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待ってる凪、想像できるから

電話の向こうで、陽菜がくすっと笑う。その音だけで、胸の奥が少しあたたかくなる。沈黙。切りたくない。凪は、少しだけスマホを握り直す。「……ねえ」小さく呼ぶ。陽菜が、すぐに返す。「ん?」その“間のなさ”に、少しだけドキッとする。凪は、ほんの少しだけ勇気を出す。「明日さ」少し間。「どこから帰る?」陽菜が、笑う。「それ、もう決まってるやつじゃない?」少しだけ意地悪。でも、楽しそう。凪も、つられて笑う。「じゃあ……」少しだけ声が小さくなる。「門のとこ、待っててもいい?」言った瞬間、少しだけ心臓が速くなる。返事を待つ時間が、やけに長く感じる。すぐに返ってくる。「いいよ」やわらかい声。それだけで、安心する。それだけじゃ終わらない。陽菜が、続ける。「むしろ」少し間。「迎えに行くけど?」その一言。凪の頬が、少し熱くなる。「え、なんで」少し慌てる。陽菜が、軽く笑う。「だってさ」少しだけ声が近づく。「待ってる凪、想像できるから」その言い方。ちょっとずるい。けど、すごくうれしい。凪は、少しだけ黙る。言葉が出てこない。「……じゃあ」やっと出た声。「お願いしていい?」素直に。まっすぐに。陽菜が、すぐに返す。「いいよ」短いけど、笑ってるのがわかる。そのとき、窓の外で、風が少しだけ強くなる。カーテンが、ふわっと揺れる。凪は、そのまま空を見上げる。(……なんか)少しだけ思う。いままでとは、違う。この感じ、安心だけじゃない。嫌じゃない。少しだけ、楽しみ。「ねえ、凪」陽菜が、また呼ぶ。「なに?」凪が返す。少しだけ、自然に。「明日さ」少し間。「ちゃんと来てね」その言い方。軽いのに、少しだけ意味がある。凪は、ゆっくりう
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その言葉。自分がずっと求めていたもの。

電話の向こうで、少しだけ息が重なる。沈黙。でも。嫌じゃない。むしろ、少しだけ、近い。陽菜が、ぽつりと。「ねえ」やわらかい声。「今日さ」少し間。「手、つないだじゃん」凪の心臓が、ドクンと鳴る。思い出す。あの夕焼け。あの温度。「……うん」小さく返す。陽菜が、少しだけ笑う。「なんかさ」声が、ほんの少しだけやわらぐ。「安心した」その一言。凪の胸が、ぎゅっとなる。(……安心)その言葉。自分がずっと求めていたもの。でも、今は違う意味で届く。凪は、ゆっくり言う。「わたしも」正直に。「陽菜といると、安心する」電話の向こうで、少しだけ沈黙。それから、小さく笑う声。「それさ」少しだけ意地悪に。「ずるくない?」凪が、少しだけ慌てる。「え、なんで」陽菜が、くすっと笑う。「だって」少し間。「嬉しいじゃん」その言い方、まっすぐすぎて、凪の頬が、少し熱くなる。窓の外。夜の空。でも、今は、少しだけあたたかい。陽菜が、少しだけ声を落とす。「ねえ、凪」呼び方が、少しだけ違う。やわらかい。「無理してるときの凪よりさ」少し間。「今の凪のほうが、好きかも」その言葉。まっすぐ届く。凪は、言葉を失う。嬉しいのか。恥ずかしいのか。少し、わからない。でも、確かに、心が動いている。「……陽菜ってさ」やっと、声が出る。「そういうこと、普通に言うよね」陽菜が、すぐに返す。「言わないと、伝わんないじゃん」少しだけ笑う。その言葉、今日、何度も聞いた気がする。でも、今は、少し違って響く。凪は、ふっと笑う。「……そっか」小さく、でも、ちゃんと。そのとき、陽菜が、ぽつりと。「ねえ」少しだけ声が低くなる。「明日さ」間。「ちょっとだけ、一緒に帰ら
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やっと同じとこに立てた感じする

夕焼けの光が、二人の手をやわらかく包む。凪と陽菜。握ったままの手。強くもなく、弱くもなく。ちょうどいい力。その温度が、少しずつ伝わっていく。陽菜が、少しだけ笑う。「……変な感じ」凪も、少しだけ笑う。「うん」短い言葉。でも、どこか安心している声。手を、そっと離す。距離は、さっきより近い。陽菜が、軽く息を吐く。「なんかさ」少しだけ目を細める。「やっと同じとこに立てた感じする」その言葉に、凪の胸がやわらぐ。ずっと、どこかズレていた。でも今は。同じ場所。同じ高さ。そのとき、悠真が、小さく笑う。「それ、俺たちも入っていいやつ?」陽菜が、すぐに返す。「ダメって言ったらどうするの?」少し意地悪に。でも、楽しそうに。悠真は、肩をすくめる。「じゃあ、勝手に入る」そのやりとりに、空気がふっと軽くなる。蓮も、静かに笑う。「それなら、俺も」自然に。でも、ちゃんとそこにいる言い方。四人の距離が、また少しだけ近づく。誰かが外じゃない。誰かが上でも下でもない。ただ、同じ場所にいる。陽菜が、ふと真面目な顔になる。「でもさ」少しだけ間。「これ、簡単じゃないよね」その言葉。現実。凪が、うなずく。「うん」悠真も、ゆっくり言う。「でも、やるしかない」短く。でも、強い。蓮が、続ける。「逃げないって決めたしね」その言葉で、さっき決めた“ルール”が重なる。陽菜が、少しだけ笑う。「じゃあさ」軽く手を振る。「とりあえず今日だけは」少し間。「難しいこと考えない日にしよ」その一言。四人が、少しだけ息を抜く。凪は、窓の外を見る。夕焼けが、少しずつ夜に変わっていく。終わりじゃない。ただの切り替わり。そして、凪は、三人を見る。「……帰ろ
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意識は、放課後に向かっている。

