 魚料理として出される使用済みパンティの後の、 口直しのシャーベットとして出される官能小説の後に、 肉料理として出されるらしい。 ちなみにその後は、 デザートとしてエロアニメが、 最後に食後のコーヒーとしてグラビア雑誌が出されるんだと。 「面倒臭ぇよ!!」 俺は吐き捨てて、 (今度こそ……!) と、その足でピンサロへ。 到着するなり、 おばさんの黒服に、 「女の子はすぐ来るよな?」 と尋ねる。 頷くおばさん黒服。 (本当だろうな?) いぶかしみながらも個室で待つ。 すると少しして、 ちゃんと女の子は来た。 顔は可愛く、 スタイル抜群。 おまけにテクニシャンだった。 ストレスと共に、 全てを吐き出した俺は、 ぼんやりと天井を眺めた。 そんな時、 おばさん黒服の声。 「はい、じゃんじゃん。」 同時に別の女の子が入って来る。 廊下には、 何10人もの女の子が立っていた。 (しまった、わんこそばか。) 気付くのと同時に、 ドアが閉じられた。 「青ちゃん」「
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【詩】【ショートショート】「人間鳥コンテスト」

入道雲に向かって 両翼をピンと伸ばした人力飛行機が飛んでゆく 「まだ、いける」 操縦士の耳には もう随分離れているのに いや、むしろ遠くに行くほど 仲間たちと他の出場者たちの声が届いている 「まだ、いける」 視界が汗に食い荒らされても 喉から笛音のような音が鳴って血の味がしても それでも操縦士は 「まだ、いける」 そう繰り返し 限界を超えた足を騙し続けるのだ これで何度目だろう また機体が海面すれすれで持ち上がる そう 「まだ、いける」 人間達が鳥人間コンテストで盛り上がっている頃、とある小さな島では、鳥達による「人間鳥コンテスト」が行われていた。人間鳥コンテストは鳥人間コンテストとは真逆だ。 鳥人間コンテストは人力飛行機に乗った人間によるレースゲームだが、人間鳥コンテストは、人間を模した駒を使うボードゲームだ。 「ボードゲーム」といっても、ボードではなく地球儀を使う。駒の底には磁石が仕込まれており、逆さまになっても地球儀に張り付くことができる。 また、駒はシャチハタになっており、参加者達は駒を移動させることで自分の駒のマークを地球儀に記すことができる。 人間鳥コンテストでは、このマークが最終的に最も多かった者が優勝できるのだ。 ここからはルールの説明に入るが、これが酷い。「ルール」と呼ぶにしては余りにも煩雑だ。 ルール①:1人が使える駒は1つまで ルール②:駒は80歩したところで使えなくなる(80歩を超えた参加者は、速やかに駒を回収して大人しく結果を待つように) ルール③:集計をする際に有効とされるマークは、明らかにそれと認められるものでなければならない(上から他のマークに塗
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【超ショートショート】「盗撮の喜び」など

「盗撮の喜び」 電車に乗っていると 背後からシャッター音 (盗撮だ!) 私はすぐに気付いた 振り返ると そこにはキモいおっさん すぐに詰め寄り 写真を見せるように言うと キモおじは渋々 スマホの画面をこちらに向けた …… 嘘だろ 最高の映りじゃないか 下着とかは撮られておらず まるで街中のスナップ写真に モデルが映っているようだ 戸惑っていると キモおじは涙ながらに 「SNSにアップした」と自白した 慌ててそいつのアカウントを見ると 89ものいいね。あ、90、91…… い、いや違う だから何だと言うのだ 駄目なものは駄目 「撮りたいなら声かけないと」 説教すると キモおじは嗚咽しながら 「自然な表情が一番綺麗だから」 だって…… それからというもの 同じ時間の同じ電車の同じ車両に 私は乗るようにしている 「下手な歌」3人の下手な歌が終わりやっと俺にマイクが回ってきた  随分待った 永遠のように長かった 他の白けている皆に ようやく俺の美声を届けられる しかしその前に 互いを褒めているお前らに 言っておかなくてはいけない 「俺がボーカルだよな?」 俺はライブ中に急に我を出したギター、ベース、ドラムに言った 「パパの失敗」しまった 洗濯機と間違えた いやぁ、うっかりうっかり いつも嫁がやっているので 逆になってしまった 服を洗濯機に 子供を風呂に入れるんだったな 「喧嘩上等」やつの拳が 俺の頬にクリーンヒット! 野郎 いいパンチ持ってんじゃねぇか すぐに反撃してやるからな 俺には必殺のアッパーがあるんだ だけど、ちょっと待っとけよ お前も俺の頬から 拳を離すんじゃねぇぞ 今俺の頬か
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【ショートショート】「カメレオン大暴れ」

