僕がカウンセラーになった理由 ~ ⑤彼女に会いにいきます
自死の選択をした彼女の真相を妹さんから教えてもらった僕は、カウンセラーになろうと決意しました。そして、彼女の最後の日から一年後、僕はあの場所へ。「姉の方法を真似れば自分にもできるんだって思ってしまう自分がいるのです」12月31日午後11時59分。彼女がこの世を去ったあのときから一年。
その一時間前、彼女が人生の最後の風景を見たその場所に、こっそりと僕は足を運びました。
(こんな高いところから・・・)夜空にそびえる灰色の建物を見あげると、恐怖が全身を覆いつくそうような感覚に襲われて、彼女の気持ちがわからなくなってゆくのです。
(僕はまだ、あの子の苦しみを理解できていない。
もしかしたらあの子も、あの高さから・・・。 その可能性が1%でもあるのなら・・・)高層マンションに立ち入れば不法侵入になってしまうので、僕は付近の駐車場あたりをうろうろするしかありませんでした。
その年が終わる30分前、僕はあの子に電話をかけました。
でも反応がありません。
僕は不安になりました。もしもあの子がこの近くにいたら・・・
いまあの子が姉のあとを追おうとしていたらと思うと、ついあせってしまい、訳も分からずそのあたりを駆け巡るのですが、いったいどうしたらよいのか。
幸いなことなのかどうか、どこにもそれらしい姿は見えません。
(どうかあの子が無事でありますように・・・)除夜の鐘の音を聞きながら僕はうろうろと駆け巡り、マンションを見上げるたびに心のなかで祈りました。
そうこうしているうちに、来てほしくもない新年が・・・。
どこか遠くから、誰かが楽しく騒ぐ声が聞こえてきます。何事も起こっていない? いやま
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