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"森の中のガゼボ"【ショートストーリー#3】

恋と愛。 恋は、落ちるもの。 愛は、育むもの。 恋は、胸の苦しさと痛み、焦がれるような激情を、甘い蜜のように感じる。 それはさながら甘いハチミツを舐めた時に喉がヒリヒリと焼け付くような。 愛は、安らぎと満ち足りた幸福の中で、恐れも不安も無く、ただ身をゆだねる。 それはさながら温かな毛布に包まれて眠りにつくような。 私は今、恋をしている。 「狂おしい」という言葉以外に、今の私を的確に表現できる言葉は無いというくらい。 どうしようもなく、恋をしている。 嗚呼、何故、恋とはこんなに苦しいものなのか。 愛は、あんなにも温かく心地良いものなのに。 お父様とお母様が決めた許婚は、隣国の王子で、よく私の王宮にも遊びに来ていた。 私よりも少し年上の王子は、とても優しくて、いつも青い湖のような静かな瞳で私を見守ってくれた。 私が欲しいと望んだものは、何でも与えてくれた。 私がしたいと願ったことは、何でも許してくれた。 王子の抱擁は温かく、ホッとするような、陽だまりのぬくもりを感じさせた。 しかし、私は落ちてしまったのだ。 恋に。 森の中で見つけた小さなガゼボ。 王宮の庭園にあるガゼボと比べれば、決して豪華ではないけれど、木漏れ日のスポットライトを浴びた森のガゼボは、私の目にとても幻想的に映った。 お父様の狩りに同行し森の中で牡鹿を追っていた時に、ひとりだけはぐれてしまい、深い森の奥に迷い込んでしまった私が辿り着いたのが森のガゼボだった。 その美しさに心奪われ、疲れを癒すために馬を繋ぎ、ガゼボの中で腰を下ろした。 そこで、貴方と出会ってしまったのは、運命の悪戯か、神様の意地悪か。 馬が人の気配を察
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ホワイトデーの思い出は

※⑽ 過去に掲載したものを、改正して再投稿。【短編集より】バレンタインがやってくると次がホワイトデー。 まあ今年は自分には無縁でしょうが・・・(泣) 12月から3月までは何かとイベントばかりで慌しいですね(^^;) 学生時代の頃の笑い話です。 いつもの様に悪友と飲んでいた時の事。 バレンタインの返しを何にするかという話題で盛り上がり、 それはある冗談から始まりました。 友人『返しどうする?、誕生日も近いから凝った事したいんだけどな...』  自分『木箱に薔薇でも敷詰めて服でも贈ったらどう?(笑)』 冗談で言った一言が・・ 彼には名案と思えたらしく、帰る頃には既にその気になっていた。 数日後、ちょっと手伝って欲しいと友人から連絡が入る 奴の自宅に行くと、 そこにはやたらと積み上げられている木の板とノコギリとペンキ... 何かやな予感... まさかとは思うが... 次の瞬間、予感は現実のものとなった(苦) 適当なサイズの木箱が見つからず、 薔薇を詰めるのに自作するのを手伝えとの事であった。 あまりにも熱心に語る彼の口調に降参して 手伝うハメに... 出来上がった物は上出来とは程遠いものであったが...(笑) 結局、木箱を2つ作ってしまった。 さて、イベント当日 お約束の薔薇の花束と某ブランドの服を箱に入れ、 メッセージカードを忍ばせてリボンでラッピング。 奴の親父
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ホワイトデーのお返しは

※⑽ 過去に掲載したものを、改正して再投稿。【短編集より】それまで男子校だったので バレンタインとは無縁だった もちろんいい訳だけど 卒業間近のバレンタインデー いつものように学校帰りに駅を出ると 一人の女の子が近づいてきた 「あの、これ」 赤いリボンのパッケージ 「なんで僕に」 完全に舞い上がってる ・・なんてバカなこと訊いてるんだ 「3年間毎朝見てました」 朝はいつも同じ学校の連中と 同じ席でバカ話をしていた 不覚にも僕は彼女に見覚えがなかった 「そ、そう、ありがとう」 「いままでずっと言えなかったけど 卒業までに思い切ってって 思って」 もっと早く言ってくれれば良かったのに・・ それから駅のベンチに座り しばらく話をして彼女の駅まで送って行った 彼女の家は僕より2つ手前の駅だった 僕が来るまでずっと待っていたんだ 別れ際 次の休みにデートの約束をした それから毎週会うようになった 僕はもう免許を持っていたので 日曜日、オヤジの車を借りて ドライブに出かけた 3月に入り ホワイトデーに何を贈ればいいか迷っていた頃 卒業してからの進路について話した 東京の大学に行くと・・彼女は言った 「最後にいい思い出ができてよかった、ありがとう」 僕は地元に残る事になっていた 春休みが終わったらどうなるんだろう そんな事を考えているうちに 3月14日がやってきた 日曜日じゃなかったけど 僕は彼女に会いに行った 彼女の家に電話をかけると 彼女の母親が出た
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鼓動…

※⑹ 過去に掲載したものを、改正して再投稿。【短編集より】ショートメールの振動 誰? 携帯をひらいて 思わずドキリとする まさか? 思いがけない相手の名前を見て鼓動が早くなる 「Happy-birthday」 の短い一言 覚えててくれたんだ… 離れてから後悔した 悲しい気持ちの毎日 散々 考えて ひとこと メールを返す 「メルアド変えたの?」 ありがとう じゃ 会話が終わる 寂しかった とは 言いだせない いくつになっても 恋愛は 思うようにはいかない 神様がくれたチャンス? どうする? 再び ショートメールの振動 恐る恐るメールをひらく…  
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戸惑い…

※⑹ 過去に掲載したものを、改正して再投稿。【短編集より】一方的に別れを切り出されて終わった恋 さすがにへこむ アドレスも携帯番号も消去 新しい恋を探そうとしながらも 日々過ぎていく毎日 ある日、テーブルから財布を落とした弾みに 中身がちらばる 散らばった中身を財布に戻そうとした途端 指がとまる 彼の名刺だ… 全部 捨てたと思ってたのに・・ 名刺にある携帯番号に目がいった そういえば…明日が 彼の誕生日… なんてタイムリー 舌打ちをする どうしようか… どうしたいのか 「やめときなって」 心の声を聞く 一晩考えて 彼の誕生日 私はショートメールに一言 息を吸い込んで… 送信ボタンを 戸惑いながらも 押した
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【恋愛ドリップ小説】本日のコーヒー。ショートで。〜百合と恋の花咲く場所で〜

何故、アノ娘は俺に出勤予定を教えたのか?来てくだサインだろうか?俺は馬鹿田大学…。どうしたものか。(本文抜粋)◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆「本日のコーヒー。ショートで。」と告げる前にアノ娘は既にレジを打ち、レジの液晶部には “290” の数字…。「レシートは捨てて貰って良いですか?」そんな、何気ない毎日の出来事ー。◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆mixiから生まれた「恋愛ドリップ小説」が待望の電子書籍としてリリース。数多くの「百合の同志」が書籍化を待ち望んだ「恋愛ドリップ小説」が電子書籍として登場!・本屋には売ってない電子書籍書き下ろし作品。・ストーリー小説なので、サクッと読めます。===========================逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。そして俺はアノ娘と…。タリーズでの甘酸っぱい青春の恋愛ストーリー。堅苦しくない文章でどんどん読み進めることができる。読み終わる頃には、なんだか優しい気持ちになれる電子書籍。こんな恋がしたい方はTULLY'Sへ。===========================★こんな方にピッタリのおススメ書籍です!・スタバよりもタリーズコーヒー派の方・毎日、カフェやタリーズに通われている方・タリーズコーヒーをもっと楽しみたい方・店員さんとの会話術を学びたい方・気になる店員さんに声をかけたい方・ショップの何気ない雰囲気を味わいたい方・新感覚の恋愛小説を読んでみたい方・とにかく読みやすい小説がお好みな方・読み
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【あかまるころころこーろころ】いったいなにになるのかな?

あかまる ころころ こーろころあかまるへんしんしたくってあるひ、ぽーんととびだした(本文抜粋)◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆豊かな発想力と、柔らかな絵の世界観をどうぞお楽しみください。ちいさなお子様の読み聞かせや寝かしつけにもピッタリです。◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆★こんな方にピッタリのおススメ書籍です!・ことばが形や色がお好きな方・スッキリした気持ちになりたい方・人やモノやカタチに優しくなりたい方・とにかく読みやすい絵本がお好みな方・読み終えた後にホッと癒されてみたい方・本が苦手な方でも読み進めやすい絵本です癒され世界観がギュッとつまっています。◆◇◆◇◆◇ キャラクター絵本 ◇◆◇◆◇◆あかまる ころころ こーろころいったいなにになるのかな?(キャラクターブックシリーズ)◆◇◆◇◆ 本文より一部抜粋 ◆◇◆◇◆あか まる ころころあかまるへんしんしたくってあるひ、ぽーんととびだしたあかまる ころころ むこうからぼうとはっぱがやってきたいったい なにに なるのかなまっかな りんごに なりましたあかまる ころころ むこうからみどりのほしがやってきたいったい なにに なるのかなまんまる とまとに なりましたあかまる ころころ むこうからしろいさんかくやってきたいったい なにに なるのかなおにぎりの すっぱい うめになりましたあかまる ころころ むこうからぼうとあかまる やってきたいったい なにに なるのかなかわいい さくらんぼに なりましたあかまる ころころ むこうから
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【モルッとモルコレ!】可愛いモルモットが大変身!〜MARMOT COLLECTION〜

