絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

88 件中 1 - 60 件表示
カバー画像

タクシードライバー

「どこまでだい?」 タクシードライバーはぶっきらぼうに聞いてきた。 過ぎ去っても過ぎ去っても灯りの中を進んでいく。 深夜だというのに眠らない街の中で、俺は眠るために小さなアパートに帰っていく。 「なんのために生きているんだろう?」 窓の外を眺めながらぼんやりとそんなことを考えていた時だった。 「お客さん、疲れてそうだね?」 まだ50歳位だろうか。 ちょっと強面な風貌。 ぶっちゃけあまりタクシードライバーぽくはない。 なんでこの人はタクシードライバーなんてやっているんだろうと、実は心の中で思っていた。 「ええ、ちょっと疲れています。」 取引先との接待ほど、気が滅入ることはない。 酒は嫌いじゃない。むしろ好きな方だし、強い方だと思う。 ただ、どうせ飲むなら楽しく飲みたい。 接待が無駄だとは思わない。 相手と打ち解けあって仕事につながることも確かにある。 けど決まって接待の後はこう思う。 好きな酒を飲んでいても酔っ払うことさえできないのかと。 隣でヨイショし続ける上司。 それを間に受ける取引先の部長。 場を壊さないために空気を読むつくり笑いの俺。 終電を逃すほどの時間ではないが、とにかくもう歩きたくなかった。 できる限りアパートのギリギリまで誰か運んでくれ。 そう思ってタクシーに乗った。 第三者に一発でわかられているほど疲れた顔をしていることが少し気恥ずかしかったが、疲れているからこそタクシーに乗っているんだよと心の中で反論した。 「仕事で疲れるってことは、いいことだよ。」 「えっ!?」 意外な言葉に俺はドキッとした。 同時にバカにしているのかと言いかけた次の言葉には余計に腹が立った
0
カバー画像

~「Love syosetsu JP」 の考え方~

私たちのプロジェクト「Love syosetsu JP」の全体像になります。端的に意志を書きます。悪意があるものではないので中傷等はやめてください。また、今まで出会った方々、サポートして下さる方々、何より小説家先生方には感謝しておりますし、今後とも宜しくお願い致します!▼①coconalaa.キーワードでオリジナル短編小説の依頼→(月に3名にお願いしております)→メッセージや公募で募集中※はじめはcoconalaで発注しますのでcoconala登録後にメッセージにてご連絡下さい!▼②YouTubea.上記①で執筆した短編小説を動画にする→(月に1本)収益が発生した場合→月に1本の動画の本数を増やす※はじめはcoconalaで発注しますのでcoconala登録後にメッセージにてご連絡下さい!▼③Twittera.小説家を目指す人、小説家の方、興味がある方との輪を作るb.クリエイターとの輪を作るc.企画ややりたい事なども随時アップする※興味のある方は是非coconala登録後にメッセージにてご連絡下さい!▼④notea.無料でオリジナル短編小説をアップb.定期購読でオリジナル短編小説をアップ(小説家先生のリンク先を載せる)→小説家先生とのネットワークを築きたい人向けですまた、今まで執筆した小説を広げたい人は、執筆した小説を私のココナラメッセージに添付して送っていただければ対応可能です!※はじめはcoconalaで発注しますのでcoconala登録後にメッセージにてご連絡下さい!▼⑤Instagrama.「Love syosetsu JP」を広めるツールとして利用b.小説・クリエイタ
0
カバー画像

【掌編】いつか来るその日が、せめて遠くでありますように

 キッチンで洗い物をしている妻と、その足許にまとわりついている娘。 とても愛らしい絵だし、見ていて和むことは否定できないが、どうしてそこにお父さんも混ぜてくれないのか。  自分から近寄ればいいとわかっていながらも、なけなしのプライドがそれを許さない。  キッチンの入り口まではなんとか来ることができたが、この先はどうしたものか。  むぅ、と拗ねたままふたりを見ていると、俺の視線があまりにも羨望交じりだったのだろうか、妻が俺を見て溜息を吐いた。 「お父さんが寂しがってるみたいだから、構ってあげなさい」  妻の言葉に、我が家の天使様が、こてん、と首を傾げる。 「お父さん?」  妻の足にしがみついたままこちらを不思議そうに見る娘は、もう疑う隙もないくらいに天使だ。  パチパチと瞬きを何度か繰り返してから、その幼げな顔が輝かんばかりの笑顔で彩られる。 「お父さんっ!」  パタパタと覚束ない、それでも随分しっかりしてきた足取りで駆け寄ってくる天使の背中に純白の羽があるのは、きっと見間違いではないはずだ。 あまりの可愛さに崩れ落ちて床に膝をついてしまったが、この状況でそれは大正解だったらしい。 「お父さん、つかまえたっ!」  そう言いながら抱き着いてきた愛娘のキラキラした笑顔に、胸の奥がキュンとする。  呆れた顔の妻は、一旦無視しておこう。  今の幸せを噛み締めるのが、現時点で一番重要なことである。 「ぎゅー!」  わざわざ擬音を発しながら抱き着いてくる愛娘を、しっかりと抱き返した。  どうしよう。  天使以外の言葉が、見つからない。 「なぁ、妻よ」  呼びかけたのに、返事がない。  どうし
0
カバー画像

枯れ荻の彼方に【時代歴史小説サンプル/ポートフォリオ】

 中秋の名月が、風にそよぐ枯れ荻を浮き彫りにする。  虫の声は騒がしくもなく、草花の擦れる音が際立つ。  土の湿った匂いが息吹のようにふわりと過ぎていくなかに、一人の男が佇んでいた。襤褸の直垂、腰に太刀を佩く若い偉丈夫だ。ざんばら髪で眉は太く、眼差しは厳しい。腕を組んで、じっと挑むように夜の彼方を睨みつけている。 「豪太」  緩やかな丘の上に立つ彼の静謐を乱さぬよう、密やかに呼びかける者がいる。たおやかな緑の黒髪を揺らす娘が、すすきを掻き分け、ゆっくりと斜面を上がってくる。雪肌は田畑を知らず、男と同じ直垂も鮮やかに藍染めされ、風避けに羽織る布地も上等だ。物憂げな表情と、眉尻の下がった目には情欲を刺激する艶がある。 「豪太」  蠱惑的な低い声にも、彼は頑なに顔を向けなかった。豪太は律令に従い、夜明けには防人の任に就く。気を奮い立たせ、胸の内にある未練を放念しようというのだ。 「豪太、手を貸さぬか」 「貸さぬ」  羽織の下に抱えているものがある娘は、急な勾配に足を取られて不満げに頬を膨らませた。応えた拍子に彼女の表情を目に入れてしまい、豪太は眉間に深い皺を刻んだ。棄てようとした熱が、途端に胸の奥で沸き上がる。よろける娘の腕をがっしりと掴んで、一息に引き上げた。一陣の風が荒び、稲に映る二人の影が重なりあう。 「伊夜、何をしにきた」 「寝屋を抜け出してきた。五平が毎夜、歌を詠みにくる」 「返したのか」 「返さん。私が返し歌を詠んでも、五平は心得違いをして夜這うてくるにきまっておる」 「五平は嫌か?」 「お前のように鹿を狩れぬ。捌いて食わせてもくれぬ」 「俺の鹿を占いに使う女は好かぬ」
0
カバー画像

二次創作の感想は”原作履修済み”の人に依頼すべき?

こんにちは。ココナラで感想サービスを提供しているkona39です^^ありがたいことに依頼件数は120件を超え、8割くらいは二次創作作品への感想提供でした。私自身漫画・小説が子供のころから大好きですが、やっぱり世の中のすべての作品を読むことはできません。また、二次創作だと漫画・小説以外にも、ゲームやVTuver、はたまた実在の人物など原作は多岐にわたります。なので半数以上が「自分が履修していない作品」の二次創作作品のご依頼となっています。では、未履修の作品には感想が書けないか?履修済の作品のほうがしっかり感想は書けるのか?結論から言うと「どちらでも感想サービスは成り立つがメリット・デメリットがある」と思っています。ということで今回は、私が思う原作履修済み・未履修でメリット・デメリットの共有です。ちなみに、私が提供しているのはこちらのサービスです。もしよければ覗いて行ってください^^原作履修済みのメリットこれはずばり「原作含め深く理解し感想が提供できる」ことでしょう!・推しのことを深く理解している人に共感してほしい・原作の流れを踏襲して二次創作をしたので、原作の流れを知っている人に読んでほしい・想定読者(二次創作の場合、多くの読者が原作履修済みの方になるので)にい近い人に読んでほしいという場合は、まずサービス提供者に原作を履修しているかどうかメッセージで確認してみるのがよいかと思います^^原作履修済みのデメリット対してデメリットとしては、・原作を知っているが故の、サービス提供主の主観や好みが反映される可能性あくまでも二次創作の中身がどうだったかを伝えるのが感想サービスですが、原作を
0
カバー画像

【短編】害虫駆除 ※虫は出ません

 広い部屋だった。  いや、サイズ的にはそれほどでもないかもしれないが、物がないので広く見える。  横幅一メートル五十センチほどの木製の重厚なテーブルと、上質なことが一目でわかる黒革の椅子。  そして中央にあるローテーブルと、それを挟んで向かい合うように置かれた三人掛けのソファーがふたつ。  この部屋にあるのは、それだけだった。  いや、テーブルの上にはパソコンや書類などが置かれており、人の気配がない、ということはない。  だが、生活感の感じられない部屋だった。  三人掛けソファーのうちひとつ、部屋の出入り口に向かい合う形で置かれた方に、男が座っている。  彼がこの部屋の主なのであろう。  年齢は、三十代の半ばだろうか?  体つきや顔立ちから男性であることは瞭然だが、ツヤのある黒髪は肩甲骨のあたりまで伸ばされている。  グレーのスーツに黒髪が散っている様は、妙に艶めかしい。  そしてもうひとり。  ソファーには座らず、その隣に佇んでいる女性がいる。  黒色の長いスカートに、純白のエプロン。  一昔前によく見た丈の短いフレンチメイドではなく、英国で実際に使用されるようなクラシックタイプのメイド服だ。  髪は後頭部でシニヨンに結い上げられており、ノーメイクかと見紛う程薄くだが、化粧も施している。  美しい顔立ちをしているが、表情がなく、まるで人形のように作り物めいて見える女性だった。  一瞬、彼女の瞳が獲物を見つけた猛禽類の如く鋭く光った。  その瞳の輝きが、彼女がマネキンではなく人間なのだと証明する唯一だった。  男はほんの一瞬彼女に視線を向けたが、なにも言わずに視線を逸らす。
0
カバー画像

【掌編】私じゃあなたを癒せない

 心配で心配でたまらないの。  わかる?  あなたが泣いているからよ。  生まれた時からずっとずっと、傍で見守ってきたのよ。  そんなあなたが泣いているのに、心配でないわけがありますか。  あなたはクッションを抱きしめて鼻を鳴らすばかり。  どうして泣いているのかっていう理由すらも、私にはわからないの。  あぁ、もう。  あなたのお気に入りのクッションじゃないの。  安心するのはわかるけれど、鼻水なんてつけてみなさい。  あとで後悔するのは、あなたなのよ?  ほら、あなたが泣いている理由を教えてごらんなさい。  学校でなにかあったの?  お友達と喧嘩したのかしら?  まさか、いじめられたなんてことないでしょうね?  もしそうなら、私が噛みついて、引っ掻いてやるわ。  そう伝えてあげたいのに、私の口から出るのは、にゃあにゃあ、なんて甘えた声だけ。  あぁ、口惜しい。  こんなにもあなたのことを心配しているというのに。  こんなにもあなたのことをを愛しているというのに。  それが伝わらないということが、ただひたすらに口惜しかった。  私の可愛い可愛い子。  ずっと妹のように……今となっては娘のように思っている、大切な子。  可愛い可愛いあなたが泣いているというのに、なにもできないなんて。  そんな残酷なことがあるかしら。  あぁ、あぁ、口惜しい。  ねぇ、お願い。  独り言で構わないの。  私に伝えようなんて考えなくてもいいの。  だからね、どうか。  あなたが泣いている理由を教えてちょうだい。  恨み言でも言うように、ひとりで呟いてくれればいいのよ。  私はそれを聞いて、勝手に心
0
カバー画像

日常はこうして崩れ去る01

 毎日退屈で、くだらない。にこにこと笑って話を合わせていれば、誰も自分の本音になんて気づかない。人間はそういう生き物だ、だから信じられない。 (いっそ、学校爆発とかして、閉じ込められたらその人の本音とかわかるかもしれないな)  授業中、ぼぉっと窓の外を見る。教師の声は彼の耳に入ることなく、教室のBGMとして流れ続けていた。何も変わらない日常、それをただ享受する自分にも腹立たしいとさえ彼は感じていた。何かがほしい、何か刺激的な何かが。 「どーまくん、聞いてるの、どーまくん!」  はっと顔を上げると前の席のサニ子がプリントを振りかざしながらこちらを見ていた。どうやら授業でプリントが配られたらしい。 「ご、ごめん。ちょっとぼぉっとしてて」  そう言ってどーまはサニ子のプリントを受け取る。その時だった。  キィィィィンと一瞬にして大きな耳鳴りがクラス全員を、いやその地域一帯にいる人間を襲った。皆耳を押さえ、苦しそうにわけがわからないといった顔をしている。 (何だ? 何かの電波か?)  窓を見上げた刹那、ものすごい勢いでナニかが近くの山に落ちた。どぉぉんと山の一部が崩れ、震度4くらいの地震がそのあたり一帯を揺らした。  揺れが収まって、皆不安そうな顔で窓に視線を向ける。隕石でも落ちてきたのだろうか。あの辺りは山しかないから被害は少なそうだが、現場はどうなっているのだろう。 (一体何が……)  この時、好奇心という一滴の水が、どーまの枯れ果てていた心に零れ落ちた。退屈な日常が壊れていくような気がする、そう思うとぞくぞくとどーまの背筋に電流が走ったのだった。  次の日、落ちてきたのは円盤型の
0
カバー画像

