肝硬変で入院、軽度肝性脳症後に改善するも皮膚症状と感染リスクが残る高齢男性の事例
【患者情報(架空事例)】・患者:78歳 男性・主疾患:肝硬変(原因:C型肝炎ウイルスによる肝炎の遷延化)・既往歴:高血圧、糖尿病、食道静脈瘤(治療歴あり)・生活歴:妻と二人暮らし。元会社員。近年は体力低下により屋外活動は減少傾向。<現病歴>・入院2日前より会話内容の不明瞭化、無表情、反応の鈍さが出現し、血中アンモニア上昇から軽度肝性脳症と診断され入院。・ラクツロース内服および点滴による支持療法を実施し、2日で会話・表情ともに改善傾向を認める。<身体状況>・意識清明。ADLは自立レベル。・皮膚および眼球結膜に黄疸を認め、軽度腹水の貯留あり。腹部は膨隆し、皮膚が張っており乾燥と掻痒感が顕著。・掻き壊しにより腹部に引っかき傷が多数。入浴不可で現在は清拭のみ対応中。<患者の反応>・「だいぶ良くなったからもうすぐ退院だ」と発言し、病状への楽観的な見方がうかがえる。・掻痒に関しては「我慢できない」と自覚があり、夜間の掻破行動も観察されている。【アセスメント・分析・解釈】■原因・誘因(皮膚トラブルと感染リスクの背景整理)肝硬変とは、肝炎などを背景に肝細胞が壊死・再生を繰り返し、線維化が進行して肝機能が著しく低下した状態である。この状態では胆汁の産生・排泄も障害され、胆汁成分(特に胆汁酸やビリルビン)が血中に滞留し、皮膚や粘膜に沈着する。特にビリルビンが皮膚の末梢神経を刺激することで、掻痒感(かゆみ)が生じるとされている。また、胆汁酸も皮膚へ移行することで、神経線維を直接刺激し、かゆみを助長する可能性がある。さらに、肝硬変によりアルブミンの合成能が低下すると、血管内の水分保持が難しくなり、浮腫
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