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白い闇

〈十一月十一日〉 〈十一月十二日〉 〈十一月十三日〉 〈十一月十四日〉     ・     ・     ・ 〈十二月二十四日〉 〈十二月二十五日〉      ○ 患者が持ってきた新品同様の日記帳を見て、私は首を捻った。メンタルクリニックに勤めてもう四年になるが、なかなか奇特な相談だ。だってこれの何が問題なのか分からない。  だが患者は生気のない顔に焦りを滲ませ、 「これ、昨日までの弟の日記です。先生、弟はどうしたら治りますか」  先生も難しい顔で顎を撫でていた。事情を飲み込めていないのはどうやら私だけらしい。 「……とりあえず経過を見ましょう。今の時点で打てる手はありません」  不安な顔をした患者が口を開く前に、「次は一週間後に来てください」先生は私に扉を開けるよう言った。患者は逡巡したが諦めたように立ち上がり、足音を鳴らして出て行った。私が扉を閉めるのを待ってから、先生は深い溜め息をついた。 「キツいな……」  私は患者が忘れていった日記帳を再度見返した。見れば見るほど分からない。 「先生、これの何が問題なんですか?」  先生は困った顔のまま、 「それは彼の弟さんの日記なんだ。弟さんは明るく社交的で、友達も多いらしい。学生時代には生徒会長も務めていたとか。でも最近様子がおかしかったそうで、試しに日記をつけさせたんだって。大学時代に心理学をかじっていたらしくてね。治療法としては正しいよ。さて、それを見てどう思う?」 「どうって……」  変哲のない日記帳だ。あらかじめ日付が書き込んであって、その下に余白がある。横書きのものだ。それに何も書かれていないということは――「弟さんはもの
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波に抱かれて

 潮風が攫ってきた海の臭いに男は顔を顰めた。  男にとって地元はもっとも忌むべき場所だった。どこまで行っても海しかなく、それに囲われた町には磯の臭いが常に、背後霊のごとく纏わり付いている。防波堤にぶつかった波のはぜる音、餌にありついたカモメの嬌声、漁港を去って行く船の雄叫び。幽霊はときにそんな幻聴も聞かせてくる。町には幽霊の見えない年寄りばかり溢れていた。若者はそんな先代に唾を吐きかけながら高台に建てられた古い学校に通い、同じような年寄りになるまでの余暇を食い潰した。  この町の若者は二分される。反骨精神から端を発した未来展望を肥大化させては潰される者と、早々にこの町に順応し地元愛を叫びながら歳だけを無為に重ねていく者。  男は前者だった。今でも男の中心には感傷が膝を立てて座り、思い出がふてぶてしい顔で横になっている。上京して手に入れた慎ましい自信は、今日も間借りした一隅で肩を縮めている。  埠頭へ向かって歩いていると、恐らく後者であろう学生服の集団とすれ違った。中心人物の青年が無理やり尖らせた視線を突き刺し、男のこの町の出にしては生白い肌を見ると鼻を鳴らした。 「オカマやろう」  ぼそっとやや舌っ足らずな声だった。  彼らは無条件に大人を嫌っている。男はそれを知っていた。それ以上に同年代を嫌っていることも。校則や法律に一挙手一投足を縛られるのが嫌いな彼らはしかし、当人同士で互いを見張り縛り合うことは厭わなかった。  男は横になっていた思い出が起き出すのを意識しながら歩調を速めた。後ろでどっと笑い声が起こったのを聞いて感傷が爪をかみ始める。自信はもう家出していた。      ○
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狂信者

 母がトラックにはねられたと聞いたとき、身体中から力が抜けた。駆けつけた病院で医師から「このまま意識が戻らない可能性も覚悟していてください」と言われたときようやく実感が湧き、人目を憚らず泣いてしまった。  母は認知症を患っていた。病状はそれほど良くはなく、普段は落ち着いているのだが、ひどいときはわたしを泥棒だと勘違いして泣きわめくこともあった。そんな調子では当然一人で外出もさせられない。いつか赤信号の意味も忘れて道路に飛び出してしまうのではないか――  だが結婚四年目のわたしには介護ヘルパーを頼むような金もなく、夫と住むマンションと母の待つ実家を行き来する生活が続いた。  重たかった。今年でわたしも二十八だ。夫との時間が奪われるのはつらいし、そろそろ子どもだって考えている。  夫に相談すると、 「そうは言ってもお義母さんがあんな調子じゃな」  そう厳しい横顔で言われた。 「それはそうだけど……」 「でも確かに子どもは欲しいね。子どもができたら僕、何でもしてあげちゃうな」  幸せそうな笑顔だった。瞳に諦観が滲んでいるのが見えて苦しくなった。わたしが彼との結婚を決めたのは、笑ったときの瞳の色が好きだったからだ。それが今濁っている―― 「そうね、わたしも。わたしも子どものためなら何でもする」  そして、あなたのためにも。  心の中でそっと呟き、夫の笑顔を免罪符として掲げた。  ほんの少し可能性を上げるだけで良かった。母の調子が悪い日、鍵を開けておく。ただそれだけを半年間繰り返した。  ようやく結果が出たのだ。わたしは泣きはらした瞼を擦りながら、昏い笑いに背を震えさせていた。医師はわた
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私が大好きな小説家に殺されるまで