もふもふモルモットたちがカッコ可愛い姿に大変身!(きせかえ全20種)変身きせかえシリーズ第1弾モルッと待望の書籍化。(本文抜粋)◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆華麗に変身するモルモットたちの姿が楽しめること間違い無し!!みんなに愛し愛され癒やし100%の魅力を持つ、モルコレ★キャラ達は今後もどんどん増殖し変身していきます。◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆★こんな方にピッタリのおススメ書籍です!・モルモットの飼い方がわからない方・モルモットの気持ちを汲みとりたい方・モルモットの行動パターンを見極めたい方・とにかく読みやすい絵本がお好みな方・読み終えた後にホッと癒されてみたい方・これからペットにモルモットを飼育してみたい方・現在すでにペットにモルモットを飼われている方癒され世界観がギュッとつまっています。◆◇◆◇◆◇ キャラクター絵本 ◇◆◇◆◇◆モルッとモルコレ!きせかえモルモットに大変身!- MARMOT COLLECTION -(キャラクターブックシリーズ)【 目次 】Collection 01 モルCollection 02 はなモルCollection 03 とのモルCollection 04 ラスタモルCollection 05 インドモルCollection 06 チャイナモルCollection 07 サンタモルCollection 08 女学生モルCollection 09 おやじモルCollection 10 おかんモルCollection 11 シェフモルC
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【パンダくんのココア】冬のさむいさむーいある日のお話。

冬のさむいさむーいある日。みんながパンダくんの家にあそびに来ました(本文抜粋)◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆バクくんとペンギンさんゾウさんとアリクイさんがパンダくんの家にあそびに来ました。ぐびぐびぐびぐびぐびぐびぷはぁ❤︎ココアの魅力と、癒されキャラ達の世界観をどうぞお楽しみください。◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◆◇*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆*:;;:*◇◆★こんな方にピッタリのおススメ書籍です!・コーヒーよりもココア派の方・ココアをもっと楽しみたい方・パンダの飼い方がわからない方・バクの気持ちを汲みとりたい方・ペンギンの行動パターンを見極めたい方・とにかく読みやすい絵本がお好みな方・読み終えた後にホッと癒されてみたい方・これからペットにゾウを飼育してみたい方・現在すでにペットにアリクイを飼われている方動物たちの癒され世界観がギュッとつまっています。◆◇◆◇◆◇ キャラクター絵本 ◇◆◇◆◇◆パンダくんのココア冬のさむいさむーいある日のお話(キャラクターブックシリーズ)◆◇◆◇◆ 本文より一部抜粋 ◆◇◆◇◆冬のさむいさむーいある日みんながパンダくんの家にあそびに来ました「いらっしゃい 寒かったでしょう?」「はい、あったかーいココアだよ」「わーいパンダくん、ありがとう」「ココア大すき❤︎」ととびついたのはバクくんごくごくごくごくごくごくぷはぁ「あまくておいしいよね❤︎」とペンギンさんこっこっこっこっこっこっぷはぁ「あったまりますなぁ」とゾウさんずずずずずずぷはぁ「ボクももらうね」とアリクイさんちろちろちろちろちろち
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【ショートショート】『文書No.1 ~ロボット探偵事務所~』

 紀伊国屋を出て一番先に向かったのはこの路地裏にある探偵事務所だ。ここにいる若い男に話を聞くつもりだ。しかし先程の本屋の店員は愛想がよかった。こっちまで気持ちが……っと危ない。買った本の内容が薄れてしまいそうだ。古書の復刻版をせっかく見つけたんだ、店員の印象がほんの内容を上回ってしまっては駅から歩いてきた苦労が台無しになってしまう。  ビルの階段に恐る恐る足をかける。探偵事務所なんて人生で一度も行ったことないし、特にこの周辺地域は探索を避けていた。縄張り争いなんてないのにどうにも近寄りがたいのはなぜかとちょっとばかし頭を回転速度のダイヤルをいじってみれば、ああそういうことか。不良が多いとかそういうことではなくて地面が波打っている。だから歩きにくい。歩きたくない。近づかない。終了。  特にこの辺はひどい。さっきすれ違ったゴミ収集車なんかボヨンボヨンハネてたんだ。  探偵事務所は思いの外暗かった。ある意味イメージ通りだが、俺の抱いた期待を裏切る展開を期待し裏切られたという複雑な心境がドア前でうたた寝していた猫には解るのだろう。そっと道を譲ってくれた。 「――あんたが籾河か?」  ノックもなしに中へ入り、革製のデスクチェアに深々と沈んでいる男に言った。しかし反応がない。窓際の観葉植物に気を取られる余裕もある。なるほどな。ここは儲かるんだな。すでに謎解きの渦中に引きずり込まれているのを自覚した。  ちらっと見える肩は寂しげななで肩をしているであろう。身じろぎ一つしない。ただ俯いていた顔が上がる。何か言うか? 「いいいいい」  ……目を疑った。彼はロボットだったようだ。さっきは気付かなか
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【ショートショート】『バイオリズム』

 所沢雄二は市内の小学校に通う六年生だ。クラスの友人に対して明るく振舞う性格は、女の子から人気で仲の良いグループの中心だった。  しかしある時から彼の性格は一変した。音楽好きな父の勧めでバイオリンを習い始めたのがきっかけだが、雄二は一つのことに熱中するタイプで周りを見ようとしなくなった自分に気が付いていなかった。「習い事は何よりも大事」と教え込まれていたためか、無意識に友人を避けるようになっていたのだ。  常に心の変化を監視し続けることは不可能だ。出来るとすれば本人以外、例えば両親が常に子供の様子を観察し、もしかしたらと想像することぐらいで、無口になった雄二の心中を誰も分からない。 「僕はこたつなんていらない。一度入ったら出られなくなる」  いつも灯油ストーブのダイヤルを回し、電池切れになって役に立たない点火装置の代わりにチャッカマンで火をつけるのが彼の日課になっていた。一回で点いたら飛び上がるほど嬉しくなる、とはいかない。 「雄二にはストーブ当番、任せようかね」 「どうせたまたまだろ」  母親が褒めるが仏頂面でそう答えた。  彼の家は冬場になってもこたつを置かない。バイオリンに熱中している雄二が「こたつは人をダメにする。僕の足を引っ張るならいらない」と嫌がったのを聞いて、すぐに撤去した。  中学に上がってからも変わらずバイオリンにのめり込んでいた。コンクールに幾たびも出場し、入賞したこともあった。  ある日、近所の橋の上から川面を眺めていた雄二は奇妙な物を発見した。最初は黒いゴミ袋が石に引っ掛かっているだけかと思ったが、よく見てみると人だった。  川岸まで降りてみると、その人
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失敗する度にヘコむのに、なんで同じミスを繰り返すんだろうね?

 僕はよく失敗をするんだけど、その度に反省して次からは気を付けようと思っているのに繰り返してしまうんだ。  2日前の金曜日のことなんだけどね。先輩と二人で利用者に書類の説明をしていたんだけど、先輩が話している途中であいの手のように口を挟んでしまったんだ。 「チョッと、ゴメンね」  僕が話している途中で先輩に言われ、止められてしまったよ。  もちろん、良かれと思ってやったことなんだけど、余計なことだったね。先輩はイイ人なので怒っていないし、気にもしていないと思うんだけどね、体温が上がるのを感じたよ。  またヤッてしまった、出しゃばるつもり何てなかったのに気付かないうちに前に出過ぎていたみたいなんだ。  こういうことがよくあるんだよ。頑張って話していると、それに夢中になって視野が狭くなり、周囲が見えなくなる。  もともと人見知りだから人と目を合わせて長時間、話すことが得意ではなくて、そうすると相手の表情を見ずに喋り続けてしまい、空気を読めていない時があるんだ。全てが終わってから後悔するんだよ。  そうやって失敗する度に、自分の話を極力しないようにしよう、と誓うのだけど、年に何回かこのミスを犯しちゃうんだ。  話している途中から相手がいなくなり、自分のことだけになるんだろうね。終わるまで、それに気付けないんだよ、話していても、書いていても。長くなればなるほど、この失敗をしてしまうんだ。長編の小説がヘタなのはこれが原因なんだろうね。分かっているのに直らないよ。  大きいことは気にしないんだけど、こういった小さな失敗をずっと引きずってしまい、胸の上あたりがむず痒くなり、お腹の底のほうが落
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『自殺するかもです。』そうタイムラインに流れてきた夜に

 実はね、密かにツイッターをやっているんだよ。絵を描いている人を勝手に応援しているだけのアカウントなんだけどね。投稿はほとんどしていなくて、流れてくる絵を見ては、イイね、を押しているだけなんだ。基本的にフォロバするから時より変なアカウントに絡まれたりしているよ。  昨日の夜も絵を眺めながら、イイね、を押していたら、『自殺するかもです。』とタイムラインに流れてきたんだ。  よく『辞めるかもしれません』『アカウント消すかも』みたいなツイートが流れてくるんだけど、それを見ても応援の意味を込めて、イイね、を押すだけなんだけどさ、その日は立ち止まってしまったんだ。大森 靖子を聞いていたからかもしれないね。見て見ぬ振りができなかったんだ。初めてちゃんとリプしたよ。スルーしても、誰も責めないのにね。 『そう呟きたい気持ちは少しわかるけどさ、ツイートの内容が間違っていますよ。ともに生きて欲しい、このほうがステキじゃない?』と返してしまった。イタいヤツだね。そんな気分だったんだよ。  その子が気になっちゃって、過去のツイートをさかのぼって読んだよ。その中にさ、詩があったんだ。 『揺るぎないものひとつ抱きしめたいよ~ 誰もがそれを笑ったとしてもぉ 絶望の真ん中を見つめましょう~ 命の証が欲しいならぁ! 思い切りあなたを抱きしめたいよぉ~』  これ、ネットで調べたんだけどB’zの『ゆるぎないものひとつ』という曲なんだね。  揺るがないものが欲しい、この気持ちはよく分かるよ。  けっこう今の生き方を気に入っていて、貧しいけど生活に困っていないし、快適なんだけどさ、時より不安定な気持ちになるんだ。それは
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小説サンプル・神さまと少年

