好きだから、 苦しい

記事
コラム
凪は、部屋の灯りをつけないまま、
スマホを握りしめていた。

送った「私も」の文字が、
画面の中で小さく光っている。

既読は、まだつかない。

(……寝ちゃったのかな)

そう思った瞬間、
胸の奥が、ひゅっと冷える。

昨日も、
今日も、
「また話そう」と言ったのは悠真なのに。

期待してしまう自分が、
ばかみたいに思えてくる。

時計の秒針が、静かに進む。

部屋の中は、
夕暮れから夜へと、
ゆっくり色を変えていく。

やがて——

ピコン、と小さな通知音。

心臓が跳ねる。

『ごめん、さっき寝落ちしてた』

その一文を見た瞬間、
凪の呼吸が止まる。

寝落ち。

悪気はない。

わかっている。

でも。

(私の「私も」は……
 そのまま置いていかれたんだ)

指先が、冷たくなる。

続けて、もう一通。

『最近ちょっと疲れててさ』

言い訳ではない。

正直な言葉。

だからこそ、凪は何も責められない。

「大丈夫だよ」

そう打ちかけて、
消す。

本当は、
「少しだけ寂しかった」
そう言いたい。

でも。

重くなりたくない。
迷惑になりたくない。

凪は、深く息を吸う。

『そっか。無理しないでね』

それだけ送る。

送信ボタンを押したあと、
胸の奥に、じわっと熱が広がる。

やさしい言葉を選んだのに、
なぜか涙がにじむ。

好きだから、
優しくできる。

でも。

好きだから、
苦しい。

スマホを胸に抱き寄せて、
凪は目を閉じる。

暗い部屋の中、
赤いリボンが、かすかに揺れた。

この恋は、
まだ終わっていない。

けれど、
凪の中で、
何かが少しだけ、傷ついた夜だった。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら