ツイノベ 186-190

記事
小説
大学の夏休みを利用して、僕達は二泊三日の演劇合宿をすることになった。かぐや姫役の女の子に告白する機会を伺う。夜になったら。夜になったら。なんて言い訳している間に朝が明けてしまう。神秘的な雰囲気を纏わせる彼女は、劇が終わると朗らかな表情に戻る。夜が消える。月がどこに隠れた/№186 月の裏側(百景 36番)
幼いころ、彼女の瞳には秘密があった。涙の代わりに真珠が溢れてくるのだ。金儲けのために親から暴力を振るわれて、毎日のように真珠を流していた。あのとき、彼女の頬を拭うふりをして、こっそりと盗んだ真珠が部屋から出てきた。彼女の泣き顔と罪悪感が、ボロボロ、ボロボロと流れていった/№187 深海魚の瞳(百景 37番)
私は亡くなって機械になったと夫から聞きました。何十年と経つ間に、あなたは私のことを忘れてしまうでしょう。それでも構いません。けれど、生前の私ではないと強く感じるのはあなた自身でしょう。私はもう人間ではありません。心変わりをしないと言ったあなたの心が、とても、苦しいのです/№188 きかいのこころ(百景 38番)
幼なじみの男子から冒険ごっこに付き合わされる。高校生にもなってと呆れながら裏山を探索する。そのとき、いっそうと強い風が吹いて茅がさらさらと音を立てた。「  」と思わず声に出てしまう。彼に聞こえていないか慌てて口を押さえる。ざわざわ、ざわざわと、まるで茅のように心が揺れた/№189 揺れる(百景 39番)
いつも楽しそうなあの子が、最近はやけに落ち込んでいる気がする。片思いしてる男の子と、仲が悪くなったのかなと思って聞いてみると「今、とてもしあわせよ。なのに、それが全部悲しいの」と暗い顔をする。嘘はついてないと思う。しあわせなのに、あの子、どうして泣き出しちゃったのかなぁ/№190 秘密の恋(百景 40番)



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す