Z世代の情報漏えい、本当に「常識がない」だけ?  上の世代が見逃している、彼らがこっそり始めていた孤独の処方箋

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GW後半に入った朝、こんなニュースが続いている。
川崎市の新規採用職員、研修資料をLINEオープンチャットに投稿(4/16) 「ZIP!」の新人スタッフ、出演者名やシフト表をSNSに投稿(4/27) 銀行行員、支店内を撮影してSNSに投稿(5/1) ミスタードーナツ瀬戸店、店舗内部情報がXで拡散(5/1)
世間の反応は、たぶん、こうだ。
「最近の若者は常識がない」 「研修やってるはずなのに、なぜ」 「こんなこと、ふつう、しないだろ」 「Z世代、ヤバすぎ」
——気持ちは、分かる。
川崎市の市長も、こう言ったらしい。
「こんなことまで注意喚起をしなくてはならないのか。驚きを隠せない」
しかも、川崎市の流出した研修資料の中身、何だったか知ってますか。
「情報セキュリティ」と「情報公開と個人情報」の研修科目
——研修資料を、研修について語った資料とともに、流出させた。
(コントの完成度、高すぎ)
これだけ見ると、若者を笑って終わる話だ。 でも、ちょっと、違う角度から見てみたい。
なぜ研修してもダメなのか
ニュース記事の中で、神戸国際大学の中村教授が、ものすごく鋭い指摘をしている。
上司は「それはダメだろ」「ふつうそんなことしないだろ」と従来の常識で判断しがち。 でも、Z世代にとっては、「日常を共有する」「その場で反応する」がコミュニケーションの基本。 投稿は特別な行為ではなく、会話の延長線上にある。
これ、めちゃくちゃ大事なポイント。
つまり、上の世代と若い世代では、「投稿」という行為の意味が、完全に違う。
上の世代:投稿=発信、公開、表明
Z世代:投稿=会話、つぶやき、雑談
会話してる感覚で投稿しているから、研修で「投稿してはいけません」と言われても、彼らの脳内では「会話してはいけません」と言われたのと同じくらい、ピンと来ない。
「会話の中身に気をつけなさい」と言われたら、わかる。 「会話そのものをするな」と言われると、生活が止まる。
これが、研修やっても流出が止まらない理由だ。
(しかも上の世代、自分の脳内変換に気づいていない)
BeRealという、若い世代の発明
ここで、若い世代の代表格、BeRealの話をする。
これ、知らない上の世代、けっこういるはず。
BeRealは、フランス発のSNS。日本のDAU(1日のアクティブユーザー)は320万人で、世界1位。ユーザーの83%がZ世代。
仕組みが、面白い。
1日1回、ランダムな時間に通知が来る
通知から2分以内に撮影して投稿
加工・フィルター不可
インカメラとアウトカメラで同時撮影(自分と背景が同時に写る)
投稿は24時間で消える
いいね機能なし、フォロワー数も表示されない
これ、なんで流行ったか分かりますか。
「SNS疲れ」「映え疲れ」への、Z世代の発明だ。
InstagramやTikTokで、加工して、映えを作って、いいねの数を気にして、フォロワーに認められようとして、疲れた若者たちが、
「もう、ありのままを、友達と共有するだけでいい」
と言って、こっちに移った。
ちなみに、Z世代の90%が、毎日BeRealで投稿している。 49%が、授業中・バイト中にも撮影経験あり。
——上の世代から見たら、「は?」かもしれない。 でも、若い世代から見たら、「ただ、友達に今を伝えてるだけ」だ。
4日前の夜記事を、覚えていますか
ここで、急に話を変える。
4日前の夜、こんな記事を書いた。
中央大学の研究で、日本人の孤独感が40年間で上昇していることが証明された。 内閣府データでは、20〜50代が最も孤独。 解決策は、深い人間関係じゃない。 「共食」——誰かと、同じ時間に、同じ場所で、何かを食べる。 5感に「人の気配」を入れることが、孤独を3倍下げる。
覚えてますか。
——気づいたか。
Z世代がBeRealでやってること、これ、ほぼ「共食」だ。
同じ時間に通知が来る
友達が、いま、何をしているかが見える
自分も、いま、何をしているかを見せる
加工なし、編集なし、ありのまま
深い会話はない
ただ、お互いの「気配」が、見える
これ、40年で上昇した孤独に対する、若い世代の処方箋だ。
理屈じゃなく、感覚で、彼らはやり始めている。
「日常を共有する」の本当の意味
ここで、視点を変える。
中村教授が指摘した「Z世代は日常を共有するのが基本」というフレーズ。
これを、上の世代は、こう翻訳しがちだ。
「自分のことを、ペラペラしゃべる世代」 「プライベートを、垂れ流す世代」 「大人になれてない世代」
