奥さんいるんだと知った日、猫だけは正直に鳴いてくれた。
「奥さんいるんだと知った日、猫だけは正直に鳴いてくれたんです。」これは、ある相談者さんがぽつりと語った言葉。その瞬間、胸の奥がじんわりと痛くなった。だって――それって、真実を知った心が、静かに壊れた音じゃないですか。◆ 好きになったのは、「独身みたいな顔をしてた人」彼は優しかった。LINEの返信もマメで、仕事終わりに「今日もお疲れさま」って言ってくれた。週末に会えない理由も、出張や家族のことで納得できるように言ってくれた。だから、信じてたんです。いや、「信じたい」自分がいたのかもしれません。でも、ある日ふと気になって検索してしまった。――彼の名前、勤務先、SNSの繋がり。そして、そこに映っていたのは、家庭を持った彼でした。◆ 嘘のやさしさが崩れた瞬間画面越しの写真。家族写真の中で、彼はこっちに向けてとびきりの笑顔をしていた。私が知っているあの顔で。一瞬、心が追いつかなくて、スマホを放り投げた。その音に反応して、隣の猫が「にゃー」と鳴いた。やけにそれがリアルな音で、胸に刺さったんです。「ねえ、それって本当に“恋”だったの?」「優しさの正体、ちゃんと見てた?」――まるでそう言ってるみたいに。◆ 猫のまなざしは、何も誤魔化さない恋をしていたとき、猫はずっと距離を保ちながらも見てくれていました。私がスマホを眺めて笑っているときも、既読がつかずに落ち込んでいたときも、ぜんぶ、黙ってそばにいた。そして、奥さんの存在を知ったその日、静かに私の足元に寄ってきて、ただ「にゃー」と、ひと声。たぶんそれは、「うん、もう知ってたよ」ってことだったのかもしれません。猫って、ごまかしがきかない生き物です。
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