【小説】たんぽぽカクテル

ポートフォリオがないなと思っていたので、前に書いた小説を投稿します。ーいつの間にか、バーカウンターの椅子に座り込んでいたらしい。目の前には黄色いカクテルが置かれている。 「あの、すみません。私、これ注文しました?」 バカな質問だと思いながらも、バーテンダーに声をかける。どうせ、ラウンジで踊るうちに酔いが回って、無意識に休みに来たのだろう。そのくせ、もっとハイになりたくて、カクテルを追加注文。間の記憶は飛んでいる。疲れた夜に踊りに来ると、時々あることだ。 と思ったのに、バーテンダーの答えは少しだけ予想と違っていた。 「いいえ。お客さん、何も注文せずに目をつぶってましたよ。そのカクテルはサービスです」 変な顔をした私に、バーテンダーが「ノンアルコールですので、ご安心ください」とつけ加える。まあいいか。引き寄せたグラスを見ると、たんぽぽの花が浮かんでいた。またしても変な顔になる私。よく見ると、カクテルの底のほうは黄緑色だ。カクテルにしてはくすんだ、野原そっくりの色。もちろん、その上の黄色も人工的なものじゃない。ギラギラしたクラブの光の中で、グラスの中だけが異質だった。 「どういうカクテルなんですか、これ」 「私のオリジナルなので、材料は内緒です。疲れている人にだけお出ししています」 「ふーん」 口をつけると、優しい味が広がった。と言っても甘いわけじゃない。ほのかな苦みとさわやかな香りが口の中を通り過ぎる。春風が吹いたような味は、やっぱり、都会のダンスフロアにはふさわしくなかった。 「なんでこんなの作ったんですか」 「お気に召しませんでしたか」 「いや、おいしいんですよ。おいしいけど、
0
カバー画像

この子、本当に大事な人しか連れてこないからね。

風がそっと吹き抜けた夏の日。凪の心には、小さな種が、静かに芽を出し始めていた。「こっちだよ。」陽菜が畑の小道を歩いていく。畑には、朝の光を浴びた野菜たちが生き生きと並んでいた。真っ赤なトマト。大きく葉を広げたなす。支柱につるを巻きつけるきゅうり。どれも太陽に向かって、まっすぐ伸びている。「わあ……。」凪は思わず立ち止まった。「すごい。」「学校とは全然違うね。」「でしょ?」陽菜はうれしそうに笑う。そのときだった。「陽菜かい?」畑の奥から、やさしい声が聞こえた。麦わら帽子をかぶった、小柄なおばあさんが手を振っている。「おばあちゃん!」陽菜は小走りで駆け寄った。「今日はお友達を連れてきたの。」「こんにちは。」凪は少し緊張しながら頭を下げる。「初めまして。」おばあさんは目を細め、にっこり笑った。「よう来たねぇ。」「陽菜がお友達を連れてくるなんて、珍しいこと。」その言葉に、陽菜が少し照れたように笑う。「そう?」「そうだよ。」「この子、本当に大事な人しか連れてこないからね。」その一言に、凪は思わず陽菜を見る。陽菜は恥ずかしそうに、「もう、おばあちゃん。」と小さく笑った。凪の胸が、少しだけ熱くなる。(大事な人……。)その言葉が、心の中で静かに響いていた。「さあさあ。」おばあさんが手を叩く。「まずは枝豆を採ろうか。」「はい!」陽菜は子どものように笑う。学校では見たことのない笑顔だった。凪はその姿を見つめながら、小さく微笑む。「凪ちゃん。」おばあさんが優しく声をかける。「野菜も人もね。」「急いで育てようとすると、うまくいかないんだよ。」凪は静かに耳を傾ける。「毎日ちゃんと見て。」「水をあげて。」
0
カバー画像

白い闇

〈十一月十一日〉 〈十一月十二日〉 〈十一月十三日〉 〈十一月十四日〉     ・     ・     ・ 〈十二月二十四日〉 〈十二月二十五日〉      ○ 患者が持ってきた新品同様の日記帳を見て、私は首を捻った。メンタルクリニックに勤めてもう四年になるが、なかなか奇特な相談だ。だってこれの何が問題なのか分からない。  だが患者は生気のない顔に焦りを滲ませ、 「これ、昨日までの弟の日記です。先生、弟はどうしたら治りますか」  先生も難しい顔で顎を撫でていた。事情を飲み込めていないのはどうやら私だけらしい。 「……とりあえず経過を見ましょう。今の時点で打てる手はありません」  不安な顔をした患者が口を開く前に、「次は一週間後に来てください」先生は私に扉を開けるよう言った。患者は逡巡したが諦めたように立ち上がり、足音を鳴らして出て行った。私が扉を閉めるのを待ってから、先生は深い溜め息をついた。 「キツいな……」  私は患者が忘れていった日記帳を再度見返した。見れば見るほど分からない。 「先生、これの何が問題なんですか?」  先生は困った顔のまま、 「それは彼の弟さんの日記なんだ。弟さんは明るく社交的で、友達も多いらしい。学生時代には生徒会長も務めていたとか。でも最近様子がおかしかったそうで、試しに日記をつけさせたんだって。大学時代に心理学をかじっていたらしくてね。治療法としては正しいよ。さて、それを見てどう思う?」 「どうって……」  変哲のない日記帳だ。あらかじめ日付が書き込んであって、その下に余白がある。横書きのものだ。それに何も書かれていないということは――「弟さんはもの
0
カバー画像

The Gazer【ファンタジー小説サンプル/ポートフォリオ】

 北部の雪深い山脈の覇者、吼えざる魔獣、無音の狩人とは白狼の呼び名だ。  その獣は鋭い爪と牙で、物音ひとつ立てずに獲物を襲うという。しかし本来の気性は穏やかで、白狼は決して無駄な狩りをしない。食べるだけの命を奪い、敬意と共に骨や内臓を埋葬すると伝えられている。 白狼の寿命は、およそ三十年。生まれてから八年程度で成熟し、厳しい冬の訪れと共に繁殖期を迎える。麓の森で根菜や木の実を集めるのは雄、永遠の白い山肌で角鹿や雪兎を狩るのは雌の役割だ。心を通わせた番同士は一つの穴倉で極寒の季節を過ごし、やがて雪の割れ目から草花の芽が出る頃になると、小さな命がひょっこりと巣から顔を覗かせる。 白狼の雌は生涯で五回から八回の出産を経験するが、無事に成長する子供は半分にも満たない。母は暖期のあいだに子へ狩りを教え、父は寒期に向けて食料を集めるのが慣わしだ。白狼の子供は、三年ほどで独り立ちする。その後に待ち受けるのは、戦士としての孤独な日々だ。無慈悲な狩人として知られる白狼だが、山の動物たちを襲う外敵に対しては、雪原の守護者として立ち向かう。故に多くは、そうして戦いの中で命を散らしてしまうのだ。 繁殖期を終え、最後の子が巣立つのを見届けた白狼は、番同士で山脈の向こう側へ旅立つという。厳しい山越えの先で、彼らは女神の御許へ迎えられるのだと語り継がれてきた。しかし近年は研究が進み、新たな生態が明らかになっている。実際は流氷に乗り、大陸の外側を迂回して南部へ渡っているという事実が判明した。 南部の森林で神の牙として崇められる白い毛並みの老獪な獣たち――彼らは遠い北の地より最後の安寧を求めて訪れた、遥かなる旅
0
カバー画像

感想サービスは、何に対してお金を払っているの?

こんにちは!ココナラで感想サービスを提供しているkona39です。感想サービスって色んな料金体系がありますよね。お手頃価格のものからいいお値段のものまで、いわゆるピンキリというやつで、これはなんでこんなに料金が違うのか…?何に対してお金を払っているのか…?と思い迷われる方もいるのかなと思います。ここでは、私の思う「何に対してお金が発生しているのか」をまとめてみました。皆様のサービス選びの一助になれば幸いです。1. 感想納品までにかかる時間いわゆる「時給」というものですね。・作品を読む時間・感想作成のために必要なメモを取る時間・作品を振り返りながら、感想にまとめる時間こうした時間に対しての費用のことです。作品が長ければ長いほど上記時間はかかるので、文字数が多いほど料金が上がるのはこのためです。2. スキル・ノウハウサービス出品者の方には、実際に本業でも出版関係で働いている編集者の方や、校正などの資格をお持ちの方もいらっしゃいます。またご自身が創作のコンテストなどで受賞したことがある方もいらっしゃいます。そういう方にご依頼する場合、いわゆる「プロに依頼する」ことになるので、ぐっとサービス料金が上がることが多いと感じています。一見「高い~><」と思いますが、普段なら教えてもらえないようなノウハウが聞けたり、プロに添削をしてもらえると思ったら素敵なサービスなのではないでしょうか。3. 実績・信頼プロではなくても、ココナラ内でランクが高かったり受注件数が多かったり口コミ評価がよかったり、「この人なら安心できそうだ!」という方っていると思います。全く同じサービスを同じ人が出していたとしても
0
カバー画像

夜さりつ方に恋をして

天麻(てんま)は横で眠る幼馴染――大雅(たいが)を見て、うーんと首を傾げた。個室になった部屋のテーブルの上にはビールジョッキが3杯とサワーグラスが2つ。どれもこれも、大雅が飲んだものだ。お酒に強く、普段なら酔いつぶれることもない、この幼馴染が「いつもの居酒屋、19時に」と連絡を寄こしてきた時点で、なんだか嫌な予感はしていた。 同じ大学を出てから、プログラマーとして働いている大雅の目元には、薄っすらと隈がくっついている。天麻は、そんな顔を見ながらああ徹夜明けなんだろうなと推測した。 天麻は花屋で勤めていて、時折こうやって幼馴染のやけ酒に付き合う。そんな代り映えのない生活を送っている。花屋の店主である井澄夫婦は優しくて、とても働き甲斐のある職場だ。天麻は良い職場に就くことが出来て良かったなと、この社畜になってしまった幼馴染を見るたびに思う。 それでも、大雅はプログラミングから離れるつもりはないようで。愚痴を吐き出せば、すっきりとした顔で酒を飲む。そうして出来たのが、このグラスの数々だ。「――たいが、大雅ってば起きて」 ゆさゆさと揺さぶってみるも、大雅は起きる気配がない。幸いにも、此処の居酒屋は天麻と大雅がそれぞれ住むアパートまで歩いて帰れる距離だ。歩いて帰れば酔いも醒める、と以前言っていたが、これだけ深い眠りに落ちていればなかなか起きないだろう。「はー…」 天麻は溜息を吐く。残った料理を摘まみながら、スマホに視線を落とした。21時と表示されたロック画面。閉店までは時間があるから、それまで寝かせてもいいだろう。代わりに私が飲んで、少しでも時間を稼ぐとしようか。ちびちびとレモンサワーを
0
カバー画像

ダークファンタジー小説『王宮城下町の殺人鬼』 2

二人は館の門を抜け、入り口の扉を開ける。 広間は真っ暗で、鎧や絵画などが飾られている。所々、朽ちており、ろくに手入れがされていない。二階へと続く、階段が見つかった。 階段の上に人影のようなものが、ぼんやりと見える。 柵に手を掛けて二人を見下ろしていた。 辺りにランプなどで明かりは付いていない。 「お前が殺人鬼か?」 ロノウェは訊ねる。 人影はまるで嘲り笑うように、二人を見下ろして笑っていた。 「お前らの相手は俺じゃない」 人影は闇の中から、何かを指差した。 何かが落下してくる。 それは、大量の鴉達だった。鴉の群れが二人へと襲い掛かる。 「ふざけやがって」 ロノウェは地面を剣で切り付けた。 すると。 床が盛り上がり、巨大な二本の腕が生え出てきて、人影へと襲い掛かる。 「貴様…………。俺の家を壊しやがって……」 人影は、何かを空中に放り投げると、跳躍する。 宙に、木片が浮かんでいた。 人影は、木片の上に乗っていた。 外では霧が少し晴れていた。 月明かりに照らされて、その人物の姿が浮かび上がる。 腰まで伸びた金髪に、女性的な服装。胸はビスチェで多い、腰までドレスをひるがえしている。美しき中性的な男、美麗な女装男子、というよりは、異常な性的倒錯を持った狂人といった印象を受けた。服の所々には血がべったりと乾いてこびり付いている。 殺人鬼。 「お前の名は?」 ロノウェは訊ねる。 「貴様が先に名乗れ」 「俺はロノウェという。王宮騎士団に所属している」 「ベレト。それが俺の名だ。お前はゴーレム使いだろう? 石や大地に疑似生命を与える」 「ああ。よく分かったな」 ベレトはシャンデリアの上に飛び移
0
カバー画像