「ねえ、神さまにあったことある?」  太陽の元、少年は少女に問われた。神を信じているか? ではなく、会ったことがあるか。すなわち、この少女は神という存在を信じているということになる。いるからこそ、会えるかもしれないのだから。  だが、少年は神など信じていなかった。だって、それならば懸命に働く少女はきっと、救われたから。 「ううん、ないよ」  けれども、少女の夢を壊したくなくて、少年はそう応えた。 「そっか」  少女はすこしだけ淋し気にそう言う。その刹那、小さな風が吹いて、少女の長くうねったを撫ぜた。少女を、慰めるように。 「寒いね、ジョン」  少年――ジョンはそう言われると、今度は口をつぐむ。たしかに、少女の格好は自分や、町ゆく人々と比べて薄着だ。だが、ジョンにとって、少女はいるだけで周りを温める少女だ。そう、出会って数日だが努力を報わせようとする彼女に、救われていた。  だから、それを叶えるため、口を開く。 「……ねえ、アリス」 「なぁに?」 「大きくなったら、僕のお嫁さんにならない?」  映画の世界のような、それでも、それがジョンの真摯な言葉だった。  けれども、アリスは首を振る。 「どうして?」 「だって――ううん、なんでもない。ごめんね、ジョン。それに、あなたのおかあさまも、町の人たちもきっと許してくれないわ」  ジョンは目を見開く。こころの何処かで見下していたような存在と、アリスが一緒だと悟ってしまった驚愕で。幼い自分たちを引き裂く身分という存在に、絶望したせいで。 「そんなの! 僕が大人になったら――」 「……ごめんね、バイバイ」  そういってアリスはジョンから逃げ
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余にも奇妙な物語「カキフライ」

体験したことや妄想したことを1分でギュッと。最後に待っている結末とは。13時。ちょっと打ち合わせが長引いた。はやく昼食に行かないと。私は打ち合わせしていた同僚と4人で昼食に出かけた。次の予定が迫っているこtもあり、オフィスの地下にある定食屋へ。昼メニューには「生姜焼き、煮魚、カキフライ」があった。「俺、カキフライ」「俺もそれ」「同じく」「同じく」ということで全員がカキフライにした。さっそく「カキフライ四つ」と注文。すると、奥から店員さんが出てきて、「すみません。カキフライはあと一つだけになっちゃったんですよ」仕方ない。昼の出陣が遅かった。最後のカキフライとは貴重だ。私たち四人はじゃんけんすることになった。勝った者がカキフライ。そこで私は勝ってしまった。皆さん、申し訳ない。食の女神は私に微笑んだというわけだ。ほんと、申し訳ない。一週間後。私は病院にいた。どうやらカキに当たったようだ。確かにフライなのに、カキ汁が冷たかったような…。この当たりは、嬉しくない。
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ツイノベ 416-420

仕事が辛くて上司に相談する。上司はしばらく悩んだあと「みんながんばってるんだから」と諭す。だからお前もがんばれということなんだろう。すると続けて「だからお前1人くらいがんばらなくてもいいだろう」と笑った。数日の療養期間をもらい、夜は焼肉に連れて行ってもらえることになった/№416 理想の上司 真っ白な部屋だった。ふと気が付くと、床に一本のマジックが置いてあった。どうぞお好きなように。そんな風に囁かれたような気分になって、次の瞬間には壁を塗りたくっていた。どうぞお好きなように、どうぞお好きなように。次から次へと描きたい事が溢れて、何も考えずにひたすら描き続けた/№417 ベストピクチャー 友人の創作活動が世間的に評価されて、今日はお祝いにパーティーを開くことにした。途中、手土産を買うために調味料屋へ寄る。恨味、妬味、僻味。どれも馴染みがないものばかりだ。誰かの成功は素直に喜びたい。味見をすると初めて食べたはずなのに、なぜか、最近味わったことのある気がした/№418 シイハ 「もうすぐ飽き冷め前線がやってきます。心の移り変わりに気を付けてください」とニュースが流れる。この気圧に当たられると、心は否応なく感傷的になってしまう。生きる気力も、誰かを想う気持ちも。飽きて、冷めて、やがて失ってしまう。「今日は家の中にいようか」彼女は眠ったままだった/№419 飽き冷め前線 人間の種というものを買ってきた。興味本位で植えてみると、土から目を覗かせる。僕のことを見つけた途端、歯が剥き出しになって鼻が咲く。このまま育てばやがて人間になるのか。気味が悪くなって庭先に捨てる。あれから数日後、
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ツイノベ 411-415

就職のために積もりに積もった恋を処分しようと袋を用意する。まだまだ燃え上がるから可燃ゴミか、はたまた大きく膨れ上がってるから粗大ゴミか。ところが、何日経っても捨てられた恋は引き取ってもらえなかった。あぁ、そっか。私の恋なんて簡単に冷めちゃうし、とても小さな感情だったんだ/№411 不燃ゴミの恋 世界中からウサギ、ブタ、アザラシ、コウテイペンギンの数が減少した。誰かに狩猟されたのか、自然と数が減ったのか。全てが未だに不明だった。ある日、黒ずくめの男がアザラシをさらう瞬間を目撃してしまう。男がアザラシをティッシュ箱に詰める。箱には小さく「鼻セレブ」と書かれてあった/№412 鼻セレブ 化粧品コーナーで「つけまつ目」なるものが売られていた。形は普通のつけまつげとなんら同じで、お試し品をつけようとすると床に落としてしまう。やがて、まつ目を落とした床がパチ、パチと動いたと思ったら、私のことをギョロリと睨む目が生まれた。もし、まつ目をちゃんと使っていたら――/№413 つけまつ目 肉の食べ比べに訪れた客に「左からザブトン、ミスジ、サンカクです」と説明すると「私は食通だぞ! 言われなくてもわかってる!」と激昂した。そこで店員は「あっ」と気付く。本当は左からではなく右からだったのだ。「さすがザブトン、脂が多くてとろけるなぁ」店員は特に訂正もしなかった/№414 肉離れ おかしな光景を見た。若いサラリーマン2人が名刺を持って地面にはいつくばっているのだ。後日、テレビでマナー講座の番組を見かける。相手より低い位置で名刺を出さないといけない。相手より先にもらってはいけない。前に見たサラリーマ
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ツイノベ 406-410

交通事故にあってから僕は、人の死期が見えるようになった。人々の頭の上には年月日と時刻が表示されて、そのときが来ると最期を迎える。事故、寿命、事件。理由はどうであれ、同時間になると必ず亡くなるのだ。ふと、自分の寿命が気になって鏡を覗くと、そこに自分の姿は映っていなかった/№406 死期視 新商品のスポーツドリンクが発売された。試しにマラソン味を購入して飲んでみると、足に疲労が溜まって途端に立てなくなった。ボルダリング味を飲むと腕に激痛が走る。どうやら、そのスポーツを行ったときと同じ効果・効能が働くようだ。説明文には「新感覚。飲むスポーツ!」と書かれていた/№407 飲むスポーツ 昔、兄から教えてもらった遊びがある。お互いが好きそうな本を選んで、その中から相手が好きそうな一文を探して教えて合う。家にいるのが苦手なわたし達が唯一、心を落ち着かせられる場所が図書館だった。あの日、兄が伝えてくれた言葉の意味を、大人になった今でも、わたしは分からずにいた/№408 ワンダーガーデン 「いもやーきいし。おいし」とおじさんの声が聞こえて、注文したら石を渡された。「俺が売ってるのは特別な芋焼き石だよ。これで焼くとすごくうめーんだ」家で芋を焼いてみると、なるほど。確かにおいしいかもしれない。後日、近所の河原でおじさんが石を拾っているのを見かける。騙された/№409 芋焼き石 7日後の予定が待ちきれなくて時間の前借りをする。あっという間にパーティーの日になった。思いっきり楽しんだ次の日、前借りした分を返すと思うと憂鬱になった。1日の就労時間は体感56時間に、カップラーメンが完成するのに体感2
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ツイノベ 401-405

妻が事故にあって記憶を失ってしまった。思い出のバックアップをするために、IDを打ち込んでダウンロードを始めると認証エラーを起こす。何度も、何度も。誰かのIDを奪えば、「誰か」として意識は取り戻す。でも、奪われた「誰か」は。逡巡する。IDをもう一度入力する。入力した。妻が――/№401 Unauthorized 記憶バックアップのIDが盗まれる事件が多発してから、思い出の移植には高額な費用と複雑な手続きがかかることになった。お金を支払うことができない人達は、記憶を、約束を、人格を、願いを引き継げないまま、他の「誰か」になることも叶わず、存在を失っていく。犯人の行方は未だ不明だった/№402 Payment Required 記憶図書館の管理を行う。今、人々の記憶はバックアップすることができて、思い出が欠損したときにはダウンロードして取り戻せる。私の仕事は保存された記憶の中に未解決事件の手がかり、歴史的情報が埋もれていないか調べることだ。『アルマ』と命名された記憶を調べると、閲覧禁止になった/№403 Forbidden ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ /№404 not found 『迷子の言葉を探しています』と貼り紙が貼ってあった。なんでも「作品の感想を伝えたのに『誰からも感想をもらえない』と言われた」とか「創作物が好きだと話したのに『誰
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ツイノベ 396-400

「ヨル。手を出して」とカヒリが囁く。私は少しだけ逡巡したあと、カヒリの右手を繋ぐ。見えないはずの私の両目に、少しずつ視力が戻っていく。幼なじみのカヒリと手を繋いでいる間だけ、なぜか私は光を取り戻すのだ。真っ暗だった視界のパレットに、風景の絵の具が一滴、一滴と落ちていった/№396 ヨルとカヒリ-アルマ③- 『冷却塔アルマに外の世界へ通じる扉がある』と噂が流れ始めた。この街の生態系は狂って、最近では光の残滓を纏った無数の蝶が空を覆い尽くす。夕景に照らされて様々な色へと変化していく。セルリアンブルー。アリザリンレッド。マゼンタ。画用紙に水彩絵の具を垂らしたように広がっていった/№397 水彩の蝶-アルマ④- 炎熱石採掘場に訪れる。炎熱石を左手でそっと握ると、赤くて淡い光を放つ。ほのかな熱量がカヒリの右手と同じ温度に感じた。夜だけになった世界で炎熱石は貴重な資源だ。不足した自然エネルギーをこの小さな石が補っている。それも今、枯渇まで秒読みとなった。アルマの活動限界が迫っていた/№398 炎熱石-アルマ⑤- 禁止区域に存在する廃病院の入口を抜けると、右手側には手術台やレントゲン台があり、正面には重たい鉄格子がはめ込まれていた。死の光を浴びた人が最期に行き着く場所だ。大勢の人が亡くなったであろう地に思いを馳せる。もしも、魂がこの世に存在するのなら、ここは魂で溢れているのだろう/№399 魂の終わり-アルマ⑥- 部屋を常夜灯にする。私達だけの夜が灯った。目を閉じて、意図して暗闇を作る。次に目を開けたとき、もう光を失っているかもしれない。カヒリがいないかもしれない。でも、それでも。意
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ツイノベ 391-395