教室のドアが開く。朝のざわめきが、ふっと流れ込む。いつもと同じ景色。でも、四人にとっては、まったく違う朝だった。席に向かう。凪は、ゆっくり歩く。背中に、いくつかの視線を感じる。悠真。蓮。そして、少し離れた場所に陽菜。誰も、何も言わない。椅子を引く音。静かに座る。教科書を出す。ページを開く。文字は見えているのに、頭に入らない。(放課後……)その言葉だけが、浮かぶ。今日、全部が決まる。そんな予感。ふと、隣の席から、小さな声。「凪」悠真。凪は、少しだけ顔を向ける。近い距離。でも、今はちゃんと見れる。「今日さ」声は、低くて落ち着いている。「逃げないでくれる?」その言葉。お願いじゃない。でも、強制でもない。凪は、少しだけ息を吸う。「……逃げないよ」はっきりと決めた言葉。悠真の目が、少しだけやわらぐ。そのとき、後ろから、軽い声。「いいね」蓮。凪の心が、少しだけ揺れる。振り向く。蓮は、やわらかく笑っている。でも、その奥に、静かな強さ。「ちゃんと向き合うなら」少しだけ間。「俺も、逃げないよ」空気が、ピンと張る。凪の胸が、大きく鳴る。悠真の視線が、蓮に向く。言葉はない。でも、火がついた。陽菜が、机に肘をつく。少しだけ笑う。「なんかさ」ため息みたいに。でも、楽しそうに。「青春って感じじゃん」軽く言う。その一言で、空気が少しだけ抜ける。凪は、小さく笑う。ほんの少しだけ。ちゃんと、自分の笑い。チャイムが鳴る。授業が始まる。でも、誰の心も、ここにはない。時間は進む。意識は、放課後に向かっている。そして、その時間は、思っているよりも早く訪れる。放課後。教室の空気が、少しずつ変わる。人が減っていく。ざわめき
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好きと安心。二つの感情が、同じ場所で動き始めている。

校門の前。朝の光が、少しだけ揺れる。凪の言葉のあと。「……でもね」その続きが、まだ空気の中に残っている。悠真は、待っている。急かさない。逃がさない距離で。凪は、小さく息を吸う。言わなきゃ。そう思うほど、言葉が重くなる。それでも、ゆっくり口を開く。「悠真のこと」名前を呼ぶ。それだけで、胸が少しだけ痛くなる。「好きだよ」はっきりと、逃げずに言う。悠真の目が、わずかに動く。空気が、一瞬止まる。でも、凪は続ける。止まらない。「でも」少し間。言葉を選ぶ。「一緒にいるとき」視線が、少しだけ揺れる。「無理してた」その一言が、静かに落ちる。悠真の呼吸が、少しだけ変わる。凪は、続ける。「嫌われたくなくて」少しだけ声が震える。「ちゃんとしなきゃって思って」一歩、少しだけ踏み出す。「自分じゃなくなってた」言えた。全部じゃないけど一番大事なところ。空気が、深くなる。重くはない。軽くもない。悠真は、少しだけ下を向く。考えている。逃げずに。それから、ゆっくり顔を上げる。「……そっか」短い言葉。ちゃんと受け止めている声。凪の胸が、少しだけほどける。そのとき、後ろから、軽い足音。「おはよー!」陽菜だ。いつも通りの明るさ。でも、その目は、少しだけ空気を読んでいる。凪と悠真を見る。ほんの一瞬。それだけで、全部を察したような顔。でも、何も言わない。ただ、笑う。「朝から真面目な顔してるじゃん」軽く言う。空気を壊さない程度に。その距離感が、やさしい。少し離れた場所。校門の影。蓮が、静かに見ている。表情は変わらない。視線だけが、少しだけ深い。凪は、まだ気づいていない。物語は、もう止まらない。好きと安心。二つの感情が、同じ
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まだ誰も気づいていない

校門の前。朝の光が、少しだけ強くなる。凪と悠真。ほんの少しの距離。その距離が、やけに遠く感じる。「……おはよう」さっき交わした言葉の余韻が、まだ残っている。次の言葉が、出ない。凪は、少しだけ指を握る。逃げないと決めたのに。やっぱり、少しだけ怖い。悠真が、ゆっくり口を開く。「昨日のことなんだけど」その声は、落ち着いていた。でも、どこかで、迷っている。凪は、うなずく。「……うん」短い返事。でも、ちゃんと聞く姿勢。悠真は、少しだけ息を吸う。「俺さ」少し間。視線を外さない。「ちゃんと見てるつもりだった」凪の心臓が、少しだけ強く鳴る。「でも」悠真の声が、少しだけ低くなる。「見てなかったかもしれない」その言葉に、凪は少しだけ目を見開く。予想していなかった言葉。悠真は、続ける。「昨日さ」少しだけ苦笑する。「陽菜にも言われたんだよ」一瞬だけ、空気が揺れる。「……ゆうまのおばかさんって」凪の心が、少しだけ揺れる。その言葉。どこか、引っかかる。でも、不思議と、やさしく響いた。悠真は、少しだけ目を細める。「たぶん、俺」少し間。「ちゃんと見てなかった」まっすぐな言葉。逃げていない。そのことが、伝わる。凪は、少しだけ息を止める。胸の奥が、静かに揺れる。(……あ)昨日、感じた違和感。それが、少しだけ形になる。悠真は、続ける。「だから」一歩、少しだけ近づく。距離が、ほんの少し縮まる。「ちゃんと知りたい」その言葉が、静かに落ちる。凪の視線が、揺れる。逃げたくなる。でも、逃げないと決めた。凪は、小さく息を吸う。「……わたしも」声が、少しだけ震える。震えが止まらない。「ちゃんと話したい」言えた。はじめて、ちゃんと
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ちょっとだけ、理由ある

