『小説の技法』Lesson3 チョモランマ作戦

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 今日の「小説の技法」は、作家を含む表現者になろうとする方が、真実、本気なら、絶対考えて欲しい表現者という者の魂の問題です。表現者の心構え、本質を知るメソッドです。

 これができない人? 別に、私は「あぁ、そうですか」というと思います。
 やり遂げたら、「あなた、凄いね、本物だ」というでしょう。

 かくいう私も、誰にやれと言われたのだったか思い出せませんが、今、パッと頭に浮かんだのは、蓮實重彦先生。「終活」兼「就活」ですから、お会いしたいですと素直に書きます。最後のお弟子は、皆さん、ご承知の東浩紀さんでした。定員一人のゼミだったんです。

「きみは、進みたい分野が違うでしょう? 東君には必須ですよ」
 蓮實教授からは、そう笑って落選理由を伺いました。

 こんな昔話をお書きしたのは、昨日、お伝えした「チョモランマ作戦」を知って頂きたかったからです。表現者はクリア必須の「チョモランマ作戦」。
なんですか? それ、と訊かれたら、私は答えます。
「自分を一番知られたくない人」に「自分の一番知られたくないこと」を手紙で書き続け、正々堂々、定期的にその人に会うというメソッドです。
 勿論、手紙には、その趣旨であることを書き、同意を得て下さい。でなければ、単なるストーカーです。

 自分の弱さ、自分の脆さ、自分の夢、秘めておきたい思い、自分のコンプレックスも、心の傷も、すべて、素直に書きましょう。そして、定期的に、公衆の面前で会って下さい。

 どうして、そんなわけのわからないことをするんですか? そうお思いになられる人もいるかもしれません。でも、表現って、そういうことではないですか? 表現を売り物にする時、表現者は買い手を選べません。自分の丹精込めた作品を、目の前で、靴で踏みにじられても、微笑みを浮かべて立っていられなければ、プロとは呼べません。

 また、そうまでして、表現を金銭に変えるのがプロの表現者です。それを恥と思わず、対価だと笑っていられるのもプロの表現者の特質だと思います。
 現役の頃も、そして、今になっても、私のところには、山のような嫌がらせが来ます。ファンレター? それは本当に貴重な一握りの方。後は、Bomb、Bomb、ウィルス、誹謗中傷、です。命を削るように書いて、Bomb、です。
 そうまでして、表現したいですか? と訊かれたら、私は、したいです、と答えます。

 決まった対価と引き換えに、決まった良質の娯楽を売る、感動を約束する、それが、私のプロの表現者としての信条です。職業として、ほかに成立するものを私は持っていません。

 私は、今まで、二度、チョモランマをやりました。本当に、つらいです。恥ずかしいし、怖いし、緊張するし、正気なら、やりたくありません。下手をしたら、メンタルクリニック通いです。でも、やらなければ、出られないスランプに直面したら、私は敢行します。

 達成した前と、達成した後では、別人になっています。勿論、作品も。保証します。


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