黒泥棒が現れた。オセロ、碁石、サッカーボール、チェス、パンダ、シマウマ、ダルメシアン、ホルスタイン。世界中から黒という黒を奪っていくのだ。特に困ることはなく今日も会社に赴く。するといつもは横暴な上司がやけに優しかった。変に思っていると、なるほど。ブラック企業だったのか/№391 黒泥棒 罰ゲームでハンバーガー屋でスマイルを頼むことになった。運の悪いことに店員さんはいつも愛想の悪い女性だ。「スマイル、テイクアウトで」女性が僕をジロリと睨んだあと、なんと笑顔を見せてくれた。家に帰ってからも、授業を受けてるときも、ずっと、持ち帰った笑顔が冷めることはなかった/№392 スマイル 記憶のジグソーパズルを拾っては思い出を埋める。完成したと思っても、ひとつだけ空白が残っていた。最後に残ったひとかけらが、たぶん、僕達なのかもしれない。昔のことなんか思い出したくないのに季節は育っていく。長いあいだ見て見ぬふりしてきた、パズルの溝の繭が、羽化しかけていた/№393 溝の繭 『夜が灯る五分前になりました。各自、準備を整えて下さい』アナウンスが鳴り響く。夜患いの時間だ。全ての電気供給を遮断して、人工の太陽と月の消費電力を抑える。やがて世界中が強制的に夜となる。望んでもいない夜を患わせるのだ。窓から夜空を眺めると、偽りの星々が世界を照らしていた/№394 夜が灯る五分前-アルマ①- 世界の標準気温は今や、四十度越えが当たり前となってしまった。原因は未だに判明していない。文献が残っている限りでは少なくとも五十年前からだそうだ。死の光を放つ太陽と月から身を守るために、私達の住む街は巨大な防熱シェル
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ツイノベ 386-390

私は呼吸が下手だ。馬鹿だから、息を吸っているのか吐いているのか分からなくなる。冬は口から白い煙が漏れ出して、今は吐いているんだなと理解できる。昔、迷子になった私を見つけた姉から「あんたの吐く白い息が目印なのよ」と言われたことがある。思い出して、息を吸うように、息を吐いた/№386 息を吸うように、息を吐く 陸上選手になることが夢だった彼女が『止まれ』と書かれた道の上で動けずにいる。交通事故で足が動かなくなってしまったのだ。「よし、行こっか」「ありがとう」車椅子を押しながら私達は次の『止まれ』を目指す。ペンキを携えて、街中の『止まれ』を『進め』に塗り替えていく。進む。進んだ/№387 ススメ 言葉を飼うことにした。育て方が難しく、扱いを間違えると人を傷付けてしまう。逆に気持ちを込めながら育てると人を幸せにしてくれる。同じ言葉でも誰が飼うかによって姿形が変わるのが面白い。思えば、名前を付けるのを忘れていた。感情が溢れてしばらく悩む。そうだ、この言葉の名前は――/№388 言葉の飼い主 台所で息子が倒れていた。床にはメモ書きが置かれている。ダイイングメッセージだ。メモには「ニンジン、たまねぎ、ジャガイモ」と書かれている。そのとき、息子のお腹が鳴り響いた。ハッとして、私は急いでカレーを作る準備を始める。全く、直接言えばいいのに。ダイニングメッセージだった/№389 ダイニングメッセージ 姓名保険に加入した。旦那の元に嫁いでからは名前を呼ばれることがなくなる。「おい」や「お前」と言われる度に、私の名前を失ってしまったようで悲しくなった。「なんとか君のママ」や「誰だっけ?」と名前を
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ツイノベ 381-385

これからブラック企業に退職届を出しに行く。家を出ようとしたら扉の前に彼女がいた。「いらっしゃい。どれにする?」と両手には『勇気』『適当』『脱力』と書かれた紙が握られている。試しに『勇気』を選ぶと「ここで装備していくかい?」「はい」と答えると彼女が僕の背中を押して笑った/№381 道具屋 2歳の娘が「ままー。おそらにねこがいるよー」と話す。なんのことかと空を見上げると曇り空が広がっていた。しばらく眺めているとゴロゴロと雷が鳴る。娘が「ごろごろー、ごろごろー、にゃーん」と猫の声真似をした。なるほど、そういうことか。雨が降り出すと「ねこさんないてるね」と呟いた/№382 そらねこ ネット動物園に訪れると、今日は『かコイ』が元気に泳いでいた。一匹の綺麗なメスを見つけると、オスが周りを泳ぎ続けて他のオスを寄せ付けないようにする。エサを集めたり、メスを攻撃しようものならば徹底的に噛み付く。口をパクパクさせる。今日も『かコイ』は、濁った水の中を泳いでいた/№383 かコイ(ネット動物園②) 陶芸教室が終わったあと、友人の中央がクチナシの壷と書かれた作品を割ってしまった。壺の破片が散らばる。その途端、友人の姿が見えなくなった。先生が「かわいそうに。あの子は口を失ってしまったんだよ。だから、1人になったんだ」といつのまにか後ろに立っていた。「この壺って一体……」/№384 クチナシの壷 サナトリウムに入院している同級生に会う。窓辺には千羽鶴が飾られていた。高校生の頃「自分の住む街だけが世界中」と言っていた彼女は、今、世界の外にいるのだろうか。彼女の手が頬に触れる。「私のことは、好きにならな
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ツイノベ 376-380

プールの授業中、松葉杖の女の子が座っていた。同級生からは「人魚」と笑われる。それでも必ず参加するのは、せめてもの反抗だったのだろう。無口で、ふれたら泡になって消えてしまいそうな白い肌だった。久しぶりに小学校を訪れる。水の抜けたプールの底に、彼女の長い黒髪が見えた気がした/№376 プールの底に 昔、クリアできなかったRPGを起動する。主人公の名前が「ああああ」と適当で苦笑する。ゲームは中盤で止まっていた。せめて、クリアすることができていたら、主人公も報われていたのだろう。世界もお前も救ってやれなくてごめんなと「ああああ」に謝る。データを消して『はじめから』を選んだ/№377 盗作(No.001「ああああ」) 広大な敷地面積を誇るネット動物園を訪れる。お目当は有象無ゾウだ。「人とは違うことをしたい」「新しいことがしたい」そういった名前のない人達が、3分間で作った夢を掲げて鼻を高くする。顔の同じ量産型アイドル。誰にも読まれないと嘆く小説家志望。褒め言葉だけは大きな耳でキャッチした/№378 有象無ゾウ ツイノベを考えるのが面倒になり、思わず書き途中のツイノベを池に捨ててしまった。すると池の中から女神が現れる。「あなたが落としたのは金のツイノベですか? 銀のツイノベですか?」「いえ、銅のツイノベです」「正直者には全部のツイノベを与えましょう」ツイノベのストックが3つ増えた/№379 金のツイノベ 銀のツイノベ 同僚が仕事でやらかした。残業続きで溜まった愚痴を吐き出すと、あろうことか同僚が逆ギレして俺に掴みかかる。罪のつまみを捻ると、体の中からチッ、チッ、チッと音が鳴り響く。「
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ツイノベ 371-375

露天商からアナログ時計を買う。時間を合わせようと針を進めると景色が早送りされていく。試しに針を戻すと景色が戻っていった。観たい番組や雑誌があれば時を進めて、嫌な用事があれば時を戻す。やがて、時間を弄っている内に時計の電池が切れる。時が止まったまま、どこへも行けずにいた/№371 タイムトラブル 自然が好きな彼に振り向いてもらえるように、花占いで考える。好き、嫌い、好き、嫌い。花びらを摘んでいると「相手の嫌がることはやめましょう」と結果が出た。喜んでもらうために花かんむりを作ってプレゼントする。四つ葉のクローバーを探して三つ葉の上を歩く。きっと、大丈夫なはずだ/№372 花占い 夫の浮気を知った。酔っ払って帰ってきた夜、あろうことか左手の薬指に私の知らない指輪がはめられていた。問いただしてみると浮気をあっさり認めた。「これから不自由になると思うけど、もう二度と浮気しないって、指切りしてくれる?」夫は慌てて指を立てる。すぐさま私は夫の指切りをした/№373 ゆびきり 殺神事件が起きる。被害者は右利きの神だ。きっと容疑者は左利きの神だろう。もうすぐ全人類が強制的に左利きとなる。混乱に陥る前に人々の生活様式を変えなければならない。八百万の神は事象を司る。神様の死は、理の消失と同じ意味を持つ。今、この世から『右利き』の概念が消えてしまった/№374 やおよろず殺神事件 『この心は、現在使われておりません。気持ちを御確認の上、もう一度心を御繋ぎ下さい。この心は、現在使われておりません。気持ちを御確認の上、もう一度心を御繋ぎ下さい。 この心は、現在使われておりません。気持ちを御確認の
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ツイノベ 366-370

『あなたの目の前には無限の可能性が広がっている』そう言われる度に不安になってしまう。私の目の前にある無限の可能性は、さながら蜘蛛の巣のように見えて、私はその巣の中心でもがいてる。希望に満ちていると勘違いしてしまえば、可能性の蜘蛛に喰い殺される。私の、たった一本の道は――/№366 蜘蛛の意図 ジリリリ。と、地面で蝉が這い蹲っていた。「あ、タンポポだ」意識してないのか、意図してなのか、花を避けた彼女は代わりに蝉を踏み付けた。ジリリリ。という鳴き声が止まる。「秋が過ぎる速さで光は陰るの」彼女の言葉を思い出す。長い夏が終わりに差し掛かり、もうそこまで秋が迫っていた/№367 光の陰る速度 コンビニへ行ったとき、彼女が珍しく募金箱に寄付する。その日の夜に彼女が自殺した。どこかの、誰かが、寄付したお金で幸せになるのだろうか。彼女のことを知らない誰かが。彼女を残して幸せになっていく。ある日、部屋から遺書が見つかる。達筆な字で書かれた文字の、読点だけが揺れていた/№368 アリア クラスの人気者の影から「存在」をトプン、と掬い出す。黒い塊が手のひらに乗っかる。そっと口に含むと、その人が経験してきた苦痛や幸せの味がした。飲み込む度にその人の影が薄くなる。代わりに私は存在感を増していく。みんなに気付いてもらえるように、今日も泥水のような影を飲み込んだ/№369 影廊 ブラック企業に就職してしまった。食堂のイスに座って同僚のご飯を眺めると、得体の知れない物体が皿の上に乗っかっていた。食堂のメニューは勝手に決められる。同僚が「最近は苦虫や割りばっかり食わされてるよ」と嘆く。上司の失敗やストレ
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ツイノベ 361-365

