語れなかった性は、誰が決めたのか ――決断と選択のあいだで
性について考えようとすると、言葉が止まってしまうことがあります。「本当はどう思っているのか」「自分は何を望んでいるのか」考えようとするほど、何もわからなくなる。⸻ー 性の場面で起きている「決断」ーエリエザー・スタンバーグは、人の決断についてこう示しました。人は、決めたと自覚する前に、すでに脳の中で決断している。過去の経験、傷ついた記憶、恥や恐れ、「こうあるべき」という空気。それらが積み重なり、ある地点を越えたとき、身体や行動は先に反応します。 • 断る • 黙る • 合わせる • 何も感じないふりをする性の場面では、この「無意識の決断」がとても強く働きます。⸻ー 語れなさは、意志の弱さではない ー「ちゃんと話せばよかった」「自分で選べなかった」そう責めてしまう人は多いけれど、スタンバーグの視点から見れば、それは脳が生き延びるために下した決断だったのかもしれません。⸻ー それでも、キルケゴールは「選択」を置く ーキルケゴールの言う選択は、性の場面で「うまく言えること」でも「正しく主張すること」でもありません。彼の選択とは、語れなかった沈黙も含めて、それを自分の生として引き受けることです。⸻ー 沈黙のあとに残る、かすかな自由 ーあのとき黙ってしまったこと。感じなかったふりをしたこと。わからないまま終わったこと。それらは、すでに起きてしまった決断です。でも、今ここで、「あれは、私が生き延びるために選ばれた反応だった」と理解し直すことはできる。その理解の姿勢こそが、キルケゴールの言う選択なのだと思います。⸻ー 性は、あとから引き受け直していい ー「決断」は、その瞬間にしか起きない。
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