通話の向こうで、陽菜の呼吸が少しだけ近くなる。「ねえ、凪」やわらかい声。さっきより、少しだけ低い。凪の胸が、また小さく跳ねる。「なに?」自然に返したつもりなのに、声が少しだけやさしくなっている。陽菜が、少しだけためらう。その“間”が、やけに長く感じる。「さっきのさ」ゆっくりと言葉を選ぶように。「迎えに行くってやつ」凪の指が、スマホの端をなぞる。「……うん」陽菜が、小さく息を吐く。「ほんとはさ」少し間。「ちょっとだけ、理由ある」凪の心臓が、ひとつ大きく鳴る。「理由?」声が、ほんの少しだけ上ずる。陽菜が、くすっと笑う。でも、その奥に、ちゃんと本音。「凪が待ってる顔」少し間。「見たいなって思った」その一言。胸の奥が、じんわり熱くなる。恥ずかしい。でも、うれしい。凪は、思わず目を伏せる。誰にも見られてないのに。「……そんな顔、しないよ」小さく言い返す。でも、少し照れているのがわかる。陽菜が、すぐに返す。「するよ」短く。でも、確信してる声。「今もしてるでしょ?」その言い方。ちょっとずるい。凪は、思わず笑ってしまう。「見えないでしょ」陽菜も、笑う。「想像できる」軽いのに。まっすぐ。そのとき。凪の中で、何かがほどける。(あ……)この感じ。安心とも、違う。でも、ちゃんと心が動いてる。凪は、少しだけ深呼吸する。それから――「じゃあさ」自分から言葉を出す。陽菜が、少しだけ驚いたように。「なに?」凪は、少しだけ笑う。「明日」間。「ちゃんと見ててよ」その一言。電話の向こうで、一瞬沈黙。それから、小さく、息をのむ音。「……いいの?」少しだけ、声が変わる。凪は、うなずく。見えないのに。「うん」静かに。でも
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距離はあるのに。心は、近い。

電話の向こうで、笑い声が重なる。さっきまでの少しぎこちない空気は、もうない。自然に話してる。それだけで、少しうれしい。陽菜が、ふっと声を落とす。「ねえ」少しだけ間。「今、何してる?」凪は、少しだけ部屋を見渡す。「ノート見てた」正直に答える。陽菜が、くすっと笑う。「まじめだね」軽い声。でも、どこかやさしい。凪も、少しだけ笑う。「全然進んでないけど」そのやりとり。なんでもない会話。でも、なんでこんなに、安心するんだろう。そのとき、陽菜が、ぽつりと。「さ」少しだけ声が近づく。「今からさ、窓開けてみて」凪が、少しだけ驚く。「え?」「いいから」少しだけ笑いながら。でも、ちょっと強引。凪は、立ち上がる。カーテンを少し開けて。窓を、ゆっくり開ける。夜の空気が、ふわっと入ってくる。少し冷たい。でも、気持ちいい。「……開けた」凪が言うと。陽菜が、少しだけうれしそうに言う。「ね」少し間。「同じ空気だよ」その一言。凪の心が、ふっとほどける。離れているのに。同じ夜。同じ空気。つながってる感じ。凪は、少しだけ空を見上げる。星が、少しだけ見える。「……ほんとだ」小さくつぶやく。その声が、少しだけやわらかい。陽菜が、続ける。「だからさ」少しだけ照れたように。「そんなに遠くないよ」その言葉。凪の胸に、じんわり広がる。距離はあるのに。心は、近い。凪は、気づく。(あ……)この感じ。安心とも、違う。でも、すごく、あたたかい。「……陽菜」少しだけ声を出す。陽菜が、すぐに返す。「なに?」凪は、少しだけ迷って。逃げずに言う。「明日、一緒に帰るの」少し間。「楽しみ」その一言。電話の向こうで、少しだけ沈黙。それから、小さく笑
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ちょっとだけ、話せる?

夜、深くなる。時計の針の音だけが、部屋に響く。凪は、ノートを見つめたまま動かない。「わたしは、どうしたい?」書いたままの一行。答えは、まだないけど、その問いを消したくはなかった。(……逃げないって、こういうことかも)凪は、ゆっくりペンを置く。窓を開ける。少し冷たい風が、部屋に入ってくる。胸の中のもやもやが、少しだけほどける。そのとき、スマホが、ふっと光る。メッセージ。差出人――陽菜。凪の指が、少しだけ止まる。ゆっくり開く。「ねえ、起きてる?」短い一文。いつもの軽さ。でも、今は、少し違って見える。凪は、少しだけ迷ってから打つ。「起きてるよ」すぐに、既読がつく。少し間。それから、「ちょっとだけ、話せる?」その言葉に、凪の胸が、少しだけ強く鳴る。(……来た)逃げないって決めた夜。凪は、小さく息を吸う。「うん」短く返す。すぐに、通話の着信。画面に映る名前。陽菜。凪は、一瞬だけ目を閉じる。それから、通話ボタンを押す。「……もしもし」少しだけ緊張した声。向こう側で、陽菜が小さく笑う。「なんかさ」軽く始める。その奥に、本音がある。「今日の続き、しよっか」その一言で、空気が、少しだけ変わる。そして、止まっていた“関係”が、静かにもう一度、動き出す。
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これからどうすんの?

