「ホームページは作ったら終わり」。残念ながら、これはもっとも危険な勘違いのひとつです。
Web制作の現場にいると、こんな相談を毎月のように受けます。
- 「3年前に20万円で作ってもらったHPが、急に表示崩れを起こした」
- 「サーバー会社から『契約更新のお知らせ』が来たけど、自分が何を契約しているのかわからない」
- 「お問い合わせフォームから何も来ないと思ったら、半年前から壊れていた」
- 「Googleで自社名を検索したら、見覚えのない英語ページが表示された」(→改ざん被害)
どれも、「作って終わり」のまま放置していた結果起きていることです。家を建てたら定期点検が要るのと同じで、ホームページにも継続的なメンテナンスが必要です。
この記事では、運用保守で実際に何が必要なのか、いくらかかるのか、どこまで自分でやってどこからプロに任せるべきかを、現役のフリーランスWeb制作者の視点から具体的に解説します。
この記事の対象読者
- 制作会社にHPを作ってもらったが、その後の運用方法を引き継いでもらえなかった個人事業主・小規模事業者
- これからHPを作る予定で、月額の維持費がいくらかかるのか不安な方
- 現在保守契約を結んでいるが、その内容や金額が妥当か判断できない方
- WordPressサイトを運営していて、「アップデートしてください」の通知を無視している方
- 自社でやれる範囲とプロに任せるべき範囲の線引きを知りたい方
【前提】「運用」と「保守」は何が違うのか
まず、現場で混同されがちな2つの言葉を整理します。
ざっくり言うと、保守は「現状維持」、運用は「成長」。両方やってはじめて、HPは事業の資産になります。どちらか片方だけでは片手落ちです。
放置すると何が起きるか:5つの実害
まず「やらないとどうなるか」を具体的に知ることが、運用保守の重要性を理解する近道です。
① WordPressが乗っ取られて、フィッシングサイトに改ざんされる
国内の中小企業サイトでもっとも多いトラブルです。WordPressやプラグインを古いまま放置すると、既知の脆弱性を突かれて、サイトが攻撃者の中継地点として乗っ取られます。
気づくきっかけは、たいてい以下のどれか。
- Googleで自社名を検索したら、知らない海外通販ページが上位に出てきた
- お客様から「リンクを踏んだら警告画面が出た」と連絡が入った
- サーバー会社から「攻撃の踏み台にされています」と通知が来た
ここまで来ると、復旧費用は10万〜50万円規模。最悪、再構築になります。
② SSL証明書が切れて、ブラウザに「危険」と表示される
SSL証明書(https化)には有効期限があります。多くは1年更新で、自動更新の設定をしていないと、ある日突然「この接続は安全ではありません」という警告画面が表示されます。
お客様視点では、これは「このサイトは怪しい」としか映りません。問い合わせは止まり、信用も傷つきます。
③ お問い合わせフォームが壊れて、半年間ゼロ通信
WordPressアップデートやサーバー側の仕様変更で、お問い合わせフォームが動かなくなるケースは非常に多いです。フォームから送信しても、メールが届かない・スパムフォルダに紛れる・送信エラーで終わる──こうなると、見込み客との接点が完全に切れます。
自分で月1回テスト送信していない事業主の8割は、過去にこれをやらかしていると言って差し支えないレベルです。
④ ドメインを失効させて、サイトごと消える
ドメイン(◯◯.comなど)には年次の更新料がかかります。クレジットカードの有効期限切れや、登録メールアドレスの放置で更新通知を見逃すと、ドメインは失効。サイトはアクセス不可になり、最悪、第三者にドメインを取得されて二度と取り戻せません。
企業ドメインを別人に取得されると、過去の名刺・チラシ・SNS投稿のすべてが「死んだリンク」になります。
⑤ コンテンツが古いまま、Googleに「動いていないサイト」と判定される
