(そうだ!おふぃすびるに擬態しよう!)
巨大な人食いカメレオンは思った。
人間はなぜかおふぃすびるに入りたがる。
だからおふぃすびるのフリをすれば餌には困らない、という算段だ。
早速実行に移した巨大な人食いカメレオン。
胴体に窓を、口元に自動ドアの模様を浮かべる。
しかし期待とは裏腹に、人間は入って来ない。
(擬態が甘いのかなぁ……?)
首を捻っていると、周囲のおふぃすびるが目にとまった。
「……あっ!」
思わず声を上げるカメレオン。
よく見ると、辺りのおふぃすびるは、どれも自分と同じように擬態した生き物じゃないか!
しかも観察すると、実に巧妙なやり口だ。
体に取り込んだ人間を、死なない程度に精力を吸ってから吐き出し、精力が戻った途端、また体に取り込んでいる。
こうしてずっと腹を空かせずに済むというわけだ。
(しかし、どうして人間はあいつらのところに通うんだ?)
カメレオンは頬杖ついて目をギョロギョロさせながら考える。
すると、擬態した生き物たちの用意周到さが分かった。
なんとやつらは、じょうげかんけいとかじょうしきとかぎむとかで、人間が自分で来るように仕向けているのだ!
擬態した生き物の口に、いくつもの人間が足元に目線を落としながら入って行く。
カメレオンは無性に腹が立った。
胃の中がムカムカとして仕方がなかった。
そして算段もないのに、近くのおふぃすびるのフリをしているやつを殴りつけた。
(俺はやつらほどは頭が働かない。)
(だけど、踏み越えちゃいけない一線だけは、分かる。)
カメレオンは緑色の体を現しながら見栄を切るように周囲を睨み、叫んだ。
「俺の餌なんだぞ!」
そして街中で暴れ回り、巨大な人食いカメレオンは、おふぃすびるに擬態した生き物たちを丸ごと片づけてしまった。
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あなたが気兼ねなく休日を楽しめますように。