小説類型リドル・ストーリーの扱い方についてー伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』書評
小説を書く際のコツは何か。――様々な意見があるが、その一つとして「武器を多く持っておく」ことだと個人的には思う。 それは様々な小説・映画作品等から吸収していくものだとされている。 今回は小説の類型のひとつ「リドル・ストーリー」と呼ばれるジャンルについて考察しようと思う。 これは、ラストで結末が明らかにされていないタイプの小説のことである。 その際、伊坂幸太郎『バイバイ・ブラックバード』を例として取り上げる。 なぜなら、この作品がリドル・ストーリーを語る上で、かなり良いお手本となると考えるからだ。 ただし、リドル・ストーリーという類型の特質上、ラストシーンへの言及は免れない。必然的にこの作品の結滅部分について説明してしまうため、これから読もうと思っている方は、先にチェックしておくことをお勧めする。 『バイバイ、ブラックバード』は、伊坂作品特有の、あたたかみのある文章や、鮮やかな伏線回収、構成の遊び心に溢れた小説だった 以下、この小説の概要やすばらしい点について言及してから、後段では、その結末について考えたことを述べたいと思う。目次1.あらすじ
2.登場人物とその魅力
3.結末(※重大なネタバレ)
4.本論:虎でも女でも、どっちだってよかったんだ(※重大なネタバレ)
1.あらすじ
主人公の星野は、5人の女性と付き合っている。彼は「ある組織」への借金が返せなくなり、<あのバス>に乗せられてどこかへ連れていかれる予定らしい。彼が逃げ出さないよう、組織から派遣された監視・繭美とともに、5人の女性に別れを告げに行く。
この小説は、6章構成の連作短編集となっている。1~5章は、それぞれ
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