こんなふうに、何かを待ち遠しいと思うのは久しぶりだった。

その日の帰り道。凪の足取りは、いつもより少しだけ軽かった。家に着いて鞄を置いても、頭の中には陽菜の言葉が残っている。「もし来てくれたら、一番最初に枝豆を食べてもらうね。」思い出すたびに、小さく笑ってしまう。「何笑ってるの?」夕食の準備をしていた母が、不思議そうに声をかけた。「え?」「なんでもない。」凪は慌てて首を振る。本当に、なんでもない。……はずなのに。自分でも気づかないうちに、頬がゆるんでいた。夕食を終え、自分の部屋へ戻る。机の上には、宿題と来週の時間割。いつもなら先に終わらせる。でも今日は、窓の外をぼんやり眺めてしまう。(畑って、どんなところなんだろう。)土の匂い。夏野菜。風の音。そして、その景色の中で笑う陽菜。想像するだけで、胸の奥があたたかくなる。「……楽しみ。」ぽつりとつぶやいた自分の声に、凪は少し驚いた。こんなふうに、何かを待ち遠しいと思うのは久しぶりだった。宿題を始めようとノートを開いた、そのとき、スマートフォンが小さく震えた。画面を見る。陽菜からだった。『日曜日、朝九時に駅で待ち合わせしよう😊』続けてもう一通届く。『動きやすい服がおすすめだよ。』凪は思わず笑う。『了解。』短く返信してから、少し迷う。もう一言送りたい。でも、何を書けばいいんだろう。「楽しみにしてる。」その言葉を打っては消し、打っては消す。少し考えてから、凪はゆっくり文字を打った。『誘ってくれて、ありがとう。』送信ボタンを押す。数秒後。『こちらこそ、一緒に行けてうれしい🌱』その一文を読んだ瞬間、胸の奥が、ふわっとあたたかくなった。凪はスマートフォンを胸に抱きしめ、小さく目を閉じる。言葉は少ない。で
0
カバー画像

凪ってさ、最近、雰囲気変わったよね。

胸の奥で、小さく何かが音を立てた気がした。けれど、それが何なのかは、まだ分からない。分からないままでいい。今はただ、この朝が少しだけ特別に感じられた。それだけで十分なんだ。一時間目が終わる。「ふぅ。」凪は小さく息をついた。教科書を閉じる音が教室に広がる。「ねえ、凪。」陽菜がわたしを呼ぶ。「今日の授業、難しくなかった?」「うん。」「途中から先生の話、全然頭に入らなくて。」「私も。」二人は顔を見合わせて笑う。「珍しいね。」「ね。」たったそれだけの会話なのに、肩の力が抜けていく。その様子を見ていた隣の席の美咲が、ふっと笑った。「凪ってさ。」突然名前を呼ばれて、凪は顔を上げる。「え?」「最近、雰囲気変わったよね。」「そうかな?」「うん。」美咲は迷いなくうなずいた。「前より笑うようになった。」「なんか柔らかくなったっていうか。」凪は思わず陽菜を見る。陽菜はうれしそうに微笑んでいた。「ほら。」「私が言った通り。」凪は照れくさくなって笑う。「そんなに変わった?」「変わった。」陽菜と美咲が同時に答えて、三人で笑い合う。その笑い声が教室に溶けていく。凪はふと気づく。笑うたびに、「変じゃないかな。」「笑いすぎかな。」以前のわたしなら、そんなことを考えていた。でも今は違う。笑いたいから笑っている。それだけだった。そのことが、少しだけうれしい。窓から風が吹き込み、白いカーテンがゆっくり揺れる。陽菜はその風を感じるように目を細めた。「今日は気持ちいいね。」「うん。」凪も窓の外を見る。青い空。流れる雲。校庭から聞こえる運動部の声。いつもと同じ景色。でも、心が軽い日は、世界まで少し優しく見えるんだ。そんなこ
0
カバー画像

その優しさ、好きだよ。

「違う……。」何が違うのか、自分でも分からない。ただ、その先だけは、まだ考えたくなかった。キーンコーンカーンコーン――。始業のチャイムが教室に響く。みんなが慌ただしく席へ戻っていく。陽菜も「またあとでね」と笑って、自分の席へ向かった。その笑顔を見送ってから、凪はようやく教科書を開いた。けれど、文字が頭に入ってこない。「起立。」学級委員の声で、一斉に椅子が引かれる。「礼。」「お願いします。」いつもの朝。いつもの教室。それなのに、今日は少しだけ世界が違って見えた。一時間目の先生が教室へ入ってくる。「おはようございます。」その声を聞いた瞬間、凪は小さく眉を寄せた。(……先生、疲れてる。)いつもより少しだけ声に元気がない。目の下にも、うっすらと影が見える。昨日、遅くまで仕事だったのかな。何かあったのかな。そんなことを考えているうちに、授業は始まっていた。「じゃあ、この問題を……」先生が黒板に向かう。ふとチョークを持つ手が止まる。ほんの一瞬だけ。その小さな間にさえ、凪は気づいてしまう。(やっぱり、何か考え事をしてる。)気になってしまう。でも、それを誰かに聞けるわけじゃない。授業が終わる頃には、凪は少しだけ疲れていた。休み時間。「凪。」聞き慣れた声がした。陽菜が牛乳パックを持って立っている。「お疲れ。」その一言だけで、張っていた心が少し緩む。「ありがとう。」「どうしたの?」「今日は朝から、ぼーっとしてる。」また気づかれた。凪は苦笑する。「そんなに分かる?」「うん。」陽菜はあっさりとうなずいた。「凪って、分かりやすいもん。」「えぇ……。」思わず笑ってしまう。「実はさ。」凪は少しだけ声を小さく
0
カバー画像

聞きすぎない優しさが、凪には心地よかった。

朝。目覚ましが鳴る少し前に、凪は目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む朝の光が、部屋をやわらかく照らしている。昨夜はなかなか寝つけなかった。何度もスマートフォンを手に取り、陽菜とのやり取りを見返してしまったから。「……おはよう。」誰もいない部屋で、小さくつぶやく。制服に袖を通し、鏡を見る。いつもの自分。……のはずなのに、どこか落ち着かない。理由は分かっている。今日、陽菜に会える。そのことを考えただけで、胸の奥が少しだけ温かくなる。「変なの。」小さく笑って、家を出た。教室にはまだ半分くらいしか人が来ていなかった。窓際の席に座り、鞄を机の横に掛ける。教室には朝独特の静かな空気が流れている。友達同士の小さな話し声。プリントを配る音。誰かが窓を開ける音。凪は何気なく教室の入口へ目を向けた。まだ、いない。時計を見る。まだいつもの時間より少し早い。「おはよう。」突然、聞き慣れた声がした。振り向くと、悠真が立っていた。「昨日の数学のプリントさ、提出今日だったっけ?」「あ……うん。」凪は鞄からプリントを取り出す。「ありがとう。助かった。」悠真は笑って、自分の席へ戻っていった。以前なら、その笑顔を見るだけで、一日が少し特別になった。話しかけられたことを帰ってから何度も思い出していた。でも今日は、悠真が席へ戻ると同時に、凪の視線はまた教室の入口へ向いていた。まだ来ない。そのことだけが気になる。「おはよう!」元気な声が廊下から聞こえた。ガラリ、と教室の扉が開く。陽菜だった。少し寝ぐせの残った髪。肩からずり落ちそうなスクールバッグ。「ふぁ〜……眠い。」そう言いながら笑う陽菜を見た瞬間。凪の胸の奥で、
0
カバー画像

恋のイルミネーション・外伝/星野るな

オリジナル曲とオリジナル小説のコラボ作品です。前回のバレンタインの物語からの外伝です。 白雪ひかりの親友、星野るなの物語です。 この物語から3曲が生まれました。 ①「KISSよりチョコがスキ!」→今風に「Choco > Kiss」です。1/15リリースしました。 と ②「いちごラブ」→今風に「いちご♡」です。2/15リリース ③「かじって恋して、ストロベリー!」2/15リリース恋のイルミネーション本編恋のイルミネーション物語 外伝 ~いちごとチョコの恋時間~星野るなを主人公にした物語 主要登場人物 星野 るな(ほしの るな) 年齢:17歳 性別:女性 立場:高校2年生、白雪ひかりの親友 性格:恋バナ担当で親友の背中を押す役。いちごとチョコがあれば幸せ。ズレた発言で周囲を和ませる。恋に対してはマイペースで、「急がない恋派」 役割:今回の主人公。一応気になる人はいるが、親友と甘いものがあれば満足。誰からも愛されるキャラだが、決してお節介ではなく、ほんの少し背中を押すタイプ 白雪 ひかり(しらゆき ひかり) 年齢:17歳 性別:女性 立場:高校2年生、るなの親友 性格:明るく、ちょっと照れ屋で感情表現が素直 役割:本編の主人公だが、今回は親友枠。るなの良き理解者であり、るなの"永久親友枠" 小日向 まな(こひなた まな) 年齢:16歳 性別:女性 立場:高校1年生、るなとひかりの後輩 性格:元気で憧れ体質。るなを「るな先輩」と慕っている 役割:るなの恋心に最初に気づき、さりげなくサポートする役割。純粋な応援者 桐生 蒼(きりゅう あおい) 年齢:18歳 性別:男性 立場:高校3年生、
0
カバー画像

あなたの小説、読ませてもらえませんか?

初めまして。まやまと申します。小説家を書いている方に向けてのお知らせです。僕は、あなたが書いた小説の感想を提供するサービスをココナラで販売しています。あなたの書いた小説、読ませてもらえませんか?小説を書くことは、創造力を発揮し、独自の世界を作り上げる素晴らしい経験ですよね。しかし、小説を書くだけでは読者との繋がりを築くことができません。読者があなたの作品に興味を持ち、感動してくれるためには、実際の読者の声や感想が欠かせません。 そこで登場するのが、小説の感想を提供するサービスです。このサービスで、私があなたの作品に対して率直な感想を提供します。良かった点・感動した点はもちろん、改善できそうなポイントも丁寧にお伝え致します。このサービスを提供しようと思ったきっかけは、何を隠そう、過去の私自身が「こんなサービスがあったらいいのにな」と思ったからです。私も脚本・小説を書いていました。おかげ様で賞を頂いたり、私が脚本を手掛けたボイスドラマがPod castのジャンル別ランキングで1位になったりしました。しかし、いつも「読者さんはどう思っているのだろう、リスナーさんはワクワクしてくれているだろうか」と気になっていました。そこで、私と同じような悩みを持つ方に向けて、感想を提供するサービスを始めたのです。おかげ様で好評を頂いています。小説を書いている方は、お気軽にご利用くださいね!
0
カバー画像

その言葉に、凪は静かに目を閉じた。

その願いの先には、いつも、陽菜がいた。「ねえ、凪。」麦茶を飲み終えた陽菜が立ち上がる。「もう一か所、見せたい場所があるんだ。」「見せたい場所?」「うん。」その言い方が少しだけうれしそうで、凪も自然と立ち上がった。「行こう。」三人は畑をあとにして、小さなあぜ道を歩き始める。風が吹くたび、稲が波のように揺れる。さらさら。さらさら。その音に合わせるように、二人の歩幅も自然とそろっていた。しばらく歩くと、小さな丘が見えてきた。「ここ。」陽菜が振り返る。「私が落ち込むと、いつも来る場所。」凪はゆっくり辺りを見渡した。見渡す限りの田んぼ。遠くには青い山並み。白い雲がゆっくり流れ、その下を風が渡っていく。派手な景色ではない。観光地でもない。でも。「……きれい。」その一言しか出てこなかった。「でしょ。」陽菜は満足そうに笑う。「ここにいるとね、自分の悩みが、小さく見えてくるの。」二人は草の上に並んで腰を下ろした。風が前髪を揺らす。しばらく、誰も話さない。セミの声。風の音。遠くで動くトラクターのエンジン音。それだけで、十分だった。「凪。」陽菜が空を見上げたまま言う。「前にね。」「私、ここでおばあちゃんに聞いたことがあるの。」「何を?」「どうして風って見えないのに、あるって分かるんだろうって。」凪は少し考える。「……なんで?」陽菜は微笑む。「おばあちゃんね。」『風は見えないけど、葉っぱが教えてくれるんだよ。』そう言ったの。陽菜は一本の草をそっと指先でなでる。「人の気持ちも、少し似てるのかもしれない。」「気持ちは見えない。」「でも。」「笑顔だったり。」「声だったり。」「隣にいてくれることだったり。」「
0
カバー画像

一番最初に枝豆を食べてもらうね。

陽菜はいつものように、穏やかに笑っていた。「もちろん、無理だったら気にしないでね。」「おばあちゃんも、人が来るの好きだから。」凪は少しだけ戸惑う。誰かの家へ遊びに行くことなんて、いつ以来だろう。「私で……いいの?」思わず口をついて出た言葉に、陽菜は首をかしげた。「凪だから誘ったんだよ。」その一言が、胸の奥へ静かに落ちていく。「ありがとう。」凪は小さくうなずいた。「行ってみたい。」陽菜の表情がぱっと明るくなる。「ほんと?」「うん。」「じゃあ、おばあちゃん喜ぶなあ。」その笑顔を見ているだけで、凪までうれしくなる。「でもね。」陽菜は少し照れくさそうに笑う。「畑だから、おしゃれな場所じゃないよ。」「土だらけになるし。」「虫もいるし。」「それでもいい?」凪は思わず笑った。「陽菜は?」「え?」「陽菜は好きなんでしょ?」「うん。」迷いのない返事だった。「土の匂いとか。」「風の音とか。」「野菜が少しずつ大きくなるのを見るのも好き。」話している陽菜は、本当に楽しそうだった。その表情を見ていると、凪は思う。(私、この顔を知らなかった。)学校で見る笑顔とは少し違う。もっと柔らかくて、もっと自然な笑顔。そんな表情を見られたことが、なぜだか特別に感じた。「凪。」「ん?」「もし来てくれたら、一番最初に枝豆を食べてもらうね。」「ふふっ。」凪は笑う。「そんなにおすすめなんだ。」「うん。」「世界で一番おいしいから。」その言い方がおかしくて、二人はまた笑い合った。チャイムが鳴る。昼休みの終わりを知らせる音だった。「続きはまた今度ね。」陽菜は立ち上がる。「うん。」凪も席を立つ。授業が始まるというのに、不思議と心は軽
0
カバー画像