(そうだ!おふぃすびるに擬態しよう!) 巨大な人食いカメレオンは思った。 人間はなぜかおふぃすびるに入りたがる。 だからおふぃすびるのフリをすれば餌には困らない、という算段だ。 早速実行に移した巨大な人食いカメレオン。 胴体に窓を、口元に自動ドアの模様を浮かべる。 しかし期待とは裏腹に、人間は入って来ない。 (擬態が甘いのかなぁ……?) 首を捻っていると、周囲のおふぃすびるが目にとまった。 「……あっ!」 思わず声を上げるカメレオン。 よく見ると、辺りのおふぃすびるは、どれも自分と同じように擬態した生き物じゃないか! しかも観察すると、実に巧妙なやり口だ。 体に取り込んだ人間を、死なない程度に精力を吸ってから吐き出し、精力が戻った途端、また体に取り込んでいる。 こうしてずっと腹を空かせずに済むというわけだ。 (しかし、どうして人間はあいつらのところに通うんだ?) カメレオンは頬杖ついて目をギョロギョロさせながら考える。 すると、擬態した生き物たちの用意周到さが分かった。 なんとやつらは、じょうげかんけいとかじょうしきとかぎむとかで、人間が自分で来るように仕向けているのだ! 擬態した生き物の口に、いくつもの人間が足元に目線を落としながら入って行く。 カメレオンは無性に腹が立った。 胃の中がムカムカとして仕方がなかった。 そして算段もないのに、近くのおふぃすびるのフリをしているやつを殴りつけた。 (俺はやつらほどは頭が働かない。) (だけど、踏み越えちゃいけない一線だけは、分かる。) カメレオンは緑色の体を現しながら見栄を切るように周囲を睨み、叫んだ。 「俺の餌なんだぞ!」 そして
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【ショートショート】「結婚」

エレベーターのドアが開くと、俺は眼前の光景に息を呑んだ。言葉も出ないまま、一歩外に踏み出す。ウェディングドレスを着た彼女の美しさは、この世のものとは思えなかった。影が全くない。きっとあらゆる方向から当てられている照明の光のおかげなのだろう。しかし自ら発光して影を跳ね除けているかのように見える。手前にある梯子は膨大な光量によって支柱や段が細く見える。なんだか梯子が輝く空間にそっと凭れているかのようだ。しかし見上げると、梯子の頂点は確実に彼女の口元に行くようセッティングしてある。人間離れした美しさを持ってはいるが、彼女は間違いなく実体があるのだ。そして、間もなく永久に俺のものになる。(早くそこに行きたい)そう思うと、喉が渇くのと同時に睾丸の裏にあるしこりの存在を感じる。 挨拶くらいはしておこうと振り返ると、親族一同が怪訝そうにこちらを見ていた。特に中央にいる父親の眉間の皺は深い。 以前にも増して痩せ、座っている社長椅子に似合わなくなっている。もし俺が代わりに座れば、この光景は立派な家族写真になるに違いない。母親が左肩にそっと触れ、叔父が右肩をがっしりと掴む。そして膝元には、跡取りになる俺の子供が座るのだ。きっとおもちゃの機関車を積み木に衝突させたりして、撮影に集中しないのだろうけど。 それでも、俺は一礼してから梯子に向かって歩き始めた。 「必ず後悔することになる。」 背後から父親の声。言い返そうとしたが、既にエレベーターの扉は閉まっていた。きっと言い負かされていたので胸を撫で下ろす。エレベーターは増え続ける従業員たちの山によって押し上げられて、ゆっくりではあるが確実に遠くなってゆく
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【ショートショート】「欲望機」

