ツイノベ 376-380

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小説
プールの授業中、松葉杖の女の子が座っていた。同級生からは「人魚」と笑われる。それでも必ず参加するのは、せめてもの反抗だったのだろう。無口で、ふれたら泡になって消えてしまいそうな白い肌だった。久しぶりに小学校を訪れる。水の抜けたプールの底に、彼女の長い黒髪が見えた気がした/№376 プールの底に

昔、クリアできなかったRPGを起動する。主人公の名前が「ああああ」と適当で苦笑する。ゲームは中盤で止まっていた。せめて、クリアすることができていたら、主人公も報われていたのだろう。世界もお前も救ってやれなくてごめんなと「ああああ」に謝る。データを消して『はじめから』を選んだ/№377 盗作(No.001「ああああ」)

広大な敷地面積を誇るネット動物園を訪れる。お目当は有象無ゾウだ。「人とは違うことをしたい」「新しいことがしたい」そういった名前のない人達が、3分間で作った夢を掲げて鼻を高くする。顔の同じ量産型アイドル。誰にも読まれないと嘆く小説家志望。褒め言葉だけは大きな耳でキャッチした/№378 有象無ゾウ

ツイノベを考えるのが面倒になり、思わず書き途中のツイノベを池に捨ててしまった。すると池の中から女神が現れる。「あなたが落としたのは金のツイノベですか? 銀のツイノベですか?」「いえ、銅のツイノベです」「正直者には全部のツイノベを与えましょう」ツイノベのストックが3つ増えた/№379 金のツイノベ 銀のツイノベ

同僚が仕事でやらかした。残業続きで溜まった愚痴を吐き出すと、あろうことか同僚が逆ギレして俺に掴みかかる。罪のつまみを捻ると、体の中からチッ、チッ、チッと音が鳴り響く。「やめろ!」やがてボッと熱がこもると、その途端に上司や部下から俺に非難が集まる。しまった、責任点火だ/№380 責任点火

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