“悠真は悪くないよ” “わたしが勝手に好きなだけ”

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コラム
翌日。

昼休みの教室は、いつもより静かだった。

悠真は窓側の席で、ノートを開いている。
陽菜は前の席で友達と笑っていた。

凪は、
自分の席からその様子を見ないようにしていた。

“いないほうがいいのかな”

昨日から、その言葉が消えない。

チャイムが鳴る。

次の授業は移動教室だった。

みんなが立ち上がる中、
凪はわざとゆっくり鞄を閉じる。

そのとき。

「凪。」

低くて、少し迷いのある声。

顔を上げると、悠真が立っていた。

陽菜はもう廊下に出ている。

教室には、ふたりだけ。

「昨日さ。」

それだけ言って、言葉が止まる。

悠真は、目を伏せた。

凪は、胸が痛くなる。

また、飲み込むんだ。

そう思った瞬間――

「ごめん。」

小さな声だった。

凪は、息を止める。

「ちゃんとしてないよな、俺。」

ちゃんとしてない。

それは、誰に対して?

陽菜?
凪?

それとも――自分に?

凪は、首を振りかけて、止める。

本当は言いたい。

“悠真は悪くないよ”
“わたしが勝手に好きなだけ”

でも。

それを言ったら、
全部、終わる気がした。

沈黙が落ちる。

廊下から、陽菜の明るい声が聞こえる。

「ゆうまー!早くー!」

悠真は、一瞬だけ凪を見る。

その目は、昨日と同じだった。

探している目。

「……行くなよ。」

かすれる声。

凪の心臓が、強く跳ねる。

「俺、ちゃんとするから。」

ちゃんと。

それが何かは、まだわからない。

でも。

凪は、小さくうなずいた。

動けないはずの足が、
今日は、少しだけ前に出た。

ふたりで教室を出る。

距離は、まだある。

でも、昨日より、ほんの少しだけ。

近い。
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