欲望機…資本主義鉄鉱石…日本人商品…労働で手に入れられるもの商品の幻影…いずれ商品にするつもりの貯金町…日本社会部屋…プライベートな空間終戦直後戦争で更地になった国に、無数の欲望機が置かれている。欲望機は炉と湯船を混ぜたような装置だ。両脇には空気を入れる装置があり、そこから管を通って、欲望機の長い面の下部に絶えず空気が送られている。底には不純物を流すための穴が開いている。欲望機の中にはコークスが敷き詰められている。それに火をつけ、搔き分けながら入るのは、鉄鉱石だ。鉄鉱石は自らの意思で欲望機に入り、熱によって溶かされ、成分の重さによって上下に分離する。分離が終わった鉄鉱石は、取り付けられている蛇口を捻りシャワーから水を浴びて、体を冷やしつつ不純物を底の穴から流す。欲望機から出た鉄鉱石は、脛の辺りまでが缶詰や煙草などの商品に変わっている。鉄鉱石は同じく欲望機から上がった鉄鉱石の群れに混じり、町に帰る。そこには個々の部屋が転々とあるが、壁に囲われてさえいない。鉄鉱石は欲望機によって得た商品を、それぞれの部屋の中や、時には互いの部屋の間や誰かの部屋の中に置く。少しずつだが、町に商品が増えている。高度経済成長期空全体が陽炎で揺れている。欲望機には長蛇の列が並び、次から次へと鉄鉱石が入ってゆく。欲望機の中は常に高温で、真っ赤に燃えるコークスと鉄鉱石は、その輝きによって輪郭を失っている。鉄鉱石たちは体から湯気を立ち上らせ、不純物を垂れ流しながら電車に乗り、町に戻る。体は次第に頭頂部のわずかな部分を残して、洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビなどの商品に変わってゆく。町には個々の立派な部屋がある。そして
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【ショートショート】「子豚たちの努力」

二足歩行の子豚たちは鉄格子に囲われた空間の中で生きている。空間の内側には同じ大きさの部屋が碁盤の目のように並んでおり、全ての部屋の壁は氷でできている。天井はないが、常に頭上に酒の靄が覆っており、空は見えない。部屋と部屋の間は細い廊下によって隔てられている。そこを、胸を張り、大股で、マントをはためかせながら、ヒーロー的な子豚が歩いている。他の子豚たちはほぼ全員、最も注目すべき子豚の出番が回って来たとあって、廊下でひしめき合いながら興奮で鼻を鳴らしている。 ヒーロー的な子豚は、期待、羨望、嫉妬が混じった眼差しの中を、焦れったい速度で歩いた。それは他の子豚たちの高揚感を高め、自身にプレッシャーをかけるためだった。 (緊張を楽しめ)と、ヒーロー的な子豚は自分に命じ続けながら、鉄格子に囲われた空間の端にある、まな板のステージに乗った。 正面に向き直るが、他の子豚たちの姿は見えない。視界が酒の靄の中に入ったからだ。 ヒーロー的な子豚は、自身の成功を確信した。もはや、研ぎ澄まされた集中力によって、先程まで頭の中で繰り返していた合い言葉も聞こえない。なんだか脳が痺れてきた。ヒーロー的な子豚は白い歯で彫刻のような顔を輝かせながら、胸元に「S」と書かれたコスチュームやマントを脱ぐと、用意していたダマスカス鋼の刀剣で、自分の体を部位ごとに解体し始めた。 「1000いいね!」「1200いいね!」他の子豚たちが各々の提供できる酒の量を叫び、一番多い量を言った子豚に、ヒーロー的な子豚が自身の肉を投げ渡した。受け取った子豚は、約束した量の酒を感謝の言葉と共に吐き出して、ヒーロー的な子豚にかけた。 骨だけにな
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【ショートショート】「搾取」