凪って、ちゃんと休むのも上手じゃなさそう。

凪は自分でも気づかないうちに、小さく微笑んでいた。二時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。先生が教室を出ると、あちこちで椅子を引く音が響き始めた。「ふぅ。」凪は大きく伸びをする。「お疲れさま。」いつの間にか陽菜が隣に立っていた。「お疲れさま。」自然と笑顔になる。そのことが、もう特別ではなくなってきている。「ねえ。」陽菜が窓の外を見ながら言った。「今度の日曜日、晴れるといいね。」「何かあるの?」凪は何気なく聞いた。すると陽菜は少し照れたように笑う。「おばあちゃんの家に行くの。」「畑のお手伝い。」「へぇ。」凪は少し驚いた。今まで陽菜のことをたくさん知っているような気がしていた。でも、知らないことがまだこんなにある。「何を育ててるの?」「夏野菜かな。」「トマトとか、きゅうりとか。」「あと、おばあちゃんが作る枝豆がすごく美味しいんだ。」話している陽菜は、とても楽しそうだった。その表情を見ているだけで、凪までうれしくなる。「凪は?」突然聞き返される。「休みの日、何してるの?」「え……。」凪は少し考えた。休みの日。何をしているだろう。宿題をして。家の手伝いをして。来週の準備をして。「……あんまり遊んでないかも。」苦笑しながら答えると、陽菜は驚いた顔をした。「ほんと?」「うん。」「なんか、もったいない。」「もったいない?」「うん。」陽菜は笑う。「凪って、ちゃんと休むのも上手じゃなさそう。」その言葉に、凪は思わず笑ってしまった。「それ、この前も言われた。」「ふふ。」「だって本当だもん。」陽菜は悪びれもせず笑う。その笑顔を見ていると、不思議と反論する気になれなかった。むしろ。(もっと知りたい。)
0
カバー画像

最近、笑うこと増えたよね。

その日、凪は少しだけ早く目が覚めた。目覚ましが鳴る前。窓から差し込む朝の光が、部屋をやさしく照らしている。布団の中で天井を見つめながら、ぼんやり昨日の帰り道を思い出した。「また明日。」それだけの言葉だった。なのに、不思議なくらい心に残っている。「……変なの。」小さく笑って起き上がる。制服に袖を通し、鏡の前に立つ。髪を整えながら、ふと思う。(今日は、どんな話をしよう。)その考えが浮かんだ瞬間、少しだけ照れくさくなった。以前なら、学校へ行く前に考えるのは、提出物を忘れていないか。先生に注意されないか。誰かを嫌な気持ちにさせていないか。そんなことばかりだった。でも今日は違う。陽菜に会える。そのことを考えている自分がいた。家を出ると、朝の空気はまだ少しひんやりしていた。通学路には、小学生の列や犬の散歩をする人の姿がある。凪はゆっくり歩きながら、小さく息を吸った。空気が気持ちいい。学校へ着くと、まだ教室は静かだった。席に座り、窓の外を眺める。校庭では運動部が朝練をしている。ボールを打つ音。笛の音。風に揺れる木々。そんな音を聞いていると、教室の扉が開いた。「おはよう。」振り向く。陽菜だった。「おはよう。」自然と笑顔になる。その笑顔を見て、陽菜も笑った。「今日、早いね。」「うん。」「なんとなく。」陽菜は自分の席に鞄を置くと、そのまま凪の前まで歩いてきた。「昨日の卵焼き、美味しかった?」「うん。」「すごく。」「ほんと?」「また食べたいくらい。」陽菜は声を立てて笑った。「じゃあ、お母さんに伝えとく。」「喜ぶと思う。」凪もつられて笑う。教室にはまだ数人しかいない。静かな朝。二人の笑い声だけが、小さ
0
カバー画像

明日って、お弁当ある?

その願いが、恋という名前を持つのは、もう少しだけ先のことだった。坂道を下りきると、住宅街へ続く小さな交差点が見えてきた。ここから先は、二人の帰り道が少しだけ分かれる。いつもなら、何気なく「じゃあね」と手を振るだけだった。でも今日は。「凪。」陽菜が立ち止まる。「ん?」「明日って、お弁当ある?」凪は少し考えてから笑った。「あるよ。」「よかった。」陽菜はほっとしたように笑う。「じゃあ、また交換しよう。」その何気ない約束に、凪の胸がふわっと温かくなる。「うん。」それだけの約束。なのに、明日が少し楽しみになった。二人は交差点まで歩く。信号は赤。並んで立ちながら、夕暮れの街を眺める。子どもたちの笑い声。自転車が通り過ぎる音。遠くで犬が鳴いている。どれも昨日と同じ景色なのに、今日は違って見えた。「ねえ、陽菜。」「ん?」「……ありがとう。」陽菜は少し首をかしげる。「何が?」「今日も。」凪は少し照れくさそうに笑う。「一緒にいてくれて。」陽菜は目を丸くしたあと、小さく笑った。「こちらこそ。」その返事は、とても自然だった。「凪といるとね。」少しだけ間があく。「落ち着く。」その一言に、凪の心臓が小さく跳ねた。不思議と苦しくはない。驚いたはずなのに、どこか安心している自分がいた。青信号に変わる。「じゃあ、また明日。」「また明日。」二人はそれぞれ反対の道へ歩き出す。数歩進いたところで、凪は振り返った。陽菜も同じタイミングで振り返っていた。目が合う。どちらからともなく笑う。手は振らない。声もかけない。それでも、その一瞬だけで十分だった。凪は前を向いて歩き出す。(また明日。)その言葉が、今日一番うれしい約束だ
0
カバー画像

恋のイルミネーション第2部 外伝『ストロベリームーン☆いちごナイト!』

外伝からオリジナル曲が出来上がりました。タイトル『ストロベリームーン☆いちごナイト!』リリースは7/12予定しています。恋のイルミネーション物語シリーズ 外伝ストロベリームーン☆いちごナイト!第1節「一年に一度の甘い満月」①六月の終わり。昼間の暑さが少しだけやわらぎ、夕暮れの風が街を優しく包み始めていた。駅前の広場には、小さな赤い旗が並んでいる。『ストロベリームーンフェア開催!』その文字を見つけた私は、思わず立ち止まった。「……ストロベリー!」目がきらりと輝く。「るな先輩!」後ろから元気な声が飛んできた。振り向くと、小日向まなが大きく手を振っている。「こんにちは!」「こんにちは、まなちゃん。」「もう見ました?」「もちろん!」私はフェアのポスターを指差した。「いちごフェア!」「そこじゃありません!」「え?」「ストロベリームーンです!」「……あ。」そうだった。今日の主役は満月だった。「るな先輩、絶対いちごしか見てませんでしたよね?」「えへへ。」笑ってごまかす。「否定しないんですね。」「だって、いちごだから。」「もう!」二人で笑っていると、聞き慣れた声が近づいてきた。「やっぱりここにいた。」白雪ひかりだった。「ひかり!」「こんにちは。」「こんにちは!」まなが元気よく頭を下げる。ひかりはフェアの案内板を見ながら微笑んだ。「今年はすごいね。」「ね!」私は思わず身を乗り出す。「いちごパスタ!」「そこなの?」「いちごパフェ!」「うん。」「いちごシェイク!」「うんうん。」「いちごジェラート!」「まだあるの?」「全部食べたい!」胸を張って宣言すると、ひかりは吹き出した。「全部は無理だよ。」「えー
0
カバー画像

自分で言った言葉なのに、自分が一番驚いている。

安心感が、今日も凪の心をそっと包んでいた午前中の授業は、あっという間に過ぎていった。黒板に書かれる文字をノートへ写しながらも、凪の頭の片隅には、さっき陽菜に言われた言葉が残っていた。誰かのことを考える前に、自分のことも大事にして。そんなことを言われたのは、初めてだった。昼休み。凪は自然と教室の入口へ目を向けた。(……あ。)陽菜を探してる。そう気づいた瞬間、思わず苦笑した。昨日から、何度目だろう。自分でも理由は分からない。でも、探してしまう。「凪。」聞き慣れた声がして顔を上げる。「待った?」陽菜がお弁当を抱えて立っていた。「ううん。」その一言だけで、また胸が軽くなる。二人はいつものように机を向かい合わせた。「今日は卵焼きあるよ。」陽菜がお弁当箱を開けながら笑う。「昨日、母が作りすぎちゃって。」「美味しそう。」「一個食べる?」「え、いいの?」「もちろん。」陽菜は何のためらいもなく卵焼きを箸でつまみ、凪のお弁当箱へそっと置いた。「ありがとう。」凪も自然に、自分のおかずを一つ差し出す。「じゃあ、これ。」「わあ、唐揚げ。」「交換ね。」二人は顔を見合わせて笑った。ほんの小さなやり取り。胸の奥がじんわりと温かくなる。「凪。」「ん?」「今日、朝より笑ってる。」「え?」「ほんと。」陽菜はいたずらっぽく笑う。「朝はちょっと固かったもん。」凪は思わず自分の頬に触れた。笑ってる……?そんなこと、自分では気づかなかった。「陽菜といるからかな。」言ってしまってから、凪ははっとした。(え……。)自分で言った言葉なのに、自分が一番驚いている。陽菜も少しだけ目を丸くした。でも、すぐにふわりと笑う。「じゃあ、今日
0
カバー画像

【短編小説サンプル】返しそびれた鍵|人物同士の距離感

短編小説制作サービスの掲載サンプルです。オリジナルキャラクターによる全年齢作品で、言葉と本音のずれ、男女間の距離感を描いています。制作補助として生成AIを使用し、構成判断、文章の選別、加筆修正、整合性確認、最終調整は作者本人が行っています。閉店の札を裏返したあとで、千夏は窓際の男に気づいた。雨に濡れた肩。空になったコーヒーカップ。左手の指先で、銀色の鍵を弄んでいる。雨ざらしで台無しになった黒髪のセットは、どうにもあの頃を思い出させた。水も滴るいい男と、思った時期もあった気がする。「お客さん、もう終わりです」「知ってる」三年ぶりに聞いた声が、耳に沁みる。変わっていなくて、そして思ったより不快じゃない。千夏はカウンターの内側から出なかった。床には彼が落とした雫が続いている。昔ならタオルを渡した。風邪ひくよって。今は……店内清掃の手間がひとつ増えた以上の感情はない。折よくレンタルモップの交換も明日だ。「だったら帰って」「これ、返そうって、思ってさ」彼が鍵を持ち上げる。青いプラスチックの札には、油性ペンで三〇二と書いてあったが、少し掠れている。千夏が昔住んでいた部屋の番号――あれから努めて何も思わないようにしてきた数字。「そこ、もう違う人が住んでる」「うん」「当たり前だけど、鍵も替わってるよ」「それも知ってる」彼はいつも、必要な言葉だけ遅かった。千夏はレジを閉めた。金額が合わない。もう一度数え直す。一万円札が一枚、五千円札が二枚。大したルーティンじゃないのに、こんな日に限って指が二重に札をめくる。それも何度も。かすかに確実に、苛立つ。「返してほしいって、私、一度も言ってないけど」「言わ
0
カバー画像

【創作の悩み解決!】小説・脚本をもっと面白くする方法とメディア化のコツ

「面白い!」があふれる創作の場をつくる。それが僕の夢です。小説や脚本が好きで、気づけばずっと創作を続けてきました。📖 創作の歩み🔹 20代前半脚本を学ぶためにシナリオセンターへ。ラジオドラマの脚本が採用され、公共の電波で自分の名前が流れたときの感動は忘れられません。🔹 20代後半劇団に入団し、旗揚げ公演の脚本を担当。「自分の作品をメディア化したい!」と、声優さんやイラストレーターさんとオーディオドラマ制作を開始。3年で10本以上制作し、CD化や配信、人気ランキング1位も獲得!🔹 30代Web小説投稿を始め、「エブリスタ」で佳作を受賞。✍️ 創作の楽しさと葛藤創作は楽しい。だけど、不安もつきもの。💭 「この小説、本当に面白い?」最初は「傑作だ!」と思っても、途中で不安になること、よくあります。💭 「もっと面白くできるはず!」映画や漫画を見て刺激を受け、作品をブラッシュアップしたくなる。💭 「自分の作品をメディア化したい!」文章だけじゃなく、形にしたい!そう思ってオーディオドラマを制作しました。🎤 創作の夢をサポートしたい!創作には 「不安」 も 「希望」 もある。だからこそ、同じ悩みを持つクリエイターの力になりたくて、サービスを始めました。あなたの作品がもっと広がるお手伝い、させてください!自分の小説、面白いの?という不安を打開するサービス「小説の感想、贈ります」✍️ 小説を書いたけど、感想がもらえなくてモヤモヤしていませんか?✔ 「誰かに読んでほしい!」 ✔ 「作品の魅力や改善点を知りたい!」 ✔ 「率直な意見がほしいけど、お願いする相手がいない…」 そんなあなたのために、 あ
0
カバー画像