夕焼けの光が、少しずつやわらいでいく。教室の中。さっきまでの重さは、もうない。でも、全部が解決したわけでもない。その“途中”の空気。凪は、三人を見る。悠真。蓮。陽菜。同じ場所に立っている。それだけで、少しだけ安心する。陽菜が、ふっと笑う。「でさ」軽く首をかしげる。「これからどうすんの?」さっきと同じ問い。でも、今は少しだけ、やわらかい。凪は、少しだけ考える。答えは、まだない。逃げないことだけは決めている。「……普通に、過ごしたい」ぽつりと。でも、ちゃんとした声。「みんなと」その一言に、三人の表情が少しだけ変わる。驚き。でも、否定ではない。悠真が、ゆっくりうなずく。「いいと思う」短く。でも、まっすぐに。蓮も、少しだけ笑う。「それが一番むずかしいけどね」やわらかい声。でも、本音。凪も、少しだけ笑う。「うん」そのとき。陽菜が、少しだけ前に出る。「じゃあさ」軽く手を叩く。「ルール決めよ」三人が、少し驚く。陽菜は、にやっと笑う。「重くならないやつね」その言い方。いつもの陽菜に戻りつつある。さっきの本音を知っているから、違って見える。「まず」指を一本立てる。「無理しない」凪の胸が、少しだけ動く。「二つ目、ちゃんと言う」悠真が、少しだけ苦笑する。「それ、俺に言ってる?」陽菜が、笑う。「全員に」空気が、少しだけ軽くなる。「三つ目」少し間。「逃げない」その言葉で。また、空気が少しだけ締まる。でも、怖くはない。さっきより、ちゃんと立てているから。凪は、うなずく。「……いいと思う」自分の言葉で、悠真も、ゆっくりうなずく。「守る」短く。蓮も、少しだけ目を細める。「それなら、やれる」陽菜が、満足そうに笑
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やっぱり、凪ってそういうとこあるよね

教室の空気が、ゆっくりと沈む。夕焼けの色が、少しだけ濃くなる。陽菜の言葉のあと誰も、すぐには動けなかった。凪は、陽菜を見る。今まで知っていた陽菜じゃない。でも、これも陽菜。そのことが、ちゃんと伝わってくる。凪は、小さく息を吸う。「……陽菜」名前を呼ぶ。少しだけ、やさしく。でも、逃げない声で。陽菜は、顔を上げない。視線は、床のまま。でも、聞いている。凪は、一歩だけ近づく。距離を、縮める。「のけものじゃないよ」はっきりと、言い切る。陽菜の肩が、わずかに動く。凪は、続ける。「わたしが勝手に、  そういう形にしてただけ」少し間。「ちゃんと見てなかった」その言葉に、悠真と蓮の視線も、凪に向く。凪は、陽菜から目をそらさない。「陽菜がどう思ってたか」少しだけ声が揺れる。でも、止めない。「ちゃんと知ろうとしてなかった」正直な言葉。言い訳じゃない。陽菜が、ゆっくり顔を上げる。目が、少しだけ赤い。でも、泣いてはいない。「……そっか」小さく。でも、ちゃんとした声。陽菜は、少しだけ笑う。「やっぱり、凪ってそういうとこあるよね」軽く言う。でも、責めていない。いつもの距離感に戻そうとしている。凪も、少しだけ笑う。「……ごめん」素直に。それ以上、言い訳しない。そのとき、悠真が、静かに言う。「陽菜」少しだけ間。「俺も、ごめん」その一言で、空気がまた揺れる。陽菜が、少しだけ驚いた顔をする。悠真は、続ける。「ちゃんと見てなかった」凪と同じ言葉。でも、意味は少し違う。陽菜は、ふっと笑う。「それ、さっき聞いたやつ」少しだけ、意地悪く。その声は、やわらかい。悠真も、少しだけ笑う。蓮が、静かに口を開く。「俺も、勝手に“凪
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どんな自分でいたいかが、まだわかってない

夕方の光が、教室の奥まで伸びている。凪の言葉が、まだ空気に残っている。「自分をちゃんと選びたい」その一言で、場の重さが、少しだけ変わった。悠真が、ゆっくり息を吐く。「……そっか」短い。その中に、いろんな感情が混ざっている。納得と。戸惑いと。少しの寂しさ。凪は、それをちゃんと見ている。目をそらさない。もう、逃げないから。蓮が、静かに口を開く。「それってさ」やわらかい声。「今は、どっちも選ばないってこと?」正直な気持ち。責めていない。ただ、確かめている。凪は、少しだけ考える。そして、「……うん」小さく、でもはっきり。「今のままじゃ、選べない」正直な言葉。悠真の指が、少しだけ動く。握る。でも、何も言わない。凪は、続ける。「どっちがいいかじゃなくて」少し間。「どんな自分でいたいかが、まだわかってない」それは逃げじゃない。ちゃんと向き合っているからこそ出た言葉。陽菜が、ふっと笑う。「それ、めっちゃ大事じゃん」軽い言い方。でも、一番核心を突いている。凪は、少しだけ安心したように息を吐く。悠真が、顔を上げる。「じゃあさ」少しだけ前に出る。「その時間、ちゃんと取ろう」凪の目が、揺れる。「無理に今決めなくていい」まっすぐな言葉。「でも」少しだけ間。「俺は、待つ」その一言。押しつけじゃない。凪の胸が、少しだけ熱くなる。そのとき、蓮が、少しだけ笑う。「俺も」短く。でも、はっきり、「急がせるつもりないよ」その言葉に、凪の中で、何かがほどける。比べられていない。選ばされていない。ただ、自分で選べる場所に立っている。陽菜が、腕を組む。少しだけ楽しそうに。「なんかさ」ゆっくり言う。「いい感じにめんどくさいね
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……わたし・・・自分のままでいたい。