『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれていくのを見て、目を瞑るのが愛情で、目を開くのが信仰だと思っていた。だから私は、先生から目を背けました。』  洒落た言い回しだと思った。当然だ。この文言は私が生み出したものなのだから。  この小説を読んだとき、顔も知らない誰かに骨の一本一本まで視姦されているような恐怖と心地よさがあった。タイトルが『私が大好きな小説家に殺されるまで』というのも、その感覚を大きくした。  昔、ある大手の小説投稿サイトで開催された、小さなコンテストに応募された作品だ。もちろんフィクションだし、この作内のSという小説家と、私には何の関わりもない。しかし、どこかで歯車がずれていたら、きっと私もSのようになっていただろうと思った。  当時は怖いもの見たさで読んだだけだった。仕事を言い訳にして、周囲から読まない方がいいと釘を刺されていたのにも拘わらず、私は一文目を読んでしまった。そこから取り憑かれた。ネットの小説なんて、いつ消されるのか分からない。作者本人が消す意志を持っていなくても、サイトの運営が、コンテストの審査員である私の小説を模倣した作品を、いつまでも放って置くとは思えない。  そしてこの作者Tはきっと、消す意志を抱えている。  彼(あるいは彼女)がこの小説をあまり良く思ってないことは分かっていた。 『正直に申し上げます。この小説は、選考委員であるS先生を題材にして書きました。あまり褒められた行為でないことは重々承知です。もしご本人様が気分を害されたようでしたら私はこの作品を削除いたします。どのような手段でも構いませんので、その際はご一報ください。』  だからもう、
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雌雄無色

 私が誰を好きでも、誰にも関係がないはずなのに、誰もが私と鈴子の関係を嘲笑った。それを差別と知ったのは中学生のとき。 「なにそれ、気持ち悪い」 「頭おかしいんじゃないの?」 「人と違うの、別にかっこよくないよ」 「差別じゃないよ。これは区別だから。異常者と関わりたくないのは普通でしょ」  女の子が好きだと流布されただけで針のむしろだった。特に、クラスの女子からは侮蔑され、疎まれ、迫害された。私は鈴子が好きなだけなのに、彼女たちにはそのことがどうにも理解できないようで、自分たちが性対象として見られているという妄想をいつも抱えていた。  中には、私を庇ってくれる友人もいた。彼女は保健室まで私の手を引きながら、力強い声で言った。 「たしかに祥子ちゃんは普通じゃないよ。女の子を好きなんだから。でも、悪いことをしてるわけじゃないんだから、恥じる必要もないと思う」  だが、続く言葉はこうだった。 「それに、そういうのって気の迷いみたいなものだし。高校に上がっていい人が見つかったら、祥子ちゃんも普通に、男の子と付き合えるようになるよ」  善意の皮を被った自覚のない悪意に、いっそ笑えてしまった。  私はその手を振り払い、残りの学校生活もいじめられて過ごす覚悟を決めた。どうせ分かってもらえない。他人にレッテルを貼って、区分したがるような人間に、私は屈したりしない。私は鈴子との関係を恥じたりしない。そう胸に掲げた。  つらい学生生活だった。女の子が好きという理由で、どこにいても白い目を向けられ、何をしても指をさされて笑われた。幸いだったのは、鈴子が標的にされなかったことだ。それも当然といえば当然の
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濡れぬ先の雨

 狭く、細く、暗く、幾つもの分岐をもつ道を、人生に喩えてしまうのは、安直すぎるだろうか。  だが、来た道がぬかるんでいることも、行く道に迷っていることも、私が負傷していることも、全て、私の人生そのものと呼んで差し支えないほどできすぎていた。  終わりが見えないことも、すぐ近くに死の予感が転がっていることも。 「本当に、いいんですね」  目の前を歩く元恋人――姫川雅は、もう何度目になるかわからない確認をしてきた。  優柔不断なのは今に始まったことではない。付き合いはじめはそんなところを優しさと感じていた。倦怠期にはそんなところを愚かだと蔑んでいた。 「いいって何回も言ってるでしょ。あなたが私を置いていっても別に恨む気なんてないから」 「でも、やっぱり…」  知らず溜め息が漏れる。優柔不断を押し付けられるこっちの身にもなってほしい。こんな洞窟の地下深くにまで落ちて、今さら二人して脱出なんて許せるはずがない。  結局、自分を殺せるのは自分だけなのかもしれない。私は彼女の背中を後押しするために、言葉を選ぶ。 「あなたのことを振ったのはそういう態度が鼻につくからよ。いつまでもウジウジしててみっともない」 「すみません…」 「悪いと思ってないのにそうやってすぐ謝るところも」  雅は私から目を逸らして、さっきよりも足音を大きくした。 「言葉に詰まると態度に出るところもね」 「それは……!」  雅は言い返す言葉を探し、すぐ悔しそうに伏し目になった。 「……私は、鎌田さんを置いていきたくないです。二人で脱出しましょう」  夢見がちなところは付き合い始めから別れるまでずっと嫌いだった。  私は聞こ
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ノブレス・オブリージュの恋

 物部紗夜が恋人に殴り殺された夏、私は幸福の絶頂にあった。念願の子どもが生まれ、郊外の新築マンションに越し、仕事も順調だった。  産休明けに配属されたのは、一学年に一クラス、一クラスに二十人程度しかいない小さな中学校だった。空気は綺麗で、子ども達は純粋で、同僚や先輩もみな穏やかだった。  毎朝元気のいい挨拶と共に登校してきて、始業前には自主的に席に着き、授業を妨害するような子は一人もいなかった。積極的に手を挙げ、質問をし、みな楽しげに学んでくれた。授業後には部活に精を出し、あるいは自習をし、恋バナをし、暗くなる前には一人残らず家に帰った。私たち職員も遅くとも十九時には家に帰ることができて、家に帰ってからも突然の呼び出しに怯えることなく、ゆっくりと湯船に浸かり、読書をして、夫と息子と三人で眠ることができた。  私が教師を続けることを最後の最後まで不安がり、しぶしぶ育休を取っていた夫も、帰宅してからすぐ部屋着に着替える私を見ると顔を明るくして、すすんで育休の延長申請を出してくれた。 かわいい息子、優しい夫、未来のある生徒たち。何一つ不満のない生活。  本当に、本当に幸せだったのだ。紗夜の訃報を聞くまでは。本当に。     ○ 夢や希望を抱いて教師になったわけではなかった。大学では教師の嫌な面を散々、嫌になるほど語られたし、教育実習で三十も年上の国語教師から、汚い言葉で何時間もなじられたこともあった。教師になったのは、資格を取るための勉強や実習で忙しく、就活に乗り遅れたからに過ぎなかった。  それでも、なったからには真面目にやろうと思っていた。学生のときから真面目にやらなくても、平均
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心さえなかったなら

