待ってる凪、想像できるから
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電話の向こうで、陽菜がくすっと笑う。
その音だけで、胸の奥が少しあたたかくなる。
沈黙。
切りたくない。
凪は、少しだけスマホを握り直す。
「……ねえ」
小さく呼ぶ。
陽菜が、すぐに返す。
「ん?」
その“間のなさ”に、少しだけドキッとする。
凪は、ほんの少しだけ勇気を出す。
「明日さ」
少し間。
「どこから帰る?」
陽菜が、笑う。
「それ、もう決まってるやつじゃない?」
少しだけ意地悪。
でも、楽しそう。
凪も、つられて笑う。
「じゃあ……」
少しだけ声が小さくなる。
「門のとこ、待っててもいい?」
言った瞬間、少しだけ心臓が速くなる。
返事を待つ時間が、やけに長く感じる。
すぐに返ってくる。
「いいよ」
やわらかい声。
それだけで、安心する。
それだけじゃ終わらない。
陽菜が、続ける。
「むしろ」
少し間。
「迎えに行くけど?」
その一言。
凪の頬が、少し熱くなる。
「え、なんで」
少し慌てる。
陽菜が、軽く笑う。
「だってさ」
少しだけ声が近づく。
「待ってる凪、想像できるから」
その言い方。
ちょっとずるい。
けど、すごくうれしい。
凪は、少しだけ黙る。
言葉が出てこない。
「……じゃあ」
やっと出た声。
「お願いしていい?」
素直に。
まっすぐに。
陽菜が、すぐに返す。
「いいよ」
短いけど、
笑ってるのがわかる。
そのとき、
窓の外で、風が少しだけ強くなる。
カーテンが、ふわっと揺れる。
凪は、そのまま空を見上げる。
(……なんか)
少しだけ思う。
いままでとは、違う。
この感じ、安心だけじゃない。
嫌じゃない。
少しだけ、楽しみ。
「ねえ、凪」
陽菜が、また呼ぶ。
「なに?」
凪が返す。
少しだけ、自然に。
「明日さ」
少し間。
「ちゃんと来てね」
その言い方。
軽いのに、少しだけ意味がある。
凪は、ゆっくりうなずく。
見えないのに。
「……うん」
小さく返す。
その声は、少しだけやわらかい。
電話は、まだ続く。
もう探り合いじゃない。
少しずつ
ちゃんとつながっている。
そして、明日。
“ただの帰り道”だったはずの時間が、
少しだけ特別になる。