教室の空気が、静かに止まる。夕方の光が、少しだけ長く差し込んでいる。凪は、二人を見ている。悠真。蓮。どちらからも、目をそらさない。逃げないと決めたから。でも、簡単じゃない。胸の奥で、二つの感情が揺れている。好き。安心。どっちも、本当。どっちも、嘘じゃない。凪は、小さく息を吸う。「……ごめん」その一言で、空気がわずかに揺れる。悠真の眉が、少し動く。蓮の視線が、静かに深くなる。凪は、続ける。「どっちかを選ぶって」少し間。「そういうことじゃない気がしてる」言葉にする。まだ曖昧な気持ち。でも、逃げてはいない言葉。悠真が、ゆっくり口を開く。「じゃあ、どういうこと?」責めていない。まっすぐな問い。凪は、少しだけ考える。そして、言葉を探す。「……わたし」小さく、でもはっきり。「自分のままでいたい」教室の空気が、少しだけ変わる。凪は、続ける。「悠真といるとき」少し間。「ちゃんとしなきゃって思ってた」「でも、それって」ゆっくりと「本当のわたしじゃなかった」その言葉に、悠真の表情が揺れる。凪は、蓮を見る。ほんの一瞬。「蓮くんといると」少しだけ、やわらかくなる声。「そのままでいられた」その事実。そこで終わらない。凪は、もう一度悠真を見る。「でも」少し強くなる声。「悠真のこと、ちゃんと好きだよ」教室の空気が、深くなる。嘘じゃない。どっちも、本当。その矛盾が、そのままそこにある。凪は、小さく息を吐く。「だから」少し間。「どっちかを選ぶ前に」ゆっくりと「自分をちゃんと選びたい」その言葉が、静かに落ちる。誰かのためじゃなくて。自分として、どういたいか。それを、決める。悠真は、しばらく黙る。考えている。それか
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本当の気持ちと向き合う時間が、始まる。

校門の前。凪の言葉の余韻が、まだ残っている。「好きだよ」「でも、無理してた」その二つが、空気の中で重なっている。悠真は、少しだけ黙る。逃げない。でも、すぐにも答えない。その沈黙が、やさしい。凪は、少しだけ息を整える。言ってしまった。戻れないところまで。でも、後悔は、していない。悠真が、ゆっくり口を開く。「……ありがとう」その言葉に、凪は少しだけ驚く。責められると思っていた。でも、違った。悠真は、続ける。「ちゃんと言ってくれて」少しだけ笑う。でも、その笑顔は、どこか不器用だった。「俺、たぶん」少し間。「勝手に思ってた」凪の心が、少しだけ揺れる。「凪は、こうだって」「自分の中の凪。  それに、当てはめていた。」悠真は、視線を落とす。「ちゃんと見てるつもりで」少しだけ苦笑する。「見てなかった」その言葉に、凪の胸が、静かにほどける。責めていない。自分も、同じだったから。「……わたしも」「勝手に決めてた」小さく、こぼれる。「悠真の気持ち。ちゃんと聞く前に。 距離を取ろうとしていた。」二人の間に、静かな理解が生まれる。少しだけ。ほんの少しだけ。そのとき、陽菜が、ふっと息を吐く。「……よかった」ぽつりと、自然に出た言葉。凪と悠真が、同時に陽菜を見る。陽菜は、少しだけ肩をすくめる。「なんかさ」少し笑う。「ちゃんと話してる感じ、初めて見た」その言い方に、やわらかさがある。責めていない。ただ、二人を見ていた言葉。そして、ほんの少しだけ、いたずらっぽく笑って。「ゆうまのおばかさん」軽く言う。でも、その一言は、やさしかった。空気が、ふっと緩む。悠真が、少しだけ苦笑する。「……はいはい」どこか救われた顔
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「どうしようかな」 あれは、本音だった。

夜は、静かに更けていく。凪の部屋。机の上の明かりだけが、やわらかく灯っている。ノートは開いたまま。ペンは止まっている。(……なんか、眠れない)理由はわかっている。今日のこと。言葉。表情。そして、陽菜の「どうしようかな」。頭から離れない。凪は、ゆっくりと窓のほうを見る。外は、深い夜。遠くの灯りが、小さく瞬いている。ふと、昼間に聞いた話を思い出す。庚申の夜。昔の人は、この夜、眠らなかった。体の中の“何か”が、自分のことをどこかへ伝えてしまうから。だから、起きて、自分で見ていた。自分の中を。凪は、少しだけ笑う。(変な話……)でも、どこか、わかる気がした。目を閉じてしまったら。本当の気持ちを、見ないままにしてしまいそうで。凪は、机に向き直る。ノートを見る。ゆっくりと、ペンを持つ。「わたしは、どうしたい?」その一行だけ書いてみた。それ以上、続かない。でも、それでいいと思った。無理に答えを出さない。でも、逃げない。それだけでいい。その頃、陽菜も、ベッドの上でスマホを見ていた。画面はついているのに、何も見ていない。(……わたし、なにやってんだろ)小さく笑う。少しだけ苦い。いつもなら、こういうとき、軽く流せた。でも今日は、違う。ちゃんと、引っかかっている。悠真の言葉。凪の言葉。そして、自分の言葉。「どうしようかな」あれは、本音だった。陽菜は、ゆっくり起き上がる。カーテンを開け、夜空を見る。(……逃げないって、決めたよね)凪たちと同じように。自分も。ちゃんと、自分で決める。その頃、別々の場所で、同じ夜を過ごす四人。それぞれの中で、静かに何かが動いている。まだ答えは出ていない。でも、この夜は、きっ
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さっきの「どうしようかな」が、まだ頭の中にある。

