どう考えても・・・

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コラム
階段を下りると、
校庭から春の風が流れ込んできた。

体育の授業の声が、遠くで聞こえる。

陽菜はもう、
先にグラウンドへ向かっているはずだった。

凪と悠真は、まだ体育館の前を歩いている。

少しだけ、静かな道。

悠真が言う。

「さっきさ。」

凪は顔を上げる。

「理科のとき。」

言葉が少しだけ止まる。

「元気なかった?」

凪の胸が、少しだけ強く鳴る。

気づいてほしくなかった。

でも。

気づいてほしかった。

そんな気持ちが、胸の奥で混ざる。

「……そんなことないよ。」

凪は言う。

でも。

その声は、ほんの少しだけ小さい。

悠真は、少しだけ眉を寄せる。

「そっか。」

それ以上は、聞かない。

それが、悠真のやさしさだった。

でも。

凪の胸の奥では、

別の言葉が、ゆっくり形になっていく。

どう考えても――

陽菜のほうが、

明るくて、

かわいくて、

悠真の隣に似合う。

自分より、ずっと。

凪は、グラウンドを見る。

陽菜が、クラスの女子と笑っている。

風に髪が揺れる。

その姿は、遠くからでも目立つ。

太陽みたいだと思った。

自分とは、違う。

凪は、胸の奥で静かに思う。

――やっぱり。

その言葉が、
心の中に落ちてくる。

好きだから。

好きだからこそ。

邪魔になりたくない。

悠真の時間を、

曇らせたくない。

凪は、小さく息を吸う。

そして、

誰にも聞こえないくらいの声で思う。

――わたしが、引けばいい。

まだ、言わない。

でも。

その決意は、

凪の胸の奥で、

静かに、

確かに、

形になり始めていた。

悠真は、まだ気づかない。

凪が、

少しずつ、

離れようとしていることに。
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