恋は、誰も悪くなくても、 苦しくなるものなんだと知った
昼休みの教室は、いつもよりにぎやかだった。悠真の席のまわりに、自然と人が集まっている。その中心にいるのは、さっきから何度も見かける、あの女の子。明るい笑顔で、誰の話にもちゃんと頷いて、場の空気をふわっと明るくする。「悠真くんってさ、ほんと優しいよね」その言葉に、周りの子たちも笑う。「わかる〜」「困ってるとすぐ助けてくれるもんね」悠真は少し照れたように、「そんなことないよ」と首を振る。その様子が、なんだか微笑ましくて。凪は遠くの席から、その光景を見ていた。胸が、ちくりと痛む。——あの子、いい子だ。かわいいし、明るいし、悠真の良さをちゃんとわかっている。誰かを悪く言うこともなく、ただ純粋に悠真を慕っている感じが伝わってくる。だからこそ。凪の心は、余計に揺れた。——私より、あの子のほうが似合ってる。——悠真も、きっと楽しいよね。そのとき、女の子がふとこちらに気づいて、凪ににっこり笑いかけた。敵意なんて、まったくない笑顔。むしろ、「一緒に話そうよ」とでも言いたそうな、やさしい表情。凪は思わず、小さく会釈を返す。胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。——いい子すぎる。だから、奪いたくない。でも、失いたくもない。放課後。悠真は凪の隣を歩きながら、少し考え込んだように言った。「今日さ……」凪は心臓が跳ねる。「クラスの子たち、騒がしくてごめん」「迷惑じゃなかった?」凪は首を振る。「ううん……」迷惑なんかじゃない。ただ、少しだけ怖かっただけ。悠真は続ける。「あの子、明るくていい子だよな」その言葉が、凪の胸に静かに落ちる。——やっぱり、悠真もそう思ってる。「みんなに好かれるの、わかる」凪は無理に笑う。
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