最近は煙突建築士の発生が問題視されている。どこからともなく人の家に現れては勝手に煙突を建てていく。煙突が建てられた家には、サンタクロースがプレゼントを持ってやってくるけど、たまに泥棒や恥ずかしい思いをした人も入ってきてしまう。煙突建築士は今日も、どこかで煙突を建てている/№361 煙突建築士 透明になる薬を飲む。本当に誰も僕のことが見えなくなって楽しくなる。ある日、集合写真から僕だけが消えていた。それだけじゃない。映像、記憶、僕が関わった全ての事象が失わ⠀ て僕の存⠀ が消えな⠀ ように、急いで文字に⠀ て残す。⠀ 葉が届か⠀ くなる。「⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀⠀ ⠀ 」/№362 私の瞳には秘密があった。涙の代わりに宝石が流れてくるのだ。生み落とされる宝石は瞳を傷つけて、その度に視力が悪くなっていく。親からは宝石欲しさに暴力を振るわれる。人前で泣かないように。気味悪がられないように。悲しみを奪われないように。人魚になって、海の底に沈みたいと願った/№363 深海魚の瞳 庭ではジュゴンが泳いでいた。尾ビレが揺らめき、お腹を数回ほど叩く。私はジュゴンのお腹を枕にして眠ると、体中を安心感が包む。彼に吐き出してしまった苦い感情も、私の救いようもない弱さも、今なら全て許される気がした。やり直すんだ。全てを失ったここから。この、ジュゴンの泳ぐ庭で/№364 ジュゴンの泳ぐ庭 言葉の種を植えた。水の代わりに感情や思い出話を与える。毎日、毎日、言葉にならない気持ちを種に込める。ちょうど一年が経った日、言葉の種が花を咲かせた。それはそれはとても精彩で、鮮明で、繊細で、感傷的な形をしてい
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ツイノベ 356-360

少し前まで、数十万あれば海外で安楽死の権利が入手できたのに、最近は値上がりしているらしい。それだけ人々の『死の価値観』が上がったということだ。安らかな休息さえ、貧乏人には与えられない。「金さえあればなんでも手に入る」という言葉は、あながち間違いではないのかもしれなかった/№356 カフカ 残業も終わって帰宅する。最近は肌荒れが酷いので、アルカリの炭酸電池を湯船に投げ込むと、バチ、バチと音を立てながら炭酸が弾ける。疲れ切った体を電流が刺激した。少し勢いが弱いかなと思って確認してみると、充電用の炭酸電池だった。繰り返し使っているから弱まっているのかもしれない/№357 炭酸電池 牛乳をコップに注いで一分半温める。僅かに張る膜を人差し指で救い上げて口の中に入れる。美味しいわけではないけど昔からの癖だった。ココアパウダーをコップの中に落として軽く混ぜ合わせると、白と薄茶のコントラストがくるくると回転して、やがて一つになる。溶けて、融けて、解け合う/№358 炉心融解 SDカードがなくなって冷や汗が出る。あのカードの中には大事なデータが入っているのに。従事ロボットが僕に迫ってくる。早くカードをロボットに差し込まないと。一歩、一歩、鈍い音を立てながら近付いてくる。ロボットに殺される。カードを。早くSDカードを。ソーシャルディスタンスカードを/№359 SDカード 日課の夜釣りへと赴く。これをやらないと1日が始まらない。今日はいつもより暗闇が深くて手元がおぼつかなかった。空に向かって釣竿を振ると、針が月に刺さって引力に体を持っていかれそうになる。負けじと水平線の彼方に沈めて夜を釣り上
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ツイノベ 351-355

朝、目覚めると体が透明になっていた。血管も筋肉も見えなくて、まるでガラス細工の風鈴にでもなったみたいだ。窓から入り込む風が私の体を揺らすと、リリン、リリンと音が鳴る。『透明になって誰からも忘れ去られたい』と、そう願ってしまったからだろうか。リリン、リリンと鈴がまた鳴った/№351 少女風鈴 海水の雨が降ります。小学校は錆びて朽ち果てます。今日も空ではくじらが泳いでいました。街に迷い込んだくじらは、親の元へと帰れず涙を流しました。そこに傘を差した女の子がやってきて「一緒に探してあげる」と言いました。くじらは女の子を背中に乗せます。1人と1匹の冒険が始まりました/№352 空のくじら 男子三人で廃墟を訪れていた。雨で地面がぬかるんでおり、ズッ、ズッ、ズッと鈍い足音が聞こえてくる。みんな嫌な気配を感じたのか、後ろを振り向くと息を整える者、カメラを構える者、正面を見据える者と三者三様の反応だった。一人が半狂乱になって僕に襲いかかってくる。気づいてしまった/№353 まぎれる 図書室の本から栞が切り取られる事件が起きた。犯人は図書委員の女の子だ。「栞なんかあるから飽きるんだよ。最後まで一気にパーっと読んじゃえばいいの」と笑う。読みかけの文庫本に目を落とす。「いつか、忘れてしまう今日だね」と青い栞のミサンガを、くちびるでほどきながら笑っていた/№354 青い栞 中学校では『そっくりさん』という噂が流行っていた。女の子の顔写真を用意して「そっくりさん、お越しください」と唱えると、見た目が同じ人が現れるらしい。でも、噂はやっぱり嘘だった。女の子に声をかける。「どうしたの?」「ううん。な
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ツイノベ 346-350

今年も夏が侵略してくる。去年は地球温暖化でついに秋が消滅してしまった。このままでは冬までもが夏に支配されるだろう。恋の予感、淡い期待。夏はキラキラとした幻想を見せて人間達を弱体化させてくる。春に溜め込んだ「地に足の着いた目標」を掲げて、季節防衛軍の最後の戦いが始まった/№346 夏戦争 世界中の白と黒が入れ替わってしまった。パンダやシマウマ、ダルメシアンの柄は白と黒が反転して、オセロの駒と囲碁の石、サッカーボールも白と黒が逆転してしまう。世界中の白と黒が入れ替わる。この未曾有の現象に数日は慌てふためいたけど、世界が混乱に陥ることは、まぁ、特になかった/№347 くろとしろ 去年の夏に行った脱出ゲームのフライヤーが出てきた。あの頃はまだ彼と付き合っていて、将来も見えずにだらだらと同棲を続けていた。今でもきっと彼のことが好きだ。この部屋にはまだ彼との思い出がたくさん残っていた。二度と訪れない夏を思い返す。あの日、私達は脱出できていたのだろうか/№348 脱出ゲーム 3歳になる娘が「きょーはしちゅーのひ、きょーはしちゅーのひ」と朝から気分が高かった。そんなにシチューが好きだったかなと思いながら夜ご飯の準備をする。「すたーすてっきがほしいです」とシチューにお願いする娘を不思議に思ってしばらく考えていると、なるほど。今日は『七夕』だったか/№349 シチューの日 おじいさんはクラブへバイブスを上げに、おばあさんがナイトプールでタピオカを飲んでいると、大きな桃がパシャパシャ。中からは男の子が「ぴえん、ぴえん」と飛び出します。お腰につけたチーズハッドグでハムスター、カワウソ、フクロウ
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ツイノベ 341-345

アレルギーなのか鼻がむずむずとする。耳鼻科で診察してもらうと「ぴえん」という症状らしい。本当は心に思ってないのに悲しい気持ちになったり、嬉しくて泣いてしまうそうだ。鼻をこすり過ぎると肥大化して「ぱおん」も発症すると注意されたので、迂闊に鼻をかけなくて心が辛くなる。ぴえん/№341 ぴえん ある日、飼っているオウムが「すきだよ、すきだよ」と教えてもいない言葉を喋り出す。テレビからは恋愛ドラマが流れていた。次の日は「わたしのほうがいいおんなよ」と喋る。全く、変に影響されてしまったもんだ。オウムが暴れる。「いっしょにしのう」え?「きづいて。べっどのしたにいるよ」/№342 誰かの声 その生き物は「ミツデス、ミツデス」と鳴き続ける。視力が良くないのかマスク着用、十分なスペースな確保、手の消毒などの対策をしていても見えていないようだった。「ミツデス、ミツデス」と収束に向かう明かりも見つからないまま、その生き物は最期まで鳴き続けた。「ミツデス、ミツデス」/№343 ミツデス 喫茶店でメニューを眺めていると、氷水なるドリンクが置かれていた。一見するとただのお水なのに、コップを揺らすと氷同士がぶつかったようなカラン、コロンという音がする。まるで氷が入っているかのように、時間が経つと水かさが増していく。口に含むとバリ、ボリと見えない氷の塊が砕けた/№344 氷水 成人式が終わって、タイムカプセルを開けに小学校へと向かう。懐かしい面々が集まる。有名大学への進学、大手企業への就職、家族持ち。誰もが輝かしい日々を送っていた。比べて自分は何をしているのだろう。タイムカプセルが埋まってた跡に空洞が
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ツイノベ 336-340