新宿駅の東口から歌舞伎町方面に15分程歩くと、ドトールコーヒーがある。その2階には喫煙席があり、奥には1つの丸いテーブルがある。用意されている椅子は2つ。自ずとそのテーブル席に座れるのは2人だけだ。その椅子の一つに、ダッチワイフが座っている。「座っている」といっても、ダッチワイフは常に直立している状態なので、「もたれ掛かっている」というべきだろう。 ダッチワイフは虚空を見つめながら、口を開いている。その中には万札が詰め込まれている。 喫煙席にいる人々は、ダッチワイフの存在を気にしながらも、横目でチラチラと見ながら鼻の下を伸ばすばかりで、近付いたりはしなかった。しかし新たに入って来た者は、迷うことなくダッチワイフの元へ歩いて行った。 その者は猿だった。全身にブランド品を模した安物を身に着けており、それらは体中から生えている毛のせいでさらに安っぽく見える。特に頭に乗せているキャップは、頭頂部が凹んでしまっている。 「写真よりお綺麗ですね。」 コーヒーの乗ったトレーをテーブルに起きながら、猿は益々鼻の下を伸ばしながら言った。するとダッチワイフは身動ぎ一つしないまま、言下に猿を褒め始めた。 「あなたの方がよっぽど素敵。今見た瞬間、韓流スターが入って来たのかと思っちゃったくらい。しかも愛嬌があるから、韓流スター並みの美貌を持ちながら、接しやすさも兼ね備えている。正直、あなたが私の気に入らない相手だったら、100人以上の男性に対してそうしたように、挨拶もせずに追い返そうと思っていたの。だけどあなたは違う。私が今「支援」している選ばれし8人の一員にするのは勿論のこと、もしあなたが私の愛と「支
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【ショートショート】「高次元からの救済」

 会場に入った途端、Yに大量のフラッシュが当てられた。記者たちはこの歴史的な会見を一秒たりとも逃さずに記録しようとしている。記者団の背後には信者が大勢おり、Yの登場と共に、ほとんど発狂のような声を上げた。  Yは微笑みながら、しばらく静止していた。そして信者たちの声が収まると、おもむろに両手の指を複雑に絡み合わせ、体の横に突き出した。 「見たまえ。」  Yは、Yの背後の壁に注目するように言った。そこにはフラッシュによってキツネの顔の影絵が映っていた。 「こうして見ると、綺麗なキツネの顔に見えるだろう。しかしながら……」  Yがわずかに手首の角度を変える。するとキツネの顔は崩れ、歪な形になった。 「少し角度を変えただけで、何が何だか分からない形になる。しかしキツネは確かにここにいるのだ。」  そう言うと、Yはキツネの顔の両手を記者たちに向け、「僕はここにいるよ~。」と、腹話術の要領でキツネに喋らせた。 「どういう意味でしょうか?」  記者の一人が質問すると、他の記者たち、また信者たちも、言葉の真意を知りたいと次々に声を上げた。しかしYは全く慌てずに、むしろ努めてゆっくりとこう言った。 「私はこの世界の謎を解明したのだ。」  会場が静まり返る。皆が一斉に息を飲んだのだ。舞台を整えたYは、悠然と話を続ける。 「我々は三次元の世界に生きている。そしてこの三次元の中では、四次元以上の世界は認識できない、と思っている。しかしながらそれは間違いだ。」  Yが再び、両手でキツネの顔を作る。記者たちが気を利かせて再びフラッシュを焚き、影絵を作る。 「このキツネは三次元の物体だが、こうして二次元に
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【ショートショート】「親愛なるドアの男たち」