 歌うのが好きな少女は、喉をからしてしまいました。 彼女にとって歌とは生きる意味でした。  それを失ってしまった彼女は、生きていることに絶望しました。 もう楽にしてほしいと何度も思いました。しかしそれを伝える声がありませんでした。だからただ泣くしかありませんでした。 声の次は涙をからしてしまいました。どれだけ悲しくても、もう泣くこともできません。このまますべてをなくして、消えてしまいたいと何度も思いました。  そんなある日、一人の少年に出会いました。  彼は高そうな服を着ていて、それに整った顔立ちをしていました。見るからに恵まれた人間だと少女は思いました。 しかし違いました。  少年はどうやら耳が聞こえないらしいのです。そして話すこともできないので、常に紙とペンを持ち歩いていました。  少女に初めての友達ができました。  少年はいつもきれいな字で話しかけてくれました。少女は嬉しくて、自分もきれいな字を書こうと、たくさん練習しました。  少年との会話を続けるうち、声が出なくなったことが、どうでもいいことのように思えました。 少年と友達になってから、数ヶ月が経ったある日。会って欲しい人がいると少年に頼まれました。 『どんな人?』  以前よりずっときれいになった文字で聞くと、少年は顔を赤くしました。 『いけば分かるよ』  少年はそれ以上なにも教えてはくれませんでした。  少年に連れてこられたのは大きな病院でした。少年は緊張しながら病院に入り、ある病室の前で立ち止まりました。  少年が扉をノックすると、向こうからかわいらしい女の子の声が聞こえてきました。 「どなた?」  少年は恥ずかし
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二匹の獣

 小学生の頃、飼っていた犬が病気に臥せることがあった。学校に行っている間に死んでしまったのではないかと、家に帰ってから安否を確認するまでのあの数秒が一番不安で緊張した。今抱えているのはそれと同じ感情だ。それともいつ爆発するか分からない危険物を身体に巻き付けられている感覚だろうか。  二階でくだを巻いていた静寂がわたしの立てる衣擦れの音に飛び起きた。わたしは浅い呼吸でポケットの重みを意識しながら部屋に近づいていく。ドアノブに指をかけ一度静止。犬と爆弾とが同時に頭に浮かび、爆弾をくくりつけられた犬になった。案外これが一番近いのかもしれない。  ゆっくりとドアを開ける。カーテンの閉め切られた室内でも静寂がふんぞり返っていた。ベッドの上には一匹の巨大な芋虫。わたしは安堵するのと同時にさっきまでの不安に無性に腹が立って芋虫の皮膚を剥がした。 「お姉ちゃん、ご飯」  続けざまにカーテンを開け、もう一度呼びかける。「もう起きなよ」 「ん」  姉は緩慢な動作で起き上がり、寝乱れた服を整えると無造作に髪をなでつけた。西日に顔を顰めながらわたしをまじまじと見て、 「おはよう……」「うん、もう四時だけど」 「そう……あたしまた起きれなかったんだ。今日は絶対朝ちゃんと起きて外に一歩でも出ようって決めてたんだけどね、でも夜眠れなくてね」  姉は泣き出す直前の表情で、 「本当にごめんなさい。ダメなお姉ちゃんでごめんなさい」  わたしは溜息を殺すのに必死だった。「勝手に落ち込んで一人で気持ちよくなってんじゃねえよ!」そう叫びたい気持ちも何とか心中させた。 「別に気にしてないから。それよりご飯にしよ。一階に来
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輪廻

「ルリ、ちょっとくらい寝ててもいいよ。疲れたでしょ」  夕刻、リビングのソファで父が私の頭を撫でる。そこに邪念がないことにがっかりする。 「ぼくが後で起こしてあげるから」 「お父さん、もういいから」私はそう言って、父の手をやんわりと払う。寂しそうな顔で父は、「もう中学生だから恥ずかしいか」と苦笑いを浮かべた。それが普通の考え方だ。  みんな、年頃の子は中学生にもなれば思春期が訪れて、人目を気にしたり、親とのひとときを煩わしく思うようになる。  俗に、そういうものを成熟と呼ぶのなら、残念ながら私は未熟だろう。大人になったとはとても言えない。家族は好きだし、家族と過ごすのも好きだ。そしてその上、実の父親に自覚的な恋心まで抱いてしまっているのだから。病死した母には、合わせる顔もない。  もしこの気持ちがバレてしまったら、私はどうなるだろう。家族から疎まれるだけでは済みそうにない。普段から慕ってくれている双子の妹もわたしを侮蔑するだろう。学校でも我慢ならない恥辱を味わうことになるに違いない。だから、この父への愛情という名前のゆるされない気持ちは墓まで持って行くと決めている。  地獄の苦しみがそこにあっても、構いやしない。 「もうそろそろハリも、部活から帰ってくるだろうから、ご飯にしようか」  名残惜しさすら見せず父はソファを立った。父は私も妹も平等に愛しているから当然だ。すぐに父はキッチンの方へ消えた。  すっと、瞼が重くなった。好きな人の横にいて緊張しないなんて、無理な話だ。  実の父親が恋愛対象だろうが、そこは一般的な感覚と変わらない。この、緊張や恐れすらも異常になっていれば良かっ
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病に至る恋(仮題:Hello, I'm Victim)

