突然の出張の話。
なんで出張になったかと聞くと、
「なんか成績上げれない人に限定して講習会?みたいなやつやるんだって」
と…。
アポの一件もまだとれていないのか…。
そこは口には出さず、「どこに出張なの?」と聞くと
「宮城の仙台」と言った。
期間は2週間くらいだと言っていた。
週明けから行くらしい
旦那は「初」の出張という経験をする。
聞くと、講義室に缶詰め状態らしい。
旦那は不安になっていた。
「俺缶詰め状態苦手なんだよな…」と…。
そして見送った朝。
子供たちは寂しがっていたが、旦那からは何も連絡はなかった。
多分相当疲れているだろうな、と推測していた。
こちらから電話をすることもしなかった。
そういう会社はほぼスケジュール管理されていることを知っているからだ。
泊まるところはビジネスホテルだと聞いた。
そうして次の日、電話がきた。
「俺、こんなんだとは思わなかった。缶詰状態に耐えられない…」
と弱音を吐いていたが、
「そうだね、けどもう少しだから…」
と励まして電話を切った。
それから数日後の夜、その日は珍しくI子さんが家に泊まりに来ていた。
それは旦那にも報告していた。
久しぶりに会ったのと子供たちのことを心配してくれていたのとで話が弾んだ。子供たちも大喜びだった。
が、寝る時間になり、息子が熱をだした。
多分はしゃぎ過ぎかと思われたが、I子さんを残して病院にも行けず、咳もなかったため様子を見ようということになった。
が…
電話が鳴った。
夜の9時過ぎだ。
なんだと思い携帯を見ると「旦那」の表示。
電話をとると
「俺、もう無理だ…お金もないし、車もないから帰れない、どうしよう、けどもうあの会社には居たくない!辞めてきた!もうやだ!」
と本当に泣きながら電話をしてきた。
電話の向こう側が騒がしい…
「今どこにいるの?」
と聞くと「仙台駅、だけどもう携帯の充電もない!迎えに来て!」
と泣きじゃくっていた。
えええええええ??これから仙台駅に来いと?
行ったこともないのに?
しかもファミリーカーは旦那の会社に置きっぱなし…。
私の軽自動車しかない…。
どうしよう…。
I子さんに事情を話して熱のある息子と寝ていた娘を起こし
まずは準備をした。
それから…。
道が分からない…。
どうしよう。カーナビは旦那の車には付いていたが、私の車には付いていなかった。
今のような携帯電話にもナビ機能はなかった。
そして思いついたのが…
旦那の元同僚の、あの婚姻届けの時にお世話になった、あのご夫婦。
電話番号は聞いていたため、早速電話してみた。
けれど、その相手の方も何やら電話の奥が騒がしかったため
「お出かけ中でしたか?」と聞くと、仲間で飲み会をしてた様子。
申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、自分にも余裕がなかった。
もう夜の9時を過ぎている。
着くのは11時は過ぎるだろう…。
旦那の携帯も充電が残りわずかなこともあり、余計な連絡は控えた。
着くころになったらどこにいるかだけ電話しよう。
そして、元同僚の方に「○○まできたらまた電話ちょうだい」などとアドバイスを受けながら夜道を走った。
子供たちを連れてこんなことになるとは思わなかった。
フツフツと怒りが沸いてきたが、今はそんなことよりも事故なく戻ってくるこだ。
馴れない夜道は本当に大変だった。
I子さんもこんなことに巻き込んでしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだったし、息子の熱のことも重なり…。
私の感情は色々なものを押し込めるのに必死だった。
そうして、元同僚さんのアドバイスのおかげで、無事
「仙台駅」に着いた。
最後まで同僚さんご夫婦にも心配をかけてしまい、せっかくの飲み会も潰してしまうようなことをしてしまって…。本当に申し訳ない気持ちで…情けなかった。
駅に着いたことを旦那に電話するとつながった。
ギリギリ充電はもったらしい。
「着いたよ、今○○の看板が見えるからここまで来て」と言った。
初めて来た駅だから勝手がわからない。
旦那は「うん、わかった近くだからすぐ行く」
と言って電話は切れた。
数分後、旦那がトボトボ歩いてきているのが見えた。
なんとも情けない姿だった。
車のドアを開けると開口一番に
「ごめん!」と謝ってきた。
「まず乗って、危ないから」と私は、たぶん、冷たい態度で促した。
車にのってから旦那は
「営業が簡単だなんて言ってごめんなさい、本当に申し訳ない、俺にはできなかった。あんなことを毎日して家事をして…俺は頭が上がらない」
と一気に謝ってきた。
I子さんも隣で「許してあげなよ」と言ってくれたが、私は、それどころではなかった。
帰りの道案内もしてもらわないといけないし、全てが終わったわけではない。
息子の熱も心配だったが、ぐっすり寝ていてくれていたので少しは安心していたが、無事に家に帰るまで気が抜けなかった。
旦那に運転させようと思ったが、駅から歩いてくる旦那の哀れな姿をみたら
運転を頼むことすら呆れてできなかった。