……それが一番ずるいよ。

記事
コラム
夕方の光が、少しだけ濃くなる。

凪の言葉のあと。
教室は、静かなままだった。

誰も、すぐに動かない。

そのとき、
陽菜が、ふっと笑う。

その笑いは、いつもと少し違った。

「……ねえ」
軽い声。

でも、どこか引っかかる。

三人が、陽菜を見る。

陽菜は、少しだけ首をかしげる。

「これさ」

少しの間。

「わたしだけ、のけものじゃない?」

空気が、一瞬で変わる。

冗談みたいな言い方。

でも、違う。

凪の心臓が、強く鳴る。

陽菜は、続ける。
「なんかさ」

少し笑う。
でも、その目はまっすぐだった。

「三人でちゃんと向き合ってる感じじゃん」

少し間。

「わたし、外から見てるだけみたい」

その言葉。
軽く聞こえるのに、重い。

悠真が、少しだけ動く。

「陽菜……」
名前を呼ぶ。

でも、続かない。

陽菜は、ふっと視線を落とす。

ほんの一瞬。

それから、また笑う。

「……ねえ」
今度は、少しだけ低い声。

「わたしってさ」

少し間。

「そんなに魅力ないのかな」

凪の胸が、ぎゅっと締まる。

陽菜は、続ける。
「ねぇ悠真?」

ちらっと見る。

その言葉で、
空気が、深く沈む。

「なんかさ」

小さく笑う。

でも、震えている。
「わたしが一番、バカみたいじゃない?」

その一言。

教室の空気が、完全に止まる。

誰も、すぐに返せない。

軽く扱えない。

無視もできない。

凪は、ゆっくり陽菜を見る。

今まで見ていた“陽菜”じゃない。

ちゃんと、同じ場所に立っている。

同じように、揺れている。

凪は、小さく息を吸う。

「……違うよ」
はっきりとした声。

陽菜の目が、少しだけ揺れる。

凪は、続ける。

「陽菜は」

少し間。

「ちゃんとここにいる」

その言葉。
ただの慰めじゃない。

同じ場所に立っている人への言葉。

陽菜は、少しだけ目を伏せる。

そして。

小さく、息を吐く。

「……そっか」
短い返事。

少しだけ、やわらいだ。

そのとき、悠真が、静かに言う。

「陽菜も」

少し間。

「ちゃんと大事だよ」
まっすぐな言葉。

でも、
それが、余計に複雑にする。

陽菜は、少しだけ笑う。

「……それが一番ずるいよ」

ぽつりと。

その声は、少しだけ優しかった。

夕方の光が、さらに深くなる。

四人の距離。

もう、誰も外側じゃない。

全員が、当事者になった。

この関係は、もう戻れない場所まで来ている。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら