僕がカウンセラーになった理由 ~ ②彼女から最後の手紙を受け取った僕
若い女性から遺言書作成の相談をされた僕は、彼女の自死を防ぎたくて時間稼ぎのつもりで、また会う約束をしたのですが・・・(遺言の内容を考えて整理するには一週間。半月。もっとかかるかな・・・)とあの人からの連絡を待っているうちに、僕はだんだん不安になってきました。(IT系の会社と言ってたけど、年末だから忙しいのかも・・・)僕も仕事が少し忙しくなってきて、徐々に彼女の記憶が遠ざかっていくうちに、(人はそんなに簡単に死ぬもんじゃない。今ごろ遺言のことなんか忘れて元気に過ごしているのではないか・・・)そう思うと、笑顔で颯爽と仕事をしている彼女の様子が僕の脳内で生成されてゆくのです。でも、仕事の合間に遺言のことを思い出して気持ちがモヤモヤすると、電話番号を聞いておけばよかったのに、と後悔します。クリスマスが過ぎたころになって彼女のことがまた気になり、事務所の電話機の通話履歴をチェックしました。彼女の電話番号が残っているかもしれない。でも、それはもう無駄でした。残っていなかった。もし記録が残っていたとしても、僕は彼女に電話をかける勇気があるだろうか。「電話しちゃってすみません。その後のことが心配になってしまいましてね・・・あはは・・・」取り越し苦労か、無残な下心か。電話した後の無様な自分の後ろ姿が想像されると、(いやいや考えすぎだよ・・・)と言い聞かせる自分。そして、過去の失敗を思い出して、(本当に大丈夫か?後悔しないか?お前は恥ずかしさを人の命より優先するのか?)と問いかける別の自分。そうこうしているうちに大晦日がきました。(もしかすると事務所に彼女からの電話が・・・ 事務所に行って着信履歴
0