 体のあちこちに、小さなドアがついている男がいる。皮膚の上にではなく、皮膚そのものがドアになっているようだ。ドアは、ドアノブと鍵穴があるという共通点以外は、色も形もバラバラになっている。「どうだね?」と、男の背後で老人が笑みを浮かべる。歯は全て金色。老人は背後から男の両肩を掴み、姿見と対峙させている。  男は声を出さず、無表情でいる。まだ事態を把握できていないのだ。それも無理からぬことで、彼は街中で拉致され、目が覚めた時には、このような状態になっていたのである。少しの予兆もなく日常から非日常につれて来られたとあっては、夢だと思っても仕方がない。 「返事をせんか!」  老人が男を殴る。先程までの余裕綽々な態度から一転、顔を真っ赤にして唾を飛ばす。男は痛みで我を取り戻し、慌てて「すいません」と返事をする。 「まったく、のろまな、亀め……。」  老人が咳き込みながら男を罵る。怒りは収まったものの、体は中々平常に戻らないらしい。老人が指を鳴らす。すると、どうやって気配を殺していたのか、2,30人の医師たちが眼前に現れて、老人の胸に聴診器を当てたり、腕に血圧計を巻いたりする。「こいつらに、君を、改造させたのだよ。」  用意された椅子に腰かけながら、老人が言う。男はようやく状況を把握しようとしていたので、矢継ぎ早に質問したくなった。しかしまた折檻を受けるかもしれないので、 「なぜですか?」  と言うだけに留めた。  少しして呼吸が落ち着くと、老人は男に向かって手招きした。男が近付くと、また金歯が覗き、熱い息が男の顔に当たる。 「道楽の為だよ。私はこれまで不満や怒りを糧に財を築いてきた。しか
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【ショートショート】「福笑い」

 正月の親戚の集まりは、決まって大きな屋敷で行われた。たかしおじさんはそこの主人なのにも関わらず、いつも端の方でぽつねんとしていた。 それは本人が望んだことだった。たかしおじさんは重度の人見知りで、親戚と関わりたがらなかったのだ。  たかしおじさんは、両親が残した大屋敷の中に一人で暮らしていた。貯金も十分にあったので、働くこともなく、端的にいえば引き籠もっていた。このことが人見知りを克服する機会をたかしおじさんから奪っていた。  たかしおじさんは、年に一度大挙して来る親戚たちを恐れていた。特にけたたましい笑い声を上げながら禿げ頭を叩いて来る子供たちや、無理やり肩を組んで酒臭い息を吐きかけて来る男性たちは絶対に避けたがった。  とはいえ、来客を断る勇気は当然ない。だからたかしおじさんは誰にも絡まれないように、皆の視界の外で気配を殺した。それがたかしおじさんなりの正月をやり過ごす方法だった。  しかし孤立しているという状況だけでも十分に脅威だった。他者が沢山いる。他者たちが内容の聞き取れない会話をしている。これらの事実によって、たかしおじさんは自分が陰口を叩かれていると確信していた。  そしてある年、いつも通り孤立していたたかしおじさんは、幻の嘲笑を遮断する方法を思いついた。それは子供たちが遊び終わった福笑いに手をつけることだった。  台紙ごと手元に引き寄せ、顔のパーツをぐしゃぐしゃにすると、目を瞑り、それらをまともな顔になるであろう位置に移動させる。  もちろん、まともな顔が完成するかどうかは問題ではない。たかしおじさんの目的は作業に没頭することで、他者の存在を感じないようにする
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Amazonさまと楽天koboさまで販売中