知らない番号から電話がかかってきた。無視をしているとやがて「他の女に浮気しようとしてるでしょ。あなたが私の体を触ったり、撫でたり、指でこすったりする度に、私の体は熱くなるのよ」とメールが届く。どうして自分の連絡先を知っているのかこわくなり、早く機種変更しようと店に急いだ/№336 携帯電波 「私が死んだらどうする?」と妻が聞いてくる。悲しそうな妻の服を脱がす。「私が死んだらどうする?」背中の扉を開ける。「私が死んだらどうする?」配線の不具合を直した。「ありがとうね」機械になってまで生きたくないという妻の願いを、蔑ろにした僕をどうか、どうか、許さないでほしい/№337 アイオライト 「今日の天気は晴れのち人でしょう」と、病院の待合室に座っているとニュースが流れる。診察室からは「浮力検査の結果ですが、以前よりも体が軽くなっているので重力剤を出しておきます」と聞こえてきた。浮力を制御できない人達は空へ飛ばされていく。やがて、空から大量に人が落ちていった/№338 浮力検査 「タンがすごく安かったの」と母親がにこやかにタンを焼く。僕はこのコリコリとした感触があまり好きではない。聞けば今日はエンマ様に嘘をついて、舌を抜かれる人間が多かったそうだ。母親から味を聞かれて「おいしい」と答えようとすると、なぜか「おーひー」と舌ったらずになってしまった/№339 舌を噛む その夜、国の至る場所で花火が上がる。夜空には光と音が広がるばかりで姿は見えなかった。誰もが色のない花火を探して空を眺める。頼りのない透明な合図だ。下ばかり向いて歩いてきた日々が、意味が。今、多くの人が上を向いて、標として
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ツイノベ 331-335

久しぶりに実家へと戻る。昔、近所の女の子の家では、金曜日になるとカレーライスが出てきたことを思い出す。亡くなった海上自衛隊のお父さんを忘れないようにするためだそうだ。今では更地になってしまった場所を眺める。女の子との思い出と共に、どこからか懐かしいカレーの匂いがしてきた/№331 匂いの記憶 オンライン飲み会を開く。時間になったのでボタンを押すと、不思議な光に包まれて友人達が電脳空間に集まる。食べ物も、飲み物も、味も匂いも感触も、今では仮想現実で体験できる世の中になった。ネットの中で馬鹿騒ぎするのはとても楽しい。でも、いつか、実際にまた会おうとみんなで願った/№332 オンライン飲み会 大切な人が飛び降り自殺してから2年が経つ。腕時計も、未読のLINEも、SNSの更新も、23時14分から先には進まなかった。薄氷の上にある命を割らずに歩く。ゆっくりと冬を思い出に埋める。病葉のように君の顔を忘れていく僕を、どうか、許さないでほしい。夜を泳ぐ。遠雷が鳴った。春が始まる/№333 改稿データ(2020/04/21.siro) 車の窓からペットボトルを捨てる男がいた。マナーがないなと憤っていると、幼い女の子がそれを拾って「おちましたよー」と男に渡す。思わず僕も、通行人も、幼い女の子も、男さえも笑顔になってしまう。みんなが、ちょっとずつ優しくなれたら、みんなが、ちょっとずつ幸せになれるのだろ/№334 ニーナ 列車がトンネルを抜ける。隣の席を見ると男女が向かい合って座っていた。窓を開けていたせいか、男性の顔はすすだらけになっている。なぜか男性は顔を拭こうとはせず、女性が化粧室へと向
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ツイノベ 326-330

「××××? ×××××××××××××?」「××××××××、×××××」「××!」「××××××! ×→×!」「××××。××××【××】×」「ーー×××××!」 「××『××××××』×××?」「××××+×××=××××」「××…」「××××/××/××」「×、×。×、×。×」「×××××&×××」「××%××××」「〒×××-××××」「×××-××××-××××」 「××××ד×××”×××××(××××)××」/№326 言葉狩り 祖父の部屋からわら人形を見つけてしまった。こっそりきき耳を立てると「これであいつを食ってやろう」という祖父のおぞましい声が聞こえてきた。ある日の晩、お皿の上に乗ったわら人形を見て悲鳴をあげる。祖父がニタァとした表情でわら人形の腹を裂くと、中からおいしそうな納豆が出てきた/№327 わら人形 僕が子どものころ、屋上遊園地で着ぐるみから風船をもらったことがある。当時はそんなに多く風船を持っていて飛ばされないかと本気で不安になった。親になった今、久しぶりに屋上遊園地に訪れる。ふと、風船が手から離れた。空の彼方に消えていく赤い風船が、亡くなった子どもの魂と重なった/№328 アローンアゲイン ある日、お笑い番組を観ていると妻の頭上に「笑顔の消費機嫌5秒」と表示された。若手芸人のネタに笑ってる妻が、5秒後に笑い疲れて元に戻った。テレビの音に驚いたのか、赤ちゃんが泣き出すと頭上に「悲しみの消費機嫌1分」と表示される。慌ててあやしていると、1分後に赤ちゃんは泣き止んだ/№329 消費機嫌 入院している同級生のお見舞いに行く。窓際には
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ツイノベ 321-325

大切だった人の墓参りへ赴く。左手で花を供えて、記憶を振り返る。バッティングセンターで汗を流して、喫茶店で焼うどんを食べて、ソフトボールの試合を見て。何年と経っても過去に流せない、嘘偽りのない思い出が透き通っていく。「今度、双子の女の子が生まれるんだ」遠くで花火が光った/№321 difference 廃墟になった遊園地の夢を見た。うさぎの着ぐるみが「いつのまにか、子ども達は遊園地から消えてしまいました」と嘆いている。お化け屋敷も、レストランも、観覧車も、どこにも人の気配はなかった。「明日には着ぐるみの予備もなくなります。仕事を失います。死んでしまいます」と泣いていた/№322 春雷 二歳の娘が私に何かを渡してくる。そこには何もなくて戸惑ったけど、きっと、娘にはちゃんと見えているのだ。それは大人になってしまってから失われたきらきらだとか、わくわくだとか、生きるのに大切なものなのかもしれない。娘がにっこりする。受け取った手で胸をなでて、心の中に閉まった/№323 碧日 動物専門の絵師と出会った。ボトルには黒色のインクがたっぷりと詰まっている。「今日は何を描くんですか?」「なーに、黒色のストックを減らそうと思ってね」と笑うと、筆を使ってしろくまに色を塗っていく。不思議なことにしろくまは実際にパンダになっていき、やがてツキノワグマになった/№324 動物絵師 鼻水やくしゃみが酷い人がいた。その人は「不謹慎アレルギーなんです。今年は特に酷くて」と不思議なことを呟く。聞くと「やれ死を案件にするなとか、やれ芸人が動画配信するなとか。『不謹慎だぞ」という声がすると反応しちゃうんですよ」
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ツイノベ 316-320

大声大会が開催された。死んだ友のことを知ってもらおうと大きな声で叫ぶ。声は届かなかった。どこからか「人の死を利用するな!」と聞こえた。司会者が「名前も顔も性別も年齢もわからない無関係な人が一番声が大きかったです! おめでとうございます! おめでとうございます!」と騒いだ/№316 声の行方 「赤い羽根募金をお願いします」と高校生達が活動していた。若いのに感心だなと、僕の背中から羽をむしって差し出す。空の飛び方を知らない子に、空を自由に飛べなくなった子に、 空に憧れている子のために、空を夢見る子に、今では少なくなってしまった僕の羽を託す。高校生達は優しく笑った/№317 空の飛び方 国語が神の転ぶ。言葉達にめちゃくちゃがなって混乱する。ヒラガナ、かたかな、kanjiが区別の付かなくなって頭痛が痛い。今日わ大変に一日ななるだろう。人間達わ国語に神様の言います「ご願いします。言葉お正だしく戻してください」と。生活が煮詰まる。ニッポン語がむづかしくなりました/№318 言葉の乱れ 政府から「不要不急の夢を見ないように自粛していただきたい」と要請が出る。街からミュージシャンが消える。カメラマンが消える。アイドルが消える。コスプレイヤーが消える。グラフィックデザイナーが消える。小説家が消える。「本当に不要不急だったのかな」と誰かの声が聞こえる。消えた/№319 消えていく 「お前は現世で悪行の限りを尽くした。よって、地獄の釜茹での刑だ!」と、閻魔大王が罪を犯した男を裁きます。邪鬼達に引き摺られてマグマ風呂に放り込まれる男。しかし生粋の江戸っ子であった男は「天にも召される気持ち良さだ
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ツイノベ 311-315

久しぶりに銭湯へ行った。大きい湯船でのんびりしていると、老人が「カポーン、カポーン」と声に出していた。まるでししおどしそのものだ。「なにしてるんですか?」「いやね、これが私の仕事なんですよ」と喉を叩く。不思議な仕事もあるんだなと湯船から出る。銭湯には老人の良い声が響いた/№311 ししおどしの老人 仕事の疲れ。人間関係。暗いニュース。いっそ死んでしまおうかとも思った。そんな毎日に辟易して無人島への移住を決めた。島には人間の言葉を喋るどうぶつ達で溢れている。ワニ、ねずみ、もぐら、いぬ。みんな幸せそうだった。お花見をしながら、みんな、幸せそうだった。新しい生活が始まる/№312 2020/03/20 19:20 全ての人は可視化された糸で繋がっていた。親友なら緑の糸。腐れ縁なら青い糸。必ず誰かしらと繋がって、必ず色に何らかの意味がある。そんな中、私の指が運命の赤い糸で結ばれた。その糸の先を辿るとそこはお墓だった。顔も知らない誰かに祈る。祈った。さよなら、私の大切になれなかった人/№313 赤い糸 「今日は不思議な行事を紹介します」とレポーターが伝えると、画面はとある学校に切り替わる。先生が「雨天決行です」と報告するや否や、生徒達は飛んだり跳ねたり喉を鳴らしたりの大騒ぎ。雨の中みんなで歩いて池までたどり着く。なかよく横一列に並ぶと、かえる達はゲコゲコと合唱を始めた/№314 雨の行事 自殺配信をすることにした。私にはこれしか道が残されていないけど、きっと誰かが止めてくれるという気待ちもあった。コメントが流れる。「不幸を見世物にするな」誰かが。「不謹慎だと思わないのか」誰かが、
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ツイノベ 306-310