夜風が、少しだけ冷たい。四人の足音が、またゆっくりと動き出す。誰も、さっきの言葉を拾わない。聞こえていないわけじゃない。ちゃんと、胸のどこかに残っている。凪は、陽菜の隣を歩く。さっきの「どうしようかな」が、まだ頭の中にある。軽く言ったようで。軽くなかった。凪は、少しだけ迷ってから声をかける。「……陽菜」陽菜が、ちらっと横を見る。「なに?」いつもの調子。でも、少しだけやわらかい。凪は、少しだけ言葉を探す。「さっきのさ」間。「どうしようかなってやつ」陽菜が、ふっと笑う。「あー、あれ?」軽く流すように。でも、完全にはごまかさない。「なんとなく言っただけだよ」そう言って、少しだけ前を見る。でも、その目は、少し遠い。凪は、それ以上踏み込まない。今は、まだその距離。その代わりに。「そっか」それだけ返す。それで、十分だった。その少し後ろ。悠真と蓮が、また並んでいる。さっきより、自然な距離。悠真が、ぽつりと。「……難しいな」小さくつぶやく。蓮が、少しだけ笑う。「楽なほうが珍しいよ」その言い方、どこか達観している。悠真が、少しだけ空を見る。「でも、逃げたくない」短く、強い言葉。蓮も、うなずく。「うん」四人の歩幅が、少しずつ揃っていく。道が、分かれる場所。ここで、それぞれの帰り道になる。自然と、足が止まる。誰も、すぐには別れない。そのとき、陽菜が、ふっと笑う。「じゃあさ」軽く手を振る。「また明日」シンプルな言葉。そんな言葉にも、今の四人には、ちゃんと意味がある。凪が、うなずく。「……うん、また明日」悠真も、少しだけ笑う。「ちゃんと来いよ」陽菜が、すぐに返す。「そっちこそ」そのやりとりに、蓮が少し笑
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四人の距離が、少しずつ整っていく。

夕焼けの廊下を、四人で歩く。足音が、ゆっくりと重なる。さっきまでの教室とは違う。少しだけ、軽い空気。どこか、ぎこちない。その“ちょうど途中”の感じ。凪は、陽菜の隣を歩いている。さっきまで握っていた手の感触が、まだ残っている。陽菜が、ちらっと横を見る。「……ねえ」小さく声をかける。凪も、そっと視線を向ける。「さっきさ」少しだけ間。「ありがとう」まっすぐじゃない言い方。でも、ちゃんと届く。凪は、少しだけ驚いてから、笑う。「……うん」それだけで、十分だった。その少し後ろを悠真と蓮が並んで歩いている。無言。でも、さっきまでの“張り合う感じ”はない。悠真が、ぽつりと。「……蓮」蓮が、少しだけ目を向ける。「なに?」自然な返し。悠真は、少しだけ考えてから言う。「負けないけど」短く、はっきり。蓮が、少しだけ笑う。「うん」同じトーンで。「俺も」それ以上は言わない。それで十分だった。競い合いじゃない。でも、引かない。四人の距離が、少しずつ整っていく。階段を降りる。外に出ると、空はもうオレンジがきえかけている。風が、少しだけ冷たい。陽菜が、両手を伸ばす。「はー、つかれた」わざとらしく。陽菜らしい、どこか本音。凪が、少しだけ笑う。「わかる」そのやりとりに、悠真と蓮も少しだけ笑う。さっきまでの重さが、少しずつ抜けていく。全部消えたわけじゃないけど、まだ、ちゃんと残っている。凪は、空を見る。今日一日、長かった。でも、無駄じゃない。そのとき、陽菜が、ふと立ち止まる。「ねえ」三人が振り返る。陽菜は、少しだけ真面目な顔。「明日も、ちゃんと来るよね?」その問い。軽くない。逃げないかの確認?凪は、すぐにうなずく。「
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……それが一番ずるいよ。

夕方の光が、少しだけ濃くなる。凪の言葉のあと。教室は、静かなままだった。誰も、すぐに動かない。そのとき、陽菜が、ふっと笑う。その笑いは、いつもと少し違った。「……ねえ」軽い声。でも、どこか引っかかる。三人が、陽菜を見る。陽菜は、少しだけ首をかしげる。「これさ」少しの間。「わたしだけ、のけものじゃない?」空気が、一瞬で変わる。冗談みたいな言い方。でも、違う。凪の心臓が、強く鳴る。陽菜は、続ける。「なんかさ」少し笑う。でも、その目はまっすぐだった。「三人でちゃんと向き合ってる感じじゃん」少し間。「わたし、外から見てるだけみたい」その言葉。軽く聞こえるのに、重い。悠真が、少しだけ動く。「陽菜……」名前を呼ぶ。でも、続かない。陽菜は、ふっと視線を落とす。ほんの一瞬。それから、また笑う。「……ねえ」今度は、少しだけ低い声。「わたしってさ」少し間。「そんなに魅力ないのかな」凪の胸が、ぎゅっと締まる。陽菜は、続ける。「ねぇ悠真?」ちらっと見る。その言葉で、空気が、深く沈む。「なんかさ」小さく笑う。でも、震えている。「わたしが一番、バカみたいじゃない?」その一言。教室の空気が、完全に止まる。誰も、すぐに返せない。軽く扱えない。無視もできない。凪は、ゆっくり陽菜を見る。今まで見ていた“陽菜”じゃない。ちゃんと、同じ場所に立っている。同じように、揺れている。凪は、小さく息を吸う。「……違うよ」はっきりとした声。陽菜の目が、少しだけ揺れる。凪は、続ける。「陽菜は」少し間。「ちゃんとここにいる」その言葉。ただの慰めじゃない。同じ場所に立っている人への言葉。陽菜は、少しだけ目を伏せる。そして。小さく、息
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昨日の続きが、そこにある。

