ツイノベ 386-390

記事
小説
私は呼吸が下手だ。馬鹿だから、息を吸っているのか吐いているのか分からなくなる。冬は口から白い煙が漏れ出して、今は吐いているんだなと理解できる。昔、迷子になった私を見つけた姉から「あんたの吐く白い息が目印なのよ」と言われたことがある。思い出して、息を吸うように、息を吐いた/№386 息を吸うように、息を吐く

陸上選手になることが夢だった彼女が『止まれ』と書かれた道の上で動けずにいる。交通事故で足が動かなくなってしまったのだ。「よし、行こっか」「ありがとう」車椅子を押しながら私達は次の『止まれ』を目指す。ペンキを携えて、街中の『止まれ』を『進め』に塗り替えていく。進む。進んだ/№387 ススメ

言葉を飼うことにした。育て方が難しく、扱いを間違えると人を傷付けてしまう。逆に気持ちを込めながら育てると人を幸せにしてくれる。同じ言葉でも誰が飼うかによって姿形が変わるのが面白い。思えば、名前を付けるのを忘れていた。感情が溢れてしばらく悩む。そうだ、この言葉の名前は――/№388 言葉の飼い主

台所で息子が倒れていた。床にはメモ書きが置かれている。ダイイングメッセージだ。メモには「ニンジン、たまねぎ、ジャガイモ」と書かれている。そのとき、息子のお腹が鳴り響いた。ハッとして、私は急いでカレーを作る準備を始める。全く、直接言えばいいのに。ダイニングメッセージだった/№389 ダイニングメッセージ

姓名保険に加入した。旦那の元に嫁いでからは名前を呼ばれることがなくなる。「おい」や「お前」と言われる度に、私の名前を失ってしまったようで悲しくなった。「なんとか君のママ」や「誰だっけ?」と名前を失うと、保険会社から名前を支給される。すると相手が私の名前を呼んでくれるのだ/№390 姓名保険

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