仕事を辞めようと思う…。
それは突然のことだった。
「え?なんで?」
と聞くと、
『どうやら給料が足りない(長距離の運転手の相場がわからないが以前よりは下がっていた)し、こんなに寝ないで走って帰ることもできないし、なにより社長にイライラしてきた。』
ということらしい…。
確かに最近の電話は愚痴が多くなってきてはいた。
それは感じていたが…。
「自分には運転手しか向いていない」とも言っていた。
たまに従業員同士のいざこざは聞いていたが、聞いていれば特に旦那は「板挟み」状態のことも多かった。
私は反対も賛成もできず「次はどこの会社とかもう決めているの?」
と聞いてみた。
どの業界もそうかもしれないが、「情報網」みたいなものは回っているらしく今までも色んなトラック会社の名前を聞いていた。
すると旦那は「いや、毎日家に帰れる仕事がしたい」という。
私はビックリしたが、嬉しかった。
それが現実になるかどうかは別として…。
旦那はそれから相当悩んだと思う。
今仕事を辞めたら…家を買うということも遠くなる。
けれど、それは言えなかった。
私の仕事は順調だったが、旦那の借金を返済したため「貯金」はほぼない状態だった。
もう半年くらいで娘が小学校に入学する時期に、タイミングが悪い…。
もう旦那の両親に期待はできないし、そもそも期待してはいなかったから
世間的にいう
「ランドセルはおじいちゃん、おばあちゃんから買ってもらう」
ということはできなかった。
子連れの再婚がこんなにも辛いものだなんて…。
私の親とは絶対つながりを持ちたくないから何も言えないけど。
子供たちに「おじいちゃん、おばあちゃん」という存在を持たせてあげたかったのは自分のエゴかもしれない。
もちろん、保育園の行事などに来てくれたことは一度もない。
さて…。どうするか…。
近いうちに仕事は辞めるだろう。
うまく次を探せればいいが…。
それから数日経ってから…。
いきなり旦那が帰ってきた。予告なく。
「俺、仕事辞めてきた!しばらくは失業手当もらう!退職金はないって言われて腹が立った!」
と…。
失業保険もらうってことは次の仕事が決まっていないのか…。
まぁ…。今まで寝ずに仕事してきたから少しは休んでもらうかな。
と私も軽い気持ちでいた。
子供たちとも長時間過ごしたこともないし。
とポジティブに考えることにしたから、あまり旦那を責めることはしなかった。
「お疲れさま」といい、少しの「ご苦労さん会」を家でやることにした。
旦那は「お酒」は一切飲まない人だったから、みんなでジュースを飲んだり、旦那のすきな料理を作ったりした。
もちろん子供たちには「お父さんが仕事を辞めた」と言っても多分よくわからないと思ったから「お父さん少しお仕事お休みするって」と伝えると子供たちは「やった~!たくさん遊べる!」と喜んでいた。
旦那は「家事」が全くできない人だった。
本当に全く…。
洗濯機すら回せなかった。
翌朝から旦那が家にいる生活が始まった。
けれど旦那は起きてくる気配がない。
私が出勤する8時を過ぎても。
疲れも溜まっているだろう、そう思っていた。
私は、旦那には「頼れない」と思い、今までのようにいつも通りに過ごした。
一週間…、そのまた一週間…。
旦那は何時に起きてなにをしているのかさっぱりわからなかった。
私の仕事を終えて保育園に迎えにって帰ってくるとテレビを見て
ただ座っているだけだった。
もちろん、朝ごはんの用意やお昼ご飯の準備もして私は会社に行っていた。
その洗い物もそのままテーブルの上にあったりした。
さすがに「食べたあとはキッチンに下げて」と言った。
旦那はめんどくさそうに「うんうん」と返事をした。
仕事のことは一切話をしない旦那にしびれをきらして
「なんかいい仕事あった?」
と聞いてみたが
「う~ん…やっぱり今長距離って給料安いんだな~、昼間の仕事なんか長距離の半分だな、これじゃ昼間の仕事は無理だな~よくみんな生活してるな」
と…。
そうなんです。
秋田県というのは本当に最低賃金も最低なんです。
30歳で会社員で役職でもなければ、15万もらえるかどうかくらいの賃金なんです。
そうして、その数日後、いつものように家に帰ると旦那はとてもテンションが高かった。
「見つけた!仕事!土日休みで月30万以上だって!職種は営業なんだけど、営業はお前でもできるから俺でもできるな!」
と…。
ハッキリ言ってムッとした。
私だって別に「楽して」稼いでいるわけではない。
そして、給料も旦那よりあったからもちろん金額を教えていない。
男性としてのプライドを傷つけたくなかったし、それに甘えられても困るし…。私の給料は「食費」と「子供たちのもの」を買うことだけに使っていた。
あとは「貯金」。
給料が多いからって贅沢な生活をしていたわけではない。
引っ越してからはRさんとの付き合いもなくなったからとても節約できていた。
それにしても私の仕事が「ラクして稼いでいる」と言われるとは思ってもいなかった。
確かに眠る時間もあるし土日休みだし、自由に時間は使える仕事だが、時間を自由に使えるようにするには仕事をしなければならないのだ。
そのうえに家事と育児がある。
そんな私の気持ちや仕事に対する気持ちなどはお構いなしに
「明日面接の予定組んでもらう!」
と張り切っていた。
普段、家にいることがあまりなかったせいもあるが、人間は生活してみないとわからないこと、見えないことも多い。