僕が、僕の本音を見つけるまで。〜山奥シェアハウス編

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僕の心は、今までよりも正直になってきた。
以前よりも、やりたいことが明確にわかるようになり、逆に、やりたくないことを拒否する感覚も強まってきた。
メンテルヘルス的には、とても良い兆候だと思った。
しかし、その影響で心のストッパーが外れ、今まで何年も溜め込んできた「我慢や疲労」が一気に溢れてきた。
やりたく無い事をやろうとすると、全身がとてつもないだるさと無気力に支配され、体が言うこと聞かなくなった。
考え事をすると、頭にモヤがかかったように思考できなかった。
今までのように、無理矢理に自分を奮い立たせて頑張るようなやり方は通用しなくなった。
力が湧いてくるのは楽しいと感じる時だけで、基本的には無気力だった。
初めは、自分に甘えているのかと思い自己嫌悪に陥ったが、カウンセラーの先生に話を聞くと、どうやらそうでは無いことがわかった。
これは心理学的にはアパシーという状態らしく、僕の心は「今は何にもしないで、とにかく休んで。」というメッセージを「無気力」という形に変換して体へ伝えていたようだった。
これは想像以上に強力で、当時は、どんなに気合を入れても力が出てこなかった。
1度、この状態になると、もはや自分の意思ではどうすることもできず、素直に回復するまで休息を取るしかなかった。

仕方ないので、とにかくゆっくり休めそうな場所を探した。
自分の気持ちとしては、自然の中で誰にも干渉されずに過ごせる場所を求めていた。
その方向性でしばらく探していると、山奥シェアハウスというものを見つけた。
そこは、名前の通り山奥にあるシェアハウスで、オーナーごとに色々なコンセプトを掲げて運営されていた。
僕が見つけたところは、「山の中でゆっくり休憩して、元気になったら再スタートしよう」という一貫したテーマを掲げていた。
まさに、自分が求めていたような場所だった。
すぐさまオーナーに連絡をして、即、入居させてもらえる事になった。
初めてだったので、とりあえず1ヶ月からの契約にした。
電車代をケチって、約8時間の各駅停車で、指定された駅に向かった。
朝に出発したのだが、着いた頃には夕方で、辺りは日が落ちかかっていた。
駅にはオーナーが迎えに来てくれており、初めての共同生活で不安な僕に気を遣って話しかけてくれた。
僕たちは車に乗り込み、30分ほど走って、シェアハウスに到着した。
周りは、街頭すらない山の中で、虫の声が少しだけ聞こえていた。
オーナーに連れられて中に入ると、先に住んでいた3人の住人さんがこたつでのんびりしていた。
僕は、あいさつと軽い自己紹介をして、荷物を置きに自分の部屋へ向かった。
あらかた片付けが済んで、住人さん達の輪に加わろうと思ったが、話しかける勇気がなかった。
そんな僕の様子を見てか、住人さん達が居間に招き入れてくれた。
何を話せばいいのか分からず戸惑っていた僕に、住人さんたちは優しく接してくれた。
そのおかげで、割と早い段階で打ち解けられた。
僕は、そのシェアハウスに何とも言えない安心感を感じて、ここなら心ゆくまで休めそうだと思った。
その日から、僕のなんとも言えないごく普通の生活が始まった。
その様は、毎日同じような味気ない生活を送っていたように見えていたと思うが、自分にとっては実りある日々だった。
普通の生活の中で、自分の内側と外側の変容が着々と進んでいった。
派手なことは何もしていないような日々が、別の何かを生み出してくれそうに感じていた。


続く   

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