⚖「眠れない夜は、てんびん座のハンバーガー」/ 音楽をトッピング!
眠れない夜に迷い込む、ちょっと不思議なお話です。注文を決められない人に、店番の女の子が出すのは、料理と、一冊の本のひとこと。読み終えるころ、あなたも自分の一品を選びたくなるかもしれません。 眠れない夜は、歩くことにしている。悩みがあるわけではない、と思う。ただ、電気を消すと、暗い天井のあたりに、何かが浮かぶ。かたちのない、名前もない、何か。見きわめようとすると、すっとぼやけて、それでいて、消えてはくれない。それを眺めているうちに、目だけが、冴えていく。だから歩く。歩いているあいだは、考えなくて済む。その夜は、いつもより遠くまで来てしまった。知らない角を曲がると、灯りがひとつだけ残っていた。木の扉に、大きな硝子が嵌まっている。その向こうに、天井まで届く本棚が見えた。手前に、小さなカウンター。硝子の内側に、手書きの札が一枚、貼ってある。瞳の本棚。吸い込まれるように、押していた。「いらっしゃい」カウンターの中に、星と月で刺繍されたセーラー服の女の子がいた。こんな時間に、と思ったけれど、こんな時間に歩いている私に言えたことではない。勧められるまま、カウンターの椅子に座る。湯呑みが、ことりと置かれた。「まずは白湯ね。夜中の身体にはね、冷たいお水って、急ぎすぎなの」両手で包むと、指先から、夜が少しゆるんだ。「で、はい、メニュー」女の子はカウンターの中からではなく、すぐ脇の本棚から、薄い一冊を抜いて差し出した。受け取る。表紙に、手書きで「品書き」とある。色のちがう栞紐が、七本、頁のあいだから覗いていた。「栞、七本も」「よく開く頁なの」開くと、見開きに品の名が並んでいた。どれも少しずつ変で、ど
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