 猥雑な喧噪に埋もれた居酒屋の座敷で中学の同窓会は行われていた。座は緊張感と好奇心とで満たされており、誰もが顔に笑みを貼り付け、忙しなく酒を口に運んでいる。  僕は座卓の端に坐り、当たり障りのない話に花を咲かしているクラスメイトを順に見ていた。みんな変わってしまっていて、中には十年前の面影すら残っておらず、一目見ただけでは誰か分からない顔もあった。  だが、彼女が来ていないことだけは確かだった。もしもここに彼女がいるとすれば、どれだけ変わっていようと、すぐに見分けられる自信があった。 「久しぶりだな、片山」  その声に視線を戻すと、中学時代一番仲の良かった伊神が僕の隣にどかりと腰を下ろし、両手に持ったグラスの片方を差し出した。 「って言ってもお前はあんまり変わらないな」 「伊神こそ」  僕らは互いのグラスを打ち付け、雑談に興じた。話すことは他愛のないことばかりだったが、左手の薬指に指輪が嵌まっているのを見る限り、彼の人生は順調なようだった。 「最近は全然いいこともないな。会社でもめんどうな仕事ばっかり振られるんだ」  そう言ったとき、伊神は鼻を擦っていたから多分嘘なのだろう。彼は嘘をつくとき鼻を擦る癖がある。きっとあまりパッとしない僕に気を遣ってくれたのだ。  僕は伊神の楽しげな仕事の愚痴に相槌を打ちながら、古傷を撫でるような慎重さで十年前の彼女を思い返していた。      ○ 中学二年の夏。折川おりかわ小春こはるから科学準備室に呼び出されたとき、何の期待もなかったと言えば嘘になる。科学準備室は全くといっていいほど人気のない、旧校舎にある一室だった。加えて、彼女には良くない噂が
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枯れ荻の彼方に【時代歴史小説サンプル/ポートフォリオ】

 中秋の名月が、風にそよぐ枯れ荻を浮き彫りにする。  虫の声は騒がしくもなく、草花の擦れる音が際立つ。  土の湿った匂いが息吹のようにふわりと過ぎていくなかに、一人の男が佇んでいた。襤褸の直垂、腰に太刀を佩く若い偉丈夫だ。ざんばら髪で眉は太く、眼差しは厳しい。腕を組んで、じっと挑むように夜の彼方を睨みつけている。 「豪太」  緩やかな丘の上に立つ彼の静謐を乱さぬよう、密やかに呼びかける者がいる。たおやかな緑の黒髪を揺らす娘が、すすきを掻き分け、ゆっくりと斜面を上がってくる。雪肌は田畑を知らず、男と同じ直垂も鮮やかに藍染めされ、風避けに羽織る布地も上等だ。物憂げな表情と、眉尻の下がった目には情欲を刺激する艶がある。 「豪太」  蠱惑的な低い声にも、彼は頑なに顔を向けなかった。豪太は律令に従い、夜明けには防人の任に就く。気を奮い立たせ、胸の内にある未練を放念しようというのだ。 「豪太、手を貸さぬか」 「貸さぬ」  羽織の下に抱えているものがある娘は、急な勾配に足を取られて不満げに頬を膨らませた。応えた拍子に彼女の表情を目に入れてしまい、豪太は眉間に深い皺を刻んだ。棄てようとした熱が、途端に胸の奥で沸き上がる。よろける娘の腕をがっしりと掴んで、一息に引き上げた。一陣の風が荒び、稲に映る二人の影が重なりあう。 「伊夜、何をしにきた」 「寝屋を抜け出してきた。五平が毎夜、歌を詠みにくる」 「返したのか」 「返さん。私が返し歌を詠んでも、五平は心得違いをして夜這うてくるにきまっておる」 「五平は嫌か?」 「お前のように鹿を狩れぬ。捌いて食わせてもくれぬ」 「俺の鹿を占いに使う女は好かぬ」
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The Gazer【ファンタジー小説サンプル/ポートフォリオ】

 北部の雪深い山脈の覇者、吼えざる魔獣、無音の狩人とは白狼の呼び名だ。  その獣は鋭い爪と牙で、物音ひとつ立てずに獲物を襲うという。しかし本来の気性は穏やかで、白狼は決して無駄な狩りをしない。食べるだけの命を奪い、敬意と共に骨や内臓を埋葬すると伝えられている。 白狼の寿命は、およそ三十年。生まれてから八年程度で成熟し、厳しい冬の訪れと共に繁殖期を迎える。麓の森で根菜や木の実を集めるのは雄、永遠の白い山肌で角鹿や雪兎を狩るのは雌の役割だ。心を通わせた番同士は一つの穴倉で極寒の季節を過ごし、やがて雪の割れ目から草花の芽が出る頃になると、小さな命がひょっこりと巣から顔を覗かせる。 白狼の雌は生涯で五回から八回の出産を経験するが、無事に成長する子供は半分にも満たない。母は暖期のあいだに子へ狩りを教え、父は寒期に向けて食料を集めるのが慣わしだ。白狼の子供は、三年ほどで独り立ちする。その後に待ち受けるのは、戦士としての孤独な日々だ。無慈悲な狩人として知られる白狼だが、山の動物たちを襲う外敵に対しては、雪原の守護者として立ち向かう。故に多くは、そうして戦いの中で命を散らしてしまうのだ。 繁殖期を終え、最後の子が巣立つのを見届けた白狼は、番同士で山脈の向こう側へ旅立つという。厳しい山越えの先で、彼らは女神の御許へ迎えられるのだと語り継がれてきた。しかし近年は研究が進み、新たな生態が明らかになっている。実際は流氷に乗り、大陸の外側を迂回して南部へ渡っているという事実が判明した。 南部の森林で神の牙として崇められる白い毛並みの老獪な獣たち――彼らは遠い北の地より最後の安寧を求めて訪れた、遥かなる旅
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鬼忌解界 〜KiKiKaiKai〜【ホラー小説サンプル/ポートフォリオ】