海外旅行から帰ったあと、僕はコロを飼いました。でもコロは繁殖力が高いから、みんなもコロを飼いました。みんなコロに夢中で、学校には誰も登校しなくなりました。テレビもネットもコロの話題で持ちきりです。コロの餌がありません。本日は入荷しておりません。街から人が消えていきました/№306 コロ 明け方、歓楽街でバイトを始めた彼女が帰ってきた。絨毯にはウイスキーと煙草の灰、猫の毛が交じり合っている。彼女が眠ったのを見届けたあと僕は始発に乗った。小田急線の窓から朝日が射し込む。未来も、仕事も、お金も、何もなかった。何者かになれると思っていた。始発のはずだったんだ/№307 名前のない街 いっそ飛び込んでしまおうと駅のホームに立つ。ふいに肩を叩かれて振り向くと怪しい男が佇んでいた。男から「楽しくなる薬がありますよ」と飴を手渡される。どうせ死ぬなら。そう思って飴を舐めると、ヘリウムガスを吸ったように声が高くなって、思わずふふっと笑う。今日はもうやめておくか/№308 楽しくなる薬 いかにも柄の悪そうな男がコンビニに入ってくると、無愛想に「メビウス1箱」とだけ答える。私が「あの、番号でお願いします」と返すと「お客様は神様だぞ! さっさとしろ!」と怒鳴られた。先輩に愚痴ると「神様は神様でも疫病神様だったな」と笑う。なるほど、疫病神様かと思って私も笑った/№309 厄病神様 廃夢処理場に訪れた。ガラクタの山になった夢を清掃員のおじさんが片付ける。扱いきれなくなった夢、身の丈に合わない夢。軽い気持ちで見た夢。勝手に生んで、簡単に捨てていく。この世界は夢に破れた人で溢れていた。今、夢の残骸が空
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ツイノベ 301-305

誰もいない体育館に入って椅子をひとつ置く。今日は中学校の卒業式だ。電気が消えて暗い中、壇上を見つめる。本当ならみんなで卒業式をできたんだろう。まさか急にみんなと会えなくなるなんて。ふと、誰かが入ってきて体育館が明るくなる。「死んじゃったあの子、一緒に卒業したかったなぁ」/№301 3月9日 アフロの友人が「これ見て」と頭を下げると、タマゴがちょこんと乗っかっていた。親鳥が巣と間違えて産んでしまったらしい。ひな鳥はすくすくと成長して、代わりに友人がやつれていった。ある日、虚ろな目をした友人がふらふらと屋上に進んでいく。柵を飛び越えるとアフロから鳥が羽ばたいた/№302 頭鳥化操 メールの返信がないまま、9年間が経った。思い出はいつのまにか病葉になってしまう。夜患いの朝を泳いでいた。気づけばきみより歳上になってしまった。狗尾草が揺れる。言葉が失われた。手を合わせて、祈る。命は不平等だ。でも、それでも。春風が吹いて振り返ると、きみの忘れ音が聞こえた/№303 Re:Re: 深刻なマスク不足が続いて、買い占めや高額に転売されたりする。外で咳をしようもんなら犯罪者扱いだ。みんなもマスクが足りないのだろう。ネットでは予防マウントやストック不足を馬鹿にした。嫌い、嫌い、嫌い。醜い本音を隠す為に、笑顔型マスクで顔を覆い被せる。表情はにこやかになった/№304 覆面 「いちにちいちぜん」がおかあさんのくちぐせでした。「あなたのため。みんなのため」とわたしにいいきかせました。だからいちにちいちぜんがあたりまえなんだとおもいました。みんなはへんだとわらいました……。……。……。「続いてのニュ
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ツイノベ 296-300

「ひな人形を見に行ってくる」と娘が家を飛び出した。私も前に見せてもらったが、お隣に越してきた老夫婦の家には立派なひな人形が飾られている。まるで本物の人と勘違いするくらいに。いつのまにか空き地になったお隣を眺める。ひな人形の姿が頭から離れない。あれから娘は行方不明になった/№296 ひな人形 「『月が綺麗ですね』って知ってる?」と、鏡に向かって指で広角を上げている彼女に質問する。「知らない。なにそれ?」「夏目漱石がI love youをそう和訳したんだって」「ふーん」「君ならどう和訳する?」「『作り笑いが下手になってしまった』かなぁ」と言って、彼女は鏡ごしにほほえんだ/№297 月が綺麗ですね 子どものころ、雨の日にだけ見える友達がいた。いつのまにか部屋の中にいて「わたし、雨のひはそとであそばないといけないから」と困りながら笑う。彼女がどこから来て、どこへ消えるのか。大人になった今でもわからない。遠い日の思い出だ。ヘッドフォンで耳をふさぐ。雨の音だけが聞こえた/№298 雨うつつ 「××君が××さんの給食費を盗んだと思う人」と先生が質問する。生徒達のほとんどが次々に手を上げていく。僕は本当の犯人を知ってるけどこわくて言えなかった。××君は「僕が盗みました」と身に覚えのない自白をする。多数決で決まったことは、少数派となった人の「本当」になってしまうのだ/№299 少数欠 僕の作ったアプリの感想を見ると「リリース以降、特に面白いイベントがない」「登場人物が少ない」「課金したのに恩恵がない」「何度も同じバグが発生する」と散々だった。もう、潮時なのだろう。説明文に「『僕の人生』は
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ツイノベ 291-295

美容師さんから「髪の毛にはね、記憶が宿っているの」と聞いた。だから失恋をしたら髪を切るそうだ。辛い記憶を忘れるために。思い出さなくてもいいように。美容師さんの長い髪が私の頬に触れる。少し熱く、多量に柔らかい。美容師さんが長い髪を揺らしながら「嘘だけどね」と、小さく笑った/№291 トーエ カードショップに行くと、動物達がカードゲームで遊んでいて驚いた。人にも似たソレはキーキーワーワーと鳴いて異臭を振り撒く。アニメで覚えたのか何やら台詞のような言葉を喋っている。相手を威嚇するようにシャカシャカと手を動かし、パチパチと警告音を発する。すごい時代になったものだ/№292 カードゲーム動物園 「両親が離婚することは悲しいことじゃなかったのよ。でも、始業式で名前を呼ばれる順番が遅くなったの。名字が変わったからね。なんでだろう。それがすごく悲しかった」と彼女は笑いながら話していた。今にして思えば、僕の名字だけが彼女にあげられる最後のプレゼントだったのかもしれない/№293 せいめいのおわり 声優の仕事は声と語彙力が大事だ。加湿器の電源を入れてのど飴を舐める。役に合う花はどれかなと考えたあと、クチナシが浸されたハーバリウムのボトルを手に取る。専用オイルを飲み干して声の調子を整えると、クチナシの花言葉である「とても幸せです」という感情と語彙力が頭の中に広がった/№294 花譜 「あなた達の思い出をジグソーパズルにします」と露天商に話しかけられる。怪しいと思いつつも買ってみると、後日、まっしろなパズルが届けられた。やっぱり詐欺じゃないかと憤っていると、彼女は完成したジグソーパズルをじっ
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ツイノベ 286-290

今年の福袋が売られていた。「言い値」と書かれたそれを試しに1円で買ってみると、倍の2円になっていた。これは倍になる福袋なのか。僕は何度も通い詰めて、貯金全額を叩いて福袋を買うと、中には何も入っていなかった。「詐欺じゃないか」と怒鳴ると、店員は「お客さん、もう年明けですよ」/№286 福袋 人生格付けチェックが開催された。進学、就職、人間関係と、私達は成長するごとに、AかBの人生を強制的に選ばないといけない。ひとつずつ選択肢を間違えるたびに、一流人生、二流人生と転落していく。そうして私は何度道を間違えたことか。高らかに結果を告げる声がする「生きる価値なし!」/№287 人生格付けチェック 人を殺せるという噂がある黒いノートを手に入れた。奴の苦しむ姿をこの目で見てやろうと、目の前でノートに名前を書き込む。「や、やめるんですの!」「こんなときにふざけてる場合か?」「まだ死にたくないですの!」奴の語尾を不思議に思い、表紙を確認すると『ですのート』と書かれていた/№288 ですのート 今日は高校最後のバレンタインデーだ。彼のために手作りチョコを用意して学校に行く。3年間打ち明けられなかった想いを伝えたくてドキドキした。授業が終わってから彼の元へと向かう。震えながら「ずっとずっと大好きでした」と呟いて、チョコレートを供える。お墓の前で、私は手を合わせた/№289 溶けない 明日で僕は誕生日を迎える。世界では今、二十歳になると強制的に夢をダウンロードされる時代だ。身の丈に合わない夢を見ないように。夢に破れて自殺しないように。機械がいくつかの要素から『正しい夢』を弾き出す。辞めた筈のピ
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ツイノベ 281-285

「まもなく2020年になります。人生のアップデートをしてください」液晶を押すとリストが表示される。嫌いな人、忘れたい思い出などを選ぶと、新年には全く覚えていないのだ。ひとつずつ、鐘が鳴るたびに記憶が消えていく。昨日のことも、明日のことも。きっと、本当は大切だった誰かのことも/№281 群青 街を散歩していると、移動図書館が公園の前に止まっていた。車に絵本や小説を乗せて、図書館のない地域に本を貸出するサービスだ。僕は懐かしくなって『浦島太郎』を手に取った。「これ借ります」と断りを入れた瞬間、景色が歪んで海辺に変わる。目の前には子どもにいじめられている亀がいた/№282 移動図書館 「俺、仕事辞めようかな」「次の就職先は決まってるのか?」「ここにしようかな」と就職先を告げると「お前マジかよ。そこは休みもなくて、やり直しができなくて、死ぬまで働かされるんだぞ」と憤る。なんだ。そんなにブラックなのか『人間』って仕事は。じゃあ俺は、働きアリのままでいいや/№283 ギルド 海外のお店で「インスタンドラーマンかちかち山味」というカップ麺を見つける。変な翻訳だなと気になって購入してみる。フタを開けたら石と味噌がごろごろと入っていた。タヌキの素を先に入れて、熱湯を注いですぐにウサギの素を入れる。3分経ってフタを取ると、湯気の中から物語が始まった/№284 インスタンドラーマン ユーカリの木を植えた次の日、天井を突き破って高くまで伸びていた「空の上にはすごくおいしいユーカリがあるらしいぞ」噂を聞いたコアラ達は、動物園を次々と抜け出して登っていきます。先に行かせるものかと出遅れたコアラ達が
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ツイノベ 276-280