校門の前。四人の距離が、静かに揃う。誰も、急がない。でも、止まってもいない。蓮が、ゆっくりと歩み寄る。凪の少し後ろで、止まる。近すぎない。でも、遠すぎない。その距離。「……おはよ」やわらかい声。凪は、少しだけ振り向く。「……おはよ」声が、少しだけ落ち着いている。昨日とは違う。でも、まだ、揺れている。蓮は、凪の顔を一瞬だけ見る。何も言わない。けれども昨日の続きが、そこにある。悠真が、その様子を見る。視線が、少しだけ変わる。(……あいつ)言葉にはしない。でも、確実に、何かを感じている。陽菜が、ふっと笑う。「なんかさ」少しだけ前に出る。四人の真ん中に入るように。「朝から濃くない?」軽い言葉。でも、空気を壊さない絶妙な強さ。凪が、少しだけ笑う。悠真も、少しだけ肩の力を抜く。蓮も、目を細める。その一瞬で、四人の空気が、少しだけ整う。でも、終わったわけじゃない。むしろ、ここからが、本当の始まり。悠真が、ゆっくり言う。「……凪」名前を呼ぶ。今度は、迷いがない。「放課後、時間ある?」まっすぐな言葉。凪の心臓が、大きく鳴る。逃げ場はない。逃げたくもない。凪は、少しだけ考える。ほんの一瞬。そして「……うん」はっきりと、答える。その一言で。空気が、また変わる。悠真の表情が、少しだけ締まる。覚悟の顔。そのとき、蓮が、静かに口を開く。「俺も、いい?」やわらかい声。空気が、一気に張る。凪の目が、揺れる。悠真の視線が、蓮に向く。陽菜が、ほんの少しだけ息を止める。三人じゃなかった。四人の物語だった。選ぶ時間が、もう目の前まで来ている。朝の光が、少しだけ強くなる。その中で、四人は、それぞれの想いを抱えたまま、同
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好きって、 ただ想うだけじゃなくて、変わろうとすることでもあるんだ。

校門の前。さっきまでの張りつめた空気が、少しだけやわらいでいる。でも、完全にほどけたわけじゃない。その“途中”の感じ。凪は、まだ悠真を見ている。さっき言った言葉。「好き」「でも、無理してた」その両方が、まだ胸に残っている。悠真が、静かに言う。「……ありがとうって言ったけどさ」少し間。「それだけじゃ、終わりたくない」凪の心臓が、少しだけ強く鳴る。逃げない言葉。「無理してたの、やめてほしいって言ったけど」悠真は、少しだけ息を吸う。「俺も、変わる」まっすぐな言葉。凪の目が、少しだけ揺れる。「ちゃんと見る」短いけど強い思い。「凪が、どんなときに無理してるのか」少し間。「ちゃんと、わかるようになりたい」その言葉が、静かに届く。凪の胸が、じんわりあたたかくなる。(……そんなこと)思ってもみなかった。好きって、ただ想うだけじゃなくて、変わろうとすることでもあるんだ。凪は、小さく息を吐く。少しだけ、笑う。「……ずるい」ぽつりと。悠真が、少しだけ首をかしげる。「なにが?」凪は、少しだけ視線をそらす。でも。また、戻す。「そういうこと、ちゃんと言うとこ」少し照れたように。でも、正直に。悠真は、少しだけ笑う。「言わないと、伝わらないってわかったから」その言葉に、凪の胸がまた揺れる。昨日までとは、違う。確実に、何かが変わっている。そのとき。陽菜が、ふっと笑う。「なんかさ」軽く肩をすくめる。「いい感じじゃん」さらっと言う。でも。その言葉には、ちゃんと意味がある。凪は、少しだけ戸惑う。「……いい感じって」陽菜は、にこっと笑う。「ちゃんと話してる感じ」それだけ。余計なことは言わない。でも。その言葉で、空気が少
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ちゃんと話そうって思ったのに・・・。うまく言えなくてさ・・・・。

校門の前。朝の光が、少しだけ強くなる。凪と悠真。言葉の続きを、探している空気。でも、その“間”は、昨日とは違う。逃げていない間。「……昨日さ」悠真が、静かに続ける。凪は、うなずく。「うん」短い返事の中にちゃんと受け止める準備がある。悠真は、少しだけ言葉を選ぶ。「ちゃんと話そうって思ったのに・・・。」少し苦笑する。「うまく言えなくてさ・・・・。」凪の胸が、少しだけ揺れる。その言葉。どこか、自分と重なる。「……わたしも」自然に、声が出る。悠真が、少しだけ目を上げる。「うまくできなかった」凪は、視線をそらさない。少し震えているけど。逃げていない。「ちゃんと話したいって思ってるのに」少し間。「どう話したらいいか、わかんなくて」正直な言葉。空気が、静かに整っていく。悠真は、ゆっくりうなずく。「それでいいと思う」その一言が、やわらかく落ちる。「無理にちゃんとしなくていい」凪の目が、少しだけ揺れる。(……あ)昨日の言葉。蓮の言葉。“無理してること、あるんじゃない?”それと、少しだけ重なる。でも。違う。悠真は、今、変わろうとしている。そのことが、伝わる。「……でもさ」悠真が、少しだけ言いづらそうに続ける。凪の心臓が、少しだけ速くなる。「凪がさ」名前を呼ばれる。それだけで、少しだけ緊張が走る。「俺といるとき、無理してるなら」少し間。「それ、やめてほしい」まっすぐな言葉。逃げない言い方。凪は、息を止める。(……そんなこと)思ってもみなかった。でも、胸の奥に、確かにあったもの。それを、言葉にされる。「……してる」小さく、こぼれる。気づいたら、言っていた。悠真の目が、少しだけ動く。でも、否定しない。た
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やさしいけど、逃げるよね。

