「どうしようかな」 あれは、本音だった。

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コラム
夜は、静かに更けていく。

凪の部屋。
机の上の明かりだけが、やわらかく灯っている。

ノートは開いたまま。
ペンは止まっている。

(……なんか、眠れない)

理由はわかっている。

今日のこと。

言葉。

表情。

そして、
陽菜の「どうしようかな」。

頭から離れない。

凪は、ゆっくりと窓のほうを見る。

外は、深い夜。
遠くの灯りが、小さく瞬いている。

ふと、昼間に聞いた話を思い出す。

庚申の夜。
昔の人は、この夜、眠らなかった。

体の中の“何か”が、
自分のことをどこかへ伝えてしまうから。

だから、
起きて、自分で見ていた。
自分の中を。

凪は、少しだけ笑う。
(変な話……)

でも、どこか、わかる気がした。

目を閉じてしまったら。
本当の気持ちを、
見ないままにしてしまいそうで。

凪は、机に向き直る。
ノートを見る。

ゆっくりと、ペンを持つ。

「わたしは、どうしたい?」
その一行だけ書いてみた。

それ以上、続かない。
でも、それでいいと思った。

無理に答えを出さない。
でも、逃げない。

それだけでいい。

その頃、
陽菜も、ベッドの上でスマホを見ていた。

画面はついているのに、何も見ていない。

(……わたし、なにやってんだろ)

小さく笑う。
少しだけ苦い。

いつもなら、
こういうとき、軽く流せた。

でも今日は、違う。
ちゃんと、引っかかっている。

悠真の言葉。
凪の言葉。
そして、自分の言葉。

「どうしようかな」
あれは、本音だった。

陽菜は、ゆっくり起き上がる。

カーテンを開け、夜空を見る。

(……逃げないって、決めたよね)

凪たちと同じように。
自分も。

ちゃんと、自分で決める。

その頃、別々の場所で、
同じ夜を過ごす四人。

それぞれの中で、
静かに何かが動いている。

まだ答えは出ていない。

でも、この夜は、
きっと無駄じゃない。

そして、明日、
少しだけ、何かが変わる。
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