Amazonさま○『ファミレス』入賞、入選した物語が雑誌や新聞に掲載されたショートショートが中心です。『碧き香り』は短編ですが、ロマン大賞で審査員長賞をいただいた物語です。・電子書籍とペーパーバック出版○『ひふみ占術と開運法』ごま書房さまの出版大賞で佳作に開運法を加えた本です。占い方は私のオリジナルで、姓名だけで相性と運気が占えます。・電子書籍とペーパーバック出版○『産霊(むすび)』20年以上かけて書き直し、追記してきました私の集大成本です。神道と仏教。参拝の仕方や家での祀り方。スピリチュアルエッセイなど。・電子書籍とペーパーバック出版○『幸せになれる神社参拝』おすすめの神社参拝の仕方や都道府県のパワースポットのご紹介などです。・電子書籍とペーパーバック出版○『言の葉』野原つくしさまとの共著。詩集です。・電子書籍○『三峯神社 関東の神社①』写真集風の書籍。三峯神社を写真とポイントをお伝えしています。「ルーシー」さまとの共著です。・電子書籍○『スピリチュアルエッセイ』20年間のブログで書いてきたものを集めた本です。・電子書籍楽天koboさま○『開運占い』誰でもかんたんに占える方法と、開運法。・電子書籍
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【ショートショート】正当な親孝行

「初めての出社日の朝」。遂にこの時が来てしまった。  会社に行くことが憂鬱なのではない。俺はそれよりも深刻な問題を眼前に叩き付けられることになる。 「座ってください」  予想通り、両親が円卓の向こうで鼻息荒く俺を待っている。多少期待したが、やはりもう朝食は出さないつもりらしい。俺は重い足取りで両親の前に行って腰を下ろした。 「まあダラダラと話しても何ですから」  親父はそう口火を切ると、手元から忌まわしき書類を取りだし、円卓の上に置いた。 「ご一読ください」 「何かご不明な点があればご質問ください」  お袋がそう続く。書類の一枚目には大きく、「子育て御見積書」と記載されている。その下には、俺の名前と、両親が俺を育てた期間が書かれていた。  恐る恐るページを捲ると、まず両親がこれまで俺にかけたお金が一覧で全て記載されていた。  食費・・・671万4400円  水道高熱費・・・203万3000円  ガス代・・・76万5600円  衣服・服飾雑貨費・・・141万2200円  生活用品費・・・91万550円  保険・医療・・・193万1000円  学校教育費・・・2600万円  学校外教育費・・・220万円  携帯料金・・・134万7000円  お小遣い・・・451万4000円  玩具・お菓子代・・・110万7789円  慰謝料・・・400万円                    合計・・・5293万5539万円  更にページを捲ってゆくと、項目ごとの内訳が何ページにも渡ってびっしりと書いてあった。俺は莫大な債務を目の当たりにし、余りにも憂鬱な気分を味わった。しかし親子間でさえ金銭の
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祝!「54字の物語」コンテスト。受賞キターーーー!!

様々なメディアで紹介され「ミラクル9」でも問題としても引用されましたね。「9マス×6行の原稿用紙につづられた、世界一短い(かもしれない)短編小説」話題の「54字の物語」このコンテストが開催され、私も大喜利ライター(!?)として参戦。ほぼライフワークとして、数々の作品を応募しました。例えばこんなの「夏休みの風景」「刑事ドラマな風景」「病室の風景」「ペットのいる風景」「僕の夏休みの風景」こんな作品を約100作品くらい書きました。「〇〇な風景」という独自のタイトルの付け方をしています。そんな縛りはないのですが。で、受賞したのがこちら「やまびこの風景」682作品の中から佳作といういわゆる銅メダル的な受賞です。選ばれた作品は自分としては意外なものでした。実際はもっと良くできた作品もあったのですが、自身のある作品と「ウケる作品」はやはりわからないものですね。デザインの仕事もそう「これは渾身の出来だ!」と思った真逆のラフ案が採用されたり、不思議なもんです。選考会の方に聞いたのですが「一次選考を突破した作品数はひなたさんの作品がダントツ!」という嬉しい「隠れアワード」を教えてくれました。これを機に「ひなたの54字の物語」みたいなのも出そうかしら・・(怒られないように出版社さまにきちんと交渉したのちに)氏田 雄介先生及び、選考会のみなさま。そして「54字の物語」にエントリーした多くの作家さんたちありがとうございました。とっても楽しい会でしたね。Twitterやnoteでも全作品をアップしているので、気になった方は検索してみてください。普段はココナラではデザイナーをしてますが、自身はライターなども
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秋の月夜にちょっと切ない小説:秋音と朗読:ショートショート詰め合わせ【朗読動画】