Googleは「定期的に更新されているサイト」を評価する傾向があります。3年前の「2023年の年末年始営業のお知らせ」がトップページに残っているサイトを、検索エンジンも、訪問者も、信用しません。
結果、検索順位はじわじわ下がり、流入が減り、問い合わせも減り、「HPなんて意味ないじゃん」という結論に到達します。意味がないのではなく、運用していないだけです。
運用保守でやるべき作業の全体像
具体的に何をやればいいのか、頻度別に整理します。
毎日〜毎週やるべき作業
毎月〜四半期にやるべき作業
年1回必須の作業
⚠️特に怖いのは「ドメイン更新忘れ」。クレジットカードの期限切れで自動更新が止まり、登録メールアドレスの放置で通知も見逃し、ある日サイトが消える。これは年間数件、必ずどこかで起きているトラブルです。クレカ情報とサーバー会社の登録メールアドレスは、今すぐ確認してください。
運用保守の費用相場【2026年版】
ここからが本題。実際にいくらかかるのかを、相場感とともに整理します。
パターンA:自社ですべてやる場合
お金だけ見れば月500〜7,000円程度ですが、「自分の作業時間」が抜けています。WordPressアップデート時のトラブル対応、バックアップ設定、フォーム不調の調査などを自分でやるなら、月3〜5時間は確保が必要です。
時給換算で月額1〜3万円相当の労働を、自分でやっているという認識は持っておいたほうがいいでしょう。
パターンB:保守契約を制作会社・フリーランスに任せる場合
💡個人事業主・小規模事業者の現実的なラインは、月額5,000〜15,000円のライト〜標準保守です。「最低限、サイトを止めない・改ざんされない・問い合わせフォームが死んでいないことを担保する」だけでも、十分な投資価値があります。
「月額1万円」は高いか安いか
よく聞かれます。私の答えはこうです。
月額1万円 = 年間12万円 = HPからの問い合わせ1〜2件の利益
もしあなたのサービスが「1件あたり数万円〜数十万円」の単価なら、月額1万円の保守は、問い合わせを1件守れるだけで完全にペイします。逆に、HPからの問い合わせが年に1件もないなら、保守を語る前に運用(コンテンツ更新・SEO)を見直すべきです。
自分でやる vs プロに任せるの判断軸
「全部プロに任せれば安心」とも「全部自分でやれば節約」とも言えません。作業の性質ごとに分担を決めるのが正解です。
自分でやるべき作業(任せると割に合わない)
- お知らせ・ブログ・実績の更新:あなたの業界知識でしか書けない
- 写真・素材の差し替え:現場のリアル感が出るのはあなたの撮影だけ
- GA4の数値確認:意思決定するのは結局あなた
- お問い合わせフォームの定期テスト送信:1分で終わる
プロに任せるべき作業(自分でやると事故る)
- WordPress本体・プラグインのアップデート(互換性トラブルが起きやすい)
- バックアップの自動化設定
- セキュリティ対策(不正ログイン対策、WAF、改ざん検知)
- SSL証明書・ドメイン更新の見守り
- 障害発生時の復旧対応
- 表示崩れ・モバイル対応の修正
迷う作業はどう判断するか
判断軸はシンプル。
1. 間違えるとサイトが止まる/消える/改ざんされる作業 → プロに任せる
2. やり直しが効く、ミスっても致命傷ではない作業 → 自分でやる
3. 業界知識・社内事情が必要な作業 → 自分でやる
4. 専門スキルが必要で、頻度が低い作業 → 都度プロに依頼
良い保守契約の見分け方
保守契約は「契約書を見ても何が含まれているかわかりにくい」のが実態です。契約前に必ず確認すべき7つのポイントを挙げます。
① 月額に含まれる作業範囲が「具体的な作業名」で書かれているか
NG例:「サイトの保守・運用一式」「適宜対応」
OK例:「WordPress本体・プラグインの月次アップデート、月1回のフルバックアップ、月2件までのテキスト修正」