公園の蛇口に笹舟が置かれていた。蛇口から水を出して、窪んだ水皿の中でどこにも行けない笹舟を揺らす。あの日の記憶も彼女との思い出も、どこにも流れることができずに、笹舟と同じように僕も公園で揺らいでいた。橙に染まった観覧車を見上げる。誰かの歌う声がした。夏が終わる/№276 無題(5).docx 彼女が亡くなったことを知らない誰かの中では、まだ、彼女は生きているのだ。知らない誰かの中では、まだ、彼女は乾燥した唇を気遣いながら笑っていて。まだ、彼女は代々木公園で歌っていて。知らない誰かになって、こんなくすんだ赤い糸だらけの六畳一間を抜け出したいと思った/№277 無題(2).jpg 「みんな幸せが無理なことはわかってるけど、そう思うことは駄目なの?」小説も、短歌も、脚本も、思い出になってくれなくて。人の死を題材にした作品はつまらなくて。金にも有名にもなれなくて。『みんな幸せ』の『みんな』の中に、彼女だけがいなかった。言葉が消える。秋になった/№278 未入稿データ(2019/04/20.ixy) シャボン玉売りの少女は今日も街でシャボン玉を売ります。誰にも見向きされない中、シャボン玉の膜には人々の思い出や記憶が映し出されました。 街中の人が喜びに溢れる中、少女は哀しそうにシャボン玉を吹きます「優しさや思い出なんていらないのです。お金さえあればいいのです」/№279 シャボン玉 『元号が変わります。記憶の引き継ぎをして下さい』もうすぐ人生の大型アップデートが始まる。忘れたい人や思い出は消去して、大切なものだけ保存していく。平静ではいられなかった色々を蔑ろにして、また新しく人生
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ツイノベ 271-275

私は高校でいじめられていた。最近は露骨になって、机に花瓶が置かれていたり、同級生に話しかけても無視されることが多い。出席を取るときになっても、私の名前だけ呼ばれなかった。窓を眺めると私の姿が映ってないことに気付く。……あぁ、そっか。私、本当に死んじゃったんだ/№271 プロット 都内の高校で女子生徒が飛び降り自殺を図った。なんとなく、女の子の死を創作にしたいと感じた。それは悪いことなのだろうか。不謹慎なことなのだろうか。だから、この小説を最後に僕は言葉をやめようと思った。ふと、僕の彼女が亡くなった日のことを思い出す。どこにもない夏だった/№272プロット(2018/04/20.pdf) 彼女が亡くなる数日前、僕達は些細な事で喧嘩をした。「歌を歌うことは、私の本当にやりたい事じゃなかった」と。君の事を認めた上で、君の事を嫌いになりたかった。「憧れを捨てた東京には、君のような人が大勢いるんだね」と、彼女の背中に向けて吐いた言葉が、最後の思い出だった/№273 無題(4).doc 昔、彼女が「憂鬱に名前を付けて、それを水風船に書いて割りたいね」と言っていたことを思い出す。彼女は自分自身の名前を水風船に書いて割ってしまったのだろうか。あの日と同じ公園のベンチに座る。翠緑をした炭酸飲料の気泡が弾けて、どこへともなく消える様をただただ見ていた/№274 無題(1).txt 「『幸せじゃなくてもいい』」と言える人はさ、初めから幸せな人だからだよ」と彼女が笑いながら呟いた言葉が印象的だった。「有名になりたい」が口癖だった彼女は、憧れを抱いて東京に移り住んだそうだ。夏にも関わらず長袖を
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ツイノベ 266-270

正論を撒き散らしながら、言葉の暴力で殴ってほしい。君の事を認めた上で、君の事を嫌いになりたい。「幸せじゃなくてもいい」と言える人は、最初から幸せな人だからだよ。憧れを捨てた東京には、君のような人が大勢いるのですね。去年を置き去りにして、また、今年が始まりました/№266 帰郷 新年を迎える度に、何か目標を見つけなくては。何か結果を出さなくてはと意気込む。街の景観が変わることが細やかな調整であるように、新年を迎えることは人生の強制大型アップデートなのだろう。偶然見つけたバグを利用して、なんとか生き抜いた日々を、これからも生き抜くために/№267 橙 目が覚めると、天井の高い長方形の部屋にいた。テトリスのBGMと共に様々な形のブロックが落ちてくる。慌ててよじ登ったり、避けたり、向きを変えたりと、ブロックに挟まれないように、両腕と両足を揃えて縦一直線になる。その途端、ブロックと自分の体が明滅して消えてしまった/№268 テトリス 去年の手帳を見ながら、新しい手帳に親しい人の誕生日を書き込んでいく。その様子が思い出の引き継ぎ作業のようにも思えた。一通り書き終えて、嫌いになってしまった人の誕生日を書いていないことに気付く。そうやって誕生日を失ったあの人は、まだ、どこかで生きているのだろうか/№269 サイハテ 「この言葉ください」私が指差したのは『大好き』だ。今や言葉を買う時代になった。『令和』の言葉が買えなかった人達は世界が終わってしまう。元号が変わろうとするグレーゾーンにて、運命がとおせんぼする「平成の内に死んでしまうので、せめて、この言葉を一人へ伝えたいんです」/№270
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ツイノベ 261-265

コンビニでバイトを始めて数週間が経った。「お客様は神様です」と言うけれどそうは思えない。ある日、先輩が「神様は神様でも、疫病神と思えばいいんだよ」と笑っていた。なるほど。「お客様は(疫病)神です」か。気が楽になり「いらっしゃいませ」と、久しぶりに明るく呟いた/№261 お客様は神様 不思議な自販機を見つけた。そこには「苦労」と書かれており、見本には透明な缶が置かれている。「苦労は買ってでもしろ」と言うので、120円払うと飲み物が落ちてきた。取り出そうとすると中で引っかかる。四苦八苦の末、数分後にやっと取り出せた。え、苦労ってこういうこと?/№262 苦労自販機 人生で嫌なことがあったので、気分転換に心を入れ替える。胸部を開いて滅入った心を取り出し、ストックしてある「前向きで明るい心」と交換した。胸部を閉めて数分、たちまちと元気を取り戻して力が湧いてくる。よぉし、明日もがんばるぞ。………………なんて、できたらいいのになぁ/№263 心入れ替え装置 五時脱字す人が苦手だ。正だしい送り仮名が分からなかったり、間違った言葉の使い方を見ると呆れて失笑してしまう。日本人なのにちゃんとした言葉を使えないことに違和感を感じる。本当に語彙力が少ない人が本当に苦手だ。「やれやれ、面倒だは」僕わ日本語の乱れに頭痛が痛くなった/№264 正だしい日本語 「『人生』をアップデートする為の容量が足りません。不必要な思い出を消去して下さい」好きな小説繋がりで知り合った女の子を選択する。新年に向けたカウントダウンが始まる。あの子の記憶が不鮮明になっていく。いくつかの嫌いを置き去りにして、また、素晴らし
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ツイノベ 256-260

彼女が僕の料理を食べたいと言ってきた。彼女からのお願いなんて滅多にないので、食材の自腹を切り、目を剥き、骨を折り、手を焼き、心血を注ぎ、頭を抱え、身を削ってなんとか料理を作る。偏食な彼女もこれできっと満足してくれるだろう。彼女に食べられるのを、嬉しそうに待った/№256 僕の料理 子どもの頃、一つ飛ばしずつ電車の席に人が座っていることに気付く。「なんで間を空けてるの?」と母に聞くと、「人と人との間には『嫌い』が潜んでいるのよ」と答えた。 今にして思えばあのとき、僕を挟んで座っていた母と父の間にはもう、『嫌い』が潜んでいたのかもしれない/№257 「嫌い」の席 語彙力ガチャとゆーなんかすごいのがあるらしい。出てきた言葉が身につくとかそんなのだそうだ。僕はやばいと思って回したら、なんだか語彙が増えたみたいな気がした。回す。回す。回した。頭の中に流麗な言葉が溢れ出して、千種万様な表現がある事に感嘆する。まさに幸甚の至りだ/№258 語彙力ガチャ 彼女に「」いいところを見せようと散歩√をーして地面を×。そしたら:で眼鏡を÷。彼女が@驚いて目を、にしたけど怪我はなかったから&した。もっと♯に走れたら良かったのに。.疲れた〜帰宅する。今日の晩ご飯は彼女特性の#ドビーフだ。おなかいっπ食べよう。いただき〼/№259 記号言葉 目が覚めるとゲームの世界に入り込んでしまったらしい「困ったな」住民に話しかけても同じ台詞ばかり繰り返す。どうやらNPCのようだ「困ったな」 帰り方も分からず、同じ道を右へ左へ往復する「困ったな」冒険者が教会へ入っていくのが見えた。すると、目の前が真っ暗
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ツイノベ 251-255

私が幼いころ、母に「マニキュアを塗ってほしい」とせがんでいたそうだ。母はいつも「その長い爪には似合わないわよ」と口実に、私の爪を切っていた。大人になった今、三日月を見ると思い出す。普段から化粧をしない母の細い指を。薄化粧をしたあの朝の、静かに眠っていた母の横顔を/№251 薄化粧 痩せる秘訣を知るために友人の家へお邪魔した。「食べ過ぎはよくないよ」と言われたけれど、出されたデザートがあまりに美味しかったので何口も食べてしまう。すると体が軽くなるのを感じた。軽くなる。軽くなる。あれ? 気付けば、骨と皮だけになっていた。「だから注意したのに」/№252 夕闇が丘③ 「反省するまで戻りません」そう言って先生は職員室に帰ってしまった。「別に謝りに行かなくても良くない?」先生はノイローゼで学校を辞めることになった。同窓会で先生が自殺を図ったことを知る。それを聞いた同級生達が笑う『反省するまで戻りません』先生はまだ帰ってこなかった/№253 反省会 「病葉って知ってる?」と、入院していた彼女から聞かれたことがある。秋の落葉期を待たずに、病気によって夏に変色してしまう葉のことだ。彼女は病葉のような人だった。公園のベンチに座る。翠緑をした炭酸飲料の気泡が弾けて、どこへともなく消える様をただただ見ていた。夏だった/№254 病葉 最近は透明飲料ブームだ。新商品の透明飲料を飲みながら高校へ向かう。教室に入ると私をいじめるグループが無視をしてくる。呆れながらも隣の友人に声をかけたけれど返事がない。どころか、出席確認の際に先生まで「今日は休みか?」と言うのだ。どうしてみんな私を無視するのだろう
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