それは、ひっそりと置かれていました。
無残にも真っ二つに切られた、白い小さな物体が——。
「……何これ?…え?」
手に取ってみると、
スパッと切られた断面に声が震え、
ただの紙切れとなった姿に、心臓をギュッと握られたような恐怖がした。
◇コツコツ真面目に…
24歳で、私はこの会社に転職してきました。
そこは、缶やPETボトルのジュースを作る製造工場でした。
最初は人間関係にも問題なく、
品質検査の業務をコツコツとこなしていた私。
同僚たちとも、まあまあいい関係を築いているつもりだったんです。
「よし、この職場で頑張っていこう」
「中途で拾ってくれた会社だし恩を返せたらいいな」
そう思いながら、毎日を過ごしていました。
そして一年ほど経ったある日——。
「ちょっといいか?」
ふいに上司に呼ばれた。
「新しい重要な仕事を任せたい。」
「え!?」
「新商品の開発を担当してくれ」
当時(1992年)はバブルが弾けたばかりのころ。
なにもしなくても、ただ待ってるだけで
仕事が来る時代は終わりを告げ、
自分たちで新商品を開発して、それを売り込むことが決まったという。
そして新たに”開発部門”が新設され、そこに抜擢されたのが私。
もちろん経験なんて全くない!
しかも、たった一人で。
「…やれるのか?」
でも、今までコツコツと取り組んできた努力が報われたと感じたし、
「よし、やってみよう!」
そっちの気持ちのほうが大きかった。
しかし、 この抜擢から、すべてが変わった ——。
◇重い雰囲気
それまで普通に接していた先輩や同僚たちが、
急によそよそしくなった。
目を合わせない。
会話が減る。
そして、 飲み会の誘いが自分だけ来なくなった。等々……
「気のせいかな?」
最初はそう思いました。
でも、日を追うごとに 確信に変わっていく。
「なんでアイツが・・・?」
「中途で来たヤツだろ・・・」
すれ違うと聞こえてくる、ひそひそ話。
背後から飛んでくる、明らかな悪意の視線。
胃がキリキリと締めつけられる感覚。
職場に漂う 重たい空気によって、
まるで、 目に見えない攻撃 を受けてるような毎日。
そして極めつけが、 あの日の出来事 でした。
◇白い紙きれ
ある日の朝、出社すると 自分のデスクの上に何かが置かれていた。
近づいてみると——
それは 、”真っ二つに切られた私の名刺” だった。
デスクの真ん中に置かれた姿は、
まるで「お前はここにはいらない」と言われているようだった。
ゾクッ!
背筋が凍る思いがしたのを今でもハッキリ覚えています。
先輩たちは、少し離れた場所から ニヤニヤとこちらを見ている。
私は、切られた名刺を見つめしばらく何も考えられなかった。
(ここまでやるか…)
恐怖とともに、フツフツと怒りが湧き上がり、
頭がまっ白になりそうになる。
(でも、待て)
心の中でもう一つの感情が話しかける。
◇戦うだけ無駄
もし、ここで 感情のままに怒りをぶつけたらどうなる?
答えは簡単でした。
彼らはきっと もっと面白がる 。
挑発に乗ったら、さらにエスカレートするのは目に見えている。
厄介な生きものに変わったのだ。
(だから…)
「頭にきたけど戦わない」
彼らの嫌がらせに付き合う時間は無駄だ。
自分の人生を、 そんなくだらないことに使うのはバカらしい。
その代わりに、 自分のやることに集中しよう。
それが 自分なりに出した答えでした。
◇ブラック企業に33年勤めて学んだこと
嫉妬・妬みで足を引っ張る人間、理不尽なことをする人間——
そんな連中が ゴロゴロいるのがブラック企業です。
しかし、 彼らに振り回されて時間を無駄にする必要はない。
嫌がらせに ムキになって対抗するより、自分の人生を大切にする。
そう、 アホな人たちに頭にきても「戦わない」。
戦う暇があったら、自分のやるべき仕事をしっかりやって、
定時で帰ると心に決めた。
◇最後に
社会には、理不尽なことがたくさんあります。
しかし、 そのすべてに立ち向かう必要はない。
誰かの悪意に時間を使うより、
自分の大切なことにエネルギーを注ごう。
もし、あなたが ブラックな環境に苦しんでいるなら——
まず、こう考えてみて。
「アホと戦うなんて時間のムダ!」って。