好きと安心。二つの感情が、同じ場所で動き始めている。
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コラム
校門の前。
朝の光が、少しだけ揺れる。
凪の言葉のあと。
「……でもね」
その続きが、まだ空気の中に残っている。
悠真は、待っている。
急かさない。
逃がさない距離で。
凪は、小さく息を吸う。
言わなきゃ。
そう思うほど、言葉が重くなる。
それでも、ゆっくり口を開く。
「悠真のこと」
名前を呼ぶ。
それだけで、胸が少しだけ痛くなる。
「好きだよ」
はっきりと、逃げずに言う。
悠真の目が、わずかに動く。
空気が、一瞬止まる。
でも、凪は続ける。
止まらない。
「でも」
少し間。
言葉を選ぶ。
「一緒にいるとき」
視線が、少しだけ揺れる。
「無理してた」
その一言が、静かに落ちる。
悠真の呼吸が、少しだけ変わる。
凪は、続ける。
「嫌われたくなくて」
少しだけ声が震える。
「ちゃんとしなきゃって思って」
一歩、少しだけ踏み出す。
「自分じゃなくなってた」
言えた。
全部じゃないけど
一番大事なところ。
空気が、深くなる。
重くはない。
軽くもない。
悠真は、少しだけ下を向く。
考えている。
逃げずに。
それから、
ゆっくり顔を上げる。
「……そっか」
短い言葉。
ちゃんと受け止めている声。
凪の胸が、少しだけほどける。
そのとき、
後ろから、軽い足音。
「おはよー!」
陽菜だ。
いつも通りの明るさ。
でも、その目は、
少しだけ空気を読んでいる。
凪と悠真を見る。
ほんの一瞬。
それだけで、全部を察したような顔。
でも、何も言わない。
ただ、笑う。
「朝から真面目な顔してるじゃん」
軽く言う。
空気を壊さない程度に。
その距離感が、やさしい。
少し離れた場所。
校門の影。
蓮が、静かに見ている。
表情は変わらない。
視線だけが、少しだけ深い。
凪は、まだ気づいていない。
物語は、もう止まらない。
好きと安心。
二つの感情が、同じ場所で動き始めている。
その中心にいるのは凪。
選ぶ時間が、近づいている・・・。