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ちょっとだけ、話せる?

夜、深くなる。時計の針の音だけが、部屋に響く。凪は、ノートを見つめたまま動かない。「わたしは、どうしたい?」書いたままの一行。答えは、まだないけど、その問いを消したくはなかった。(……逃げないって、こういうことかも)凪は、ゆっくりペンを置く。窓を開ける。少し冷たい風が、部屋に入ってくる。胸の中のもやもやが、少しだけほどける。そのとき、スマホが、ふっと光る。メッセージ。差出人――陽菜。凪の指が、少しだけ止まる。ゆっくり開く。「ねえ、起きてる?」短い一文。いつもの軽さ。でも、今は、少し違って見える。凪は、少しだけ迷ってから打つ。「起きてるよ」すぐに、既読がつく。少し間。それから、「ちょっとだけ、話せる?」その言葉に、凪の胸が、少しだけ強く鳴る。(……来た)逃げないって決めた夜。凪は、小さく息を吸う。「うん」短く返す。すぐに、通話の着信。画面に映る名前。陽菜。凪は、一瞬だけ目を閉じる。それから、通話ボタンを押す。「……もしもし」少しだけ緊張した声。向こう側で、陽菜が小さく笑う。「なんかさ」軽く始める。その奥に、本音がある。「今日の続き、しよっか」その一言で、空気が、少しだけ変わる。そして、止まっていた“関係”が、静かにもう一度、動き出す。
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「どうしようかな」 あれは、本音だった。

夜は、静かに更けていく。凪の部屋。机の上の明かりだけが、やわらかく灯っている。ノートは開いたまま。ペンは止まっている。(……なんか、眠れない)理由はわかっている。今日のこと。言葉。表情。そして、陽菜の「どうしようかな」。頭から離れない。凪は、ゆっくりと窓のほうを見る。外は、深い夜。遠くの灯りが、小さく瞬いている。ふと、昼間に聞いた話を思い出す。庚申の夜。昔の人は、この夜、眠らなかった。体の中の“何か”が、自分のことをどこかへ伝えてしまうから。だから、起きて、自分で見ていた。自分の中を。凪は、少しだけ笑う。(変な話……)でも、どこか、わかる気がした。目を閉じてしまったら。本当の気持ちを、見ないままにしてしまいそうで。凪は、机に向き直る。ノートを見る。ゆっくりと、ペンを持つ。「わたしは、どうしたい?」その一行だけ書いてみた。それ以上、続かない。でも、それでいいと思った。無理に答えを出さない。でも、逃げない。それだけでいい。その頃、陽菜も、ベッドの上でスマホを見ていた。画面はついているのに、何も見ていない。(……わたし、なにやってんだろ)小さく笑う。少しだけ苦い。いつもなら、こういうとき、軽く流せた。でも今日は、違う。ちゃんと、引っかかっている。悠真の言葉。凪の言葉。そして、自分の言葉。「どうしようかな」あれは、本音だった。陽菜は、ゆっくり起き上がる。カーテンを開け、夜空を見る。(……逃げないって、決めたよね)凪たちと同じように。自分も。ちゃんと、自分で決める。その頃、別々の場所で、同じ夜を過ごす四人。それぞれの中で、静かに何かが動いている。まだ答えは出ていない。でも、この夜は、きっ
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さっきの「どうしようかな」が、まだ頭の中にある。

夜風が、少しだけ冷たい。四人の足音が、またゆっくりと動き出す。誰も、さっきの言葉を拾わない。聞こえていないわけじゃない。ちゃんと、胸のどこかに残っている。凪は、陽菜の隣を歩く。さっきの「どうしようかな」が、まだ頭の中にある。軽く言ったようで。軽くなかった。凪は、少しだけ迷ってから声をかける。「……陽菜」陽菜が、ちらっと横を見る。「なに?」いつもの調子。でも、少しだけやわらかい。凪は、少しだけ言葉を探す。「さっきのさ」間。「どうしようかなってやつ」陽菜が、ふっと笑う。「あー、あれ?」軽く流すように。でも、完全にはごまかさない。「なんとなく言っただけだよ」そう言って、少しだけ前を見る。でも、その目は、少し遠い。凪は、それ以上踏み込まない。今は、まだその距離。その代わりに。「そっか」それだけ返す。それで、十分だった。その少し後ろ。悠真と蓮が、また並んでいる。さっきより、自然な距離。悠真が、ぽつりと。「……難しいな」小さくつぶやく。蓮が、少しだけ笑う。「楽なほうが珍しいよ」その言い方、どこか達観している。悠真が、少しだけ空を見る。「でも、逃げたくない」短く、強い言葉。蓮も、うなずく。「うん」四人の歩幅が、少しずつ揃っていく。道が、分かれる場所。ここで、それぞれの帰り道になる。自然と、足が止まる。誰も、すぐには別れない。そのとき、陽菜が、ふっと笑う。「じゃあさ」軽く手を振る。「また明日」シンプルな言葉。そんな言葉にも、今の四人には、ちゃんと意味がある。凪が、うなずく。「……うん、また明日」悠真も、少しだけ笑う。「ちゃんと来いよ」陽菜が、すぐに返す。「そっちこそ」そのやりとりに、蓮が少し笑
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四人の距離が、少しずつ整っていく。

夕焼けの廊下を、四人で歩く。足音が、ゆっくりと重なる。さっきまでの教室とは違う。少しだけ、軽い空気。どこか、ぎこちない。その“ちょうど途中”の感じ。凪は、陽菜の隣を歩いている。さっきまで握っていた手の感触が、まだ残っている。陽菜が、ちらっと横を見る。「……ねえ」小さく声をかける。凪も、そっと視線を向ける。「さっきさ」少しだけ間。「ありがとう」まっすぐじゃない言い方。でも、ちゃんと届く。凪は、少しだけ驚いてから、笑う。「……うん」それだけで、十分だった。その少し後ろを悠真と蓮が並んで歩いている。無言。でも、さっきまでの“張り合う感じ”はない。悠真が、ぽつりと。「……蓮」蓮が、少しだけ目を向ける。「なに?」自然な返し。悠真は、少しだけ考えてから言う。「負けないけど」短く、はっきり。蓮が、少しだけ笑う。「うん」同じトーンで。「俺も」それ以上は言わない。それで十分だった。競い合いじゃない。でも、引かない。四人の距離が、少しずつ整っていく。階段を降りる。外に出ると、空はもうオレンジがきえかけている。風が、少しだけ冷たい。陽菜が、両手を伸ばす。「はー、つかれた」わざとらしく。陽菜らしい、どこか本音。凪が、少しだけ笑う。「わかる」そのやりとりに、悠真と蓮も少しだけ笑う。さっきまでの重さが、少しずつ抜けていく。全部消えたわけじゃないけど、まだ、ちゃんと残っている。凪は、空を見る。今日一日、長かった。でも、無駄じゃない。そのとき、陽菜が、ふと立ち止まる。「ねえ」三人が振り返る。陽菜は、少しだけ真面目な顔。「明日も、ちゃんと来るよね?」その問い。軽くない。逃げないかの確認?凪は、すぐにうなずく。「
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