第3話 幸せのスキル 〜Moon‘s Sutra〜むーちゃんと世界のほんとうのはなし 第3話〜
私は月から来た猫。静けさの中に満ちることを知り、今日も、この地上に降り立つ。人は、私をこう呼ぶー……「オキシトシーーン!!!」……突如叫ばれた謎の単語。名乗る間もなく、私は“幸せホルモン”として召喚されたようだった。後ろから迫りくるスキップと駆け足の入り混じる足音に嫌な予感がする。耳をすばやく伏せ、体勢を低くする。「オッキシットシーン!!」叫びながら突進してきたアロンダスの手が、私の尻のあたりをわしっと掴んだ。──まったくもって、失礼な朝である。***昨日、帰ってくるなり、彼はソファにのけぞった。「今朝コンビニで、肉まん買ったら当たりシールついてたんだけどさ… 一瞬、“おっ”て思ったけど、 …それだけで終わったんだよね。」画面をスクロールしながら、つぶやきが続く。「…なんか俺、嬉しいことがあっても、嬉しくならない体質なのかも…」アロンダスはしばらく黙って、スマホに「幸せ 感じない 理由」と打ち込んだ。そして。ブツブツ言いながらソファに寝っ転がり、いかにも悲劇にみまわれた男の顔で、スマホをにかじりつきだした。「やっぱり科学的に見ても幸せホルモンはオキシトシンだな。…オキシトシンを出すには、“人とのスキンシップ”“ぬくもり”“信頼”──」窓辺で香箱座りしながら、彼の呟きを横耳で聞いていた時は、まさか私に被害が及ぶとは思わなかったのだった…。***「うふふ うふふ ムーーーーーちゃーーーーんっ」その夜、アロンダスはいつにも増して妙にベタベタとまとわりついてきた。突然私の背中を撫でまわすのだが、妙に力が強いのだ。なんだか、鷲掴みにされてるような、私を離さないというようなオーラが漂い、私
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