地獄への道…1

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アパートに引っ越してから3か月くらいだろうか、仕事も順調だった。

次々と業績も上がり、自分でいうのもなんだか、私が入社したときは営業員が私を含め4人しかいなかった営業部も25人にもなっていた。
ほぼ私の「部下」と言われる人たちである。
全国入賞も何度もした。
実際、成績を挙げているという感覚がなかったので、特別偉ぶったりることはなかったように思う。

よく「保険屋」というと名義貸しであったり、架空契約などがまだあった時代ではあった。

けれど私の場合は契約をするのはお客さんの「職場」か自分の会社に来てもらう、というスタイルが9割を占めていた。
会社に来てもらうことで上司とも面談できる。
全ては「不正な契約ではない」という証明にもなるのだ。

「押し付けない営業」が功を奏したのか営業員も増えていった、というのが今となっては成績に繋がったのだと思う。

そして、そうしている間に一度だけ、旦那がアパートにきた。
それは何でもない日だったが、アパートまでの場所を教え、子供たちに「お父さんがくるって」というと、喜ぶのかな、と思ったが予想とは反して
「ふ~ん…」だった。

あれ?私旦那の悪口とか言ったかな…
態度に出たかな…
なんだろう…

と少し心配になったが、来ることが決まっていたので来た時の態度やその後の気持ちを子供たちに聞いてみようと思った。

旦那はアパートの玄関…といってもすぐキッチンなので丸見えなのだが

「こんなところに住んでるのか…狭くないか?」と言ってきたが
「大きければいいということではないから十分です」といった。

そして、子供たちが部屋から出てきた。
リビングとは呼べないようなところで少し会話をしたりしていたが、どこかぎこちない…。

離婚してからまだ特別長い期間ではないハズである。

むしろ結婚していた時の方が顔を合わせることはなかった。

夕方に来たが、晩御飯を一緒に食べることなく帰っていった。

…それっきり旦那と子供は会うことはなかった…。

後で上の娘に聞いてみた。

「お父さんと久しぶりにあってよかったね!」と聞いてみた。

そしたら意外な返事が…


「もうお父さんの顔も見たくない」

そういった。

私は「なんで?」と突っ込んで聞けなかった。

子供は敏感である。私は常にそう思って接してきた。

それでも何か感じたのだろう…。

もちろん旦那の方の何か…も…。

私は「そっか…無理して会わなくていいよ」とだけ言った。

そうしてまた日常に戻った、その3か月後のことである。

朝会社に行くと上司が、険しい表情で私を見ていた。

「ん?私がなにかしたかな…」

思い当たる節はない…。

私が自分のデスクに着くまでに上司が私の目の前に来て

「今日で辞めてくれ」

と…。

!!!

どういうことだ??なにがあった??

私は一瞬で察知した

「あ、またやられたな」

と。

その理解するまではそんなに時間は掛からなかったと思う。

私は上司に「わかりました」と言った。

部下がドンドン昇格して私も昇格していく中で、よく思わない人はいる。

それは…先輩たちだ。

私は先輩たちは少ない人数でも「尊敬」していた。
相談ものってもらったりした。

自分でできることはアドバイスの通りにしてきた。
それで「今」がある、そう思っていた。

私は上司に詰め寄ることもしなかった。

上司も先輩たちに踊らされていることも知っていたから。

上司は1年ごとに変わる大変な営業部であったため、大変さは感じていた。

要は「古株」の営業員のラジコンでいなければならなかったのだ…。

私はこの会社に「骨をうずめる覚悟」でいた…
それが6年という短さで終わった…。

私は毅然としていたが、ショックは自分で思ったより大きかった。

有給消化をするために準備に入りたかったが、先輩たちに「辞める」ということを察知されたくなかった。

書類の全ては他の人たちがいない時に行った。

事務員さんは唯一の味方だったのかもしれない、
「あなた辞めたら誰とラーメン食べたらいいの?」と少し涙を浮かべてくれた。
私は「あんなに嫌がってたじゃない(笑)」と返すのが精一杯だった。

私は34歳になっていた。


全ての処理が終わり、もう会社に来ることはない。

私は家に帰った…。

なにをすればいいんだろう…。
この先、どうすればいいんだろう…。

毎月旦那から15万円振り込むのもいつ途切れるかもわからない。
まず…失業もらうかな…。

などと漠然と考えていた。

有休消化までは2週間くらいあったが、もう繋がりを持つことすら嫌になってしまった。

ただ、真相は知りたい。

そこで「直属の上司」に相談してみた。
直属の上司は数年前に他の営業部に栄転したため私のことは知らなかったようだった。

直属の上司はすぐ動いてくれたようだった。

数日後、その上司から電話がきた。

待ち合わせ場所まで行くと、自分の車に乗るように言われた。
女性の上司だが、未だにいい関係が続いている。

車に乗ると上司は、何か言いづらそうにしていた。
それでも私は「知りたい」と…
どんなことでも…。

上司は、少しづつ話してくれた。

私が尊敬していた先輩Hさんが「あなたの契約者の家に行ってあなたが『詐欺師だから契約を解約する様に』と言って回っていた」
と…。

それが1人、2人ではなかった…。

私は唖然とした。ほとんど「営業部」で契約頂いた方たち…。

保険会社の「早期解約」は本当に厳しい目で見られる。
それは、上司が本社にいくら言っても結果が「早期解約」のため、どうにもならなかっただろう…。

それを聞いたとき、私は「そうだったんだ」と平然を装っていた。
上司も「申し訳ない…私が栄転しなければ…」と言っていたため、例え本当にそう思っていなくても、「アハハ!そうだよ!上司のせいだよ(笑)」と言って笑うことしかできなかった…。

少し雑談をして私は家に帰った、

車を停めて、家に入った途端…

足から崩れ落ちた…

涙が止まらなかった

心の壁が全て崩壊した感覚になった

「私にはなにももう…もうなにもない…」

私はなにを頑張ってきたんだ…

これからどうしたらいい…

私にそれほどまでに「価値」がないのか…。

悔しさと情けなさと
悲しいのと苦しいのと

涙が止まらなかった…。


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