 小学生に上がる頃、私は地方都市から埼玉県の片田舎に引っ越した。  母親曰く、当時の私は「憂鬱」か「最悪」としか口にせず、あるいは「田舎なんて大嫌い」と大自然の暮らしに唾を吐いていたらしい。 山と森、坂道と家ばかりの不便な土地だった。お菓子ひとつ買うにも、自転車を三十分も漕がなければいけない。さらに夜は車も通らず、街灯もまばらだった。影や闇の距離が近く、どこにでも、なにかがいそうな不気味さを感じていた。 また多感な年頃だったせいか、静謐を自覚すると、自分の息遣いすら不自然に聞こえてくる。近くの池でぽちゃんとなにかが沈む音や、がさがさと葉の囁きが聞こえるたび、別の部屋で寝ている親が扉を開けるだけでも、私は布団の中で耳を塞いでいた。 幽霊や妖怪に怯えていたわけではないと思う。 ただ寂寥とした雰囲気に呑まれた私は「もう、この土地から永遠に出られないのではないか」という恐怖に何度も襲われていた。あの漠然とした不快感は、成人した現在でも言語化が難しい。 そんな私にとって唯一の楽しみは、夏休みだった。毎年、宿題は最初の一日か二日で終わらせ、旅に出る──行き先は、東京に住む祖父母の家だ。 両親によると、初めて一人で電車に乗ったのは小学二年生の頃だったらしい。 初孫だったせいか、祖父母には可愛がられた。行けば至れり尽くせり。母親は「お姉ちゃんだから」と我慢を強いる。しかし祖父母は「お姉ちゃんだから」とお小遣いを多目にくれるばかりか、食事もお寿司やケンタッキー、なんでも好きな物を買ってくれた。 まさにお姫さま気分、夢の国だった。 外に出れば徒歩圏内にさまざまな店があり、規模も大きい。また当然のよ
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【ショートショート】聞こえてくる声(ポートフォリオ掲載分から少し改変)

仕事終わりに、いつもの居酒屋へ向かう。 大きな仕事が片付いたので、今日はいつもよりも贅沢をしよう。 焼き鳥、出汁巻、角煮、おでん、刺身……好きなものを好きなだけ。 居酒屋のドアをガラリと開けると、店内はそこまで混んでいない。 ゆっくりできそうだ。 運がいい。 席に座ると大将が声をかけてくる。 「今日はどうします?」 「今日はね、ちょっと贅沢をしようと思って」 「そりゃ景気がいい」 いつもは同じページしかみたいメニューも、今日は隅々まで見ていく。 ああ、何を食べよう。 悩んでいると、声が聞こえてきた。 「……たい、痛い」 顔を上げて、周りを確認する。 「どうしました?」 「いや、今声が聞こえたような気がして……」 「まぁ、このあたりはうるさいですからねぇ」 それもそうかと、またメニューを見直す。 「痛い、痛い……」 「嫌い、嫌い……」 やはり声が聞こえてくる。 目だけを動かして周りを確認してみたが、聞こえているのはどうやら自分だけらしい。 仕事が忙しすぎて、幻聴でも聞こえるようになったのだろうか。 聞こえてくる声はどんどん大きく、クリアになっていく。 「痛い、痛い」 「人間嫌い、人間嫌い」 大将が水槽から魚を取り出したとき、「やめろ!やめろ!」という声が聞こえ、そこで気づいた。 これは食材たちの声だ。 幻聴どころの話ではない。 第六感的なものが目覚めたのか? どうしたものかとぼーっと大将のほうを見ていると、大将が大きな肉塊を出した。 その肉塊を捌き始めると「お父さん、やめて!」という声が聞こえた。 ああ、もう無理だと逃げるように居酒屋を後にした。
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kona39の履修済み作品まとめ

こんにちは、ココナラで感想サービスを提供しているkona39です!ここでは、kona39に感想を依頼しようかな~どうしようかな~と思っている方のために、私が今まで履修した作品をまとめていきます!全部書くとえらいことになるので、二次創作でご依頼いただくことが多いものを中心に記載していきます。また下記に記載した作品はどれも大好きなものばかりですが、特に贔屓の・地雷のカップルはありませんのでご心配なくです^^以下ジャンルごとにあいうえお順で記載しています。漫画・アオアシ・宇宙兄弟・鬼滅の刃・キングダム・黒子のバスケ(途中まで)・薬屋 の ひとりごと・ゴールデンカムイ・呪術廻戦(途中まで)・スラムダンク・ダイヤのA(act2 途中まで)・東京卍リベンジャーズ・テニスの王子様(初期のアニメ作品のみ)・転生したらスライムだった件・転生賢者の異世界ライフ・Dr.STONE・ハイキュー!!・ハンター×ハンター(途中まで)・ブルーピリオド・ブルーロック・僕のヒーローアカデミア・ミステリと言う勿れ・名探偵コナン・ワールドトリガー(途中まで)・ONE PIECE(ワンピース)(途中まで)書ききれてないやつもいっっっっぱいあります…!お気軽にお問合せくださいませ^^ナマモノ・ジャニーズ 主にSnow Manが好き。他のグループも把握はしています。・ハリーポッターシリーズ(ナマモノなのかはあれですが…)逆に、ほぼ履修していないもの申し訳ないことに漫画・小説以外は本当に疎くて…ナマモノも上記以外は本当に疎いです…><アニメ(のみの作品)、ゲーム、VTuverなどは、ほとんど原作を調べながらも対応となります
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感想サービスは、何に対してお金を払っているの?