——違う。
もっと正確に翻訳すると、こうだ。
「ひとりで抱えなくていい、と最初から知っている世代」
考えてみてほしい。
上の世代は、「弱音を吐くな」「悩みは自分で抱えろ」「人に頼るな」と教えられて育った。 だから、孤独になっても、ひとりで耐えてきた。 そして40年かけて、社会全体の孤独感が、上昇した。
若い世代は、生まれた時からスマホがあって、SNSがあって、「日常を共有する」ことが当たり前だった。 彼らは、ひとりで抱えなくていいことを、最初から知っている。
だから、ふと、写真を撮って、共有する。 深い意味なんて、ない。 「いま、こんな感じ」と、ただ、伝える。
——これ、上の世代がたどり着けなかった、孤独の解除の、ひとつの形だ。
(もちろん、副作用として情報漏えいが起きるが、本筋はそっちじゃない)
副作用としての情報漏えい
ここで、ようやく、最初のニュースに戻る。
情報漏えい問題は、確かに、起きている。 これは、ちゃんと対策しないといけない。
ただし、本質を見間違えると、対策は実効性ゼロになる。
「Z世代は常識がない」 「教育が足りない」 「もっと厳しく研修すべき」
——これ、ぜんぶ、本質を外している。
本質は、こうだ。
「日常を共有する」という、彼らにとって自然な行為の中に、たまたま職場の情報が混ざってしまった。
会話の延長で投稿しているから、「会話で言わない情報」と「投稿で出さない情報」の区別が、頭の中で別管理になっていない。
だから、対策は、「投稿するな」じゃない。 「ここからここまでは、共有していい場所じゃない」を、具体的に、視覚的に、教えることだ。
中村教授も、こう言っている。
求められるのは、実際の事例を踏まえたケーススタディ型の研修。 管理職側の思い込みによる実効性の低い規制を回避すること。
つまり、「ふつうこうでしょ」を、捨てること。 「ふつう」が共通言語じゃない時代に、それでもやっていく方法を作ること。
これは、Z世代の問題ではなく、「ふつう」を更新できない上の世代の問題でもある。
自分の中にも、川崎市長がいる
ここで、いつもの翻訳を入れる。
川崎市長の「こんなことまで注意喚起しなくてはならないのか」という言葉、誰かに似ていませんか。
——自分の中の、祖父母世代だ。
「こんなことで悩むなんて」 「ふつう乗り越えられるだろう」 「自分の若い頃はもっと大変だった」 「常識的に考えれば」
これ、川崎市長の発言と、構造、まったく同じ。 「自分のものさし」で、現実を測って、現実が合わないと、現実の方を責める。
ところが、実際には、現実は、もう、変わってしまっている。
40年で、社会の孤独は上昇した。 若い世代は、孤独の解除を、彼らなりに発明した。 「ふつう」も、「常識」も、もう、固定じゃない。
なのに、自分の中の祖父母世代は、いまだに「ふつうこうでしょ」と、毎朝、言ってくる。
その「ふつう」、本当に、いまも生きていますか。 40年前の常識で、いまの自分を、毎日裁いていませんか。
7本目の記事として
今週ここで書いてきた話を、思い出してほしい。
SNSで自分にだけ届くデマを、毎晩拡散していた話
自分認定医ひとり体制で、毎晩有罪判決を出していた話
頭の中の祖父母世代が、毎朝ミニトマトを出してくる話
40年かけて上昇してきた、社会全体の孤独の話
「自分でやらなくていい」と国が言い始めた話
AIに悩み相談する10代女性が半数を超えた話
——そして、今日。
「日常を共有する世代」が、上の世代の知らないところで、孤独の処方箋を始めていた話。
これ、7本ぜんぶ、つながっている。
「ひとりで抱える時代」を、若い世代が、感覚で、終わらせ始めている。
情報漏えいは、確かに、対策が必要。 でも、彼らがやっていること全体を、「常識がない」「ヤバい」だけで片付けると、見えなくなるものがある。
孤独に対して、何かを始めている——という、その事実だ。
我々が「ふつうこうだろ」と固まっているうちに、若い世代は、感覚で、次の時代を生き始めている。
GW後半、ふと立ち止まったとき、思い出してほしい。
「ふつう」「常識」「あるべき」——その言葉を、自分に向けるとき、それは40年前の祖父母世代の声かもしれない。
そろそろ、その声、いったん聞き流していい。 若い世代は、もう、気にしていない。
(コメントで、「最近、若い世代に教えてもらったこと」、よかったら教えてください。 LINEの使い方、SNSのマナー、流行りのアプリ、新しい言葉、なんでも。 読者みんなで集めると、たぶん、ちょっと優しい「世代越境マップ」ができあがる)
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