波に抱かれて

 潮風が攫ってきた海の臭いに男は顔を顰めた。  男にとって地元はもっとも忌むべき場所だった。どこまで行っても海しかなく、それに囲われた町には磯の臭いが常に、背後霊のごとく纏わり付いている。防波堤にぶつかった波のはぜる音、餌にありついたカモメの嬌声、漁港を去って行く船の雄叫び。幽霊はときにそんな幻聴も聞かせてくる。町には幽霊の見えない年寄りばかり溢れていた。若者はそんな先代に唾を吐きかけながら高台に建てられた古い学校に通い、同じような年寄りになるまでの余暇を食い潰した。  この町の若者は二分される。反骨精神から端を発した未来展望を肥大化させては潰される者と、早々にこの町に順応し地元愛を叫びながら歳だけを無為に重ねていく者。  男は前者だった。今でも男の中心には感傷が膝を立てて座り、思い出がふてぶてしい顔で横になっている。上京して手に入れた慎ましい自信は、今日も間借りした一隅で肩を縮めている。  埠頭へ向かって歩いていると、恐らく後者であろう学生服の集団とすれ違った。中心人物の青年が無理やり尖らせた視線を突き刺し、男のこの町の出にしては生白い肌を見ると鼻を鳴らした。 「オカマやろう」  ぼそっとやや舌っ足らずな声だった。  彼らは無条件に大人を嫌っている。男はそれを知っていた。それ以上に同年代を嫌っていることも。校則や法律に一挙手一投足を縛られるのが嫌いな彼らはしかし、当人同士で互いを見張り縛り合うことは厭わなかった。  男は横になっていた思い出が起き出すのを意識しながら歩調を速めた。後ろでどっと笑い声が起こったのを聞いて感傷が爪をかみ始める。自信はもう家出していた。      ○
0
カバー画像

その言葉は、なぜだか自分に向けられたような気がした。

夏は、まだ始まったばかりだった。「さあ、枝豆を採ってみようか。」おばあちゃんは畑の中へ入っていく。凪と陽菜も後に続いた。枝には、ふっくらとした莢がいくつも揺れている。「いっぱいある……。」凪が目を丸くすると、おばあちゃんは笑った。「でもね。」一本の枝を指さす。「どれでもいいわけじゃないんだよ。」「そうなの?」陽菜がうなずく。「ほら、この莢。」指でそっと触れる。「まだ少し細いでしょ?」凪も恐る恐る触れてみた。確かに、少し柔らかい。「じゃあ、これは?」隣の莢を指さす。「うん。」おばあちゃんはにっこり笑う。「これは食べ頃。」「見分けるの、難しい……。」凪がつぶやくと、おばあちゃんは優しく言った。「慣れれば分かるよ。」「毎日見てるとね。」その言葉を聞いて、凪は枝豆をじっと見つめた。毎日見る。少しずつ変わる。だから分かる。陽菜がそっと莢を外していく。手つきがとても自然だった。「陽菜、上手だね。」「小さい頃からやってるから。」陽菜は照れくさそうに笑う。その笑顔を見ていると、おばあちゃんが楽しそうに言った。「この子ね。」「昔は待てない子だったんだよ。」「えっ?」凪は思わず陽菜を見る。「うそ。」陽菜は恥ずかしそうに頬をかく。「まだ青いトマトを採ろうとして、よく怒られてた。」「だって早く食べたかったんだもん。」三人で笑う。おばあちゃんは枝豆をひとつ摘みながら言った。「そのとき教えたんだよ。」『まだ早いよ。』「無理に採ったら、おいしくならない。」「ちゃんと待ったら、一番いいときが来る。」風が吹く。枝豆の葉が、さわさわと揺れた。凪は、その言葉を静かに聞いていた。"まだ早い。"その言葉は、なぜだか自分
0
カバー画像

言葉にしたら、何かが変わってしまいそうで。

小さな変化に、凪はまだ気づいていなかった。昼休みが終わり、午後の授業が始まる。いつもなら長く感じる時間が、不思議と今日は早く過ぎていく。窓の外では、初夏の風が校庭の木々を揺らしていた。放課後。「終わったぁ。」誰かの声と同時に、教室が一気に賑やかになる。凪は教科書を鞄へしまいながら、ふと見た。陽菜も帰る支度をしている。その姿を見ただけで、胸の奥にほっとしたものが広がる。「あ。」二人の視線が重なる。陽菜が小さく笑った。「一緒に帰る?」その一言に、凪の心がふわりと軽くなる。「……うん。」たった二文字なのに、思ったより声が弾んでしまった。教室を出ると、廊下には夕日が長く差し込んでいた。部活動へ向かう生徒たちが、楽しそうに話しながら通り過ぎていく。二人は並んで歩く。急ぐわけでもなく、立ち止まるわけでもなく。歩幅が、自然と揃っていた。「今日は疲れた?」陽菜が尋ねる。「うん。でも……。」凪は少し考える。「今日は朝より元気かも。」「ほんと?」「うん。」理由は言えなかった。言葉にしたら、何かが変わってしまいそうで。「それならよかった。」陽菜はそれだけ言って笑う。その笑顔を見るたびに、胸の奥が少し温かくなる。沈黙が訪れる。少し前までの凪なら、焦って何か話題を探していただろう。天気のこと。宿題のこと。テレビで見たこと。とにかく、この静かな時間を埋めようとしていた。でも今日は違った。風が木の葉を揺らす音。遠くから聞こえる運動部の掛け声。夕日に照らされた二人の影。その全部を感じながら、ただ歩いている。不思議と、何も話さなくても落ち着く。その静けさを破ったのは、陽菜だった。「ねえ、凪。」「ん?」「今、何考
0
カバー画像

恋のイルミネーション第2部 外伝『Firefly Dance 〜蛍のイルミネーション〜』

外伝からオリジナル曲が出来上がりました。タイトル『Firefly Dance 〜蛍のイルミネーション〜』外伝『Firefly Dance ~蛍の夜のフェスティバル~』第1節 光のステージ① 七月最初の日曜日。 川沿いの遊歩道では、毎年恒例の「蛍フェスティバル」が開催されていた。 夕暮れ前から屋台が並び、商店街の人たちが忙しそうに準備をしている。「わぁぁぁっ!」 私――星野るなは、思わず歓声を上げた。「見て見て! いちご飴!」「るな先輩、まずそこなんですね」 まなが苦笑する。「だっていちごだよ?」「知ってます」「いちごは世界を救うんだよ?」「たぶん救わないです」「えぇ……」 即答だった。 ひどい。 後輩の反抗期だろうか。 そんなことを考えていると――「るならしいな」 後ろから聞き慣れた声がした。 振り向く。 そこには。 少し伸びた髪。 柔らかな笑顔。 白いシャツ。 そして。 私が少しだけドキドキしてしまう人。「蒼先輩!」「久しぶり」「久しぶりです!」「元気そうだな」「はい!」 元気すぎるくらいです。 心の中でそう付け足した。 だって。 大学に進学してから会うのは二度目なのだ。 前回の蛍イベント以来。 だから少し緊張している。 少しだけ。 本当に少しだけ。 たぶん。「るな先輩、顔赤いです」「まなちゃん?」「暑いんですか?」「暑いです!」「今、嘘つきましたね?」「うっ」 鋭い。 最近の高校一年生は鋭すぎる。 ひかりが隣で笑っていた。「るな、わかりやすいもん」「ひかりまでぇ!」「だって本当だし」「親友が敵になった!」「敵じゃないよ」 くすくす笑う。 昔からそうだ。 ひかりは私が困ると楽
0
カバー画像

悠真は、ずっと好きだった人。 そのはずだった。

「じゃあ、また明日。」陽菜が手を振る。「うん。また明日。」笑って返したはずなのに、胸の奥はまだざわついていた。家までの道を、一人で歩く。さっきまで隣にいたのに。もう声は聞こえない。それだけなのに、急に静かになった気がした。信号待ちで立ち止まる。赤信号の向こうを、小学生が笑いながら走っていく。その笑い声を聞きながら、凪はさっきの会話を何度も思い返していた。「だから今は、まだ分かんないかな」その言葉を聞いた瞬間。胸がふっと軽くなった。あの感覚は何だったんだろう。「……変なの。」小さくつぶやく。陽菜が悠真を好きじゃなくて安心した。その事実だけは、どう考えても否定できなかった。でも、どうして安心したのかは分からない。悠真は、ずっと好きだった人。そのはずだった。もし陽菜が悠真を好きでも、おかしくない。むしろ二人なら、お似合いだとさえ思える。なのに。想像しただけで苦しかった。「なんで……。」答えは出ない。家に帰って制服を着替え、夕食を食べても。お風呂に入っても。歯を磨いても。気づけば同じことばかり考えている。ベッドに寝転び、スマートフォンを手に取る。画面には陽菜とのトーク。最後のやり取りは、さっき別れたあとに届いた一通だった。『今日は話してくれてありがとう😊』たったそれだけ。なのに、自然と頬がゆるむ。すぐに返信を打つ。『こちらこそ。また明日。』送信。既読はつかない。それでも不思議と待つ時間は嫌じゃなかった。スマホを胸の上に置いて、天井を見つめる。恋って、もっと分かりやすいものだと思っていた。会いたくて。ドキドキして。手をつなぎたくなって。そんなものだと。でも陽菜といると違う。ドキドキより先
0
カバー画像

【短編小説サンプル】死亡予定日訂正申請|ブラックコメディ

短編小説制作サービスの掲載サンプルです。オリジナルキャラクターによる全年齢作品で、日常的な制度と不条理を組み合わせたブラックコメディです。制作補助として生成AIを使用し、構成判断、文章の選別、加筆修正、整合性確認、最終調整は作者本人が行っています。死亡予定日訂正窓口は、市役所の地下二階にあった。案内板には「住民票」「納税」「死亡」と同じ書体で並んでいる。矢印に従って階段を下りると、蛍光灯が一本切れていた。どこからか入り込んだ大きな蛾が、ジジッと異音を立てる光に纏わりついている。番号札を取る。四四四番。「四四四番の方」窓口の死神は眼鏡をかけた若い女だった。三島が学生時代に好きだった漫画の登場人物に少し似ている気がする。その人物がつけていたのに似た黒いローブの胸元に、研修中と青文字が書かれた札を付けている。会社員の三島は椅子へ座り、封筒を差し出した。くたびれたスーツの袖から、糸が出ている。よりにもよって今気づいてしまったことが、少し気恥ずかしくなった。「死亡予定日を、一か月ずらしたくて」よくある依頼なのだろう。研修中の死神も、さほど驚かなかった。「えっと……前倒しですか、それとも延期ですか」「延期です」「わかりました。理由をお願いします」「繁忙期のため」三島が用意してきた延期理由を告げると、死神は申請書へ丸を付けた。理由欄には、業務都合、家庭都合、宗教上の都合、その他がある。考えるまでもなかったのだろう。彼女は迷わず業務都合を選んだ。しかし彼女が使用しているボールペンからインクがうまく出ず、結局三回丸を描いていた。「では、勤務先からの証明書のご提出をお願いします」「あっ、死亡にもや
0
カバー画像

『金王桜縁起―巫女姉妹と縁断ちの妖怪―』4章

オリジナル曲とオリジナル小説のコラボ作品です。 ジャンル 現代ファンタジー・学園・妖怪退治・社会派エンターテインメント 曲紹介 この小説からオリジナル曲 イメージソング「桜のキズナ☆ミッション」が作られました。 第1・第2章の挿入歌としてのオリジナルソング「金王桜縁起祝詞歌」 花宮家で代々受け継がれた神歌として作成しました。 神社や渋谷を拠点にした舞踊で使える曲になっています。 第4章: キズナ☆ミッション第1節「決戦の夜」満月の夜。 金王八幡宮の境内は、異様な静けさに包まれていた。 「もうすぐ、来るわね…」 紅葉が空を見上げた。まん丸の月が、境内を青白く照らしている。 「うん…」 桜は緊張した面持ちで、鈴を握りしめていた。 「みんな、準備はいい?」 「はい」 環奈が頷いた。巫女装束ではないが、動きやすい服装に身を包んでいる。 「ああ」 蒼太は勾玉を首にかけ、護符を手に構えていた。 「私も、覚悟はできてるわ」 理佐が力強く言った。スーツ姿のまま、御札を持っている。 「篠宮さん、本当に戦うんですか?」 環奈が心配そうに聞いた。 「ええ。私にもできることがあるはず」 理佐は微笑んだ。 「それに、あなたたちだけに危険なことさせられないわ」 その時、梅之介が社殿から出てきた。 「みんな、揃っておるか」 「おじいちゃん」 「今夜、必ず奴は来る。最後の戦いになるじゃろう」 梅之介は真剣な表情で五人を見た。 「お前たちに、最後の力を授ける」 「最後の力?」 「ああ」 梅之介は金王桜に向かって、深く頭を下げた。 「千歳様、どうかお力を」 『はい…宮司殿…』 千歳の声が響くと同時に、金王桜が
0
カバー画像

