やさしいけど、逃げるよね。

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コラム
夜は、まだ終わらない。

でも、
どこかで、流れが止まりかけている気がした。

凪は、スマホを見つめたまま、少しだけ考える。

(……このままでいいのかな)

やさしい会話。
心地いい距離。

でも、
それだけじゃ、何かが足りない。

陽菜が、ぽつりと。

「ねえ」

少しだけトーンが変わる。

凪の背筋が、すっと伸びる。

「なに?」

陽菜は、少しだけ間を置く。

「さっきからさ」

ゆっくりと。

「いい感じで終わろうとしてない?」

その一言。

凪の心が、ドキッとする。

図星。

でも。

逃げない。

「……してるかも」

正直に言う。

陽菜が、少しだけ笑う。

「だよね」

軽い。

でも、ちゃんと見抜いてる。

「凪ってさ」

少しだけやわらかくなる声。

「やさしいけど、逃げるよね」

その言葉。
痛い。

でも、
否定できない。

凪は、少しだけ息を吸う。

(……ここだ)

逃げないって決めた夜。
ここで変わらないと、意味がない。

凪は、ゆっくり言う。
「じゃあさ」

少し間。

「逃げないで言うね」

陽菜が、少しだけ黙る。
その沈黙が、少し重い。

でも、もう戻らない。

凪は、続ける。
「陽菜といるとさ」

胸の奥が、じんわり熱くなる。

「安心するだけじゃなくて」
少しだけ言葉を探す。

「……ドキドキする」
言った。
ちゃんと。

逃げずに。

電話の向こうが、一瞬止まる。

空気が、変わる。

それから、
小さく、息をのむ音。

「……それ」
陽菜の声が、少しだけ揺れる。

「ずるい」
さっきと同じ言葉。

でも、今度は、意味が違う。

凪は、少しだけ笑う。
「陽菜が言ったんじゃん」

陽菜が、ふっと笑う。

でも、少しだけ照れている。

「……ほんとだね」

そのとき、
窓の外で、風が強く吹く。

カーテンが、大きく揺れる。

凪の心も、同じように揺れる。

でも、今は怖くない。

陽菜が、ゆっくり言う。
「ねえ、凪」

その声。
少しだけ、近い。

「明日さ」

間。

「ちゃんと見て」

凪の心臓が、大きく鳴る。

「わたしのこと」

その一言。
一気に距離が縮まる。

凪は、息を止める。

でも、逃げない。

「……見る」

小さく。
でも、まっすぐ。

「ちゃんと見る」

その約束。

ただの言葉じゃない。

もう、後戻りできない。

でも、それでいい。

むしろ、
少しだけ、楽しみだった。

そして、
止まりかけていた物語が、
もう一度、強く動き出す。
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