新しい人生の幕開け…8

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私は、みんなが夢を見るようなことを期待したり、望んではいけないのかな。

欲張りかな…。

私はあれから26歳になっていた。

翌朝になったら彼は仕事にすでに出かけていて彼の姿はなかった。

私は子供たちの朝食や保育園の準備、仕事に出るまでの準備をした。

ふと見ると「婚姻届け」が置いてある。
どうしようか迷ったが、一応持ち歩くことにした。

仕事がひと段落したとき、彼に電話をしてみた。
私が仕事中に電話をすることはまず無かった。

けれど家に帰ると子供たちがいるし、深刻な話は子供たちの前では控えていた。
それでなくても子供たちはまだ施設から帰ってきたばかりで敏感になっていると思ったから。

彼はすぐ電話に出た。
「どうした?」
といつもように、軽く言ってきた。
「仕事中、ごめんね、婚姻届けのことなんだけど…」
というと
「お!出してきたか?」と…。
私は、そんな軽いものなの?とちょっとイラっとした

出してきてないことを言うと
「早く出してきなよ!この際記念日とかいってられないだろ」
と…。

私の言いたいこともしたいことも思い切って話したつもり。
それでも1個も叶えようとしてくれそうになかった。

色々な感情を押し殺して
「うん、わかった…今から出してくるね…」
と言って電話を切った。

私は全部「記入」された婚姻届けを市役所に出しに行った。
一人で。

たまたま、市役所に婚姻届けを出しに来たカップル、いや夫婦がいた。
幸せそうだった。
市役所の人に「ご結婚おめでとうございます!」と祝福されていた。
惨めだった。悲しかった。
私はどんな顔をしてこの紙を出したらいいんだろう…。

その夫婦とは、少し時間を空けて…というか次に並んでいたがいったんその場から離れた。

悔しくて、悲しくて、寂しくて泣きそうになった。

深呼吸をして、市役所の人に紙を出した。
市役所の人はさっきの夫婦のように祝福はしてくれなかった。

気遣いなのだろうか…。
淡々と紙を受け取り、「お子さんたちもご一緒ですか?」と聞かれ「はいそうです」と答えた。
昔のような「養女、養子などという記載は今はありませんのでご安心ください」と言われた。

それだけ…。

苗字が変わった瞬間も
「孤独」だった。

子供たちの保育園に苗字が変わったことは明日先生に報告しよう。

私の仕事場の人にもいわなきゃ…。

私は喜び、というより「淡々と事務処理」をしている感覚になった。

市役所をでた私は彼に電話をした。
「今、市役所いってきたよ…。子供たちどっちの扶養にすればいいかな」というと彼は「今までお前なら、そのままでいいんじゃない?手続きとかも俺すぐにできないし」と…。
私は「わかった」とだけ言い電話を切った。

それから会社に戻り、会社の事務員の人に言うと
「おめでとう!」と言ってくれて喜んでくれたが私は笑顔を作れていただろうか…。

私は仕事を終えて子供たちを迎えに行った。

夜ご飯の時に、子供たちに言った。
「これからは○○、っていう苗字になったからね!」と言うと
「お母さん結婚したの~!?私のお友達にも、この間結婚して苗字が変わったんだよ~!」と嬉しそうに教えてくれた。

子供だから「結婚」とか「再婚」とか難しいことはわからないかもしれないが、純粋に喜んでくれた。
その「過程」は言わなかったが、これでよかったんだ…。
そう思うことにした。

全ては「自分が決めたこと」

新しい苗字になった私たちは
新しい人生の幕を開けた。




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