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凪、最近ちょっと静かじゃない?

土曜日の教室は、どこか気が抜けている。授業は半分。空気も半分。凪は窓の外を見ていた。悠真は、少し離れた席で笑っている。陽菜の声も、混ざっている。それだけのこと。でも。胸の奥が、きゅっと狭くなる。「今日、帰る?」悠真の声。凪は、一瞬だけ目を伏せた。「……うん」並んで歩く。土曜の帰り道は、人が少ない。足音が、やけに響く。「昨日、ごめんね。」突然の言葉。凪の心臓が跳ねる。「寝落ちしてた。」軽く笑う悠真。悪気はない。わかってる。「ううん、大丈夫。」凪は、いつもの声を出す。でも。(大丈夫じゃなかった)その言葉は、喉の奥で消える。しばらく沈黙。夕方の空が、少しだけ曇る。「凪、最近ちょっと静かじゃない?」何気ない一言。でも、それが刺さる。“気づいてるんだ”でも。“わかってない”凪は、笑う。「そう?」それだけ。悠真は、それ以上踏み込まない。踏み込めない。踏み込む資格があるのか、わからないから。「じゃあ、また月曜。」月曜。たった二日なのに、遠い。「うん。」凪はうなずく。悠真は振り返らない。いつも通り。でも今日は、その背中が、少しだけ遠かった。帰り道。凪は、ポケットの中で拳を握る。“好き”が、こんなに静かに削れていくなんて。泣かない。叫ばない。でも、苦しい。空を見上げる。曇り空の向こうに、薄い光。“このまま、離れていくのかな。”初めて、その言葉が胸をよぎった。
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……凪といる時間、当たり前みたいになってた。

月曜の帰り道。曇り空の下、二人の足音だけが並んでいる。少し近い。昨日より、半歩だけ。でも、触れない。凪は、自分の手をぎゅっと握った。触れたいわけじゃない。……少しだけ、触れたい。でも、いま触れたら、何かが変わってしまいそうで。「凪さ。」悠真が、前を向いたまま言う。「この前さ、寂しかったって言っただろ。」心臓が跳ねる。凪は、うなずく。「俺、ちゃんと考えた。」その言葉が、静かに落ちる。曇り空の下なのに、胸の奥だけ、少し明るくなる。「俺はさ……」そこで、言葉が止まる。風が吹く。赤いリボンが揺れる。「……凪といる時間、当たり前みたいになってた。」凪は、息を止める。「当たり前じゃないのに。」その一言が、やさしく、でも確かに響く。触れない。でも、距離が近い。沈黙が、さっきより温かい。「俺、ちゃんと向き合うから。」何に、とは言わない。でも、わかる。凪の胸が、じわっと熱くなる。まだ、約束じゃない。まだ、確信じゃない。でも。期待が、芽を出す。「じゃあ、また明日。」その「明日」が、前より少しだけ、楽しみになる。悠真が振り返る。ほんの一瞬だけ、目が合う。その視線に、“選ばれたい”という願いが、滲む。凪は、小さく笑う。不安は消えていない。陽菜の存在も、消えていない。それでも。この恋は、まだ終わらない。むしろ——ここからかもしれない。
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……ちょっとだけ、寂しかった。

月曜の朝。教室のざわめきが、少しだけ遠く聞こえる。凪は、自分の席に座ったまま、悠真の姿を視界の端で探していた。いる。いつもと同じ場所。いつもと同じ横顔。それだけで、少しだけ胸が温かくなる。(やっぱり、好きなんだ)苦しいのに。不安なのに。それでも、好きは消えない。休み時間。悠真が、凪の机の前に立った。「おはよ。」短い声。でも、目がまっすぐだった。凪の心臓が、ひとつ跳ねる。「……おはよ。」一瞬だけ、視線が絡む。その瞬間、昨日までの距離が、少しだけ縮む。悠真が、ぽつりとつぶやく。「昨日、なんか変だったよ。」凪は、息を止める。言葉にするのは、怖い。でも。逃げ続けたら、本当に遠くなってしまう気がして。「……ちょっとだけ、寂しかった。」小さな声。ほとんど、風に消えそうな声。でも、悠真には届いた。少し驚いた顔をして、それから、やわらかく笑う。「そっか。」それだけ。言い訳も、否定も、しない。「ごめん。」その一言が、胸に落ちる。凪は、泣きそうになる。泣かないけど。“ちゃんと、届いた”それがうれしい。昼休み。陽菜が、無邪気に笑っている。その声は、相変わらず明るい。でも、今日は少し違う。凪は、逃げなかった。悠真の隣に立つことも、目を合わせることも、やめなかった。好きでいることを、隠さなかった。それだけで、少しだけ、強くなれた気がした。放課後。帰り道。二人の距離は、昨日より近い。触れない。でも、近い。「凪。」「なに?」「俺さ、ちゃんと考える。」何を、とは言わない。でも、わかる。凪は、小さくうなずく。空は、まだ曇っている。でも。その向こうに、薄い光が見えた気がした。甘い。でも、まだ不安。それが、この恋。
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好きでいるだけなのに。どうして、こんなに苦しいんだろう

日曜の夜。凪は、ベッドに横になったまま、天井を見つめていた。昨日、並んで歩いた帰り道。距離は、たぶん変わっていなかった。でも。心の中では、確実に何かがずれていた。「最近ちょっと静かじゃない?」あの一言が、まだ残っている。気づいてる。でも、わかってない。それがいちばん苦しい。スマホの画面を開く。悠真とのトーク。昨日の「また月曜な」で止まっている。送ろうと思えば、送れる。「今なにしてる?」「明日さ」「おやすみ」でも。送ったら、何かが壊れそうで。“好き”が、軽く扱われてしまいそうで。凪は、画面を閉じる。同じ時間。悠真は、何度か凪のトーク画面を開いていた。何か言うべきか。いや、別に変なことは起きていない。ただ、“昨日の帰り道の沈黙”それが、妙に引っかかっている。でも。言葉にするほどの理由が、ない。だから、何も送らない。沈黙が、二人のあいだに横たわる。喧嘩もしていない。傷つける言葉もない。それなのに。距離だけが、ゆっくり広がっていく。凪は、目を閉じる。“もし、わたしがいなくなったら”悠真は、気づくだろうか。それとも。そのまま、日常は続いていくのだろうか。胸の奥が、ひりっとする。好きでいるだけなのに。どうして、こんなに苦しいんだろう。夜が、静かに更けていく。月曜が、近づいてくる。何も起きていない。でも。何かが、確実に変わり始めている。凪は、その予感だけを抱いて、眠れないまま目を閉じた。
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