0noqui6seiso(野木清荘)の創作書き描き(カキカキ)ノート

人物イラストを主に手掛けております。
0
カバー画像

Amazon Kindleで続編出版!「オッパ、ボクシングに挑戦!」のお知らせ

こんにちは!「お手紙やさんの言葉たち」です。今日は、私たちのライティングメンバーの一人が、新たにAmazon Kindleで小説を出版したという、とても嬉しいお知らせをお届けします!彼のデビュー作「38歳、ボクシングへの挑戦」にの続編、その名も「オッパ、ボクシングに挑戦!」がリリースされました!今回の続編では、前作の主人公である父親の物語から一転、子どもの視点でボクシングに挑む父を見つめる、新たなドラマが描かれています。家族の絆、挑戦の本当の意味、そして子どもの目線から見た成長と感動の物語が、再び私たちの心を揺さぶります。〜小説のあらすじ〜物語の語り手は主人公の息子。38歳の父親がボクシングを始めることを宣言したあの日、息子の目に映ったのは、普段の「オッパ」とは違う、どこか不器用で真剣な姿でした。最初は「なんで今さらボクシング?」と不思議に思いながらも、父の練習風景や試合に向けての準備をそばで見守るうちに、次第に父親への見方が変わっていきます。時には家族の応援に応えられず悩む父の背中。時には苦しい練習にも負けず立ち上がる姿。そんな父の挑戦を見つめる中で、息子自身も「挑む」ことの大切さに気づいていきます。この作品は、ただの親子の物語ではありません。日々の忙しさやプレッシャーの中で、自分自身を見失いかけている人々にとって、挑戦の本当の意味を問いかける一冊です。前作で感動された方はもちろん、親子の絆に興味がある方にもおすすめです。作品を読んで、ぜひ感想をお聞かせください!Amazon Kindleで「オッパ、ボクシングに挑戦!」と検索していただけると、作品が見つかります。感想やレビュ
0
カバー画像

鬼忌解界 〜KiKiKaiKai〜【ホラー小説サンプル/ポートフォリオ】

 小学生に上がる頃、私は地方都市から埼玉県の片田舎に引っ越した。  母親曰く、当時の私は「憂鬱」か「最悪」としか口にせず、あるいは「田舎なんて大嫌い」と大自然の暮らしに唾を吐いていたらしい。 山と森、坂道と家ばかりの不便な土地だった。お菓子ひとつ買うにも、自転車を三十分も漕がなければいけない。さらに夜は車も通らず、街灯もまばらだった。影や闇の距離が近く、どこにでも、なにかがいそうな不気味さを感じていた。 また多感な年頃だったせいか、静謐を自覚すると、自分の息遣いすら不自然に聞こえてくる。近くの池でぽちゃんとなにかが沈む音や、がさがさと葉の囁きが聞こえるたび、別の部屋で寝ている親が扉を開けるだけでも、私は布団の中で耳を塞いでいた。 幽霊や妖怪に怯えていたわけではないと思う。 ただ寂寥とした雰囲気に呑まれた私は「もう、この土地から永遠に出られないのではないか」という恐怖に何度も襲われていた。あの漠然とした不快感は、成人した現在でも言語化が難しい。 そんな私にとって唯一の楽しみは、夏休みだった。毎年、宿題は最初の一日か二日で終わらせ、旅に出る──行き先は、東京に住む祖父母の家だ。 両親によると、初めて一人で電車に乗ったのは小学二年生の頃だったらしい。 初孫だったせいか、祖父母には可愛がられた。行けば至れり尽くせり。母親は「お姉ちゃんだから」と我慢を強いる。しかし祖父母は「お姉ちゃんだから」とお小遣いを多目にくれるばかりか、食事もお寿司やケンタッキー、なんでも好きな物を買ってくれた。 まさにお姫さま気分、夢の国だった。 外に出れば徒歩圏内にさまざまな店があり、規模も大きい。また当然のよ
0
カバー画像

kona39の履修済み作品まとめ

こんにちは、ココナラで感想サービスを提供しているkona39です!ここでは、kona39に感想を依頼しようかな~どうしようかな~と思っている方のために、私が今まで履修した作品をまとめていきます!全部書くとえらいことになるので、二次創作でご依頼いただくことが多いものを中心に記載していきます。また下記に記載した作品はどれも大好きなものばかりですが、特に贔屓の・地雷のカップルはありませんのでご心配なくです^^以下ジャンルごとにあいうえお順で記載しています。漫画・アオアシ・宇宙兄弟・鬼滅の刃・キングダム・黒子のバスケ(途中まで)・薬屋 の ひとりごと・ゴールデンカムイ・呪術廻戦(途中まで)・スラムダンク・ダイヤのA(act2 途中まで)・東京卍リベンジャーズ・テニスの王子様(初期のアニメ作品のみ)・転生したらスライムだった件・転生賢者の異世界ライフ・Dr.STONE・ハイキュー!!・ハンター×ハンター(途中まで)・ブルーピリオド・ブルーロック・僕のヒーローアカデミア・ミステリと言う勿れ・名探偵コナン・ワールドトリガー(途中まで)・ONE PIECE(ワンピース)(途中まで)書ききれてないやつもいっっっっぱいあります…!お気軽にお問合せくださいませ^^ナマモノ・ジャニーズ 主にSnow Manが好き。他のグループも把握はしています。・ハリーポッターシリーズ(ナマモノなのかはあれですが…)逆に、ほぼ履修していないもの申し訳ないことに漫画・小説以外は本当に疎くて…ナマモノも上記以外は本当に疎いです…><アニメ(のみの作品)、ゲーム、VTuverなどは、ほとんど原作を調べながらも対応となります
0
カバー画像

肝試し♂×♀チェンジ!わたしたち入れ替わってる!?

今日から夏休み。クラスで仲の良い連中は好きな女子と夏に何するのかって話で持ちきりだ。僕はあんまり興味がなくて、曖昧な相槌だけして窓の外を見てた。夏空は澄み切っていてとても綺麗だ。「なあなあ!俺の話ちゃんと聞いてる!?」「うん?」「夏って言ったらやっぱ肝試しだろ!お前女子の友達いるだろ?」「あー。いるけどこの歳になって肝試しって」「このお年頃だから!楽しいんじゃんか!バカ!」「女子2人呼んできて、あの廃校に行こうぜ!」「はぁ?なんで僕がそんな子供だましに付き合わなきゃいけないわけ」「いいから!頼むよー!」親友のバカな頼みで幼馴染の女子とその友人と4人で夜の廃校に忍び込んだ。本当にバカバカしいよな。こんなことで女子にキャーキャー言われないしモテないって。でも、いざ廃校を目の前にするとちょっとイタズラ心が疼いてワクワクする。「よーし!張り切っていこう!俺はこの子と二人で行くからお前は幼馴染といけよ!」「いいよ」「僕もオーケー。じゃあただの肝試しだとつまらないからゲームをしようよ」「どんな?」「一番奥の離れの理科室まで行って証拠を持って早く帰ってきた方の勝ち。賞品はパートナーからのキス」「マジか!!!やるやる!!」___単純だな。でもこの手のノリもちょっと楽しいかも。「じゃあ。行くよ!よーい、どん!」一斉に4人は駆け出して廃校の門をくぐり闇の中へ消えていった。まずは、庭の鬱蒼とした草林を越えて蜘蛛の巣をくぐり下駄箱からボールの転がる体育館を通り抜けて、手探りで最奥の理科室を目指す。幾つもの教室を見て回ったけど、音楽室、美術室、視聴覚室、各教室。どれもハズレだった。「いい加減疲れたし、飽
0
カバー画像

【新規様】キーワードでオリジナル短編小説(4000文字程度)

いつもありがとうございます。 「キーワードでオリジナル短編小説(4000文字程度)」のお仕事依頼につきまして、 現在、大変多くのご提案をいただいている状況です。 キャンセル等があれば連絡することもございますので、メッセージ等でご連絡いただければと思います。 ご迷惑お掛けし、申し訳ございません 小説家を支援したいという私たちの気持ちで始めたプロジェクトになりますので、YouTube及びkindleでの収益が出るまではこのような対応になってしまい申し訳ございません。 今後は採用件数を増やし、単価も上げていきたいと考えておりますので応援のほど宜しくお願いいたします!!! 下記、「キーワードでオリジナル短編小説(4000文字程度)」の依頼概要を掲載します。 ▼依頼概要 予算 4,000 円 ジャンル    ー 用途・種類   小説 対応範囲    記事執筆 1記事の文字数 4,000文字 記事単価    4,000円 記事数     1記事 ▼依頼内容の詳細 依頼の概要・目的・背景 【概要】キーワードの文字を数個伝えますので、 そちらでオリジナルの短編小説を作成していただければと思います。 (最低字数が4000文字です) 【目的】YouTube、SNS、kindleなどに載せたいと考えております。 →収益が出た場合、小説制作費にあてさせていただく考えです。 (二次利用、現著作権の譲渡をお願い致します。 →製作する動画及び文章には、作者様の名前を書かせていただきます) 【依頼背景】小説家を目指す方々が、夢を諦めない世界を目指しています。 【納品物の形式】Word形式 / プロット不要 /
0
カバー画像

小説「最後の13月”弍”」

これは続編です。壱話をご覧になってからこの続きをお読みくださいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「みんな静かにしろ‼︎俺が職員室まで呼びにいくから静かに待ってろ」流石うちらのクラスの学級委員、斎藤くん。頼りになるなぁガラガラ〜「おい遅えぞ」「先生はいなかった、それも一人もな」「は?なんでだよ」「俺が考えるに、『人生リセット計画』はみんな知っているか?知っているだろうな。あの話は本当って言うことだ。あと一年となれば、貯金で生きることができるんだろう、ましてやお金に困れば、闇金にでも手を出せばいい、、」「そんじゃ学校は無くなるのか?」「そうゆうことになるな」「マジかよ‼︎よしゃ帰ろうぜー」そう櫛羅花が言うとみんなも一緒になって言った。「帰ろ帰ろ〜」「最高じゃん」「やった〜」みんなは一斉に教室を出たそして教室は一気に静かになった。確かに学校に来なくてもいいというのは嬉しい。けどなんでだろうか、この心の奥のモヤは。どうしようまだしたいことたくさんあるのに。「夢花。お前は帰らないのか?」そう斎藤くんが私に言った。「帰ろっかな。またね」「おう、じゃあな」私は帰りながら、今後したいことについて考えていた。「そうだな〜家族で旅行に行きたいよな、健斗、遊園地好きだから連れて行ってあげよ〜あとは、美味しいものたくさん食べて、、やりたいこと多いなぁ」そうしているうちに家についた。「ただいま〜、、、あれ誰もいないの。お父さん仕事休みって言ってたのに」家は電気ひとつ付いておらず、真っ暗だった。「うわ‼︎何これ誰か水でもこぼしたの?」靴を脱いでリビングに入ろうとすると、
0
カバー画像

 誰かと同じ歩幅で歩けること。それだけで、こんなにも心は軽くなる。

見えないものは、本当に大切なものほど、静かに、心へ届くのかもしれない。二人はしばらく、その景色を眺めていた。風が草を揺らす。雲がゆっくりと流れていく。誰も急がない。誰も、何かを話そうとはしなかった。それでも、不思議なくらい満たされていた。「そろそろ戻ろうか。」陽菜が立ち上がる。「うん。」丘を下る道は、来たときより少し急に感じた。草の間を縫うように続く細い道。凪は足元を見ながら慎重に歩く。そのときだった。小さな石につま先が触れ、体がふらりと傾く。「あっ……。」転ぶほどではなかった。でも、一瞬だけ体勢を崩した。「大丈夫?」陽菜がすぐに振り返る。「う、うん。」凪は慌てて笑う。「平気。」陽菜は少しだけ考えるような顔をして、それから歩き出した。さっきより、ほんの少しだけゆっくりと。凪も後ろから歩き始める。不思議だった。歩きやすい。急かされている感じがしない。「陽菜。」「ん?」「歩くの、遅くなった?」陽菜は振り返り、小さく笑った。「ばれた?」「うん。」「凪が歩きやすいかなって思って。」その一言に、凪は胸が熱くなる。「でも。」陽菜は続けた。「合わせてもらうばっかりって、疲れるでしょ?」「だから今日は、私が合わせたかった。」凪は何も言えなかった。今まで、自分は人に合わせることばかり考えてきた。友達にも。先生にも。家族にも。「みんなが歩きやすいように。」それが当たり前だと思っていた。だから、誰かが自分に歩幅を合わせてくれることが、こんなにも温かいものだなんて知らなかった。二人は並んで歩く。どちらが前でもなく。どちらが後ろでもなく。同じ速さで。その歩幅は、不思議なくらい心地よかった。やがて畑が見え
0
カバー画像

