『小説の技法』Lesson1 小説の技法

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 多くの方は、小説の技法、小説の書き方、椅子に座った私とパソコンの間で完結すると思っているのではないでしょうか?
 たしかに、小説を書く上での最終形態は、パソコンを通しての自分との対峙だと思います。でも、本当に、それだけでしょうか?
 私が作家を目指した頃、現在のような十代の方でも小説を書くのが普通の小説投稿サイトのようなサーヴィスはありませんでした。
「三島由紀夫のデビューって、19なの⁈」
 それは、既に、ある種、スキャンダラスな伝説でした。
 そのくらい、小説というものは、人生経験を積まないと書けないものとされていたのです。

 でも、周囲には、人生は長いけれど、作家じゃない大人はたくさんいます。
「結局、才能じゃん!」
 私は、生意気にそう思い込んでいたような気がします。
 そんな私の認識を変えたのが「ポール・オースター」です。

 彼の小説は、三島由紀夫のような美文で綴る耽美派を城とすれば、段ボールハウス。
 ガツン、と来ました。なんなんだろう? これって…。
 経歴を読んで、また、ガツン、と来ました。数学者・詩人。さらに調べていくと、貴族です。なのに、作家になるため65の職業を転々とし、結果、潜水艦乗りまで経験しています。
 そして、彼は、全米で堂々とデビューしていました。彼からの文章上の影響は後々、書いていくつもりですが、人生にも派手に影響を受けました。

 コックをやったことがなければ、コックが何を考えているかわからない。
ポールの物の考え方は、実にシンプル。そして、刺激的でした。
 私は、中学生にして、「目指せ、65職!」に納得しました。
 受験勉強も継続しつつ、ガンガンバイトを始めたんです。
 人に自慢できる職もあれば、表立っては言いたくないような職業も経験しました。
 だって、その職業の人は、私の小説に登場するかもしれません。
 鉄骨担いで、工事現場でも働いたし、陸上自衛隊にも体験入隊しました。夜中のビルの清掃から夜警まで、大抵やっています。本当に、いろいろな職業がありますよ。65職です。

 だから、小説の技法に入る前のLesson1は、小説を書くのに無駄な時間はないと言うことです。あなたが、今、入院中でも、引きこもり中でも、退職中でも、離婚調停継続中でも、決して無駄な時間ではありません。そこから、学んで下さい。経験です。

 私は、自分にも言い聞かせながら打っています。今という時から、学ぼう、と。
 積極的に生きろ、とは言いません。積極的に見て下さい。読んで下さい。考えて下さい。
 小説は自分が打つものです。何を打つか決めるのは自分です。一語の選択に、自分の人生の姿勢が問われます。表れます。自分で満足のいく日々を過ごすこと。
 それが、小説の技法の第一だと私は思っています。

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