ツイノベ 391-395

記事
小説
黒泥棒が現れた。オセロ、碁石、サッカーボール、チェス、パンダ、シマウマ、ダルメシアン、ホルスタイン。世界中から黒という黒を奪っていくのだ。特に困ることはなく今日も会社に赴く。するといつもは横暴な上司がやけに優しかった。変に思っていると、なるほど。ブラック企業だったのか/№391 黒泥棒

罰ゲームでハンバーガー屋でスマイルを頼むことになった。運の悪いことに店員さんはいつも愛想の悪い女性だ。「スマイル、テイクアウトで」女性が僕をジロリと睨んだあと、なんと笑顔を見せてくれた。家に帰ってからも、授業を受けてるときも、ずっと、持ち帰った笑顔が冷めることはなかった/№392 スマイル

記憶のジグソーパズルを拾っては思い出を埋める。完成したと思っても、ひとつだけ空白が残っていた。最後に残ったひとかけらが、たぶん、僕達なのかもしれない。昔のことなんか思い出したくないのに季節は育っていく。長いあいだ見て見ぬふりしてきた、パズルの溝の繭が、羽化しかけていた/№393 溝の繭

『夜が灯る五分前になりました。各自、準備を整えて下さい』アナウンスが鳴り響く。夜患いの時間だ。全ての電気供給を遮断して、人工の太陽と月の消費電力を抑える。やがて世界中が強制的に夜となる。望んでもいない夜を患わせるのだ。窓から夜空を眺めると、偽りの星々が世界を照らしていた/№394 夜が灯る五分前-アルマ①-

世界の標準気温は今や、四十度越えが当たり前となってしまった。原因は未だに判明していない。文献が残っている限りでは少なくとも五十年前からだそうだ。死の光を放つ太陽と月から身を守るために、私達の住む街は巨大な防熱シェルターで覆われていて、街の中心には冷却塔アルマが佇んでいた/№395 冷却塔アルマ-アルマ②-

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