70 親を選べない子ども 虐待されても「親を選ぶ権利」は認められないのか

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親を選べない子ども 虐待されても「親を選ぶ権利」は認められないのか



 子どもへの身体的虐待やネグレクト(育児放棄)により、痛ましい結果になった事件がたびたび報じられますが、こうしたとき、親が意識や行動を変えるか、周囲が救いの手を差し伸べない限り、子どもが自分の意思で身体的虐待やネグレクトから逃れることは困難です。
一般的に「子どもは親を選べない」と言われますが、実際はどうなのでしょうか。
子どもの権利・法律問題に詳しい、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。



実親との親子関係解消は困難
Q.現行の法律では、子どもが親を選ぶ権利は認められているのでしょうか。
佐藤さん「子どもに『親を選ぶ権利』を直接認めた法律はありません。
しかし、児童虐待から子どもを守るため、
民法では『親権喪失』(民法834条)、
『親権停止』(同834条の2)、
『管理権喪失』(同835条)といった親権を制限する制度が定められています。



親権とは、親が子どもを育てる権利と義務のことで、具体的には、親が子どもの身の回りの世話、教育やしつけをしたり、子どもの財産を管理したりすることが含まれます。
『子の利益のために』行うことが法律に明記されており(同820条)、虐待は親権の乱用にあたります」



Q.なぜ、子どもが親を選ぶ権利は認められていないのでしょうか。
佐藤さん「全ての人に実の親がおり、さまざまな事情があるにせよ、子どもにとって実の親は大切な存在です。
『自分がどのように生まれたのか』は、子どものアイデンティティーにも大きな影響を及ぼします。
そのため、法律上も、血のつながった実の親子関係を基本としていろいろな制度が作られており、特別養子縁組(子どもの福祉のため、養親と養子が実の親子と同じ関係を結ぶ制度)を除き、実親との法的な親子関係を解消させることはできません。



生物として親は選べるものではなく、法律上も、子どもに『権利』として認めるにはなじまない性質のものと思います。
子どもが虐待されたと感じたとき、自由に『親を選ぶ権利』を行使できるとすれば、親子関係も社会も混乱することは明らかでしょう。
子どもを虐待から守る法制度は別にあり、それについては後で述べます」



Q.身体的虐待やネグレクトでつらい思いをしている子どもに対し、親を選ぶ権利を与える必要性はあると思われますか。
佐藤さん「子どもに『親を選ぶ権利』を与えるという発想は、子どものアイデンティティー形成の上でも、親子関係、ひいては社会の安定を保つ面でも望ましくないものと思います。
身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトといった虐待に苦しむ子どもを救うためには、児童相談所が十分に機能する体制を整えたり、親権を制限する制度を活用したりすることが大切でしょう」



Q.ネグレクトなどの虐待をなくすために、現在制定されている法律は十分なのでしょうか。不十分な場合、どのような法律が必要だと思われますか。
佐藤さん「虐待から子どもを守る法制度としては、先述した親権の制限の他、児童福祉法や児童虐待防止法の制度があります。
例えば、虐待が疑われる場合、児童相談所長は職権で『一時保護』をすることができます(児童福祉法33条)。
長期間、親子の分離をする必要がある場合は、実親の同意を得て施設へ入所させたり、里親に委託したりすることになります(同27条1項3号、4項)。



親の同意が得られない場合は、児童相談所長(都道府県知事から権限を委任されている)が申し立て、家庭裁判所の承認を得て、施設入所や里親委託の措置をします(児童福祉法28条1項)。
この措置の期間は2年を超えることができませんが(同28条2項)、家庭裁判所の承認を得て、期間を更新することができます。
虐待から子どもを守るためには、既存の法制度を十分活用するとともに、児童相談所の機能をさらに強化していくことが必要だと思います」
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