夜は、まだ終わらない。でも、どこかで、流れが止まりかけている気がした。凪は、スマホを見つめたまま、少しだけ考える。(……このままでいいのかな)やさしい会話。心地いい距離。でも、それだけじゃ、何かが足りない。陽菜が、ぽつりと。「ねえ」少しだけトーンが変わる。凪の背筋が、すっと伸びる。「なに?」陽菜は、少しだけ間を置く。「さっきからさ」ゆっくりと。「いい感じで終わろうとしてない?」その一言。凪の心が、ドキッとする。図星。でも。逃げない。「……してるかも」正直に言う。陽菜が、少しだけ笑う。「だよね」軽い。でも、ちゃんと見抜いてる。「凪ってさ」少しだけやわらかくなる声。「やさしいけど、逃げるよね」その言葉。痛い。でも、否定できない。凪は、少しだけ息を吸う。(……ここだ)逃げないって決めた夜。ここで変わらないと、意味がない。凪は、ゆっくり言う。「じゃあさ」少し間。「逃げないで言うね」陽菜が、少しだけ黙る。その沈黙が、少し重い。でも、もう戻らない。凪は、続ける。「陽菜といるとさ」胸の奥が、じんわり熱くなる。「安心するだけじゃなくて」少しだけ言葉を探す。「……ドキドキする」言った。ちゃんと。逃げずに。電話の向こうが、一瞬止まる。空気が、変わる。それから、小さく、息をのむ音。「……それ」陽菜の声が、少しだけ揺れる。「ずるい」さっきと同じ言葉。でも、今度は、意味が違う。凪は、少しだけ笑う。「陽菜が言ったんじゃん」陽菜が、ふっと笑う。でも、少しだけ照れている。「……ほんとだね」そのとき、窓の外で、風が強く吹く。カーテンが、大きく揺れる。凪の心も、同じように揺れる。でも、今は怖くない。陽菜が、ゆっく
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ちゃんと目、合わせてね。

電話の向こうで、陽菜の笑い声がふわっと広がる。その余韻が、耳に残る。凪は、なぜかすぐに次の言葉が出てこない。沈黙。でも、切りたくない。このまま少し続いてほしい。「……ねえ」陽菜が、先に声を出す。凪の心臓が、少しだけ跳ねる。「なに?」できるだけ普通に返す。でも、少しだけ声がやわらいでいる。陽菜が、少しだけ間をあける。その“ため”に、ドキドキする。「さっきさ」ゆっくりと。「迎えに行くって言ったじゃん」凪の指が、スマホをぎゅっと握る。「……うん」陽菜が、少しだけ笑う。「ほんとに行くからね」その言い方。軽いのに、逃げ道がない。凪の頬が、少しだけ熱くなる。「……そんな、わざわざ」つい言ってしまう。その瞬間、陽菜がかぶせる。「わざわざじゃない」少しだけ強い声。でも、優しい。「行きたいから行くの」その一言。まっすぐすぎて。凪の心が、止まりそうになる。言葉が出ない。でも、嫌じゃない。むしろ、うれしい。凪は、少しだけ息を吸う。「……じゃあ」小さく。でも、ちゃんと。「待ってる」その言葉が出た瞬間。胸の奥が、ふっとほどける。陽菜が、すぐに笑う。「うん」短い。でも、すごく嬉しそう。そのとき。風が、またカーテンを揺らす。夜の空気が、静かに流れる。凪は、窓の外を見る。暗いはずの夜が、少しだけ明るく感じる。「ねえ、凪」陽菜が、もう一度呼ぶ。「なに?」今度は、少し自然に返せる。陽菜が、少しだけ声を落とす。「明日さ」間。「ちゃんと目、合わせてね」その一言。一気に、距離が近づく。凪の心臓が、大きく鳴る。逃げたくなる。でも、逃げない。「……うん」少しだけ照れながら。でも、ちゃんと答える。電話の向こうで、陽菜がくすっ
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それ、ちゃんと守ってくれればいい

教室に、静かな余韻が残る。誰も、すぐには動かない。夕方の光だけが、ゆっくりと色を変えていく。凪は、まだ立っている。まっすぐに。でも、その中で、ひとつだけ、確かに変わったものがある。“迷い方”が、変わった。逃げるための迷いじゃない。向き合うための迷い。悠真が、ふっと息を吐く。「……さ」少しだけ、声がやわらぐ。「今、決めなくていいって言ったけど」凪の目が、ゆっくり動く。悠真を見る。「逃げないって言ったの」少しだけ笑う。「それ、ちゃんと守ってくれればいい」凪の胸が、少しだけ温かくなる。強く縛らない言葉。ちゃんと信じている言葉。凪は、小さくうなずく。「……うん」そのとき、蓮が、一歩だけ前に出る。静かに。でも、はっきりとした足取り。「じゃあさ」やわらかい声。「その時間、ちゃんと一緒に過ごそうよ」凪の心が、少しだけ揺れる。「決めるための時間じゃなくて」少し間。「自分でいられる時間として」その言葉に、凪の呼吸が変わる。(……それ)すっと、胸に入ってくる。悠真も、少しだけ目を細める。反発しない。でも、簡単には譲らない空気。「それ、俺も一緒でいい?」短く真っ直ぐに。蓮が、少しだけ笑う。「もちろん」その一言で、また、空気が揺れる。競い合いじゃないけど、引かない関係。凪は、その二人を見ている。不思議だった。少し前まで、どちらかを選ばなきゃと思っていた。でも今は、“自分をどうするか”を考えている。その中に、二人がいる。そのとき、陽菜が、軽く手を叩く。「はい、ストップ」少しだけ笑いながら。三人が、そっちを見る。「これ以上やるとさ」肩をすくめる。「重すぎて青春じゃなくなるから」その言葉に、ふっと空気がほど
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