不動産を親族間で売買することは決して珍しくありません。
たとえば――
・兄弟で相続した土地をどちらか一方の名義にしたい
・親の家を、今後住む予定の子どもが買い取りたい
・共有名義を解消したい
・親族同士で円満に不動産を整理したい
といったケースはよくあります。
しかし、親族間売買には 「普通の不動産売買とは違うリスク」 があり、
知らないまま進めてしまうと、税金・住宅ローン・相続の場面で大きなトラブルになりかねません。
この記事では、
●親族間売買の注意点
●贈与とみなされる基準
●住宅ローンの問題
●税金(譲渡所得税・贈与税)
●適正価格の決め方
●不動産会社を通す理由
まで、エンドユーザー目線で徹底的にわかりやすく解説します。
親族間売買を「安全に」「税務署に疑われず」「公平に」進めるための必須知識としてお読みください。
◆1. 親族間売買は可能だが“注意が必要”
結論として、
親族間で不動産を売買することは法律上まったく問題ありません。
しかし、一般個人の売却とは違い、
・税務署
・金融機関
・保証会社
のチェックが非常に厳しくなります。
理由は簡単で、
“贈与税逃れ”の温床になりやすいから です。
だからこそ、
・「安すぎる」価格で買う
・「通常ではありえない」条件で売る
といった取引は、税務署から厳しく見られます。
「親族だから安くしてあげたい」
「身内だから高く売りたくない」
こうした善意が、
結果的に“贈与扱い”として税金が高額になる
というケースは非常に多いのです。
◆2. 親族間売買の最大の注意点
【① あまりに安い価格は“贈与”とみなされる】
もっとも注意すべきなのが、
売買価格が“時価よりも著しく安い”場合 です。
たとえば――
市場価格:2,000万円
親族への売却価格:100万円
この場合、
「2,000万円 − 100万円 = 1,900万円」
は 贈与したものとみなされ、贈与税の対象 になります。
国税庁も明確にこう説明しています。
著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、
その差額は“贈与により取得したもの”とみなす。
つまり、
「安く売った」ではなく「贈与扱い」です。
贈与税は金額が大きいほど税率も上がり、
場合によっては 数百万円単位 になることも珍しくありません。
●なぜ国税庁が厳しいのか?
「安く売った」と言えば贈与税を回避できる…
という“抜け道”を防ぐためです。
税務署に疑われないためには、「適正な価格(時価)に近い売買」であること
が必須です。
◆3. 親族間売買は住宅ローンの審査が通りにくい
親族間売買でもう一つ大きな壁があります。
それは 住宅ローンがほぼ通らない ということです。
理由は次のとおりです。
●① 贈与を疑われやすい
金融機関としては、
贈与税の逃れや不正利用を警戒しています。
「形式的には売買だが、実質は贈与」
というケースが多いからです。
●② ローン資金を別の目的に使われる可能性がある
子どもがローンで手にしたお金を、
親がそのまま子どもに返すような状態も起こり得ます。
つまり、住宅購入資金ではなく別用途で使われてしまう可能性があるわけです。
●③ 住宅ローンには保証会社が必須
住宅ローンは必ず「保証会社」による保証が必要です。
しかし保証会社は、親族間売買は審査の対象外と明確にしています。
保証会社の保証が受けられない=銀行は融資できない
という流れです。
●ではどうすればローンが使えるのか?
・銀行の“親族間売買専用ローン”
・ノンバンク系の住宅ローン
・不動産会社を通して適正価格を証明する
などの方法で可能になるケースがあります。
これは後半で詳しく解説します。
◆4. 3,000万円の特別控除が使えない可能性がある
マイホームを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、
多くの人が利用するのが 「3,000万円特別控除」。
しかし、この特別控除には条件があります。
その条件とは――
売主と買主が「特別な関係」でないこと。
この「特別な関係」には、
・親子
・夫婦
・生計を一にする親族
・同居している親族
・内縁関係の相手
などが含まれます。
つまり、
親族間売買では3,000万円控除が使えない場合が多い のです。
控除が使えなければ、譲渡所得に高額な所得税・住民税が課税されます。
◆5. 贈与とみなされない価格の決め方(3つの方法)
国税庁は「適正価格」の明確な基準を公表していません。
しかし、税務署に認められやすい方法は存在します。
■① 不動産鑑定士の価格を使う(精度最強)
国家資格を持つ不動産鑑定士に鑑定を依頼すると、
公的に信頼される“適正価格”が算出されます。
ただし数十万円の費用がかかるため、コストが気になる人には向きません。
■② 路線価を使う(裁判例あり)
平成19年の東京地裁では、
「路線価による売買は著しく低いとは言えない」
と判断されました。
路線価は国税庁が毎年公表しており、誰でも無料で確認できます。
■③ 複数の不動産会社に査定してもらう(実務上最も多い)
同じ東京地裁の判決では、
「市場価格の80%は著しく低くはない」
という判断も示されています。
そのため、
●複数社に査定してもらう
●平均値 × 80%程度を売買価格にする
という方法も、実務では非常に多く使われています。
1社だけだと税務署に不自然と思われるため、
3~5社の査定 を推奨します。
◆6. 親族間売買でも“不動産会社に依頼すべき理由”
親族間だからこそ、
第三者の専門家を挟むことが重要 です。
【理由①】贈与扱いされにくくなる
不動産会社を介して
・査定書
・売買契約書
・重要事項説明書
が整備されれば、税務署から見ても「正当な売買」と判断されやすくなります。
個人同士で“口約束”や“簡易な契約書”で進めると、贈与扱いされるリスクが急上昇します。
【理由②】住宅ローンが通りやすくなる
第三者である不動産会社が適正価格を示すことで、
銀行や保証会社へ「正当な取引」であることを説明できます。
親族間売買専用ローンの紹介や、
金融機関との調整をしてくれる不動産会社もあります。
【理由③】親族トラブルの回避
親族間売買では次のようなトラブルが起こりがちです。
・「本当はもっと安く売ったんじゃないの?」
・「ほかの相続人に不公平だ」
・「契約内容を理解していなかった」
・「後で欠陥が見つかった」
不動産会社を通すことで、契約内容・価格・手続きに透明性が生まれ、
後々の争いを避けることができます。
◆まとめ:親族間売買は、“知識ゼロで進めると危険”
親族間売買は、
通常の売却よりも慎重な準備と正確な知識が必要 です。
親族間売買の注意点を振り返ると――
◎安すぎる価格は贈与扱い
→ 贈与税が数百万円かかる可能性も
◎住宅ローンの審査は非常に厳しい
→ 親族間専用ローン、適正価格の証明が必要
◎マイホームの3,000万円控除が使えない場合がある
→ 譲渡所得税が高額になることも
◎価格は必ず“適正価格”に近づける
→ 鑑定、路線価、複数査定が有効
◎不動産会社を通すとリスクが大幅に減る
→ 税務署・金融機関・親族間トラブルの防止になる
親族間売買は、
「安く買う・安く譲る」だけでは絶対に進めてはいけません。
正しい価格設定・正しい手続き・正しい書類の作成こそが、
後悔しない親族間売買のカギです。
もしあなたが今、
●親の家を買い取りたい
●兄弟で名義を調整したい
●相続前に資産整理をしたい
などの理由で親族間売買を検討しているなら、
まずは専門家へ相談することを強くおすすめします。
正しい知識と正しい手順で、
「円満で公平な親族間売買」を実現しましょう。
ではまた。