こんにちは!ココナラで感想サービスを提供しているkona39です。感想サービスって色んな料金体系がありますよね。お手頃価格のものからいいお値段のものまで、いわゆるピンキリというやつで、これはなんでこんなに料金が違うのか…?何に対してお金を払っているのか…?と思い迷われる方もいるのかなと思います。ここでは、私の思う「何に対してお金が発生しているのか」をまとめてみました。皆様のサービス選びの一助になれば幸いです。1. 感想納品までにかかる時間いわゆる「時給」というものですね。・作品を読む時間・感想作成のために必要なメモを取る時間・作品を振り返りながら、感想にまとめる時間こうした時間に対しての費用のことです。作品が長ければ長いほど上記時間はかかるので、文字数が多いほど料金が上がるのはこのためです。2. スキル・ノウハウサービス出品者の方には、実際に本業でも出版関係で働いている編集者の方や、校正などの資格をお持ちの方もいらっしゃいます。またご自身が創作のコンテストなどで受賞したことがある方もいらっしゃいます。そういう方にご依頼する場合、いわゆる「プロに依頼する」ことになるので、ぐっとサービス料金が上がることが多いと感じています。一見「高い~><」と思いますが、普段なら教えてもらえないようなノウハウが聞けたり、プロに添削をしてもらえると思ったら素敵なサービスなのではないでしょうか。3. 実績・信頼プロではなくても、ココナラ内でランクが高かったり受注件数が多かったり口コミ評価がよかったり、「この人なら安心できそうだ!」という方っていると思います。全く同じサービスを同じ人が出していたとしても
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二次創作の感想は”原作履修済み”の人に依頼すべき?

こんにちは。ココナラで感想サービスを提供しているkona39です^^ありがたいことに依頼件数は120件を超え、8割くらいは二次創作作品への感想提供でした。私自身漫画・小説が子供のころから大好きですが、やっぱり世の中のすべての作品を読むことはできません。また、二次創作だと漫画・小説以外にも、ゲームやVTuver、はたまた実在の人物など原作は多岐にわたります。なので半数以上が「自分が履修していない作品」の二次創作作品のご依頼となっています。では、未履修の作品には感想が書けないか?履修済の作品のほうがしっかり感想は書けるのか?結論から言うと「どちらでも感想サービスは成り立つがメリット・デメリットがある」と思っています。ということで今回は、私が思う原作履修済み・未履修でメリット・デメリットの共有です。ちなみに、私が提供しているのはこちらのサービスです。もしよければ覗いて行ってください^^原作履修済みのメリットこれはずばり「原作含め深く理解し感想が提供できる」ことでしょう!・推しのことを深く理解している人に共感してほしい・原作の流れを踏襲して二次創作をしたので、原作の流れを知っている人に読んでほしい・想定読者(二次創作の場合、多くの読者が原作履修済みの方になるので)にい近い人に読んでほしいという場合は、まずサービス提供者に原作を履修しているかどうかメッセージで確認してみるのがよいかと思います^^原作履修済みのデメリット対してデメリットとしては、・原作を知っているが故の、サービス提供主の主観や好みが反映される可能性あくまでも二次創作の中身がどうだったかを伝えるのが感想サービスですが、原作を
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「キャットとオウルの冒険」第2話 時の旅人

図書館の静寂が二人を迎え入れた。窓から射し込む陽光が、古びた本のページを黄金色に染めていた。ミトンは尻尾をふりふりと振りながら、膨大な書棚の一つを探っていた。その側には、眼鏡をかけたフクロウのフクリーが立っていて、ほとんど不動の姿勢で本を読んでいた。 「フクリー、見てみて!これすごくない?」 ミトンが目を輝かせながら大きな本を持って駆け寄った。 「『時の旅人―過去への道』っていう本だよ!」 フクリーは本のタイトルを眺め、興味津々な表情を浮かべた。 「ああ、それはかなり珍しい本だな。時間旅行に関する魔法が書かれているんだろう?」 ミトンはにっこりと笑い、うなずいた。 「そうなんだよ、想像しただけでわくわくするよね!中にはどんな魔法が書いてあるんだろう…」 フクリーは心配そうに眼鏡を直しながら言った。 「ミトン、それは大変な魔法かもしれないから、注意が必要だよ。いきなり開くのはどうかな…」  しかし、ミトンの好奇心はすでに彼を先へと駆り立てていた。 「大丈夫、フクリー!一緒にいれば何とかなるよ!」 彼は再びにっこりと笑い、その場を去った。フクリーは苦笑いしながら、ミトンの後を追いかけた。  ミトンが一心不乱にその大きな本を開いた瞬間、突如として現れた強い風が二人を取り巻いた。 「フクリー、何これ!?」 ミトンが驚きの声を上げる。 フクリーは風に煽られながらも、「ミトン、それが時間旅行の魔法だ!」と大声で叫んだ。その言葉が終わる前に、一瞬の閃光とともに、二人は未知の場所に飛ばされてしまった。  周囲を見渡すと、彼らは中世の魔法学校のような場所にいた。建物は石造りで、天井は高く、壁には
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小説執筆#2『夏色キャンバス』

夏の高校、文化祭の季節。芸術部の僕、海斗は先輩の絵里子にひそかな想いを寄せていた。絵里子は才能あふれる画家で、僕は彼女の描く世界に心から魅了されていた。 ある日、絵里子が僕に向けて言った。「海斗ー!一緒に文化祭の壁画を描こう…?」 その一言に僕の心は飛び跳ねた。しかし、同時にプレッシャーも感じた。彼女の期待に応えられるだろうか。  文化祭に向けての準備が始まり、僕たちは壁画の制作に打ち込んだ。 「絵里子、この色合いはどうかな…?」僕が尋ねると、彼女はにっこりと微笑んだ。 「めっちゃ鮮やかで綺麗だよ!海斗君のセンス良くて好きよ。」  しかし、作業が進むにつれ、僕の緊張はピークに達した。絵里子に告白すべきかどうか、揺れ動いていた。 「海斗、どうしたの?何か心配事があるの?」 絵里子が気にかけてくれた。僕は深呼吸し、決断した。 「絵里子、ずっと前から好きでした。付き合ってください。」 僕の告白に、絵里子は少し驚いた表情を見せた。 「違うなって思ったら別れるで良いから、それでも僕は絵里子と一緒にいたい。」と続けて言った。僕はもう胸が張り裂けそうになっていた。 しかし、次の瞬間、彼女は優しく微笑んだ。 「海斗、ありがとう。私も海斗のことが好きだよ。」  文化祭の当日、僕たちの壁画は大評判となった。壁画の前で、絵里子は僕の手を握り、「これからも一緒に絵を描こうね。」 と囁いた。僕は彼女に微笑みかけ、夏の思い出が色鮮やかに心に刻まれた。 あなたの言葉、私が形にします! これまで膨大な数の文章を書き上げ、その中には作文コンクールの最優秀賞を受賞した作品も含まれています。この経験とスキルを活かし
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小説執筆#1『キャットとオウルの冒険』

