やっと同じとこに立てた感じする
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コラム
夕焼けの光が、二人の手をやわらかく包む。
凪と陽菜。
握ったままの手。
強くもなく、弱くもなく。
ちょうどいい力。
その温度が、少しずつ伝わっていく。
陽菜が、少しだけ笑う。
「……変な感じ」
凪も、少しだけ笑う。
「うん」
短い言葉。
でも、どこか安心している声。
手を、そっと離す。
距離は、さっきより近い。
陽菜が、軽く息を吐く。
「なんかさ」
少しだけ目を細める。
「やっと同じとこに立てた感じする」
その言葉に、凪の胸がやわらぐ。
ずっと、どこかズレていた。
でも今は。
同じ場所。
同じ高さ。
そのとき、
悠真が、小さく笑う。
「それ、俺たちも入っていいやつ?」
陽菜が、すぐに返す。
「ダメって言ったらどうするの?」
少し意地悪に。
でも、楽しそうに。
悠真は、肩をすくめる。
「じゃあ、勝手に入る」
そのやりとりに、空気がふっと軽くなる。
蓮も、静かに笑う。
「それなら、俺も」
自然に。
でも、ちゃんとそこにいる言い方。
四人の距離が、また少しだけ近づく。
誰かが外じゃない。
誰かが上でも下でもない。
ただ、同じ場所にいる。
陽菜が、ふと真面目な顔になる。
「でもさ」
少しだけ間。
「これ、簡単じゃないよね」
その言葉。
現実。
凪が、うなずく。
「うん」
悠真も、ゆっくり言う。
「でも、やるしかない」
短く。
でも、強い。
蓮が、続ける。
「逃げないって決めたしね」
その言葉で、
さっき決めた“ルール”が重なる。
陽菜が、少しだけ笑う。
「じゃあさ」
軽く手を振る。
「とりあえず今日だけは」
少し間。
「難しいこと考えない日にしよ」
その一言。
四人が、少しだけ息を抜く。
凪は、窓の外を見る。
夕焼けが、少しずつ夜に変わっていく。
終わりじゃない。
ただの切り替わり。
そして、
凪は、三人を見る。
「……帰ろ」
小さく言う。
ちゃんと前を向いた声。
三人が、うなずく。
四人で、教室を出る。
並んで歩く。
まだ、ぎこちない。
でも、もう、バラバラじゃない。
その帰り道は、きっと、
これからの関係の“はじまり”になる。