……わたし・・・自分のままでいたい。

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コラム
教室の空気が、静かに止まる。
夕方の光が、少しだけ長く差し込んでいる。

凪は、二人を見ている。

悠真。

蓮。

どちらからも、目をそらさない。

逃げないと決めたから。

でも、簡単じゃない。

胸の奥で、二つの感情が揺れている。

好き。

安心。

どっちも、本当。

どっちも、嘘じゃない。

凪は、小さく息を吸う。

「……ごめん」
その一言で、空気がわずかに揺れる。

悠真の眉が、少し動く。

蓮の視線が、静かに深くなる。

凪は、続ける。

「どっちかを選ぶって」

少し間。

「そういうことじゃない気がしてる」
言葉にする。

まだ曖昧な気持ち。

でも、逃げてはいない言葉。

悠真が、ゆっくり口を開く。
「じゃあ、どういうこと?」

責めていない。
まっすぐな問い。

凪は、少しだけ考える。

そして、言葉を探す。

「……わたし」
小さく、でもはっきり。

「自分のままでいたい」

教室の空気が、少しだけ変わる。

凪は、続ける。

「悠真といるとき」

少し間。

「ちゃんとしなきゃって思ってた」

「でも、それって」

ゆっくりと
「本当のわたしじゃなかった」

その言葉に、悠真の表情が揺れる。

凪は、蓮を見る。

ほんの一瞬。

「蓮くんといると」
少しだけ、やわらかくなる声。

「そのままでいられた」

その事実。

そこで終わらない。

凪は、もう一度悠真を見る。

「でも」

少し強くなる声。
「悠真のこと、ちゃんと好きだよ」

教室の空気が、深くなる。

嘘じゃない。
どっちも、本当。

その矛盾が、そのままそこにある。

凪は、小さく息を吐く。

「だから」

少し間。

「どっちかを選ぶ前に」

ゆっくりと
「自分をちゃんと選びたい」

その言葉が、静かに落ちる。

誰かのためじゃなくて。

自分として、どういたいか。

それを、決める。

悠真は、しばらく黙る。

考えている。

それから、少しだけ笑う。

「……むずかしいこと言うな」

その顔は、やわらかい。

「でも、わかった」
短く、はっきり。

蓮も、少しだけ目を細める。

「いいと思う」
それだけ。

でも、ちゃんと届く言葉。

陽菜が、ふっと笑う。

「やっぱりさ」
軽く言う。

「凪って、ちゃんと自分持ってるよね」

その一言で、
凪の胸が、少しだけ軽くなる。

夕方の光が、教室を包む。

もう、さっきまでの緊張はない。

でも、終わったわけじゃない。

ここからが、本当のスタート。

凪は、ゆっくり立ち上がる。

もう、逃げない。
もう、ごまかさない。

そして、
自分の気持ちで、歩き始める。
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