 アルカナ魔法学校、その壮大な図書館には幾千もの魔法書が並んでいた。その片隅には、元気いっぱいの黒猫のミトンと、知識豊富なフクロウのフクリーがいつも一緒だった。どんな時も一緒にいる二人は、学校中でも有名な親友だった。「フクリー、図書館の最深部にあると噂の宝探しの魔法の書を探しに行こうよー!」とミトンが目を輝かせながら提案した。フクリーは眼鏡を直し、「そんなもの、本当に存在すると思うのか、ミトン?」と疑い深く問いかけた。 ミトンはにっこりと笑って、「あると信じれば、きっと見つかるよ。信じて探すんだよ!」と意気揚々と返した。そして二人は図書館の奥深く、薄暗い書棚を探し始めた。  長い時間が経った後、「これだよ、フクリー!見つけたよ。」ミトンが埃にまみれた古い魔法書を引きずり出した。その瞬間、本を開くと突如大きな嵐が発生し、二人は見知らぬ森に飛ばされてしまった。 フクリーは森を見回し、「どうしたのこれ!ミトン、お前のやることはいつも大変だな…。でも、ここはどこだろう?とにかく、一緒に帰る方法を見つけよう!」と提案した。  彼らは森を探索し、夜になれば星を観測し、日が昇れば植物を調べた。森の中には謎が満ちていて、それぞれが自分の得意分野を活かしながら解き明かしていった。  やがて、森の試練を乗り越え、知恵と勇気を使って学校に戻ることができた。その冒険を通じて、彼らの友情はさらに深まり、それぞれが自分たちの強みをより一層発見できた。 「フクリー、次は何を探しに行こうかな?」と興奮冷めやらぬミトンが質問すると、フクリーは苦笑いして、「もう少し図書館で静かに勉強しようよ、ミトン。だけど、また
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あなたの小説、読ませてもらえませんか?

初めまして。まやまと申します。小説家を書いている方に向けてのお知らせです。僕は、あなたが書いた小説の感想を提供するサービスをココナラで販売しています。あなたの書いた小説、読ませてもらえませんか?小説を書くことは、創造力を発揮し、独自の世界を作り上げる素晴らしい経験ですよね。しかし、小説を書くだけでは読者との繋がりを築くことができません。読者があなたの作品に興味を持ち、感動してくれるためには、実際の読者の声や感想が欠かせません。 そこで登場するのが、小説の感想を提供するサービスです。このサービスで、私があなたの作品に対して率直な感想を提供します。良かった点・感動した点はもちろん、改善できそうなポイントも丁寧にお伝え致します。このサービスを提供しようと思ったきっかけは、何を隠そう、過去の私自身が「こんなサービスがあったらいいのにな」と思ったからです。私も脚本・小説を書いていました。おかげ様で賞を頂いたり、私が脚本を手掛けたボイスドラマがPod castのジャンル別ランキングで1位になったりしました。しかし、いつも「読者さんはどう思っているのだろう、リスナーさんはワクワクしてくれているだろうか」と気になっていました。そこで、私と同じような悩みを持つ方に向けて、感想を提供するサービスを始めたのです。おかげ様で好評を頂いています。小説を書いている方は、お気軽にご利用くださいね!
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夜さりつ方に恋をして

天麻(てんま)は横で眠る幼馴染――大雅(たいが)を見て、うーんと首を傾げた。個室になった部屋のテーブルの上にはビールジョッキが3杯とサワーグラスが2つ。どれもこれも、大雅が飲んだものだ。お酒に強く、普段なら酔いつぶれることもない、この幼馴染が「いつもの居酒屋、19時に」と連絡を寄こしてきた時点で、なんだか嫌な予感はしていた。 同じ大学を出てから、プログラマーとして働いている大雅の目元には、薄っすらと隈がくっついている。天麻は、そんな顔を見ながらああ徹夜明けなんだろうなと推測した。 天麻は花屋で勤めていて、時折こうやって幼馴染のやけ酒に付き合う。そんな代り映えのない生活を送っている。花屋の店主である井澄夫婦は優しくて、とても働き甲斐のある職場だ。天麻は良い職場に就くことが出来て良かったなと、この社畜になってしまった幼馴染を見るたびに思う。 それでも、大雅はプログラミングから離れるつもりはないようで。愚痴を吐き出せば、すっきりとした顔で酒を飲む。そうして出来たのが、このグラスの数々だ。「――たいが、大雅ってば起きて」 ゆさゆさと揺さぶってみるも、大雅は起きる気配がない。幸いにも、此処の居酒屋は天麻と大雅がそれぞれ住むアパートまで歩いて帰れる距離だ。歩いて帰れば酔いも醒める、と以前言っていたが、これだけ深い眠りに落ちていればなかなか起きないだろう。「はー…」 天麻は溜息を吐く。残った料理を摘まみながら、スマホに視線を落とした。21時と表示されたロック画面。閉店までは時間があるから、それまで寝かせてもいいだろう。代わりに私が飲んで、少しでも時間を稼ぐとしようか。ちびちびとレモンサワーを
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ダークファンタジー小説『王宮城下町の殺人鬼』 2