おはようございます。こんにちは。こんばんは。ブログを閲覧いただきありがとうございます。youtubeにて「語り部朗読BAR」というチャンネルを運営しております。自身で小説を書き、声優さんに朗読していただいたものに動画編集をして公開しております。たまに作者自身の北条むつき朗読もございます。今回ご紹介の朗読動画は、秋の月夜にちょっと切ない小説:秋音と朗読:ショートショート詰め合わせです。 良かったら聴いていただけると嬉しいです。・朗読動画もご用意しております。・今回は小説(文字)はまとめ朗読なので朗読のみとなります。◉秋の月夜にちょっと切ない小説:秋音と朗読:ショートショート詰め合わせ灰色の空に:作:ともなり雨降り小僧のさんぽみち:作:KAWANO今、どこにいますか:作:ともなり語り手全て:清水佐和子◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ここまで本文を読んでいただき、ありがとうございます。いかがでしたか? 動画内容もしくは、小説がよければ、いいねを押してください。励みになり大変喜びます。
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【ショートショート】人間の都合は知りません。

ある日のこと、ポストにチラシが入っていた。 「OPEN記念!猫の手、貸します。猫屋」 まるで子どもが書いたような文字に、本物の猫の手で押したのであろうと思われる肉球のスタンプ。 いたずらかと思ったが、ご丁寧に地図まで描かれている。 これは面白そうだ。 そう思った男は、そのチラシを持って地図が指し示す「猫屋」とやらへと向かった。 そこにはこぢんまりとした昔の駄菓子屋のような佇まいの建物があった。 ガラガラと扉を開けると、奥のほうで何かが動いている。 よくみると猫がペンを持って一生懸命紙に何かを書いていた。 何が何だかわからないまま、男は声をかけた。 「あの……」 「えっ、あ、これはこれは。気づかずに申し訳ない」 「いえ……このチラシが入っていたもので……」 「ああ、ああ。猫の手をご希望ですか?」 「ええと……まぁ……」 「では、この子をどうぞ」 猫は当たり前のように二足歩行をし、別の猫を連れてきた。 「この子は私のように話せはしないんですが、ネズミや虫を捕まえるのは大得意でしてね」 「はぁ……」 「うちはちょっと特殊でしてね。猫の手をお貸しする間、猫のお世話は人間さんのほうにお願いしてます。相性もあるとは思うんですが、仮に相性が合わなくても期限までは返却はできないんです。あとは……」 猫がいろいろと説明しているものの、猫がしゃべっていることのほうが衝撃で話が入ってこない。 結局、よくわからないまま猫の手を借りる契約を交わし、猫を連れ帰った。 確かに借りてきた猫はネズミや虫をよく捕まえてくれた。 だが、数日経って男は自分が何かとんでもないことに巻き込まれているのではないかと急に恐ろ
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教室で眠っていたら好きな彼の指と私の指に赤い糸が結ばれていたお話:赤い糸の秘密+【朗読動画】

おはようございます。こんにちは。こんばんは。ブログを閲覧いただきありがとうございます。youtubeにて「語り部朗読BAR」というチャンネルを運営しております。自身で小説を書き、声優さんに朗読していただいたものに動画編集をして公開しております。今回は、作者自身の北条むつき朗読でございます。今回から8本に渡ってご紹介の朗読動画は、web作家応援企画と題して、僕、北条むつき以外のwebで小説を書かれている方の作品を連続で8本短編をご紹介した後、長編を1本掲載していきます。今回の朗読は「赤い糸の秘密」教