【ショートショート】「子豚たちの努力」
二足歩行の子豚たちは鉄格子に囲われた空間の中で生きている。空間の内側には同じ大きさの部屋が碁盤の目のように並んでおり、全ての部屋の壁は氷でできている。天井はないが、常に頭上に酒の靄が覆っており、空は見えない。部屋と部屋の間は細い廊下によって隔てられている。そこを、胸を張り、大股で、マントをはためかせながら、ヒーロー的な子豚が歩いている。他の子豚たちはほぼ全員、最も注目すべき子豚の出番が回って来たとあって、廊下でひしめき合いながら興奮で鼻を鳴らしている。
ヒーロー的な子豚は、期待、羨望、嫉妬が混じった眼差しの中を、焦れったい速度で歩いた。それは他の子豚たちの高揚感を高め、自身にプレッシャーをかけるためだった。
(緊張を楽しめ)と、ヒーロー的な子豚は自分に命じ続けながら、鉄格子に囲われた空間の端にある、まな板のステージに乗った。
正面に向き直るが、他の子豚たちの姿は見えない。視界が酒の靄の中に入ったからだ。
ヒーロー的な子豚は、自身の成功を確信した。もはや、研ぎ澄まされた集中力によって、先程まで頭の中で繰り返していた合い言葉も聞こえない。なんだか脳が痺れてきた。ヒーロー的な子豚は白い歯で彫刻のような顔を輝かせながら、胸元に「S」と書かれたコスチュームやマントを脱ぐと、用意していたダマスカス鋼の刀剣で、自分の体を部位ごとに解体し始めた。
「1000いいね!」「1200いいね!」他の子豚たちが各々の提供できる酒の量を叫び、一番多い量を言った子豚に、ヒーロー的な子豚が自身の肉を投げ渡した。受け取った子豚は、約束した量の酒を感謝の言葉と共に吐き出して、ヒーロー的な子豚にかけた。
骨だけにな
0