私に期待していた両親が、涙した日⑤

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コラム
幼稚園を卒業し、
小学校に入学する前の春休み。

私は、穏やかな日々を過ごしていました。

もう幼稚園に行かなくていい。
誰にも虐められない。

それだけで、
私の世界はとても静かで、平和でした。

ところが、ある日の日曜日。

自宅に一本の電話がかかってきました。

電話はリビングにあり、
私は電話のすぐ近くにいました。

電話に出た母が、

「ええっ・・・・!!」

と、驚いた声を出し、
その直後に聞こえてきた、すすり泣き。

なんだか聞いてはいけない気がして、
私は廊下に出て、息を潜めました。

電話の相手は、
あの幼稚園の担任でした。

母は泣きながら、
リビングにいた父に、電話の内容を話していました。

私は、ただならぬ予感がして、
その場から逃げるように、自分の部屋に閉じこもりました。

「私のせいで、お母さんが泣いている。」

「親に迷惑を掛けてしまったかもしれない」

「また、怒られる」

それしか、頭にありませんでした。

しばらくして、
目を真っ赤にした母が、私の部屋に来ました。

そして、
母はこう言いました__

・娘さんは、幼稚園で一言も喋れなかった事
・原因は、障害かもしれない
・普通の小学校に通えるか心配
・一度、病院で診てもらった方がいい
・「私自身も、とても苦労しました」と、電話口で担任が泣いていた

という内容でした。

電話の内容は、
今でもはっきりと覚えています。

その話を聞いている間、私は、
恥ずかしくて悔しくて、
何も言えず、ただ下を向いて聞いていました。

でも私は、

幼稚園で、”話せなかった”のではありません。

幼稚園で、”喋らなかった”だけです。

当時は今より、障害への理解が薄い時代。

世間体を気にして、
私に期待していた真面目な両親にとって、
それは、とても大きなショックだったと思います。

母は仕事を休み、
私を病院へ連れて行きました。

幼い私にとって、
病院は、とても怖い場所でした。

以前、幼稚園の先生に、
「喋れないのは病気だから、痛い頭の手術をしないといけない」
そう言われて、脅されていたからです。

私は本気で、
頭を切られると思っていました。

だから、とても怖くて、
病院での検査の記憶は、ほとんど残っていません。

でも、検査の結果、異常は何もありませんでした。

それから母は__

春から通う予定の小学校にも、
私を連れて行きました。

静かで、大きな校舎。
幼稚園とは、まるで雰囲気が違いました。

母と一緒に校長室へ向かい、
扉を開けると、
校長先生と、
養護教諭の先生がいました。

二人とも、優しい笑顔で迎えてくれましたが、
私は小声で挨拶するのが、精一杯でした。

母と先生たちが話す横で、
私はずっと、下を向いていました。

「私はダメな子なんだ」

「小学校にも行けないかもしれない」

そんなことばかり、考えていました。

しばらくして、
母が一度、校長室を出ました。

部屋には、
私と、校長先生と、養護教諭の三人になりました。

先生たちは、ゆっくり、優しく、
私に話しかけてくれました。

私は少しずつ言葉を返し、
顔を上げていきました。

そして、
母はまた、校長室に呼ばれて、
校長先生は穏やかな声で、
母にこう言いました。

「お母さん、この子は何の問題もありませんよ」

「ちゃんとお話もできます。心配いりません」

その瞬間、
母が安堵した様子がわかりました。

校長先生は、目尻にしわを寄せ、
優しい目で微笑みながら、
私に向かって、

「みとさん、春からぜひ、予定どおり学校へ来てくださいね」

そう言ってくれました。

__私は病気じゃなかったんだ。

ずっと固まって、
ぎゅっと握っていた手のひらが、
ほどけたのを覚えています。

その校長先生は、私を初めて、
肯定してくれた大人でした。

「迷惑をかけている」

「また怒られる」

そう思い続けていた心が、
少しだけ、軽くなりました。

あの時の校長先生の笑顔は、
今でも忘れられません。

その校長先生は、
私が入学する年に、
校長先生として、着任したばかりの方でした。

私は入学後も、
校長室に挨拶に行ったり、
少し、お喋りをしに行ったりしていました。

「月島みとさん、元気ですか?」

いつも、フルネームで名前を呼んでくれる。

その校長先生は、
私が小学五年生の時、
昇進するため、学校を離れることになります。

その時、
私はとてもショックで、
校長先生に、お手紙まで書きました。

それぐらい、私にとって、初めての優しい大人だった。

その校長先生の名前は、今でもフルネームで覚えています。

⸻これを読んでくださっている、あなたへ。

幼い頃のは、
大人になっても、
心のどこかに残ることがあります。

もし、昔のあなたの傷が癒えていなくて、
まだ心が泣いているなら。

「あなたは悪くない」

そう、伝えたいです。

ただ、あの環境が、
あなたに優しくなかっただけ、
合わなかっただけです。

良い出会いは、
心に小さな灯をともす事もあります。

それは、出会いはだけでは、ありません。

本、文章、映像、アニメ、イラスト、音楽、作品、
SNS、アイドル、動物、自然、食べ物など・・・

周りからは、
無駄な時間や、無駄な人付き合いに見えても、
本人には、意味のある、大切な時間や人なんです。

何かに触れることで、
傷は、少しずつ癒えていったり、成長します。

ほんの一歩でいい。

何かを始めてみること。

少しだけ、動いてみること。

少しだけ、誰かの話に耳を傾けてみること。

少しだけ、誰かに、何かに、声を発してみること。

それだけで、
未来は、少しづつ変わり始めます__

mito
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