抽象的な契約書は、トラブル時に「それは契約範囲外です」と言われる可能性が高いです。
② バックアップの「保存場所」「世代数」「復旧手順」が明示されているか
バックアップは取るだけでは意味がなく、実際に戻せることが重要です。サーバー内バックアップだけでは、サーバー会社のトラブル時に共倒れになります。外部ストレージ(S3、Google Drive等)に世代別保存しているのが理想。
③ 障害発生時の「初動時間(SLA)」が明記されているか
例:「平日9〜18時の障害連絡には2時間以内に初動対応」
これが書かれていない契約は、最悪、半日〜数日連絡が取れないこともあります。フリーランス1人体制の場合は特に確認したいポイントです。
④ 月額に含まれる「修正の作業時間」または「件数」が明確か
「軽微な修正は無料」と書かれていても、何が軽微で何が追加料金かの線引きが曖昧だとトラブルになります。「月◯件まで」または「月◯時間まで」と明示されているのが望ましいです。
⑤ アカウント・データの「所有権」が明記されているか
以下はすべてあなた(事業主)の名義・所有であるべきです。
- ドメイン契約
- サーバー契約
- WordPress管理者アカウント
- GA4アカウント
- Google Search Consoleアカウント
制作会社の名義で契約されていると、契約解除時にサイトごと人質に取られる事例が、業界で時々起きています。
⑥ 解約条件・解約後のデータ受け渡しが書かれているか
「解約3ヶ月前通知」「解約後、サイトデータ・バックアップ・各種アカウント情報を引き渡す」といった条件があるか確認。解約しにくい契約は良い契約ではありません。
⑦ 月次レポートや定例ミーティングがあるか
「月額払ってるけど、何をしてくれているのかわからない」状態は、両者にとって不幸です。月1回でも、作業実施報告とアクセス解析のサマリーが届く契約を選びましょう。
やってはいけないNG行動5選
保守・運用フェーズで多いトラブルパターンです。
1. WordPressの「アップデートしてください」通知を無視し続ける → 改ざん・乗っ取りの最頻パターン
2. 保守契約なしで、トラブル発生時だけ業者に連絡する → 緊急対応費は通常の3〜5倍。復旧にも時間がかかる
3. ドメイン・サーバー契約を制作会社名義のままにする → 関係悪化時にサイトを失うリスク
4. 管理画面のパスワードが「会社名123」レベル → 自動攻撃ツールに数時間で破られる
5. 「全部おまかせします」で契約してしまう → 月額1〜3万円払っているのに何もしてもらえていないケース多数
よくある質問(FAQ)
Q1. 保守契約なしで運用してもいいですか?
WordPressを使っていない静的サイト(HTMLのみ)であれば、最低限の自己管理でも運用可能です。ただし、WordPress・EC-CUBE・ShopifyなどCMS系を使っているなら、保守契約またはそれ相当の自己管理体制はほぼ必須と考えてください。
Q2. 制作してくれた会社と、保守してもらう会社は別でもいいですか?
問題ありません。ただし、引き継ぎコストがかかります。新しい保守担当者は、サイト構造の理解とリスク把握のための初回調査が必要です。これに2〜5万円の初期費用がかかるのが一般的です。
Q3. WordPressからJimdoやペライチに移行すべきですか?
更新頻度が極めて低く、機能要件もシンプルなら、ノーコードツールへの移行はコスト削減になります。一方、SEOで戦いたい・カスタマイズ性が必要・将来的にECに発展させたいなら、WordPressのほうが有利です。
Q4. 月額の保守費用は、どう経費計上すればいいですか?
「広告宣伝費」「通信費」「支払手数料」など、事業内容に応じて適切な勘定科目で経費計上できます。年間契約の場合は「前払費用」処理になる場合もあるため、税理士に確認するのが確実です。
Q5. 保守契約の月額を値切ることはできますか?
