「小説の技法」Lesson35 描写の問題は、〇〇の問題です!

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 前回の補習で描写の「核」とすべき部分について解説しました。そして、ページ数に縛られた、起承転結構成に従って、割り付けたプロットの範囲内で描写する以上、無限描写はありえないというお話に進みました。無限に描写できる方たちは、描写が弱いのではありません。構成です。プロットに従って、文章に抑制をかける力が未発達です。あるいは、抑制というものの美しさに対して、感性が開かれていません。

 プロの方たちなら、皆さん、幾らでも文章は続けられるものです。それが、普通です。文章が苦手で作家になっている方たちはいません。皆、書くこと、得意なんです。あるいは、巧みなんです。夏の夜のアイスクリーム食べるシーンだけで10巻でも20巻でも続けられるでしょう。でも、誰もそんなことはしないんです。読者が付いてきません。

 小説を書く上で、師から教えられることの一つは、抑制ということです。私だって、いくらでも書けます。でも、自分で作ったプロットで許されるページ数に描写を凝縮します。勿論、プロットの計算のほうが間違いということも、自分一人の作業ですから、大いにありえます。自分の理性でどちらが正しいのか常に考えながら進行させます。

 小説ちっとも楽しくない、と思われる方がいるかもしれません。そう、仕事にしようとするなら、楽しいものではないです。物凄く真剣で理性的で冷静であることが必要とされます。このひとつの単語を書いていいのか、悪いのか、極端な話し、そこまで突き詰めて悩むんです。慣れで打っているように見えても、頭の中では、常に、この単語を書くべきか、この位置でいいのか、この単語でいいのか、考え続ける仕事だということを理解して下さい。

 じゃあ、趣味でいい。大変そうだから。と考える方をお引止めするつもりはありません。でも、建築の仕事だろうと、料理を作る仕事だろうと、皆さん、真剣なのは同じです。

 砂糖ならいくらでもあるから、と、ダバダバ、料理に砂糖を入れるシェフはいません。俺はもっと甘い方が好きなんだが、レストランで客に出す以上、砂糖はこのくらいで控えよう。そんな計算をどの職業でも行っているはずです。作家だけが自由なわけはないのです。

 幾らでも描写を書けると言うことは全く作家としての長所ではありません。自分の計画に従った抑制ができない、もしくは、計画を立てずに書いているということ。反省点です。小説の問題なので、私がきついことを書いているように感じられるかもしれません。

 でも、家だったらどうします? 無設計でガンガン建ててしまった家、あなたは、住めますか? 買えますか? 自分を優れた建築家だと言えますか? 家が極端だというなら、映画は? 幾らでも撮れるからと、延々と回し続けられるカメラ。最後まで鑑賞できますか? 歌は? 得意だからと同じメロディだけを延々とシャウトされ続けたら、あなたは、その曲を最後まで聴いていられますか? どんな作品にも、節度、節制、計画性が必要です。

 小説の場合、その計画は、一般的に構成と言われています。皆さんも、プロットを立てなきゃとか、普通に使われているでしょう? プロットに沿って、書くことです。え? でも、プロットの意味がよくわからない? はい、そう思った方は、明日まで、起立でお待ち下さい。                             
                           以上

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