新しい人生の幕開け…7

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家に着いた。
彼は、そそくさとなにか準備し始めた。
「これからどこかに行くの?」
と聞くと「仕事」と答えた。

え?婚姻届け一緒に出しに行ってくれるんじゃないの?
という言葉と気持ちを飲み込んだ。

「明日出発かと思ったよ…気をつけてね」
「うん」
とだけいい、彼はさっと仕事に行ってしまった。

私だって…一応○○の日記念日だから~とか言ってみたかった。
他のカップルと同じように…。

それにいつ出してとか、○○日出してとか全く婚姻届けを出す日すら何も言われていないし相談もなかった。

これをどうしたらいいんだろう。

彼に電話して聞いてみることにした。
「一緒に出しに行こう」…その言葉を期待して。

彼はすぐに電話に出た。
まだ近くにいる時間だ。

「あのさ、婚姻届け…どうすればいい?」
そう聞くのが精一杯だった。
「あ、出してくればよかったなー…。まだ日にち書いてないもんな。俺もまたいつ帰れるかわからないしな…。」
「………」
無言になってしまった。

私が勝手に出すようなものではない。
いくら証人が揃っても…。

彼の気持ちがわからなくなった。
なんのために同僚までお願いして証人を書いてもらったのか。

無言でいる私に彼は言った「お前、都合のいい時出しておいて!で、出したら教えて」と…。

一番聞きたくない言葉だった。

「私が結婚記念日になる日を一人で決めるの?」
とちょっと突っ込んで聞いた。
「しかたないだろ、俺は仕事休めないし積み下ろしの時間も決まってる。俺が帰ってくる日に役所が開いてるとも限らないし、帰ってからは休みたいし…長距離運転手の嫁はそういうもんだ」
と返ってきた。

私の知っている限りでは長距離の旦那を持つ人はいなかったからわからなかった。

知っているのは私の母親の旦那さんくらいだが、確かに「曜日も時間」も関係なかったが母親がなんでも勝手に決めていたし身勝手なことしか見ていない。
しかもあの母親と一緒にいる時点で参考にも何にもならない。
母親の旦那さんがある日ボソッといった「ごめんな…俺には母さんからお前をかばえない」

時折、フラッシュバックしてくる映像と言葉…。

彼は電話でなにか話していたが全く耳に入ってこなかった。
我に返ったときは、全く別の話をしていた。

婚姻届けの話は?
結局自分でだすってことか…。

なんでもないような会話で電話は終わり、私は全て埋め尽くされた「婚姻届け」を眺めていた。

一人で用紙をもらいに行き一人で出しに行く…。

寂しかった。

私は一度、その婚姻届けをバックの中にしまった…。

そして子供たちを迎えに行った。
不思議と子供たちといると辛さがなくなる。

私は母親と同じことは絶対にしたくない、しないと子供を産むときに決めたからどんなに辛くても顔に出すことはなかった。

子供たちは帰る途中や帰ってから、ずっと保育園であったことや友達の話を楽しそうに話す。

彼が帰ってきたことは言わないでおくことにした。多分会いたいだろうと思ったからだ。

家に彼のものはほとんどなかった。

一緒に住む時に持ってきて、と言ったのだが「俺はそもそも家にあまりいないし、実家にも自分のものはあまりないから…」と少しの着替えくらいしかなかった。
それでも私は衣装ケースを用意していた。
実家にあるタンスは重くて昔ながらのタンスだから持ってこれないし置くスペースがないと。
もちろん私たちのタンスも衣装ケースにしていたから、それは気にしなかった。

そうして私も仕事したり日々の子供たちの育児をしていたりしていたら「婚姻届け」のことは忘れかけていた。
忘れた…というより考えたくなかった。

次、彼が帰ってくるのを待って話し合おう、そう考えていた。

そうして一週間くらい経ったかと思う。

その間いつものように彼からは電話はくるものの「婚姻届け」の話はでない。
いつものように私と少し話をしたあと、子供たちと話して終わる。

一週間…そしてまた数日経った、ある日彼はいつも突然に「今日帰る」と電話が来た。

そしてやっと帰ってきたその夜。子供たちとも久々に顔を合わせて一緒にご飯を食べて子供たちが寝た後、私から切り出した。

「婚姻届けのことなんだけど…」
というと「あれ?まだ出してなかったの?」とケロッとしている。

その言葉にイラっとしたけど、彼に言った
「せっかくの婚姻届けだから、覚えやすい日とか、なにか入籍の日付…
一緒に決めたいんだけど。」
そういうと彼は
「ん~…かといって、近々何かの日もないしな…」と考え込んでしまった。
「それに私用紙一人でもらいに行ったから、出すときくらいは一緒に行きたい」とも伝えた。
そうすると彼は「明日は朝早いしな…。お前も寝ている間に出なきゃいけないし…」と言われていしまった。

そういわれると私は何も返せなかった…。
彼は「明日!出してきてよ!もうキリがないし、俺に合わせてるといつになるかわかんないし」と言って彼は寝てしまった。

しかたないのかな…。

溜息と一緒に「諦め」も吐き出した。



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