相場の下限を切る価格交渉は、逆にリスクを高めることが多いです。極端に安い保守は「契約書だけ存在して実作業は最小限」のケースもあります。価格を下げるなら、「対応範囲を狭める(バックアップだけにする等)」「修正対応の件数を減らす」など、スコープで調整するほうが健全です。
Q6. 自分でWordPressアップデートをやって、もし壊したらどうすればいいですか?
バックアップから復元するのが基本です。バックアップを取っていないなら、レンタルサーバーの「自動バックアップ復元機能」(ロリポップ、エックスサーバー、ConoHa等が提供)で巻き戻せる場合があります。
それでも復旧できないなら、プロに「緊急対応」として依頼することになります。費用は5万〜20万円が相場。最初から保守契約に入っていれば、この出費は防げます。
Q7. 「月額5,000円」と「月額20,000円」の保守、何が違うのですか?
主な違いは以下です。
- 対応時間:低額プランは数日後対応、高額プランは即日対応
- 作業範囲:低額プランはセキュリティ更新のみ、高額プランは内容更新も含む
- 担当者の専任度:低額プランは複数社の作業を回している、高額プランは月次で改善提案までしてくれる
あなたの事業フェーズに合わせて選びましょう。立ち上げ期は低額プランで十分、成長期に入ったら投資を増やすのが王道です。
まとめチェックリスト:今すぐ確認すべき10項目
この記事を読んだら、自分のサイトの状態を以下のチェックリストで点検してみてください。5つ以上「いいえ」がついたら、運用保守体制の見直し時です。
⬜︎ 自社のドメインは、自分(または自社)名義で契約している
⬜︎ サーバー契約も、自分(または自社)名義で契約している
⬜︎ ドメイン・サーバーの更新通知メールが、現在も受信できるアドレスに届く設定になっている
⬜︎ WordPress本体・プラグイン・テーマは、3ヶ月以内にアップデートされている
⬜︎ サイト全体のバックアップを、少なくとも月1回取得している
⬜︎ お問い合わせフォームを、1ヶ月以内にテスト送信して動作確認した
⬜︎ サイトの管理画面パスワードは、推測されにくい複雑なものになっている
⬜︎ SSL証明書の有効期限と更新方法を把握している
⬜︎ 過去1ヶ月以内に、Googleアナリティクスでアクセス数を確認した
⬜︎ トップページに表示されている「お知らせ」や情報は、半年以内のものに更新されている
運用保守でお困りの方へ
最後に少しだけご案内です。
私はフリーランスのWeb制作者として、ココナラで以下のような運用保守サポートを出品しています。
- WordPressサイトのライト保守プラン(月額相当の固定料金で、アップデート・バックアップ・軽微修正に対応)
- 既存サイトの健康診断(セキュリティ・表示速度・SEO・フォーム動作などをチェックしレポート提出)
- 緊急トラブル対応(改ざん復旧、表示崩れ修正、フォーム不調の原因調査)
- 保守契約の見直しアドバイス(現在の契約書を見て、適正価格か・抜けがないかチェック)
こんな方は、ココナラのメッセージ機能からお気軽にお声がけください。
- 「保守契約に入っていないけど、何かあったときが不安」
- 「今の制作会社の保守料金が妥当か、第三者の意見が欲しい」
- 「自分でやれる範囲を整理して、最低限の体制を作りたい」
ご購入前のお見積もり相談にも対応しています。サイトの現状をヒアリングしたうえで、本当に必要な範囲だけをご提案します。「不要なものを売りつける」ことはしません。
ホームページは「作って終わり」ではなく、「育てて終わり」もないものです。事業が続く限り、サイトも一緒に動き続ける。その伴走者が必要になったときに、本記事を思い出していただければ嬉しいです。
制作前のホームページ診断のご相談はこちら
現在のサイト、または検討中の見積書を拝見し、価格と内容のバランス・改善ポイントを第三者目線でお伝えします。
筆者がホームページ制作いたします
私は独立して現在3年目になります。ホームページ・LP・ECサイトの制作に携わったことは20以上。もし、どこに頼めばいいかわからないということであれば私にご相談ください。