二人は館の門を抜け、入り口の扉を開ける。 広間は真っ暗で、鎧や絵画などが飾られている。所々、朽ちており、ろくに手入れがされていない。二階へと続く、階段が見つかった。 階段の上に人影のようなものが、ぼんやりと見える。 柵に手を掛けて二人を見下ろしていた。 辺りにランプなどで明かりは付いていない。 「お前が殺人鬼か?」 ロノウェは訊ねる。 人影はまるで嘲り笑うように、二人を見下ろして笑っていた。 「お前らの相手は俺じゃない」 人影は闇の中から、何かを指差した。 何かが落下してくる。 それは、大量の鴉達だった。鴉の群れが二人へと襲い掛かる。 「ふざけやがって」 ロノウェは地面を剣で切り付けた。 すると。 床が盛り上がり、巨大な二本の腕が生え出てきて、人影へと襲い掛かる。 「貴様…………。俺の家を壊しやがって……」 人影は、何かを空中に放り投げると、跳躍する。 宙に、木片が浮かんでいた。 人影は、木片の上に乗っていた。 外では霧が少し晴れていた。 月明かりに照らされて、その人物の姿が浮かび上がる。 腰まで伸びた金髪に、女性的な服装。胸はビスチェで多い、腰までドレスをひるがえしている。美しき中性的な男、美麗な女装男子、というよりは、異常な性的倒錯を持った狂人といった印象を受けた。服の所々には血がべったりと乾いてこびり付いている。 殺人鬼。 「お前の名は?」 ロノウェは訊ねる。 「貴様が先に名乗れ」 「俺はロノウェという。王宮騎士団に所属している」 「ベレト。それが俺の名だ。お前はゴーレム使いだろう? 石や大地に疑似生命を与える」 「ああ。よく分かったな」 ベレトはシャンデリアの上に飛び移
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【1話完結】シチュエーションボイスの原作小説「【ヤンデレ】アウトローな男性にやんわり拐われた話」

はじめまして!シチュエーション台本を書いているあゆむです!(新参者)シチュボの原作は台本を読む前に全体の把握にも使えるなと思ったので、こちらのブログでは私が書いている台本の原作小説を垂れ流していこうかなと思っています。大して長くないので、寝る前にひとキュンしてもらえたら幸いです照※投稿サイトに上げている既存の作品ですので、台本のご依頼を下さっているお話ではございません。ご安心ください。「【ヤンデレ】アウトローな男性にやんわり拐われた話」【女性向け】 私には最近、悩みの種が芽吹き始めている。「おはようございます。お迎えに上がりました。それにしても、今日もすごくお早い出勤ですね」 当然のように私の自宅前に車を寄せ、外で待機しているこの男。 以前までは退勤後に私を待ち伏せていたのだが、ついに今朝、自宅前まで来られてしまった。 口角が引き攣る私に、「仕事終わりだとなかなか捕まらなかったので、朝なら必ず捕まるかな、と」と男はいう。「あー、確かに自宅は貴女から直接聴いたことありませんでしたね」 白い息を吐きながら平然としている男は、もはやストーカーを正当化する勢いだ。 もっというなら、私の職場も教えた覚えはない。「私にとって貴女の居場所を突き止めることなど、造作もないことです」 「ささ、冷えますので。乗ってください、送ります」男は後部座席のドアを開け誘導する。 その所作が様になっていて、無駄にスマートなのが癇に障る。くわえて「こんなに早いのに、貴女は遅刻寸前なのでしょう?」と私のスケジュールを把握しているような口ぶりだ。 男に言われて腕時計をチラ見すれば、乗りたい電車の時間に間に合うかはか
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肝試し♂×♀チェンジ!わたしたち入れ替わってる!?

今日から夏休み。クラスで仲の良い連中は好きな女子と夏に何するのかって話で持ちきりだ。僕はあんまり興味がなくて、曖昧な相槌だけして窓の外を見てた。夏空は澄み切っていてとても綺麗だ。「なあなあ!俺の話ちゃんと聞いてる!?」「うん?」「夏って言ったらやっぱ肝試しだろ!お前女子の友達いるだろ?」「あー。いるけどこの歳になって肝試しって」「このお年頃だから!楽しいんじゃんか!バカ!」「女子2人呼んできて、あの廃校に行こうぜ!」「はぁ?なんで僕がそんな子供だましに付き合わなきゃいけないわけ」「いいから!頼むよー!」親友のバカな頼みで幼馴染の女子とその友人と4人で夜の廃校に忍び込んだ。本当にバカバカしいよな。こんなことで女子にキャーキャー言われないしモテないって。でも、いざ廃校を目の前にするとちょっとイタズラ心が疼いてワクワクする。「よーし!張り切っていこう!俺はこの子と二人で行くからお前は幼馴染といけよ!」「いいよ」「僕もオーケー。じゃあただの肝試しだとつまらないからゲームをしようよ」「どんな?」「一番奥の離れの理科室まで行って証拠を持って早く帰ってきた方の勝ち。賞品はパートナーからのキス」「マジか!!!やるやる!!」___単純だな。でもこの手のノリもちょっと楽しいかも。「じゃあ。行くよ!よーい、どん!」一斉に4人は駆け出して廃校の門をくぐり闇の中へ消えていった。まずは、庭の鬱蒼とした草林を越えて蜘蛛の巣をくぐり下駄箱からボールの転がる体育館を通り抜けて、手探りで最奥の理科室を目指す。幾つもの教室を見て回ったけど、音楽室、美術室、視聴覚室、各教室。どれもハズレだった。「いい加減疲れたし、飽
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【ショートショート】人間の都合は知りません。

ある日のこと、ポストにチラシが入っていた。 「OPEN記念!猫の手、貸します。猫屋」 まるで子どもが書いたような文字に、本物の猫の手で押したのであろうと思われる肉球のスタンプ。 いたずらかと思ったが、ご丁寧に地図まで描かれている。 これは面白そうだ。 そう思った男は、そのチラシを持って地図が指し示す「猫屋」とやらへと向かった。 そこにはこぢんまりとした昔の駄菓子屋のような佇まいの建物があった。 ガラガラと扉を開けると、奥のほうで何かが動いている。 よくみると猫がペンを持って一生懸命紙に何かを書いていた。 何が何だかわからないまま、男は声をかけた。 「あの…