学校では見たことのない姿だった。

日曜日の朝。窓を開けると、やわらかな風が部屋の中へ流れ込んできた。青い空。雲はゆっくりと流れている。「晴れた。」思わず笑みがこぼれる。時計を見る。まだ待ち合わせまで一時間以上ある。それなのに、凪はもう淡い水色のブラウスに袖を通していた。鏡の前に立つ。髪を整えてみる。少しだけ前髪を直す。「……変じゃないかな。」言ってみてから、小さく笑う。出かけるだけなのに。こんなに何度も鏡を見るなんて、いつ以来だろう。母がリビングから声をかける。「今日はお友達と?」「うん。」「楽しんでおいで。」その一言に照れくさくなって、「行ってきます。」とだけ返した。駅へ向かう道は、いつもより少しだけ明るく見えた。約束の時間より十分早く着いた。改札の近くで待ちながら、人の流れをぼんやり眺める。休日の駅は、平日とは違う空気が流れている。買い物へ向かう家族。部活へ行く学生。旅行らしい大きな荷物を持った人。その中に、見慣れた姿を見つけた。「凪!」陽菜だった。白いブラウスに、淡いベージュのカーディガン。デニム生地のロングスカート。肩から小さなトートバッグを下げている。学校では見たことのない姿だった。凪は一瞬だけ言葉を失う。「おはよう。」陽菜が少し照れたように笑う。「待った?」「う、ううん。」凪は慌てて首を振る。「今来たところ。」ありきたりな言葉だった。本当は十五分も前に着いていたのに。陽菜はそんなことには気づかず、「よかった。」と笑う。その笑顔は学校と同じなのに、服が違うだけで、どこか少し大人びて見えた。「どうしたの?」陽菜が不思議そうに首をかしげる。「え?」「さっきから、私のこと見てる。」凪の頬がふっと熱くなる。「
0
カバー画像

恋のイルミネーション ―きらめきの距離と、ほどけない想い―第2章

この物語は「恋のイルミネーション物語」の第2部の作品です。■登場人物(第2部最適構成)◆メイン(物語を動かす)星野 るな(主人公)桐生 蒼(恋の相手)◆準メイン白雪 ひかり(経験者・支え)小日向 まな(気づき担当)橘 ゆずは(現実ツッコミ)◆サブ朝比奈 透(恋の完成形サンプル)白雪 母(日常の温度)第2章は初夏の物語ですこの物語から次の曲『蛍色イルミネーション』が生まれました。現在、いつも利用している配信業者から別の配信業者に変更して曲を登録しました。本来は6/5リリース予定でしたが6/15リリース致しました。曲タイトル『蛍色イルミネーション』第2章 蛍色イルミネーション編第1節「蛍が見えるらしいよ」 六月の終わり。 雨上がりの空気は、少しだけ夜の匂いを早く連れてくる。「るな先輩っ!」 放課後の廊下に響いた声に、私はゆっくり振り返った。 そこには、今日も元気いっぱいの小日向まなが立っていた。「……近い近い」「えへへ、すみませんっ。でも聞きました!? 今年、川沿いで蛍イベントやるらしいですよ!」「蛍?」 聞き返すと、まなは「そうです!」と目を輝かせる。「駅前の商店街と合同でやるみたいで! 初夏イルミネーションも試験点灯するんだって!」「へぇ……」 私は窓の外へ視線を向けた。 雨粒を残したグラウンド。 曇りかけた夕空。 少し湿った風。 もう、夏が近い。「絶対綺麗ですよねぇ……蛍とイルミネーションって、なんかエモくないですか!?」「急に語彙がTikTokなんよ」「だってほんとにエモそうなんですもん!」 まなは両手をぱたぱた振りながら興奮している。 その様子が少し可笑しくて、私は小さく
0
カバー画像

恋のイルミネーション制作日記『恋のイルミネーション ―冬の花火と、はじまりの手―』

現在Tiktok音源で多少使われるようになってきた曲「恋のイルミネーション」の制作日記です。【恋のイルミネーション音源】2026/1/11現在SoundOn調べTiktok投稿914件Tiktok側調べTiktok投稿498件(ストリーズが反映していないのかな?)Tiktok視聴回数約412600回恋とイルミネーションがマッチして音源が使われているのかな?色々なジャンルのクリエイターが音源を使ってくれています。この曲ができるに至ったのはオリジナル小説からです。では、その小説を先ずお読み頂けると嬉しいです。小説タイトル『恋のイルミネーション ―冬の花火と、はじまりの手―』ジャンル青春恋愛小説/アイドル的ラブストーリー/季節物(全年齢・やさしい恋)主要登場人物(7名・・・登場するであろう人物含む)1. 白雪 ひかり(しらゆき ひかり)年齢:17歳性別:女性立場:高校2年生性格:明るい・ちょっと照れ屋・感情表現が素直役割:主人公(女の子目線)「冬は寒いけど、君といるとあったかい」2. 朝比奈 透(あさひな とおる)年齢:18歳性別:男性立場:高校3年生性格:優しい・落ち着いている・少し不器用役割:恋のお相手3. 星野 るな年齢:17歳性別:女性立場:ひかりの親友性格:恋バナ担当・背中押し役4. 小日向 まな年齢:16歳性別:女性立場:後輩性格:元気・憧れ体質5. 朝比奈 恒一年齢:20歳性別:男性立場:透の兄性格:面倒見が良い役割:少し大人な視点6. 白雪 母年齢:40代性別:女性性格:やさしい役割:日常の温度感7. 街(イルミネーションのある商店街)擬似的な登場人物役割:恋を映す背
0
カバー画像

物語が音になる瞬間 ―『雪夢に触れる手』制作記

雪が降る夜、触れたはずの手の温もりだけがいつまでも消えずに残っている――そんな情景から生まれた物語があります。物語タイトル『雪夢(ゆめ)の灯(ひ)』第1章 初雪の気配町に初雪が舞い始めた日、青年・湊(みなと)は通勤途中の交差点で、一人の女性を見かける。白い息をこぼしながら、掌に落ちた雪を嬉しそうに眺めていた。その姿は、雪と同じほど淡く美しく、まるで今にも消えてしまいそうだった。湊はその横顔に、不思議な既視感を覚える。第2章 ふたつの温度翌日、図書館で偶然彼女を見つける。名前は灯(あかり)。手袋を忘れたと言って、冷えた手を気にせず雪の本ばかり読んでいた。手を差し出した湊の温かい掌に触れ、灯は驚いたように目を丸くする。「雪って冷たいのに、どうしてあんなに綺麗なんでしょうね」灯の言葉は、雪の白さと同じくらい透明で儚かった。第3章 白い街とふたりの距離雪の積もる日が続き、湊と灯は図書館や喫茶店で自然と会うようになる。灯は雪にまつわる細かな表現をよく知っていた。「粉雪」「花弁雪」「細雪」。湊は、彼女が語るたびに世界が静かに輝きを増すのを感じていた。ふたりの距離は少しずつ縮まり、けれどどこか触れたら壊れてしまうような緊張が漂っていた。曲タイトル『雪夢(ゆめ)に触れる手』(ゆきゆめに ふれるて)🎧 曲調雰囲気: 冬の静けさ、白い街、温かい息遣い映画のエンディングのような壮大さ儚いのに強い愛編成: 非公開ボーカルスタイル:非公開🎤 歌詞【Intro】白い息 ふわり消えて君の影 冬に溶けていく【Verse 1】初雪の交差点ですれ違ったあの日掌の上で踊る小さな結晶を見つめていたね触れたら壊れそうで
0
カバー画像

花の粉

春が近づくにつれ、空気中に花粉が舞い始めた。人々はマスクを着用し、鼻をかみ、目をこすりながら日常生活を送っていた。 ある日、私は花粉症で苦しんでいる友人と一緒に、山へハイキングに行くことになった。彼女はマスクを着用し、鼻をかみながら歩いていたが、私はまったくの無防備であった。最初は気にならなかったが、時間が経つにつれ、鼻水が止まらなくなり、目がかゆくなってきた。 やがて私たちは山頂に到着した。そこで、息を切らしながら、周囲の景色を見渡した。山の頂上には、たくさんの花が咲いていた。それらの花たちが、風に吹かれて花粉を散らし、私たちを襲ってきた。 私は目をこすりながら、友人に「こんなにたくさんの花があると、花粉症の人はどうするんだろうね?」と尋ねた。友人は「そうね、私たちはマスクを着用することで対処できるけれど、花たちはどうしているんだろうね?」と言った。 私たちは、花たちが花粉症に苦しむことを考えて、寄り添うように座り込んだ。すると、花たちの中から一輪の花が、私たちに話しかけてきた。 「ありがとう。でも、私たちは大丈夫だよ。私たちは風に吹かれて花粉を散らして、新しい花を咲かせるために生まれた存在だから。私たちにとって、花粉は命を繋ぐための重要なものなの。」 私たちは、花たちの言葉に感動し、その場で花たちに感謝の気持ちを伝えた。そして、花たちを見上げると、風に吹かれて、優雅に舞う花粉の姿が、美しくもあり、強くもあった。 私たちは、花粉症という辛さを忘れ、ただただ、花たちの美しさと命の尊さに気づかされたのであった。
0
カバー画像

自作小説 [線香花火]

 私の恋人は、死にたがりだ。  例えば、仕事がうまくいかなかったとき。例えば、夜うまく眠れなかったとき。例えば、作っていた料理を失敗したとき。例えば、芸能人の訃報をきいたとき。例えば、何もない休日をだらだらと過ごしているとき。 「ああ、もう。死にたい」  決まって彼はこうこぼす。 「もう、またそんなこと言って」  そのたびに、決まって私はこう返す。 「ダメだよ、あなたがいなくなったら、私が死んじゃう」 「大丈夫だよ、お前は」 「いやいや、大丈夫じゃないよう」  そう言って、私はからりと笑う。笑って見せる。 「大丈夫だって。お前はなんだかんだ生きてるよ」  嘘だ。  だって、少なくとも今、私の中の小さな私が死んだ。  彼の言葉によって、殺された。  彼が死をほのめかすたび、その言葉は私のハラワタに突き刺さる。そして、その中にあるたくさんの小さな私を葬っていく。  深くできた傷は大きな跡になり、その上にまた傷ができていく。何度ふさがっても、ぶり返したように痛みだす。この傷は、二度と治らない。ふさがりはしても、治りはしない。ずっと、永遠に、思い出したように痛みだすのだ。 「ねぇ、」  声をかければ、だらだらとゲームを続ける彼は「ん?」と声だけで返事をした。振り返らないその背中に、私は続ける。 「私より先には死なないって約束してよ」 「ええ、何それ」  笑いながら、彼は答える。 「そんなん、約束できるわけないじゃん。人間、いつ死ぬか、誰から死ぬかなんてわかんないんだからさ」  ああ、また、死んだ。 「うん、そっか。そうだよね」 「そうそう。そうだよ」  私は口を閉じ、彼のプレイするゲー
0
カバー画像

その笑顔を見ていると、不思議と安心する。

誰にも気づかれないくらいゆっくりと、一人の少女の心も育ち始めていた。「じゃあ今度は、凪ちゃんもやってみようか。」おばあちゃんは、枝豆の株をそっと指さした。「えっ、私がですか?」「うん。」「難しく考えなくていいよ。」凪は少し緊張しながら畑にしゃがみ込む。陽菜も隣にしゃがみ、にこっと笑った。「大丈夫。」「最初は私も失敗したから。」その一言に、凪の肩の力が少し抜ける。枝をそっと持つ。どの莢なら採っていいんだろう。さっき教わったことを思い出しながら、一つ選ぶ。「これ……かな。」恐る恐る摘み取る。「あ。」勢いがつきすぎて、枝が少し揺れた。「ご、ごめんなさい。」思わず謝る凪。その瞬間、おばあちゃんと陽菜が顔を見合わせて笑った。「謝らなくていいよ。」おばあちゃんは優しく首を振る。「野菜は、そのくらいじゃ怒らないから。」凪はきょとんとする。「それにね。」おばあちゃんは、摘み取った枝豆を手に取った。「ちゃんと採れてる。」「最初から百点じゃなくていいんだよ。」その言葉に、凪は何も言えなくなった。最初から百点じゃなくていい。その言葉は、今まで誰かに言ってもらいたかった言葉だったのかもしれない。学校では、間違えないように。迷惑をかけないように。失敗しないように。そんなことばかり考えてきた。だから、何かをする前から怖くなることもあった。でも今、失敗しても笑ってくれる人がいる。「ほら。」陽菜が、自分の手のひらを見せる。「私も形がバラバラ。」そこには、大きな枝豆も、小さな枝豆も混ざっていた。「本当だ。」凪が笑う。「完璧じゃないでしょ?」「うん。」「でも、おいしく食べられるよ。」陽菜はそう言って笑った。その笑
0
カバー画像

【短編小説サンプル】魔王城の求人票|会話劇・コメディ

短編小説制作サービスの掲載サンプルです。オリジナルキャラクターによる全年齢作品で、会話劇と少しブラックなコメディを中心にしています。制作補助として生成AIを使用し、構成判断、文章の選別、加筆修正、整合性確認、最終調整は作者本人が行っています。「こちら、……どなたが書いたのでしょう」人事部長のリディアは、机の上の羊皮紙を指一本で押さえた。紙に罪はなかった。その一方で書かれている内容はだいぶ有罪よりだとリディアは思う。できれば越権して裁いてしまいたいところだ。向かいに立つ魔王の側近ヴァルドは、すっと胸を張る。ドヤ顔。悪い男ではないのだが、とリディアは思う。鍛え上げたご自慢の大胸筋に手を添える彼の所作だけは、いつも本当に美しい。「私だ。人間界侵攻に備え、兵站部の人員を増やす」「そうですか。読みます。勤務時間、日の出から勝利まで」「勝てば終わる」「勝てなかった場合は」「翌日に持ち越す」リディアは羽根ペンを置いた。いっそ折ってしまいたかったが、あと最低三往復は続くやりとり。さすがにまだそういうわけにはいかない。「休日。魔王様の気分による」「陛下はまことに寛大だ」「先月の実績は」「二日あった」「一日は城が燃えて臨時休業です」「結果として休めたのなら、福利厚生ではないか」「災害です」応募資格の欄には、剣術経験三年以上、呪いへの耐性、勇者と血縁でないこと、――それから死亡時の備品返却が並んでいた。リディアはすっと半眼になる。見間違い。急に視力が落ちたのであってくれと少し思った。「ヴァルドさん。お聞きしますが、死亡後に備品を返す方法は」「遺族に頼む」「家族手当は」「そんな余裕はうちにはない」「無
0
カバー画像

