少子高齢化が進み、働く世代の人口が減少している現代において、私たちは大きな転換期を迎えています。
かつて企業にとって、ASDやADHD、LDといった障害を持つ方々との関わり方は、どこか「扱いづらさ」や「苦手意識」を伴うものであったかもしれません。
しかし今、時代は「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」という新しい視点へと動き出しています。
国が就労を後押しする背景には、単なる労働力不足の解消だけではない、もう一つの大切な視点があります。
それは、一人ひとりの特性に合わせた「合理的配慮」を行うことで、組織全体の生産性が高まるという気づきです。
これまでの社会は、「仕事」に合わせて「働く人」を変えることを求めがちでした。
しかしこれからは、「働く人の特性」に合わせて「仕事変える」という発想が求められています。
仕事を細かく「分解」し、適材適所に「変化」させ、「細分化」する。そうして本人の強みを活かせる環境を整えることこそが、今、企業に問われている知恵なのです。
私たちが医療や支援の現場で出会う患者さんたちの中には、「お金を稼ぐのが嫌だ」という方は不思議なほどいらっしゃいません。
それどころか、たとえ生活に困っていなくても、自ら働き、社会とつながることで深い「幸せ(ウェルビーイング)」を感じている方が多くおられます。
それぞれの特性は、見方を変えれば輝かしい武器になります。たとえばASDの方は、空気を読まない発言をしてしまうことがある反面、決して嘘をつかない誠実さを持っています。困ったときには率直に質問を投げかけてくれるため、企業側が丁寧に寄り添えば、周囲と変わらない素晴らしい生産性を発揮してくれます。
ADHDの方は、豊かなアイデアにあふれ、変化を恐れずに突き進むエネルギーを持っています。それは変化の激しい現代の企業にとって、大きな原動力となるはずです。
また、文字や数字の扱いを苦手とするLDの方であっても、特定の業務(たとえば音声の文字起こし・デザイン制作など)においては、周囲が驚くほどの高い集中力と生産性を見せてくれることがあります。
ただし、どのような特性を持つ方であっても、急に物事を進めてはいけません。
大切なのは、一呼吸をおいて十分に打ち合わせを重ね、合意した役割を担ってもらうことです。
そして、日々の成果や業務に対して、必ず「ありがとう」という感謝を言葉にして返すこと。
周囲の社員よりも少し多めに声を掛け、「いつも見守っているよ」という安心感を伝える空気づくりが、何よりも彼らの支えになります。
「障害者は税金を消費する存在だ」という誤解が、まだ世間には一部あるかもしれません。
しかし、働く機会を得た彼らが「自分も所得税を払えている」と実感することは、社会の一員としての大きな誇りであり、生きがいそのものなのです。
障害を理由に可能性を閉ざすのではなく、お互いの特性を認め合い、社会全体で豊かになっていく。そんな未来への第一歩として、「トライアル雇用」への挑戦や、「シンポジウム」への参加、そして「TOKYO障害者雇用支援ポータル」などの仕組みを、ぜひ積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
誰もが働く幸せを感じられる社会は、きっとすぐそこにあります。
沙門蒼俊 合掌