無理、してる。今も。

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コラム
部屋の中は、静かだった。
スマホの光だけが、凪の顔を照らしている。

「さっき、ごめん。」
その一文を、何度も読み返す。

短いのに。

重い。
(どういう意味……)

指が、少しだけ震える。
怒ってるわけじゃない。
責めてるわけでもない。

ただ。
まっすぐ、こっちを見てる感じ。

(ずるいよ……)
小さく、つぶやく。

あんな言い方をされたあとに。
こんなふうに来られると。
無視なんて、できない。

凪は、ゆっくりと体を起こす。

ベッドの上。
スマホを両手で持つ。

画面の文字を、見つめる。
(どうしよう)

頭の中で、いくつも言葉が浮かぶ。

「気にしてないよ」
「大丈夫」
「こちらこそ」

どれも、しっくりこない。

どれも、少しだけ嘘になる気がする。

指が、止まる。

そのとき。
ふと、さっきの帰り道が浮かぶ。

蓮の声。
「無理してること、あるんじゃない?」

凪は、少しだけ目を閉じる。
(……そうだ)

無理、してる。
今も。

ちゃんとした返事をしようとして、
正しく返そうとして、
また、同じことをしている。

(わたし……)

ゆっくりと、息を吐く。

それから、
画面を見て、指を動かす。

少しずつ、
迷いながら。

でも、止まらずに
――「さっきは、ごめん」

一度、止まる。

消そうか、迷う。

でも、消さない。

そのまま続ける。
「ちゃんと話さなきゃって思ってたのに」

また、止まる。
胸が、少しだけ苦しくなる。

それでも、指は、動く。

――「うまくできなかった」
そこまで打って、手が止まる。

画面を見つめる。

これが、本音。

でも、まだ、全部じゃない。

凪は、少しだけ迷う。

そして、
もう一度、指を動かす。

――「もう少しだけ、時間ほしい」

送る。
小さく、息を吐く。

画面を閉じる。

ベッドに、ゆっくりと倒れる。

天井を見つめる。

さっきよりも、少しだけ静かだった。

逃げていない。

でも、全部も、決めていない。

その間にいる感じ。
それが、今の自分だった。

(これで……いいよね)

小さく、つぶやく。
答えは、まだ出ない。

でも、
少しだけ、進めた気がする。

そのとき、
スマホが、また震える。

凪の心臓が、少しだけ強く鳴る。

画面を見る。

――悠真。

返信。
指が、止まる。

開くかどうか。
ほんの一瞬、迷う。

でも、ゆっくりと、タップする。

その瞬間。
また、新しい何かが動き出す。

凪は、まだ知らない。

このやりとりが、
自分の気持ちを
もっとはっきりさせていくことを。
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