声を探す君へ ── オーダーメイド小説サンプル

私の小説制作サービスでは、恋愛・再会・家族・感謝など、あなたの心に残るエピソードやテーマをもとに、一篇の小説として形にしています。「誰かへの贈り物にしたい」「自分の記憶を残したい」「言葉では伝えられない想いを届けたい」そんなとき、小説という形が“新しいあなたの声”になります。いただく情報は下記のようなものでOKです!①ジャンル②登場人物の関係性③結末のトーン(感動・希望・切なさ)あとは私が、あなたの言葉の温度を物語に変えていきます。もちろん具体的な情報も大歓迎です!【今回のサンプル】・文字数:7500文字程度 ・読了時間目安:15~20分前後 実際のご依頼では、2000文字程度の作品やそれ以下のボリュームでもお見積りいたします。このサンプル小説は、“声の記憶”をめぐるふたりの約束。最後まで読んだとき、あなたの心にも「ただいま」が届きますように。それではお楽しみください。「君を探す声」第1章 白い朝目を開けると、天井は白く、音だけが生きていた。一定の間隔で、小さな電子音――ピッ……ピッ……。どこかで水の落ちる音もする。見慣れていないはずなのに、嫌いじゃない静けさだった。俺は名前を名乗れる。優真。そこまでは確かだ。けれど、それ以外の輪郭は、霧の中に置き忘れてきたみたいにぼやける。“誰か”を探している気がして、胸の奥が空洞のように疼いた。ベッド脇のテーブルにスマホが置かれている。ロック画面には時間だけ。07:02。日付表示の欄が、なぜか空欄になっていた。指が勝手にスワイプしようとして止まる。パスコードが思い出せない。代わりに、ホームボタンを二度押すと、録音アプリが立ち上がった。起動
0
カバー画像

狂信者

 母がトラックにはねられたと聞いたとき、身体中から力が抜けた。駆けつけた病院で医師から「このまま意識が戻らない可能性も覚悟していてください」と言われたときようやく実感が湧き、人目を憚らず泣いてしまった。  母は認知症を患っていた。病状はそれほど良くはなく、普段は落ち着いているのだが、ひどいときはわたしを泥棒だと勘違いして泣きわめくこともあった。そんな調子では当然一人で外出もさせられない。いつか赤信号の意味も忘れて道路に飛び出してしまうのではないか――  だが結婚四年目のわたしには介護ヘルパーを頼むような金もなく、夫と住むマンションと母の待つ実家を行き来する生活が続いた。  重たかった。今年でわたしも二十八だ。夫との時間が奪われるのはつらいし、そろそろ子どもだって考えている。  夫に相談すると、 「そうは言ってもお義母さんがあんな調子じゃな」  そう厳しい横顔で言われた。 「それはそうだけど……」 「でも確かに子どもは欲しいね。子どもができたら僕、何でもしてあげちゃうな」  幸せそうな笑顔だった。瞳に諦観が滲んでいるのが見えて苦しくなった。わたしが彼との結婚を決めたのは、笑ったときの瞳の色が好きだったからだ。それが今濁っている―― 「そうね、わたしも。わたしも子どものためなら何でもする」  そして、あなたのためにも。  心の中でそっと呟き、夫の笑顔を免罪符として掲げた。  ほんの少し可能性を上げるだけで良かった。母の調子が悪い日、鍵を開けておく。ただそれだけを半年間繰り返した。  ようやく結果が出たのだ。わたしは泣きはらした瞼を擦りながら、昏い笑いに背を震えさせていた。医師はわた
0
カバー画像

輪廻

「ルリ、ちょっとくらい寝ててもいいよ。疲れたでしょ」  夕刻、リビングのソファで父が私の頭を撫でる。そこに邪念がないことにがっかりする。 「ぼくが後で起こしてあげるから」 「お父さん、もういいから」私はそう言って、父の手をやんわりと払う。寂しそうな顔で父は、「もう中学生だから恥ずかしいか」と苦笑いを浮かべた。それが普通の考え方だ。  みんな、年頃の子は中学生にもなれば思春期が訪れて、人目を気にしたり、親とのひとときを煩わしく思うようになる。  俗に、そういうものを成熟と呼ぶのなら、残念ながら私は未熟だろう。大人になったとはとても言えない。家族は好きだし、家族と過ごすのも好きだ。そしてその上、実の父親に自覚的な恋心まで抱いてしまっているのだから。病死した母には、合わせる顔もない。  もしこの気持ちがバレてしまったら、私はどうなるだろう。家族から疎まれるだけでは済みそうにない。普段から慕ってくれている双子の妹もわたしを侮蔑するだろう。学校でも我慢ならない恥辱を味わうことになるに違いない。だから、この父への愛情という名前のゆるされない気持ちは墓まで持って行くと決めている。  地獄の苦しみがそこにあっても、構いやしない。 「もうそろそろハリも、部活から帰ってくるだろうから、ご飯にしようか」  名残惜しさすら見せず父はソファを立った。父は私も妹も平等に愛しているから当然だ。すぐに父はキッチンの方へ消えた。  すっと、瞼が重くなった。好きな人の横にいて緊張しないなんて、無理な話だ。  実の父親が恋愛対象だろうが、そこは一般的な感覚と変わらない。この、緊張や恐れすらも異常になっていれば良かっ
0
カバー画像

病に至る恋(仮題:Hello, I'm Victim)

 猥雑な喧噪に埋もれた居酒屋の座敷で中学の同窓会は行われていた。座は緊張感と好奇心とで満たされており、誰もが顔に笑みを貼り付け、忙しなく酒を口に運んでいる。  僕は座卓の端に坐り、当たり障りのない話に花を咲かしているクラスメイトを順に見ていた。みんな変わってしまっていて、中には十年前の面影すら残っておらず、一目見ただけでは誰か分からない顔もあった。  だが、彼女が来ていないことだけは確かだった。もしもここに彼女がいるとすれば、どれだけ変わっていようと、すぐに見分けられる自信があった。 「久しぶりだな、片山」  その声に視線を戻すと、中学時代一番仲の良かった伊神が僕の隣にどかりと腰を下ろし、両手に持ったグラスの片方を差し出した。 「って言ってもお前はあんまり変わらないな」 「伊神こそ」  僕らは互いのグラスを打ち付け、雑談に興じた。話すことは他愛のないことばかりだったが、左手の薬指に指輪が嵌まっているのを見る限り、彼の人生は順調なようだった。 「最近は全然いいこともないな。会社でもめんどうな仕事ばっかり振られるんだ」  そう言ったとき、伊神は鼻を擦っていたから多分嘘なのだろう。彼は嘘をつくとき鼻を擦る癖がある。きっとあまりパッとしない僕に気を遣ってくれたのだ。  僕は伊神の楽しげな仕事の愚痴に相槌を打ちながら、古傷を撫でるような慎重さで十年前の彼女を思い返していた。      ○ 中学二年の夏。折川おりかわ小春こはるから科学準備室に呼び出されたとき、何の期待もなかったと言えば嘘になる。科学準備室は全くといっていいほど人気のない、旧校舎にある一室だった。加えて、彼女には良くない噂が
0
カバー画像

「キャットとオウルの冒険」第2話 時の旅人

図書館の静寂が二人を迎え入れた。窓から射し込む陽光が、古びた本のページを黄金色に染めていた。ミトンは尻尾をふりふりと振りながら、膨大な書棚の一つを探っていた。その側には、眼鏡をかけたフクロウのフクリーが立っていて、ほとんど不動の姿勢で本を読んでいた。 「フクリー、見てみて!これすごくない?」 ミトンが目を輝かせながら大きな本を持って駆け寄った。 「『時の旅人―過去への道』っていう本だよ!」 フクリーは本のタイトルを眺め、興味津々な表情を浮かべた。 「ああ、それはかなり珍しい本だな。時間旅行に関する魔法が書かれているんだろう?」 ミトンはにっこりと笑い、うなずいた。 「そうなんだよ、想像しただけでわくわくするよね!中にはどんな魔法が書いてあるんだろう…」 フクリーは心配そうに眼鏡を直しながら言った。 「ミトン、それは大変な魔法かもしれないから、注意が必要だよ。いきなり開くのはどうかな…」  しかし、ミトンの好奇心はすでに彼を先へと駆り立てていた。 「大丈夫、フクリー!一緒にいれば何とかなるよ!」 彼は再びにっこりと笑い、その場を去った。フクリーは苦笑いしながら、ミトンの後を追いかけた。  ミトンが一心不乱にその大きな本を開いた瞬間、突如として現れた強い風が二人を取り巻いた。 「フクリー、何これ!?」 ミトンが驚きの声を上げる。 フクリーは風に煽られながらも、「ミトン、それが時間旅行の魔法だ!」と大声で叫んだ。その言葉が終わる前に、一瞬の閃光とともに、二人は未知の場所に飛ばされてしまった。  周囲を見渡すと、彼らは中世の魔法学校のような場所にいた。建物は石造りで、天井は高く、壁には
0
カバー画像

小説執筆#2『夏色キャンバス』

夏の高校、文化祭の季節。芸術部の僕、海斗は先輩の絵里子にひそかな想いを寄せていた。絵里子は才能あふれる画家で、僕は彼女の描く世界に心から魅了されていた。 ある日、絵里子が僕に向けて言った。「海斗ー!一緒に文化祭の壁画を描こう…?」 その一言に僕の心は飛び跳ねた。しかし、同時にプレッシャーも感じた。彼女の期待に応えられるだろうか。  文化祭に向けての準備が始まり、僕たちは壁画の制作に打ち込んだ。 「絵里子、この色合いはどうかな…?」僕が尋ねると、彼女はにっこりと微笑んだ。 「めっちゃ鮮やかで綺麗だよ!海斗君のセンス良くて好きよ。」  しかし、作業が進むにつれ、僕の緊張はピークに達した。絵里子に告白すべきかどうか、揺れ動いていた。 「海斗、どうしたの?何か心配事があるの?」 絵里子が気にかけてくれた。僕は深呼吸し、決断した。 「絵里子、ずっと前から好きでした。付き合ってください。」 僕の告白に、絵里子は少し驚いた表情を見せた。 「違うなって思ったら別れるで良いから、それでも僕は絵里子と一緒にいたい。」と続けて言った。僕はもう胸が張り裂けそうになっていた。 しかし、次の瞬間、彼女は優しく微笑んだ。 「海斗、ありがとう。私も海斗のことが好きだよ。」  文化祭の当日、僕たちの壁画は大評判となった。壁画の前で、絵里子は僕の手を握り、「これからも一緒に絵を描こうね。」 と囁いた。僕は彼女に微笑みかけ、夏の思い出が色鮮やかに心に刻まれた。 あなたの言葉、私が形にします! これまで膨大な数の文章を書き上げ、その中には作文コンクールの最優秀賞を受賞した作品も含まれています。この経験とスキルを活かし
0
カバー画像

小説執筆#1『キャットとオウルの冒険』

 アルカナ魔法学校、その壮大な図書館には幾千もの魔法書が並んでいた。その片隅には、元気いっぱいの黒猫のミトンと、知識豊富なフクロウのフクリーがいつも一緒だった。どんな時も一緒にいる二人は、学校中でも有名な親友だった。「フクリー、図書館の最深部にあると噂の宝探しの魔法の書を探しに行こうよー!」とミトンが目を輝かせながら提案した。フクリーは眼鏡を直し、「そんなもの、本当に存在すると思うのか、ミトン?」と疑い深く問いかけた。 ミトンはにっこりと笑って、「あると信じれば、きっと見つかるよ。信じて探すんだよ!」と意気揚々と返した。そして二人は図書館の奥深く、薄暗い書棚を探し始めた。  長い時間が経った後、「これだよ、フクリー!見つけたよ。」ミトンが埃にまみれた古い魔法書を引きずり出した。その瞬間、本を開くと突如大きな嵐が発生し、二人は見知らぬ森に飛ばされてしまった。 フクリーは森を見回し、「どうしたのこれ!ミトン、お前のやることはいつも大変だな…。でも、ここはどこだろう?とにかく、一緒に帰る方法を見つけよう!」と提案した。  彼らは森を探索し、夜になれば星を観測し、日が昇れば植物を調べた。森の中には謎が満ちていて、それぞれが自分の得意分野を活かしながら解き明かしていった。  やがて、森の試練を乗り越え、知恵と勇気を使って学校に戻ることができた。その冒険を通じて、彼らの友情はさらに深まり、それぞれが自分たちの強みをより一層発見できた。 「フクリー、次は何を探しに行こうかな?」と興奮冷めやらぬミトンが質問すると、フクリーは苦笑いして、「もう少し図書館で静かに勉強しようよ、ミトン。だけど、また
0
88 件中 1 - 60