好きでいるだけなのに。どうして、こんなに苦しいんだろう
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コラム
日曜の夜。
凪は、ベッドに横になったまま、天井を見つめていた。
昨日、並んで歩いた帰り道。
距離は、たぶん変わっていなかった。
でも。
心の中では、
確実に何かがずれていた。
「最近ちょっと静かじゃない?」
あの一言が、まだ残っている。
気づいてる。
でも、わかってない。
それがいちばん苦しい。
スマホの画面を開く。
悠真とのトーク。
昨日の「また月曜な」で止まっている。
送ろうと思えば、送れる。
「今なにしてる?」
「明日さ」
「おやすみ」
でも。
送ったら、
何かが壊れそうで。
“好き”が、
軽く扱われてしまいそうで。
凪は、画面を閉じる。
同じ時間。
悠真は、何度か凪のトーク画面を開いていた。
何か言うべきか。
いや、別に変なことは起きていない。
ただ、
“昨日の帰り道の沈黙”
それが、妙に引っかかっている。
でも。
言葉にするほどの理由が、ない。
だから、何も送らない。
沈黙が、二人のあいだに横たわる。
喧嘩もしていない。
傷つける言葉もない。
それなのに。
距離だけが、
ゆっくり広がっていく。
凪は、目を閉じる。
“もし、わたしがいなくなったら”
悠真は、気づくだろうか。
それとも。
そのまま、日常は続いていくのだろうか。
胸の奥が、ひりっとする。
好きでいるだけなのに。
どうして、こんなに苦しいんだろう。
夜が、静かに更けていく。
月曜が、近づいてくる。
何も起きていない。
でも。
何かが、確実に変わり始めている。
凪は、その予感だけを抱いて、
眠れないまま目を閉じた。