ツイノベ 236-240

記事
小説
「当たって砕けろ」の精神で挑んだ結果、私は見事に振られてしまった。橋の手すりに体を預けていると、波に映った月が揺れて光の残滓が広がる。その様子がまるで破片に見えた。私と同じように月も誰かに当たって砕けたのだろうか。ふいに涙が落ちては波紋が広がる。瞳に欠けた月が映り込んだ/№236 月の破片(百景86番)

季節の変わり雨が降ってくる。夕陽を溶かしながら落ちる黄金色の雨は、山や花々、風や人や命さえも濡らして、また別の季節に塗り替えていく。山は紅葉が色づいて風には生ぬるい温度が纏う。夏の対する憧れを消費できないまま、季節の変わり雨は季節を、心を、感傷を。強制的に次へと進ませた/№237 季節の変わり雨(百景87番)

雨風を凌げる場所もなく、頼れる人もいない。寒さで震える私をあなたは家に泊めてくれた。ご飯を食べさせてくれて、毛布を与えてくれて、何度も頭を撫でてくれる。一夜が明けてあなたと別れた後、私は遠い街に住処を見つけた。もう二度と会えないあなたに向けて、私は「にー、にー」と鳴いた/№238 ミオ(百景88番)

魔女にお願いして寿命を伸ばしてもらう。代償として私は恋を封印された。誰かを想うたびに、心臓が高鳴るたびに、刻一刻と死へ近付いていく。恋を失ってまで得たいと思った命だけど、あなたのためなら捧げても構わなかった。絶えるなら絶えてもいいと想いを告げる。息が止まる。呪いが消えた/№239 もうひとつの命(百景89番)

鏡を見ると瞳が青色に染まっていた。どうやら感情によって瞳の色が変わるらしい。悲しいときは青色。悔しいときは緑色。嬉しいときは黄色。ある日、彼の浮気を知って泣き腫らしていると、瞳から赤い涙が溢れてきた。悲しいとも、悔しいとも、怒りとも違うこの感情は、一体なんだと言うのか/№240 リペイント(百景90番)

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す