【超ショートショート】「盗撮の喜び」など

記事
小説

「盗撮の喜び」

電車に乗っていると

背後からシャッター音

(盗撮だ!)

私はすぐに気付いた

振り返ると

そこにはキモいおっさん

すぐに詰め寄り

写真を見せるように言うと

キモおじは渋々

スマホの画面をこちらに向けた

……

嘘だろ

最高の映りじゃないか

下着とかは撮られておらず

まるで街中のスナップ写真に

モデルが映っているようだ

戸惑っていると

キモおじは涙ながらに

「SNSにアップした」と自白した

慌ててそいつのアカウントを見ると

89ものいいね。あ、90、91……

い、いや違う

だから何だと言うのだ

駄目なものは駄目

「撮りたいなら声かけないと」

説教すると

キモおじは嗚咽しながら

「自然な表情が一番綺麗だから」

だって……

それからというもの

同じ時間の同じ電車の同じ車両に

私は乗るようにしている

「下手な歌」
3人の下手な歌が終わり

やっと俺にマイクが回ってきた 

随分待った

永遠のように長かった

他の白けている皆に

ようやく俺の美声を届けられる

しかしその前に

互いを褒めているお前らに

言っておかなくてはいけない

「俺がボーカルだよな?」

俺はライブ中に急に我を出したギター、ベース、ドラムに言った

「パパの失敗」
しまった

洗濯機と間違えた

いやぁ、うっかりうっかり

いつも嫁がやっているので

逆になってしまった

服を洗濯機に

子供を風呂に入れるんだったな

「喧嘩上等」
やつの拳が

俺の頬にクリーンヒット!

野郎

いいパンチ持ってんじゃねぇか

すぐに反撃してやるからな

俺には必殺のアッパーがあるんだ

だけど、ちょっと待っとけよ

お前も俺の頬から

拳を離すんじゃねぇぞ

今俺の頬から

お前の拳に向かって

赤ちゃんカマキリが渡ろうとしてるからな

今離したら、な?

卵から出たばかりなのに、な?

読んでいただきありがとうございました。
あなたの食べたアサリがジャリッとしませんように。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す